2020年に読んだおすすめ本、9冊をぬるっとまとめるよ


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 何かと屋内で過ごすことが多かった、2020年。

 遠出する機会はほぼ皆無。基本的に自宅近辺で過ごしていたので、さぞや読書も捗る1年になったことじゃろう――と思いきや、まったくそんなことはなかったぜ!

 お仕事&推し事で忙しく日々を過ごしていた結果、読書の優先順位が下がってしまった模様。あとはアレっすね……『Apex Legends』の沼にハマってゲームばかり遊んでいたことも、読書時間が減る一因になってた気もしますわね……圧倒的怠惰……!

 そんなわけで、毎年恒例の「おすすめ本まとめ」も今回は控えめに。

 2020年に読んだ数少ない本の中から、自分が周囲に進めたい、このブログの読者さんにおすすめできそうな本を9冊、改めてまとめました。年末年始に読む本を探している方の参考になれば幸いです。

 

『独学大全』読書猿

 2020年の本といえば、やっぱりこれ!

 『アイデア大全』『問題解決大全』に続く読書猿さんの新刊であり、3年以上かけて書かれた渾身の1冊。すべての「学ぶ」人のための指針となる本であり、自分を変えるきっかけとなる本であり、学び続けるかぎりずっと役立てられる本。

 僕自身、読み進めている最中から本書に書かれている技法を実践するようになり、すでに成果を上げています。以前から続けていた「ポモドーロ・テクニック」をさらに活用しつつ、「行動記録表」を毎日つけるようになり、「習慣レバレッジ」によって自分の日常を変える。動機付けを高め、時間を確保し、継続するための足場を作ったうえで、日々の仕事や学習が捗るようになった。

 具体的に「この分野について独学しよう!」というところまではいけていないものの、生活習慣の面ではっきりと好影響が表れているのは間違いないわけで。ダメダメだった2020年を改善し、モチベーションを高めつつ知的好奇心も刺激してくれた本として、「今年の1冊」に選ぶなら迷わず本書を挙げます。

 そもそも「800ページというとんでもボリュームにもかかわらず、飽きることなく最後までスムーズに読めた」という時点で、これ以上ない良書と言えそう。机の片隅に置いて、折に触れては読み返したい。来年もお世話になります。

『その日、朱音は空を飛んだ』武田綾乃

 今年読んだ小説・ライトノベルの中でも、特に印象に残っているのがこちら。『響け!ユーフォニアム』でおなじみの武田綾乃先生が綴る青春ミステリ『その日、朱音は空を飛んだ』です。

 帯に「ミステリ」と書かれているとおり、本書ではひとつの謎が提示され、その真実を解き明かすべく物語が展開する。それは、タイトルにもある “朱音” という少女にまつわる謎。「川崎朱音は、なぜ学校の屋上から飛び降りたのか」という問いを起点に複数の人物の視点で話が進む、いわゆる群像劇スタイルの小説です。

 視点主となるのは、朱音の幼馴染みや恋人、友人といった身近な人物のみならず、クラスメイトの女子やクラスメイトですらない男子も含む、計7人のキャラクター。当然、 “川崎朱音” との関係性や彼女に抱く認識は一人ひとり異なるわけですが……その「違い」があまりにも生々しく鮮烈に描かれているから、読んでいてゾッとしました。

 「悲しみ」や「無関心」という一言では説明できるはずもない「死」に対する感情と、複数の人間が関わるがゆえに複雑に絡み合った多様な感情。二者間の友情や恋愛感情にとどまらず、スクールカーストに代表される小さなコミュニティの歪さによって生じる問題。揺れ動く思春期の感情の機微が「これでもか!」というほどに濃縮されているから、無駄に感情移入しながら読んでしまった格好です。

 さっくり言い換えるなら、これは僕が大好物なアレです。「お互いにめちゃデカ感情の矢印が行き来するキャラクターの相関関係が描けるタイプの学園青春もの」です。

 ミステリを謳っている以上、もちろん最後には「真実」が明らかになるし、しかもそれは “川崎朱音” 本人の視点からも描かれる――のだけれど。本作の何がそんなに衝撃的だったのかといえば、ラスト1ページで綴られ垣間見えた、とあるキャラクターの「真意」だった。この数行を初めて読んだときは、本気で身震いした。そこらへんのホラーよりもよっぽど怖い。

 突きつけられたのは、「世界は君の思いどおりにはならない」という、当たり前で、現実的で、どうしようもなく残酷な真実。著者の作品を知る人も知らない人も、ミステリを普段読む人も読まない人にもおすすめの、極上の青春群像劇です。

『書けるひとになる! 魂の文章術』ナタリー・ゴールドバーグ

 ライター/ブロガーとしてのバイブルにしたい本。

 1986年にアメリカで出版されて以来、現在に至るまで読まれ続けているロングセラー本。日本では2006年に出版されたものを加筆修正して刊行したのが、本書となります。

 インターネット普及以前の言説であり、「詩人」である作家さんによる「文章術」をまとめた本書は、一見すると僕らとは縁がないようにも感じられる。だって、僕らが書く「文章」といえば、基本的にはネットに投稿する短文ばかりですし。Twitterやブログとは明らかに文化も文脈も異なる「詩」の世界に生きる筆者の話が、はたしてどこまで参考になるのか――と。

 ところがどっこい、共感しまくりの参考になりまくりだった! 一例として、以下の引用を読んでみていただきたい。

 物書きは人生を二度経験する。もちろんふつうの生活もおくっている。みんなと同じようなペースで、道路を渡ったり、出勤の支度をしたり、スーパーで買い物したりする。しかし物書きには、ふだんの自分とは別に鍛えてきた分身がある。その分身は、あらゆることをもう一度経験しなおす。腰をおろして、人生をもう一度見なおし、繰り返す。それは人生の肌合いや細部にも目を向ける。

(ナタリー・ゴールドバーグ著『書けるひとになる!──魂の文章術』P.73より)

 これを読んで、「ブログ(Twitter)じゃん!」と感じた人も結構いるんじゃないかしら。

 気になる飲食店に飛びこんでみたり、普段はふれないジャンルの本を読んでみたり。そのうえで食レポや書評記事を書いたり、Twitterで話題にしてみたり。こういった一連の過程も等しく「書く」行為であり、ネットがあろうとなかろうと何も変わらないわけです。時代も媒体も超えて共通する普遍的な「書き方」が記されている本書は、詩人にも、作家にも、ライターにも、ブロガーにも、そしてツイッタラーにも、きっと刺さるはず。

 「書く」ことを習慣にしている自分にとっても、これは間違いなく、自信を持って大声で「読んで良かった!」と断言できる1冊。すでに何度も読み返しており、これまでに読んできた数々の文章読本のどれとも異なる、バイブルのような存在にすらなりつつあります。おすすめ。

『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』阿佐ヶ谷姉妹

 お笑いコンビ・阿佐ヶ谷姉妹の2人によるエッセイ集。

 ぶっちゃけお二人のことはほとんど存じ上げなかった(お昼の情報番組で何度か見かけたことがある程度だった)のですが、インタビュー記事を拝読して気になったので購入。現在進行系で少しずつ、楽しく読み進めています。

 同じ「お笑い芸人が綴るエッセイ」でも切り口はさまざまですが、本書はとにっっっかく、ゆるい! 日々の出来事やお二人のやり取りがあっさりした文体で描かれており、読んでいて「他人の日常を覗き込んでいる」感覚を強く感じられます。

 また、似通っているようでいて、対照的な価値観を持っているお二人それぞれの考え方も興味深い。それがオーバーすぎない程度におもしろおかしく書かれているので、肩の力が抜きながらも時折クスッと笑わされる、絶妙なバランスで読み進められました。

 あと、短編小説が想像以上におもしろかったです! 読み終えたあと、作中で登場したお店が実在していないか、思わず検索してしまったくらい。

『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』JAM

 Twitterで人気の“パフェねこ”の書籍版。

 SNS、人間関係、職場、自分の4つをテーマに、全64の考え方を示していく内容。「4コマ漫画+1ページ程度の文章」の形式で、個々の問題にツッコミを入れていく内容になっています。

 はっきりと「物申す」タイプの作品ではなく、「こうやって考えてみたらどう?」と語りかけるタイプの漫画。極端に説教臭さは感じられないので、「そういう考え方もあるのかー」とゆるーい姿勢で読み進められました。

 問題を解決してくれるとは限らない。でも、慢性的なモヤモヤを吹き飛ばしてくれる。そんな1冊です。

SNSや人間関係のモヤモヤを吹きとばす!『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』感想

『「分かりやすい表現」の技術』藤沢晃治

 ジャンルに関係なく、時代も問わず、あらゆる情報発信において当てはまり活用できる、「分かりやすい表現」のルールブック。

 そもそも「分かりやすい」とはどのような状態なのかの説明に始まり、街中に溢れる「分かりにくい表現」の実例を紹介。個々の問題と共通点を分析したうえで、具体的な改善策を示していく内容となっています。

 当初は「さすがにどんな分野にも当てはまるなんてことは……」と疑っていたものの、読み終えた今となっては、「普遍的な“ルール”として参考になるのでは?」と感じています。なるほどなー!

『論より詭弁~反論理的思考のすすめ』香西秀信

 世に数多ある「ロジカルシンキング」の本とは一線を画した、「詭弁」を肯定的に捉えた変化球の1冊。

 論理学と修辞学の視点から「議論」を批判し、一般的には「詭弁」と呼ばれ否定されがちな論法について分析と考察を加えていく内容となっています。

 なんたって、第1章のタイトルからして、「言葉で何かを表現することは詭弁である」と断言しきっているくらい。普通ならば「論理的」だと判断されそうな主張すらもその正当性を疑っており、まっこと興味深く読めました。インターネットは、詭弁の巣窟だぜ!

『読書会入門~人が本で交わる場所』山本多津也

 文字どおり「読書会」の開催方法と魅力、そしてその効用を教えてくれる本。ただしその内容は堅苦しいものではなく、読者を「楽しいイベント」としての読書会へいざなおうとするもの。

 読書を通して何かに活かそうとする「学びの場」であると同時に、本を読まない人でも思わず参加したくなるような、そして他人と話すのが苦手な人でも興味を引かれそうな、そんな「読書会」の姿が紐解かれる。

 複数人で行う「読書会」についてのみならず、「本を読む」という行為そのものを再考させられる、まっこと刺激的な1冊でした。

『「普通」の人のためのSNSの教科書』徳力基彦

 別にバズらなくたっていい。淡々と発信し続けるだけでも、出会いやきっかけにつながることがある。特別な才能やスキルを持っていない「普通」の人だって、SNSの恩恵にあずかれる――。

 そんなメッセージが、全編を通してひしひしと伝わってくる1冊。中でも象徴的なのが、自分からアピールするのではなく、相手を引き寄せて読んでもらおうとする「プルのコミュニケーション」。これは自身も日頃から実践している方法だったので、強く共感できました。

 ビジネスパーソン向けの本ではありますが、SNSに不慣れな人を導く「最初の1冊」としても推薦したいところ。自信を持って人に勧められる、紛れもない“教科書”です。

 

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