精神的な余裕がない──なんてことはないのだけれど、なんとなくモヤモヤを抱えている。そんな近頃。
普通に日常生活を送れているし、メンタルが病んでいるという実感もない。何かにイライラしているわけでもないし、激しい怒りを覚えたという事実もない。ただ、なんとなく……そう、本当になんとなーく、モヤモヤがたまっているような感覚がある。
喩えるなら、キャッシュデータがたまって動作が遅くなっているスマホやパソコンのように。普段使いで困ることはないけれど、ふとした瞬間に「なんかいつもよりも重くね?」と感じるような。慢性的なモヤモヤが続いている。
そんなモヤモヤを持て余していた、まさに今日のこと。いつものようにお昼時のタイムラインをぼーっと眺めていたところ、Kindleストアの日替わりセール情報が目に入った。どこかで見た表紙と絵柄の本は、少し前に目にして、そのままスルーしていた本だったのです。
それがこちら、『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』。
Twitterで見た覚えのある人も多いんじゃないかしら。
正直に言うと、「もしかしたら説教臭い内容で、逆にモヤモヤが増えるんじゃないか……」という懸念もあった。ただ、表紙にも描かれている「パフェとか食ってるよ」と受け流す考え方が、今の自分には必要なんじゃないかと思えたのも事実。「せっかく安いんだし」と理由を付けて、ポチってみた格好です。
実際に読んでみた感想としては、思いのほか好感触でびっくり。たまっていたモヤモヤを、いい感じに吹き飛ばしてくれました。助かる。
スポンサーリンク
「こういう考え方もあるよねー」とゆるく共感できるタイプの漫画
「Twitterで話題になった漫画の書籍化」と聞くと、若干の忌避感を覚える人もいるかもしれない。特に本作のような、「日常生活における『考え方』をキャラクターに代弁させる」タイプの作品は。なので、表紙の4コマを読んで「合わなそう」と感じた人には一応、スルーを推奨します。
僕自身もどちらかと言えば、説教臭い作品は苦手。別に嫌いというほどではないけれど、「ちょっとメッセージが前面に出すぎていません?」くらいは感じる。そういえばこの苦手意識って、どこからくるんだろう……? 作者自身が主人公として主張している場合は気にならないから、「代弁させている」のが問題なのかな……?
その点において本作は、あまり「説教臭さ」は感じなかった。はっきりと「物申す」タイプの作品ではなく、「こうやって考えてみたらどう?」と語りかけるタイプの漫画。それを読んだ読者は「たしかにそのとおりだよねー」と共感するも良し、「そういう考え方もあるのかー」と賛否は保留しつつ参考にするも良しで、ゆるーい姿勢で読み進められる。
明確な解決策を示してくれるわけではないし、あれこれと理論立てて説明しているわけでもないので、「それがどうした!」と感じる人もいるかもしれない。ゆえに「薄っぺらい」というレビューが散見されるのにも納得できるし、自己啓発本として読むならもっと役立つ本があるのも間違いない。
ただ、冒頭でも書いたような「なんとなくのモヤモヤ」を抱えている自分にとっては、このゆるさが「ちょうどいい」ものだったんですよね。必要に迫られて問題解決を求めているわけではなく、ただなんとなく、慢性的なモヤモヤをどうにかしたいだけ。そんな自分からすれば、「こういうのもあるよねー」とゆるっと示してくれる本書は、読んでいて適度な心地良さを感じられるものでした。
64の考え方をゆるーい漫画と文章で
何と言っても、一番最初に「SNSのモヤモヤ」から始まるのがいい。SNSでの返事に追われる人に向けて、「お返しって、本当に返したいときだけでいいんじゃない?」と投げかける。
「え? 当たり前では?」と感じる人も多そうですが、ネットに慣れていない人ほど義務感に囚われがちなポイントでもある。このたったひとつの提案に救われる人もいるでしょうし、ここで共感できた人は、きっとこの後の内容もおもしろく読めるんじゃないかしら。
SNSに始まり、「人間関係のモヤモヤ」「職場のモヤモヤ」「自分のモヤモヤ」の順番で、全4章で構成されている本書。「4コマ漫画+1ページ程度の文章」の形式で個々の問題にツッコミを入れていく内容になっています。全部で64の考え方。1時間程度で読み終えられるんじゃないかな。
個人的には、このあたりの考え方が好き。
- いいひと悪い人は「今の自分にとって」都合のいい人悪い人
- 人の評価ほどあいまいなものはない
- わかり合えない人のことはチベットスナギツネだと思ってみる
- 会社を出ればどんなに偉い人だって、ただの人
- 謙遜のしすぎは、「お前は見る目がない」と言ってるのと同じ
──というか、読んでいて心地良く感じられたのは、そもそも自分の考え方と共通している点が多かったからかもしれない。特に後半は、進路やキャリアや人生を「道」や「電車」に喩えた説明がいくつも登場。このブログの初期に書いてきた話とつながりそうな指摘が見受けられたので。
これから先、また暗闇に戻る日が来るかもしれませんし、目指していた光の場所が変わることもあるかもしれません。でも、それでいいのだと思います。こうやってぐるぐると迷いながら前に進んでいくのだと思います。
(Jam著『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』Kindle版 位置No.857より)
読み終えて、「たまには初心に返ろうかな」と考えさせられた1冊。サクッと読めて、ちょっとだけ気持ちが楽になる。モヤモヤを吹き飛ばしたいときに読み返したい本です。
実は、ちょうど先日、嫌な人を見かけてモヤモヤしていたのですが……本書を読んで、それもすっきり。「多分、今ごろはパフェとか食ってる」だろうそいつに対抗して、スタバでフラペチーノをキメてきた自分に隙はない。