2021年に読んだおすすめ本、5冊をぬるっとまとめたよ


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年末年始といえば、1年間のあれこれを振り返る時期。

例年であれば、「ひゃっほーぅ! 今年もブログで書いた感想記事を振り返りつつ、1年間に読んだ本をまとめるぞーぅ!」などと、自分もノリノリでテキストエディタに向かっているはずの時期……なのだけれど。いざ振り返ろうとして、ふと気づいた。

この1年間、ぜんぜん本を読めていないのでは……?

読書家というわけではないものの、ブログを書くようになってからは「本」の存在が身近になっていた近年。2013年には「こんな本を読んだよ!」という感想記事を書く習慣ができていたし、それからは毎年欠かさず「今年のおすすめ本」的なまとめ記事を書いていた。

ところがどっこい。
2021年は、驚くほどに本を読めていない。

ブログで書いた感想記事は、たったの2本。書籍自体は毎月のように買っていたし(紙・電子問わず)、読み進めている本も何冊かあったのだけれど……そういえば、感想をまとめられていなかった。時間がなかった――という以上に、「『本』以外のコンテンツに夢中になっていた」のが理由としては大きいかもしれない。

そんなわけで、昨年よりもさらに控えめではありますが。毎年恒例の「おすすめ本まとめ」として、2021年に読んだ本のなかから5冊をぬるっとまとめました。連休や通勤通学のお供に読む本を探している方の参考になれば幸いです。

 

『平成ネット史 永遠のベータ版』

集え、インターネット老人よ。

メディアでは「平成レトロ」がトレンドになるなど、早くもノスタルジーと共に語られるようになった「平成」の世。いろいろ思うところはあるものの……まあ実際問題、平成初期まで遡れば30年以上前の話になるわけで、昔っちゃ昔なんだろうとは思う。その時期に生まれた自分にその記憶はないのだけれど……ゲフンゲフン

そんな平成の時代は、見方によっては「インターネットの時代だった」と言っても過言ではない。

Windows95の発売を大きな節目として一般に普及していったインターネットが、いかにして僕らの生活に定着し、社会を変革し、今日に至るまでどのような発展を遂げてきたのか。そんな日本国内のネット史を総復習できるのが本書、『平成ネット史 永遠のベータ版』だ。

その内容は、2019年1月にNHKで放送された番組*1を再構成して本としてまとめたもの。2ちゃんねる、魔法のiらんど、電車男、前略プロフィール、mixi、ニコニコ動画、初音ミク――などなど、「そんなのあった〜!」と往年のネットカルチャーを懐かしみつつ、日本のインターネットの変遷をサクッと振り返ることができる。

ただ、ガッチガチの老人会からすれば、「あれやこれに言及していないのは何事か!」とツッコみたくなる部分もあるかもしれない。とはいえ、ご存知のとおり「インターネット」と一口に言ってもその世界は広大だ。たった2回の特番や1冊の書籍ですべてを網羅するのは、さすがに無理があるようにも感じる。

そう考えると、「よくぞ要点をおさえて1冊にまとめてくださった……!」とむしろ敬意がこみ上げてくるはず。いや、そんなことを僕が書いたところで、「平成生まれが何を偉そうに」なんてツッコまれそうではありますが。ともかく、老人会だけでなく当時を知らない世代にもおすすめできる1冊であることは間違いない。巻末の「年表」は必見。

『ライティングの哲学 書けない悩みのための執筆論』

文字どおり、四者四様の「哲学」を浴びることのできる本だった。

正直、人を選ぶ本ではあるかもしれない。そもそものきっかけが「アウトライナー座談会*2」から始まったというこの企画。前半部分は「アウトライナーをどのように使うか」が主なテーマとなっているため、「そんなことはいいからライティングの話をしてくれーッ!」と受け止る人がいてもおかしくはないからだ。

ところがぎっちょん。後半まで読み進めてみると、前半のアウトライナーの話がボディブローのように効いてくる。アウトライナーを使っていようがいまいが、興味があろうがなかろうが、後半の「その後、どうやって書いてる?」という話が、まさにタイトルにある「ライティングの哲学」として浮かび上がってくるのだ。

本書では、執筆を仕事にしている4人が感じている「書くこと」の苦しみと、その解決策が1冊を通して紐解かれていく。

前半では、2018年の座談会で集まった4人が自身の「書けない」問題を開示。後半部分では、2年後に4人が提出した「書き方の変化」についての原稿を掲載し、改めて座談会を開催。各々の原稿の内容をもとにして、「書くこと」について4人で掘り下げていく。

前半と後半で年単位での時間経過があるため、同じ4人の話なのに視点や考え方が変わっている部分もあっておもしろい。また、各々がまったく異なるアプローチで「書くこと」の苦しみと向き合い、新しい書き方を確立させていっているため、読者は気になった方法を選んで参考にできる。

新書サイズで読みやすいのに、そんじょそこらのハウツー本よりもよっぽど得るものが大きそうな、ライティングの哲学書。まさに今、「書くこと」に苦しんでいる人の助けとなってくれるはずだ。

『三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾』

以前から気になっていたものの、「これは集中して読まなきゃ……!」と考えて手を出せていなかった本。しかしきまやさんにアツくおすすめしていただき、とりあえずポチることに。

そして現在、正直に言うと……まだ、3章までしか読めていない。全体の4割程度しか読めていない本をおすすめするのもどうかとは思うのだけれど……。現段階ですでに並々ならぬ刺激を得ており、周囲にも勧めたいと感じたので、恐れながら紹介させていただきます。なので、完読したら来年もおすすめしてるかも。

前半部分を読んでいて特に印象的だったのが、次の指摘だ。

「抜けるように青い空」と書いた時点で、その人は、空を観察しなくなる。空なんか見ちゃいないんです。他人の目で空を見て、「こういうのを抜けるような青空と表現するんだろうな」と他人の頭で感じているだけなんです。

(近藤康太郎著『三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾』P.54より)

これは、日頃から文章を書いている人にとっては当たり前のことかもしれない。同様の指摘として、「モーパッサンの一語説」が思い浮かぶ人も多いはずだ*3。しかし忙しく過ごしていると、原稿の数をこなしていると、忘れがちなポイントでもあるように思う。2021年の中盤、「常套句に逃げない」ように改めて気を引き締められたのは、間違いなく本書のおかげだった。

ほかにも「ライターとは、生きる人のこと」「ライターになるには、ライターになればいい」などなど、前半だけでも共感できる指摘が盛りだくさん。バイブルにしている『書けるひとになる!』*4と通じる部分も多く、読んでいてモチベーションにつながると同時に、実践的な内容なので勉強にもなる。

「集中して読まなきゃ」などと言い訳をしている場合ではなく、最優先で読まなければいけない――と、この記事を書きながら改めてそう思わされたので、読みます。はい。

『メモ活』

メモ活

メモ活

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年始のタイミングで読むのにぴったりの1冊。ただ、いわゆる「メモ術」をテーマにした本に関しては、ちょっと食傷気味に感じている人も多いかもしれない。

ベストセラーとなった『メモの魔力』は今も書店の目立つところに陳列されているし、「東大式」などのノート術もよく見かける。さらに付け加えるなら、当ブログでも過去に『すごいメモ。』を取り上げている*5。「まーたこいつ、学ばずにメモ術の本を読んでるよ」と思われても仕方がないように思う。

しかし言うまでもなく、「メモ」の方法は十人十色だ。人によって合う合わないがあって当然だし、メモの活用場面もさまざま。日常生活で使うメモと仕事で使うメモは別物だし、仕事ひとつ取っても、「業務効率化のためのメモ」と「アイデア出しや整理のためのメモ」とでは、その目的も方法も異なる。

では、本書『メモ活』はどのような立ち位置にあるのか。

基本的には「仕事」を想定したメモ術の本となっているが、全体を通して読むと、そうとも言い切れない。というのも、「とにかくなんでもメモして人生を豊かにしようぜ!」が本書の主旨であり(※意訳)、シーンを選ばない「メモの効用&活用法」を紐解いた1冊になっているからだ。

曰く、「人間は忘れるようにできている」。

どんな優秀な人間でも記憶は薄れゆくのだから、忘れないようにするためには、外に記録しておくほかない。日常のうっかりを防ぎつつ、仕事の効率を向上させ、さらには良いアイデアにも結びつけられる。本書で取り上げるのは、そのような良いこと尽くめの「なんでもメモ」の基本的な効用と活用法だ。

実のところ、2021年に自分が担当したインタビューや取材の場面では、本書に書かれている手法がむちゃくちゃ役に立った*6。ほかにも趣味の企画出しや、日々の記録を目的とした「3行日記」など、仕事以外で実践している方法も多い。もちろん本書の方法をまるっと参考にする必要はないし、「え〜? 本当でござるか〜?」と首を傾げる意見もなかにはあったものの、自分にとってはまっこと有益な内容だった。「記録」の方法を見直すとっかかりとして、幅広くおすすめしたい。

『デミアン』

「そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな」

長年にわたり、日本全国の少年少女にトラウマ――かどうかはわからないけれど、ともかく強烈な印象――を残してきた、ひとつのフレーズ。「ヘルマン・ヘッセ」の名前を目の当たりにしてまず蘇ってきたのは、そんな中学国語の教科書でおなじみの『少年の日の思い出』の思い出だった*7

なぜ急にヘッセが出てきたのかといえば、きっかけになったのはひとつの依頼。バーチャルシンガー・ユプシロンさんのインタビューに臨むにあたって手に取ったのが、この本だった。というのも、ユプシロンさんの動画*8でこの『デミアン』の一節が引用されており、それが妙に印象に残っていたので。

もともとはインタビューのため、つまるところは「仕事の事前調査」の一貫として読んだ本だったのだけれど。

自分としては珍しく、あまり間を開けずに再読することになった。読み返さずにはいられない魅力があった。思春期の孤独感と(いろいろな意味での)痛々しさが、2つの世界の境界を行き来する1人の少年の物語を通して伝わってきた。ある種の悲壮感と興奮が入り乱れる一人称視点の物語に、なんだか妙に引き込まれてしまった。熱に浮かされたように読み進めつつ、しかし同時に冷めた/覚めた瞬間の「つまり……どういうことなんだってばよ!?」な読後感もあった。

一口には言い表わせられない多分な要素を含んだ、その時の気分や環境や年齢によっても異なる感想をいだきそうな物語。きっと、これから何度も読み返すことになる1冊だ。

 

過去の年間おすすめ本まとめ