初心者の地図となり得る入門書『VRChatガイドブック〜ゼロからはじめるメタバース』


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 最近流行りの、メタバース。
 猫も杓子も、メタバース。

 さすがに年も明けて、「これからはメタバースだオラァ!\( 'ω')/」という当初の盛り上がりっぷりは沈静化しつつある今日この頃。しかし一方では相次いで関連書籍が出版されるなど、今なお「メタバース」が注目を集めているのは間違いない。

 メディアでの取り上げられ方も、「なんか流行ってるからとりあえず特集組んどけ!」という当初の行きあたりばったり感は薄れ、「実際にVRでこういうことをしている人がいるらしいから、ちょっと取材してきて?」という方向へと移り変わりつつある印象もある。そして聞くところによれば、その背後からはザッカーバーグがメタ…メタ…と下半身のないアバターの姿で足音を立てながら迫りつつあるらしい。なにそれこわい。

VRChatは無料!

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 そんな「メタバース」を体現しているサービスのひとつとしてしばしば挙げられるのが、「VRChat」だ*1

 文字通り“VR”で“チャット”を楽しめる、2017年にリリースされたサービス。関連する話題やイベントがTwitterでもたびたびトレンド入りしているので、なんとなく聞き覚えのある人も多いんじゃないだろうか。「バーチャルマーケット*2」とか、「授乳カフェ*3」とか、「VRおじさんの初恋*4」とか。最近だとカメントツ先生や榎宮祐先生が相次いでVRの世界に飛び込み、話題になっていたのも記憶に新しい。

 このように何かと話題になるVRChatではあるが、同時に「始めるまでのハードルが高い」という話もよく耳にする。「数万円のVRヘッドセットを買わなければいけない」とか、「本格的にプレイするにはゲーミングPCが必須」とか、「ガチ勢はVRのために引っ越すらしい」とか。

 その一方で、タイムラインを眺めていると「VRChatは無料!」というツイートも同じくらい目に入る。事実、VRChatは多くのゲームと同じようにSteamで配信されており、誰でも無料でインストールできる。そもそも、VRChatに「VR」は必須ではない。スペックを満たしたPCさえあれば、一般的なPCゲーム同様にキーボード&マウス操作で遊ぶことができるのだ。

 ゆえに「VRChatは無料!」は紛れもない事実である。一応は。マジで。ただし「※」付きで複数の注釈が付きそうではあるけれど。

 PCなしでもOK、かつVRで遊ぶ場合でも、据え置きゲーム機と同等の出費で仮想世界へとレッツメタバッス!! できるため、VRChatを始めるハードルは意外と低い。誤解を恐れず言えば、ある種の「無料ゲーム」に手をつける感覚で、誰でも気軽にメタバッス!! できてしまう。

 ところがどっこい。

 「始める」まではいいのだが、「その後」のことはまた別の問題になってくる。

 VRChatをインストールし、ユーザー名を決めて、「夢と冒険と! バーチャルリアリティの世界へレッツゴー!」と勇んで飛び込んでみても、示されるチュートリアルは最低限の操作のみ。「操作を覚えたら、その後はどうすればいいの?」という、指針らしい指針がほぼないのだ。

 懇切丁寧に手ほどきしてくれるオーキド博士のような存在はいないし、3匹の中から仲間を選ぶこともできない。知らない世界にひとりぼっちで投げ出され、「あとは好きに過ごしな! グッドメタバッス!!」と言わんばかりである。スマホで道を指し示してくれるアルセウスのほうがまだ親切かもしれない。

「なんでもできるVRChat」には、初心者向けの地図がない

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【VRChat初心者日記#1】はろー、わーるど。 - ぐるりみち。

 では、地図のない世界で、どう立ち回ればいいのか。

 コミュニケーションに自信がある人なら、外国語の飛び交うワールドへと繰り出して「ヘイ!! メタバッス!!」と交流を試みることもできる。あるいは、事前に日本人が多くいるワールドを調べて、通りがかった人にあれこれ聞いてみてもいい。はたまた、初心者向けのツアーに参加して手ほどきを受けるのもひとつの手だ。

 いずれにせよ、共通して言えるのは「自ら主体的に動く必要がある」ということだ。

 「指針らしい指針がない」のも当然といえば当然で、VRChatの楽しみ方はユーザーの数だけあると言っても過言ではない。友達とおしゃべりを楽しむもよし。美しい景色のワールドを巡って写真撮影に興じるもよし。謎解きワールドを全力でプレイするもよし。海外の友達をつくるべくコミュニケーションに挑戦するもよし。趣味のコミュニティを探して仲間を見つけるもよし。

 「割となんでもできる」がゆえに、VRChatには決まった楽しみ方がない。ユーザー一人ひとりが、自ら積極的に「楽しみにいく」姿勢が必要になってくる。

 とはいえ、最初の一歩を踏み出すには勇気がいる。誰もが好奇心のアンテナをビンビンに張って、あの混沌とした仮想世界に繰り出せるとは限らない。そこは、ただでさえ複雑怪奇なバーチャルワールド。種々様々な楽しみ方の中から自分にぴったりのコンテンツを見つけるためには、やはり何かしらの指針が不可欠だ。

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バーチャルマーケット2開幕!VR初心者目線の感想と魅力 - ぐるりみち。

 現在は初心者向けのVRChat情報サイトも多くあるため、必要な情報を見つけるのは比較的簡単だ。基本的な操作方法や楽しみ方、チュートリアルワールドや初心者ツアーの存在など、先人たちがいい感じに情報を整理してまとめてくださっている。――ありがたい。助かる。マジ感謝。僕が始めた頃はWikiを参照するのが中心で、それ以外の情報サイトはまだまだ少なかった記憶があるから、今は始めるハードルも低くなっているんじゃないかしら。

 しかし一方で、誰もがそうやって「調べる」とは限らない。

 昨今のメタバースフィーバーに乗じて始めた人も多いと聞くし、「なんとなくTwitterで見かけて気になったから」という理由でインストールする人もいるはず。そういったきっかけで手を出した人が、「vrchat 始め方」とGoogleの検索窓に打ち込むかと言えば……どうだろう。ノリと勢いで始めるにあたって、誰もが事前に調べるとは限らないんじゃなかろうか。

 また、解説サイトが増えたとはいえ、検索してアクセスできる情報が本当に「初心者向け」かと言われると……実はこちらも、ちょっと首を傾げる部分がある。

 「vrchat 始め方」で検索してみると、たしかに多数の解説ページがヒットする。VRChatを始める際に引っかかりがちなポイントをスクリーンショットを交えながら丁寧に説明してくれており、「僕が始めるときに読みたかった……!」と思えるページばかり。アバターのアップロード方法の詳しい解説まであり、まっことありがたい。いいないいな〜!

 ただ、それらの多くは「始め方」の解説ページに過ぎない、と捉えることもできる。良くも悪くも「始めるためにはどうすればいいか」の解説に終始しており、先ほど軽くふれた、その後の「楽しみ方」については取り扱っていない場合も多いのだ。

 もちろん、始め方の解説を掲載しているそれらサイトの中には、「VRChatではこういうことができるよ!」と具体的な「遊び方」のページを設けているサイトもある。けれど、VRChatのことをほとんど何も知らない人が、たまたまアクセスしたページの関連コンテンツまでチェックするとは限らない。ただでさえ「始め方」の説明だけでも情報量が多いため、別のページもクリックして読み込もうと考える人はそう多くないように思う。

「知らないことを調べる」には、最低限の知識がいる

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 そもそもの問題として、VRChatに限らず「知らないことを調べる」のは意外と難しい。検索対象についての知識がなく、できることがわからない状態では、何を調べればいいのかもわからないからだ。

 たとえば、アバターについて。

 VRChatのアバターの仕組みや文化を少しでも知っている人なら、「アバター ワールド」「アバター 買い方」「アバター アップロード方法」「アバター 改変」といった検索ワードがパッと思い浮かぶ。というか基本中の基本すぎて、「何を今更?」と思われるかもしれない。

 ところが、知らない人だとそうはいかない。「アバター」という単語は知っていても、VRChatにおけるアバターの仕組みや文化は把握できていないからだ。――アバターはどうやって変更すればいいのか。サービス内で変えられるとしたら、どうやって変えればいいのか。やたらと美少女や愛らしいキャラクターを見かけるが、ああいった姿になるにはどうすればいいのか――などなど。

 アバターワールドの存在と、ペデスタルの仕組み。条件を満たせば自分でもアバターをアップロードできること。自ら3Dモデルを作成し、アバターを販売している人もいること。販売アバターを購入者がカスタマイズする文化があること。そのような仕組みを理解した段階で初めて、「自分でアップロードする方法は?」「どこで販売しているの?」「カスタマイズの方法は?」といった具体的な疑問が浮かび、それを検索ワードとして入力できるようになる。

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 自ら検索ワードを考えて必要な情報にアクセスするには、最低限このくらいの前提知識は必要になってくるんじゃないだろうか。アバターだけでなく、ワールドやコミュニティについても同じように。これらの前提知識やVRChatの具体的な楽しみ方をまとめてわかりやすく掲載しているページは、前述の検索結果を見るかぎりでは、まだまだ少ないように思う*5

 要するに、「VRChatは調べれば誰でも簡単に始められるくらいにはネット上の情報が充実している」ものの、その「具体的な『楽しみ方』がまとめられているページは意外と少ない(あるにはあるが、初心者目線ではアクセスしにくいように見える)ということだ。

 とはいえ、ぶっちゃけ仕方ない気もする。ユーザーごとに異なる「VRChatの楽しみ方」をひとつのページに集約するのがまず大変だし、個々の「楽しみ方」を詳しく説明しようとすれば結構なボリュームになる。「始め方」の説明だけでも結構読み込む必要があるのに、ほかにも長文をいくつも示されたら、情報量が多すぎてそうそうチェックしようとは思えないんじゃないかと。

 つまるところ、「VRChatはなんでもできるよ!」の「なんでも」が指し示す範疇が広すぎるがゆえの問題。説明しようにも、十人十色の「なんでも」はWebサイトではカバーしきれず、初心者向けにわかりやすく示すのも難しい。逆に初心者側は、「なんでも」の具体例を前提知識なしでは想像できず、その魅力を調べるための検索ワードも持ち合わせていない。

 ぱぱっと調べればマニュアルは見つかるものの、その「マニュアルを使ってできること」の説明がまだまだ不足している。VRChatには、長らくそんな問題があったように思う。

初心者向けコンテンツの決定版『VRChatガイドブック』

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 VRChat初心者に必要なのは、「ポケモン図鑑の完成を目指しつつ、殿堂入りを目指すのじゃ!」と言って道を指し示してくれる、オーキド博士のような存在だ*6。「VRChatの魅力についてむちゃくちゃ詳しく書かれているが、初心者が読むには詳細すぎてハードルが高いページ」や、「幅広くVRChatの楽しみ方について言及しているものの、初心者が検索でたどり着くのは困難なサイト」ではなく、誰でも簡単にアクセスできて、ささっと読むことのできる入門的コンテンツ。

 友人とのお酒の席で「そういえばVRChatが気になってるんだけど……」とボールを投げられたときに、迷わず「VRChatについて知りたいならこれ!」と瞬時に打ち返して示せるもの。その決定版とも言えるガイドが、2022年2月、ついに登場した。

 タイトルもずばり、『VRChatガイドブック〜ゼロからはじめるメタバース』である。

 ここまでに書いてきた諸問題をすべてカバーするように、基礎知識や始め方だけでなく、「楽しみ方」までがっつりと紹介している本。必要とされていた「地図」の役割を果たしてくれる1冊であり、文字通り「ガイドブック」としても機能する、初心者向けコンテンツの決定版とも言える内容だった。

 以前までだったら、「始めたいならこのページWikiを……」「イベントやコミュニティに関心があるならそのページを……」「そこで過ごしている人の生の声を聞きたいならあんなマガジンそんなnoteを……」「楽しくわかりやすくカルチャーを知りたいなら彼のマンガを……」などと相手の興味ごとに別のボールを打ち返していたのだけれど、本書の登場によって、迷わず「はいどうぞォ!」と相手の眼前にこの本を叩きつけられるようになった。そう言っても過言ではない。

 「自分がVRChatを始めるときに、まさにこういうのが欲しかった!」と強く感じられるほどであり、今から始める人には全力でおすすめしたい。――というか、この本を読んで、もう1回「初心者」のていで始めちゃダメですか? “強くてニューゲーム”しちゃメ? ダメですか……そっかぁ……。

「始め方」と「楽しみ方」を網羅しまとめ上げた1冊

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 まず、以下の目次をざっと見ただけでも、この本がいかに「初心者向け」であるかがわかるんじゃないかと思う。

目次

Chapter1 VRChatの基本操作と基本概念
Chapter2 VRChatの楽しみ方
Chapter3 VRChatを楽しむキーパーソンたち
Chapter4 ヘビーユーザーの高度な楽しみ方

 操作方法や知識などの基本は前半でがっつり説明しつつ、後半部分では具体的な「楽しみ方」について言及。実際にVRChatで暮らしているユーザーの声を複数のジャンルやコミュニティから集めて、インタビュー形式で掲載している。そのうえで、SNSで話題になりがちなコアなカルチャーについても捕捉を加えているのもポイントだ。

 前半部分については、たしかに「ネットで検索するだけでも十分に調べられる内容」と捉えることもできるかもしれない。日頃からインターネットで調べ物をするのに慣れている人、検索ワードを自ら想像して使いこなせる人であれば、真新しい情報は少ないように映ることだろう*7

 とはいえ、ひとつの「読み物」として全体の体裁を整えつつ、ここまで網羅的に解説しているサイトは、現状ほぼ見当たらないんじゃなかろうか。どうしても多方面での解説が必要になるVRChatの情報をまとめて手に取って読めるのは、初心者からすればありがたい。「本」という媒体の強みを生かした、まさに「ガイドブック」となっている。

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 特に目を引くのが、後半部分の網羅性と、読み物としての充実っぷりだ。

 まず、Chapter2「VRChatの楽しみ方」では、本記事の前半部分でふれた、「楽しみ方が十人十色すぎて解説サイトではなかなか網羅できない」問題を解決している。

 ゲームではなく「会話ツール」としてのVRChatの楽しみ方を示しつつ、そのために「一緒に遊ぶ人を見つける」ことを推奨。フレンドやイベントの概念を説明したうえで、実際にどういった「会話」が繰り広げられているのかも紹介。イベントについても、ラジオ体操、年末カウントダウン、初心者案内といった誰でも参加しやすいタイプのものを例に挙げてから、音楽系のパフォーマンス、アバター集会、マーダーミステリー、撮影会、そして多種多彩なゲームワールドの魅力を、それぞれ写真を交えながら取り上げていく構成になっている。

 他方で、飲み会やVR睡眠、ホストクラブや授乳カフェといった独自のカルチャーについては、Chapter4で別途「ヘビーユーザーの高度な楽しみ方」として言及している点も外せない。

 これらも間違いなくVRChatの魅力であり楽しみ方ではあるものの、詳しく説明しようとすると尺を取らざるを得ないし、知らない人からすれば「濃すぎる」ように感じてしまうかもしれない。そこで、Chapter2とは別に、VRChatのマナーの説明とあわせて解説するような形で、Chapter4にまとめている。あえて分割することで、初心者目線の「ガイドブック」としては親切な構成になっているように感じた。

 また、個人的に好きなのが、Chapter3「VRChatを楽しむキーパーソンたち」

 「おすすめワールド」の項目は自分も知らないワールドが結構あって参考になったし、何よりもキーパーソンたちへのインタビューがめちゃくちゃおもしろい。VR BARを営むお三方へのインタビューに始まり、モーションアクターとしては『カソウ』舞踏団の面々が登場。DJやミュージシャンといった音楽シーンで活躍する人たちはもちろん、VRならではのパーティクルライバーにもお話を聞いていて、とても読みごたえのある内容だった。

 ほかにも章と章のあいだにコラムが挿入されていたり、ワンポイント解説として所々に「HINT!!」の項目が設けられていたりと、全体を通して楽しめる読み物となっている。VRChatのカルチャーに興味がある人なら、きっと買って損はない内容のはず。ぜひ手に取って読んでみてほしい。

すでにVRChatを楽しんでいる人たちにもおすすめ

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VRでボカロ即売会!『Virtual to Vocaloid vol.1』に行ってきた - ぐるりみち。

 「ガイドブック」の体裁で書かれている本書は、1冊を通して「かたすぎず、やわらかすぎない文章」で書かれており、すんなり読み進めることができる。画面キャプチャも多めに挿入されているため、長文に慣れていない人でもサクサク読み進められるはずだ。

 それなりにカジュアルな文体ではありつつも、書き手である2人の「個性」は押し出さず、中立的な目線で書かれている。本文からはそんな印象を受けた。しかし最後の2ページ、あとがきに書かれた短い文章からは、2人のVRChatへの愛と本書に込めた思いが感じられて、最後は心地よい読後感を得られた。

大仰なことを考える必要はありません。初心者の方をご案内してVRChatを好きになってもらうだけでも、ただフレンドの悩みを聞いてあげるだけでも、大きな大きなこの社会への貢献なのですから。

(『VRChatガイドブック〜ゼロからはじめるメタバース』P.126より)

私達はもうひとりのあなたに出会うための案内をさせていただいただけ。ここから先はあなたが主役です。あなたのアイデア次第で、どんなことだってチャレンジできます。だって、正解不正解がないのですから。

(『VRChatガイドブック〜ゼロからはじめるメタバース』P.127より)

 これからVRChatに飛び込む初心者だけでなく、すでにVRChatを遊んでいる人が読んでも、本書からは何かしら得られるものがあるんじゃないだろうか。そう思わされるほどに充実した、そして力を入れて書かれた1冊であるように感じた。

 実際、VRChatterの中には、イベントやコミュニティに参加する勇気が出せず、1人で遊んでいる人も少なからずいるはずだ。もちろん、それも「楽しみ方」のひとつだし、僕自身も基本は1人でワールドをぶらぶら散策するだけで満足している――のだけれど。それでもたまに、当たり前のようにフレンドにjoinして遊んでいる人たちを見て、「楽しそうでいいなぁ」と思うことはある。

 先ほどは冗談っぽく「もう1回『初心者』のていで始めちゃダメですか?」などと書いたけれど、「初心にかえる」のは悪くないようにも思う。VRChatデビューに失敗し、一度はぐちゃぐちゃにして捨ててしまった地図を広げて、改めていろいろな体験をしようと奮起する。この本は、その一歩を踏み出すきっかけにもなるかもしれない。

 初心者にも、VRChatterにも、あの広大な世界を覗いてみたい人にも。幅広い層の人におすすめできるガイドブックです。

 

余談:全体として書き手の個性が抑えられている一方、「VR飲み会」の項目を読んでいたら、わずか数行のあいだで急にめちゃくちゃ情報量が増えた場所があって笑った(すみません)。

中には絶対こぼさないために哺乳瓶を使っている方もいるそうです。そして、転ばないように必ず座って飲むことをおすすめします。立って飲んだ結果、転んで骨を折る大けがをした私からの教訓です。

(『VRChatガイドブック〜ゼロからはじめるメタバース』P.117より)

関連記事

*1:「メタバース」の定義もいろいろなので一概にどれとは言えませんが、なんだかんだでまず名前が挙がる頻出のサービスとして。

*2:公式サイト:バーチャルマーケットについて | バーチャルマーケット2021

*3:参考記事:無条件の愛で包まれる、VRChat 授乳cafeキタリナ | バーチャルライフマガジン

*4:noteで公開され、後に書籍化もされた暴力とも子さんのマンガ。イコールVRChatというわけではありませんが、作中で描かれる仮想現実に一番近いサービスとして。

*5:前提知識を提供してくれる場所として、大きな役割を果たしているのがチュートリアルワールド。ただ、そこにたどり着くには実際にVRChatの「中」に入る必要があり、チュートリアルワールド自体もどちらかと言えば「操作方法」に特化した説明が多いため、「楽しみ方の指針」はまた別のアプローチで示す必要があるように思います。

*6:オーキド博士は当初、「ポケモン図鑑」についてしか言及していなかった気もするけれど。

*7:自分で調べられるような人は、そもそも本書の想定読者ではないのかなと。