2019年上半期に読んだおすすめ本10冊をまとめて紹介するよ


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 「積ん読が増えるばかりの半年間だった……!」と頭を抱えるくらいには、本をあまり読むことができなかった2019年上半期。

 月に何冊かずつは読めていたはずだけれど、複数のボリューミーな本に同時に手を付けてしまったり、感想をまとめる時間がなかったりで、あまりブログではふれられなかった格好。あとはアレっすね……お仕事ならぬ “推し事” のほうが忙しかった影響も間違いなくありますね……。その件は別途まとめるとして。

 そんななかから個人的におすすめしたい本を10冊、本記事ではご紹介

 こうして並べてみると、我ながら驚くほどに関連性のないラインナップ。前向きに捉えるなら「興味関心のアンテナが多方面に向いている」と言えそうだけれど、どちらかと言えば「見境なしに手に取って読んでいる」と言ったほうが正しい気もする……。下半期は、読書にもそれとなく方針を立ててみようかしら。

 何はともあれ、そんな適当っぷりが、どこかの誰かの参考になりましたら幸いです。

『ナナメの夕暮れ』若林正恭

 オードリー若林さんのエッセイ集。正直に言うと、芸人に詳しくない自分は筆者さんのこともほとんど知らずに読み始めたのですが──むっっっちゃくちゃ共感できておもしろく読めました。

 純粋に驚いたのが、「日常で感じる違和感や漠然とした『生きづらさ』を、ここまで見事に言語化できる人がいるのか!」ということ。必ずしも答えがある話ばかりではないものの、自身が普段から抱えているモヤモヤに対するちょっとした気づきを与えてくれる。読んでいて胸のすくような感覚がありました。

 もともと電車移動中に少しずつ読み進めていたのですが、最後のほうは「途中で栞を挟むのがもったいねえ!」と感じるほどに夢中に。まっすぐ家に帰らず、夜の最寄り駅のホームで読みふけってしまいました。2019年に入ってから読んだ本としては、特に記憶に残っている1冊です。

 〝好きなことがある〟ということは、それだけで朝起きる理由になる。

 〝好き〟という感情は〝肯定〟だ。

  つまり、好きなことがあるということは〝世界を肯定している〟ことになる。

  そして、それは〝世界が好き〟ということにもなるという三段論法が成立する。

(若林正恭『ナナメの夕暮れ』Kindle版 位置No.1403より)

『裏世界ピクニック』宮澤伊織

 「エモい風景は、それだけで百合」「百合が俺を人間にしてくれた」*1「観測できない百合を書きたい」*2などのパワーワードをインタビュー記事で繰り出しまくっていた、宮澤伊織@walkeriさん。「ここまで圧のある言葉を聞かされたら、そりゃあ著作を読まないわけにはいかないでしょう!」ということで、読みました。

 ──百合、でした。

 圧倒的な百合。いや、そんな濃密に百合百合しているわけではなく、作中のエッセンスのひとつに過ぎないものの、すばらしく百合。明らかに自分好みの、関係性にフォーカスした百合。あっ、でも、あのその、べっ、別に僕は百合作品はそんな読んでませんし? 詳しくはわかりませんけど? でも好きです!!

 百合要素の解説は専門家さんにお願いするとして、おそらくは「初心者向けSF小説」としてもおすすめできそうなシリーズ。「街中に異世界への入り口があり、その先で次々に怪異と出逢う」という物語展開は珍しくないものの、その舞台設定が緻密かつ独特で、またキャラクターも魅力的な作品となっています。

 というのも、本作における〈裏世界〉で出逢う怪異たちは、インターネットではおなじみのものばかり。「くねくね」「八尺様」「きさらぎ駅」といったネットロアを下地に、本作独自の解釈も加えつつ語られる怪異。どれもこれも興味深く、恐ろしく、元ネタ以上に実在性を伴っているように感じられました。

 まだ1巻しか読めていないものの、これだけ楽しめて、しかも百合とくりゃあ、続刊も読むしかあるまいて。さらに、コミカライズを担当しているのが自分の大好きな水野英多先生と聞いたら、そりゃあポチらざるをえないってもんでしょう。『スパイラル』はいいぞ(ボソッ

「知ってる? 共犯者って、この世で最も親密な関係なんだって」

(宮澤伊織『裏世界ピクニック』Kindle版 位置No.435より)

『ファクトフルネス』ハンス・ロスリングほか

 ビル・ゲイツ曰く「世界を正しく見るために欠かせない1冊」。

 ──いや、さすがに言いすぎでしょう……と思いきや、冒頭の13問のクイズに答える頃には、そんな印象は吹き飛んでいました。そこで明らかになるのは、「世界は良くなっている」という紛れもない事実。本書では、その事実を歪めてしまう人間の「本能」について紐解いていきます。

 「ファクトフルネス」が示すのは、データの大切さは言うまでもなく、視野狭窄を回避する複眼的なモノの見方や、思い込みを排除するための考え方など。約20年間で大きく様変わりした世界の姿を再確認しながら、今後は誤った真実に踊らされないようにするための「世界の見方」を知ることのできる本です。

 健康な食生活や定期的な運動を生活に取り入れるように、この本で紹介する「ファクトフルネス」という習慣を毎日の生活に取り入れてほしい。訓練を積めば、ドラマチックすぎる世界の見方をしなくなり、事実に基づく世界の見方ができるようになるはずだ。たくさん勉強しなくても、世界を正しく見られるようになる。判断力が上がり、何を恐れ、何に希望を持てばいいのかを見極められるようになる。取り越し苦労もしなくてすむ。

(ハンス・ロスリングほか著『ファクトフルネス』P.24より)

『インターネット的』糸井重里

 出版から15年以上が経った最近になって、「今の時代が予見されている」と再注目されていた糸井重里さんの著作。

 一般にはまだインターネットが真新しく感じられていた2001年の出版ながら、今もまったく色あせない「インターネット」の姿を紐解いていく内容となっています。

 仕組みや技術についての専門的な話はなく、インターネットがヒト・モノ・コト働きかける影響について説明。今なお「インターネット」についてよくわかっていない人にとっては易しく感じられるでしょうし、逆に詳しい人が読めば「当時からこういう見方があったのか……!」と驚かされるはずです。

いま大切なのは、なにか伝えたいことがあったときに、それが、ひとりひとりのこころにどれだけの面積を 占められるかということ。賛同する人を一万人集めて一万票にするんじゃなくて、一億人のこころに1センチ四方だけ、場所をもらう。そのかけ算のほうが求められているんじゃないかな。

(糸井重里著『インターネット的』Kindle版 位置No.2713より)

『シャーデンフロイデ』中野信子

 「誰かが失敗した時に、思わず湧き起こってしまう喜びの感情」を指す言葉「シャーデンフロイデ」について紐解いた本。

 いわゆる「メシウマ」な感情を抱いてしまうのはなぜか。その理由を、過去の心理学の実験結果を参照しつつ説明していく内容です。

 本文で登場するのは、「出る杭は打たれる」問題や、自分が損をしてでも他者に罰を与えようとする「利他的懲罰」、時として攻撃的な「正義」を行使させる社会通念としての「倫理」の話など。自分が属する「集団」の中で理不尽や不平等や非合理を感じてモヤモヤしたことがある人ほど、興味深く読めるはずです。

集団において「不謹慎なヒト」を攻撃するのは、その必要が高いためです。「不謹慎な誰か」を排除しなければ、集団全体が「不謹慎」つまり「ルールを逸脱した状態」に変容し、ひいては集団そのものが崩壊してしまう恐れが出てくる。

(中略)

結論を言えば、誰かを叩く行為というのは、本質的にはその集団を守ろうとする行動なのです。向社会性が高まった末の帰結と言えるかもしれません。

(中野信子著『シャーデンフロイデ』Kindle版 位置No.653より)

『人生の勝算』前田裕二

 「SHOWROOM」というサービスを作った人が何を考えているのかに興味を持ち、なんとなく手に取った本。

 結論から言えば、予想外に刺激的でおもしろく読むことができました。筆者さんの哲学は言うまでもなく、現代ならではのエンタメ&コミュニティ論も興味深い。実際に話を聴いてみたいと思えるほどには、得るものが多かったです。

 そのうえで本書は、就活生もしくは20代前半の社会人におすすめしたい。周囲の大きな流れに翻弄され、自分を見失いそうになったときに、自身の「指針」を考え直すきっかけをくれる1冊です。

コミュニティが深まる要素として、前述の ① 余白があること、 ② クローズドの空間で常連客ができること、以外に、 ③ 仮想敵を作ること、 ④ 秘密やコンテクスト、共通言語を共有すること、 ⑤ 共通目的やベクトルを持つこと、の三つがあります。

(前田裕二著『人生の勝算』Kindle版 位置No.357より)

『複業の教科書』西村創一朗

 一時的な副収入を目的とした「副業」ではなく、本業とは別の活動によって人生の可能性を広げようという「複業」の視点。近年よくニュースでも聞かれるようになった、パラレルキャリア的な考え方を解説したのが本書です。

 筆者曰く、「本業だけではできない “やりたいこと” へのチャレンジ」こそが、複業の特徴であり魅力なのだそう。「やればやるほど、本業にプラスの影響を与える」というシナジー効果が生まれる点も複業の強みであり、具体的な事例にも触れつつ説明しています。

 世代を問わずおすすめできる、これからの「働き方」の教科書です。

 今の仕事を捨てることなく、しかし、それだけにしがみつくことなく、新たにスキルアップや出会いの経験を増やしていくキャリアルート。

 「やりたいこと探し」や「適正チェック」にぴったりの機会にもなる、ほぼノーリスクの方法が「複業」なのです。

(西村創一朗著『複業の教科書』P.43より)

『それでいい。』細川貂々・水島広子

 ほかのどんな本よりも読みやすい、対人関係の入門書。

 「ネガティブ思考クイーン」を自称するマンガ家さんが精神科医を訪ね、「コミュニケーション」について掘り下げて考えいくコミックエッセイです。

 一口にまとめるなら、対人関係療法を参照しつつ、自己肯定感を育むことを目指していく内容。読みやすく理解しやすいマンガ調の構成で、ついついネガティブになってしまう自身を客観的に見つめ直し、他者とのコミュニケーションを円滑で楽しいものにするための考え方を提示してくれます。

 キーワードは、タイトルにもある「それでいい」。この本を読み終える頃には、あなたもきっと「それでいい。」と思えるようになっているはず。自分にも他人にもちょっとだけ優しくなれる、素敵なエッセイです。

自分についても 他人についても
カンペキじゃないことを
もっと

積極的に許していかないと
すごく生きづらくなる

(細川貂々・水島広子著『それでいい。』P.155より)

『ボカロPで生きていく』たま、40mP

 「トリノコシティ」や「からくりピエロ」でおなじみのボーカロイドP・40mPさんの軌跡を描いたコミックエッセイ。

 初音ミクとの出会いに始まり、動画制作・初投稿・楽曲作り・コラボ・オフ会・CD制作・メジャーデビューといった主だった活動を、時系列に振り返っていく内容となっています。数々の作品が生まれた経緯についても描かれており、彼の楽曲が好きな人は間違いなく楽しめるはず。

 また、たまさんの描く40mPとその仲間たちはみんなかわいらしく、ほんわかとした気持ちで読むことができます*3。合間合間にはボカロやDTMや創作活動にまつわるコラムも掲載されており、読み応えもあり。1人の「P」の視点からボカロ文化を振り返りつつ、そこに携わる人々の温かさを感じられる1冊です。

ネット上から聞こえてくる歌声の裏側にある、クリエイターたちの人間模様に少しだけ思いを馳せながらボカロ曲を楽しんでみていただけると幸いです。

(たま、40mP著『ボカロPで生きていく──40mPのボーカロイド活動日誌』P.156より)

『天才王子の赤字国家再生術 ~そうだ、売国しよう~』鳥羽徹

 本山らの@motoyama_ranoさんのイベントでGA文庫さんが猛プッシュしていたのを聞いて、その場のノリでポチッと。2巻まで読みました。

 なんとなーく初見では忌避感を抱きそうなタイトル──なんだけど、読んでみたら思いのほかおもしろかった。いわゆる「俺TUEEE」系の作品であり、主人公は容姿端麗で文武両道を極めた小国の王子様。

 ところがどっこい。この王子、能力があるがゆえに「国に将来がない」ことを自覚しており、さっさと大国の属国になって隠居したいと目論むくらいにやる気がない。とはいえ国を愛しているのもまた事実で、あーだこーだ言いつつも国民を最優先に考える名君ではあるのだけれど。

 1巻は戦記物としての体裁を取りつつも、あまり緊張感を感じられないのが逆におもしろかった。とにかく王子の能力が秀でており、ほとんどすべてが彼の手のひらの上。爽快感はあるものの緊張感がないので、全体的にゆるーっと気楽に読むことができました。

 ただ、それ以外の場面では王子にとって想定外のことばかりで、そのアンバランスさがおもしろい。周囲からの評価があまりにも高すぎるために、彼が意図したのとは違った解釈をされ、他国が動くことも。楽をするための選択が、周りの人間の勘違いによって裏目に出ることも多く、そのコミカルな描写に笑わされました。

「たとえ外道詭道と言われることでも、王族が為せばすなわちそれが王道だとも」

(鳥羽徹著『天才王子の赤字国家再生術2 ~そうだ、売国しよう~』Kindle版 位置No.3316より)

 

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