赤いほっぺに、黄色のシャツ。
ギザギザ模様がキュートなキミ。
その姿を初めて映画館で見たのは、
21年前の夏のある日。
さすがに当時の記憶はおぼろげだけれど……ガキンチョだった僕にとって、それは夏のかけがえのない体験となったんじゃないかと思う。
──だって、ただでさえ大好きで、毎週のアニメを楽しみにしていたポケモンを、映画館の大きな画面で見ることができるんだから!
母親にねだって、地元の小さな映画館の長蛇の列に並び、ミュウツーの圧倒的な強さに軽く恐怖を覚えつつも、夢中になってスクリーンを見上げていた──そんな記憶が、うっすらとある。
あれから21年。いつの間にやら大人になり、あんなにも大好きだったポケモンとはすっかり無縁の生活を送っている──かと思いきや、相も変わらずゲームを楽しんでいる現在。しばらく離れていた劇場版ですら、最近は映画館へ足を運んで見に行っている、三十路間近のオタクが、そこにはいた。
『キミにきめた!』で14年ぶりにポケモン映画を見て号泣した、2年前の夏。そのまま流されるように翌年の『みんなの物語』を見たことで、「やっぱり僕はポケモンが好きなんだなぁ」と実感。そのスタッフロール後に次回作の予告を目の当たりにした時点で、絶対に来年も見に行こうと心に決めておりました。
そして訪れた、2019年夏。
劇場版ポケットモンスター第22作目として本日封切りとなった、『ミュウツーの逆襲EVOLUTION』を見てきました。まあ「泣くだろうなー」とは思っていたけれど……いやー案の定っすね。涙腺弱くなりすぎっすね、僕。泣くどころか、嗚咽をこらえるのに必死でした、はい。……歳かな?
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原点に忠実なフル3DCGによるリメイク
『ミュウツーの逆襲EVOLUTION』は、1998年に公開されたポケモン映画の第1作目『ミュウツーの逆襲』のリメイク版。当時のアニメーションを現代風にリファインするのではなく、全編を3DのCGアニメーションによって描いたものとなっています。
3DCGで描かれるポケモンと言えば、少し前にハリウッド実写版『名探偵ピカチュウ』が話題になりましたよね。全体的にモフみのあるデザインに、リアルな “生き物” として描かれるポケモンたち。当初は不安の声も多かったものの、公開後は好意的に受け入れられているように見えます。しわしわピカチュウかわいい。
実写ということもあって「リアルの生物」に寄せていた『名探偵ピカチュウ』に対して、『ミュウツーの逆襲EVOLUTION』の3DCGは「アニメのキャラクター」寄り。もともとのゲームやアニメに忠実なデザインとなっているので、ほとんど違和感なく見れるのではないかしら。
リザードンは怪獣じみていないし、ピカチュウもそこまでモフモフではなく、程よい毛並みがとってもキュート。フシギダネはアニメのままかわいいし、ギャロップのたてがみは良い感じに燃えていてかっこいいし、トゲピーはチョッギプリィィィィィィィィイ!! してる。
あと、3Dで描かれるポケモンたちは全体的に、動きがめちゃくちゃかわいい。しっぽを振りながらトゲピーと戯れるピカチュウとか、無邪気に人をからかうミュウとか、舌でペロっと舐めるリザードンとか。小さな手足をいっぱいに広げながらサトシの胸に飛びこむゼニガメがかわいすぎて僕は死んだ。ゼーニゼニィ……。
少年時代に興奮した物語に、大人の目線で号泣する
気になるストーリーは、ほとんど『ミュウツーの逆襲』そのまま。何十回と映画を見ているポケモンファンもそう話していたので、おそらくは間違いないはず。金銀以降のポケモンについての言及があったり、リーフストームが使われていたりといった、小さな変更はあれど。
オープニングのバトル相手はちゃんとレイモンドだったし、繰り出してくるポケモンを見て「そういえばそうだったー!」と懐かしい気持ちになったし、ボイジャーさんはラスボスだった。ってかもう、オープニングが流れ出した時点でテンションMAXだったよね……!
それにしても、物心がついて間もない子供の頃に見た作品がリメイクされ、それを大人になって改めて見るって、不思議な気持ち。当時はよくわからないまま、「かっけー!」「すげー!」「サトシがんばえー!」なんて無邪気に見ていたんじゃないかと思うけれど……今はまた、違う見方ができるというか。
ミュウツー誕生の経緯や彼の行動理念は言うまでもないものの、この作品──思っていた以上にメッセージ性が強いのでは……? 冷静になって見ると物語展開がちょっと強引なようにも感じるけれど、その一方でテーマは明快。オリジナルvsコピーの争いはやっぱり悲痛で、子供の頃以上に辛い気持ちで見ていた気がする。
実際、ラストは号泣していたので、感情の振れ幅は21年前よりも大きかったかもしれない。いや、展開は知っていてもそりゃまあ泣くだろうとは思っていたんだけど、ピカチュウの悲痛さが極まっていたというか、大谷育江さんの演技が半端なかったというか……そもそもあのシーン、あんなに長かったっけ……?
駆け寄ったピカチュウの「ピカピ……?」の声を聞くやいなや涙腺が緩み、畳みかけられる「ピカピ……」で早くも耐えきれず決壊し、消え入るような「ぴかぴ……」以降は嗚咽を抑えるのに全身全霊をかけることになり、最終的には「ピカピーーーーーーーー!!!!」って号泣してた。僕が。脳内で。
21年前には、「サトシ、しんじゃったの……?」なんて首を傾げながら、怖々とスクリーンに釘付けになっていただろう僕。それが21年という時を経た結果、ピカチュウの声を聴いて、
「ピカピーーーーーーーーー!!!!(脳内絶叫&号泣)」
と心底から打ち拉がれ、咽び泣く大人になっていました。
むしろ、子供の頃より感情豊かになっている説?
時の流れはふしぎだね。
歩きつづけて、ここまできた
Twitterでざっと検索してみたかぎりだと、ちらほらと賛否両論の声も聞かれる本作。あまりにも忠実過ぎるリメイクだからか、すでに『ミュウツーの逆襲』を何度も見ている人にとっては、少し物足りなく感じられるのかもしれません。
さらには、見る人の世代や、ポケモンとの関わりによっても感想が異なってきそうな本作。──とは言え、リメイクされても名作が名作であることに変わりはなく、幅広い世代に愛される映画であることに変わりはないのではないかしら。
というか正直なところ、自分の場合は思い出補正が強すぎて、冷静に客観的に見れる気がしないんですよね……。だってポケモンだよ!? ミュウツーだよ!?
大好きなポケモンの劇場版第1作目にして、映画館で見た思い出の作品。『めざせポケモンマスター』が流れれば自然と気分は高揚し、ポケモンたちの活躍に一喜一憂し、スタッフロールで三度、涙腺が崩壊する。『風といっしょに』は色褪せない名曲だし、しょこたんの歌声も素敵だし、アレンジも最高なのじゃ……。映画鑑賞後にMVの存在を知ったのですが、自分の子供時代と重なりすぎていて、また泣いた。
数ある映画のひとつでありながら、自分にとってはかけがえのない作品のひとつ。原点に忠実だからこそわかる「映画として今も昔も変わらない魅力」を再確認しつつ、同時に、「変わってしまった自分」に思いを馳せずにはいられない──そんなリメイク版だったようにも感じます。
……なーんて、意図せずおセンチな気分になってしまったけれど。言うまでもない名作なので、改めて「おすすめだよ!」などと書く意味はないような気もしますが……それでもやっぱり、多くの人に勧めたい。特に初期のポケモンを知る人には、ぜひとも劇場で見ていただきたい作品です。
大好きだったポケモン。
久しぶりに再会したポケモン。
過去の記憶と現在に思いを馳せつつ。
風といっしょにまた、歩き出そう。
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