ポケモン映画『キミにきめた!』で号泣したアラサーの感想


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ポケモン映画公式サイト「劇場版ポケットモンスター キミにきめた!」

 

※直接的なネタバレは避けつつ書いた感想です。

 

「あっ」と思った次の瞬間には耐えきれず、鼻をすすっている自分がいた。

場所は、夏の連休の映画館。観客の半数以上が少年少女を占める館内で、ギリギリ平成生まれのアラサーが、映画の終盤で泣いていた。……だって、我慢できなかったんだもの。

いや、むしろ “すすり泣き” で済んだことを褒めてほしい。隣の席の少年がモゾモゾしていなければ、きっと嗚咽が漏れていた。我ながらがんばって耐えたほうだと思うのです。泣いてない。泣いてないよ。冷房で体が冷えて鼻水が垂れてきただけだよ。目からハイドロポンプなんて出さないよ。

赤いほっぺと黄色のシャツ、ギザギザ模様のキミを初めてスクリーンで観たのは、1998年のこと。そして、あれから20年。ひさしぶりに再会した電気ネズミは、変わらずスクリーンでピカピカまっさいチュウだった。

※2018年公開『みんなの物語』感想はこちら

 

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20年目の「夏のアニメ映画」を、14年ぶりに映画館で

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三連休の最終日。

元気いっぱい遊んで連休を堪能したであろう少年少女に対して、親御さんはお疲れであろう日。となれば、連休最後の1日くらいはゆっくりするか、出かけるにしても近場で体力を使わないスポット──そう、例えば映画館あたりに繰り出しているのではないかしら。

実際に映画館へ足を運んでみたところ、案の定だった。上映前の薄暗い館内を見渡せば、どこもかしこも家族連れ。そこには、アニメのシールがぺたぺたと貼られた3DSを開いて、劇場特典を受け取っている少年たちの姿があった。いやー、最高に「夏ゥ!」な空間ですね。

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一方では、よくよく見ると同世代らしき人の姿もちらほらと目に入ったので一安心。……あ、周囲をキョロキョロしつつ、おもむろに鞄から3DSを取り出した。……うん、わかるわ。せっかくの劇場特典だものね、受け取らないとね(同じく3DSをスチャッと構えつつ)

少年少女のあいだにそれとなーく紛れるようにして、ちょろっと散見される「大人」の姿。若干の居心地の悪さを感じているように見えつつも、上映前の興奮した会話も聴こえてくる。「○年ぶりに観に来た」「評判良いみたい」「割と期待してる」……などなど。

──というわけで、観てきました。アニメ『ポケットモンスター』の映画版、第20作目となる『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』。自分が最後に劇場で観たポケモン映画は2003年の『七夜の願い星 ジラーチ』なので、実に14年ぶりです。

ぶっちゃけ、半分くらいは興味本位。最初に公開されたPVと、「めざせポケモンマスター」のメロディにホイホイされて足を運んだ感じです。だけど、実際に劇場で観てみたら……とんでもねえ。

まさかまさかの、ポケモン映画でガチ泣きしてしまったのでした。

 

「サトシとピカチュウの絆」に注力した、最高のリメイク

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【公式】劇場版ポケットモンスター キミにきめた!予告2 - YouTube

テレビCMで目にした人も多いかと思いますが、映画20作目となる『キミにきめた!』は、初代アニメのカントー地方編が原案。サトシとピカチュウの出会いに始まり、ポケモンマスターを目指して旅立ち、ふたりが「本当のパートナー」になるまでを描いた物語となっている。

ほぼ無印アニメ第1話に沿った形で始まり、空を飛んでいたホウオウを見て「いつか一緒に、あいつに会いに行こう」と誓うふたり。無印版のリメイクっぽくありながら、アニメではまだ描かれていない “ホウオウ” との関係を描いたリファイン版。それが、今回の劇場版です。

最初のPVを観た時点で「これは観なきゃ!」と興奮したものの、続く第2弾PVでは「……んんん?」と興奮が疑問符に変わった格好。タケシとカスミの代わりに知らないキャラクターが一緒にいるし、ポッチャマやガオガエンといった最近のポケモンが普通に出ているし。

端的に言って、「コレジャナイ感」である。

……まあ、さすがに赤緑世代のみをターゲットに映画を作るわけにもいかないだろうし、そもそも「ファミリー映画」でございます。そりゃあ当然、現役のポケモン大好き少年少女のための作品であって然るべき。

ただ、20周年という節目の記念作であり、かつ一緒に観に行く親世代への “サービス” 的な要素をはらんだ作品なのかな、と。そう思っておりました。

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【公式】劇場版ポケットモンスター キミにきめた!予告2 - YouTube

ところがどっこい。蓋を開けてみたら、紛れもなく「アニメ無印世代ホイホイ」な内容でした。

楽曲だけでなく、映像も含め随所でテレビアニメ版をオマージュしたオープニングがあり、見知ったサトシの手持ちポケモンとの出会いがあり、別れがあり。

さらには、バトルシーンでは歴代作品のアレンジ版を採用しつつも、それ以外では無印版の楽曲を採用しているのが最高にニクい。なんとなく記憶に残っている、でもすっかり忘れていたBGMが耳に入るたび、自宅のリビングでアニメを観ていたときの記憶がフラッシュバックする。

毎週の放送を本当に楽しみにしていたことや、ポケモンのために友達の家から走って帰った記憶や、妹と一緒に並んであーだこーだ話しながら観ていた情景が思い出された。アニメもゲームも、当時の自分にとっては、 “ポケモン” が生活に根ざしていたんだよなあ……と。無印版のポケモンアニメ……フラッシュバック……ポリゴn……うっ、急に頭が……。

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そんな、「忘れていたけれど思い出した」部分があり、同時に「知っているけれど知らない」展開もあり、14年ぶりに観た “ポケモン映画” は、心底から楽しいものだった。見た目はかわいいけれど不気味なマーシャドーの存在があり、思いのほか魅力的な2人のトレーナーの存在もあり。

──そうそう、何が印象的だったって、中盤のマーシャドーの能力による一連のシーンっすよ。アニメだろうがゲームだろうが、 “ポケモン” の世界観を知る人であれば一度は想像したことがあるだろうあの世界の「違和感」を、まさか形にして描写するとは思わなかった。

冷静に見ていると笑える、でも同時に不気味にも感じられるあのシーンで、そんななかでも目指す場所の変わらないサトシの真っ直ぐさと、ピカチュウとの絆が眩しい。そこで発せられたサトシの台詞がまた象徴的で、きっとあの一言で旅に出たくなる大人が続出したんじゃないかと思う。

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【公式】劇場版ポケットモンスター キミにきめた!特報3 - YouTube

そして、問題の終盤。

どこか過去の映画のオマージュ的でありながら、明確に異なるあのワンシーンは、いともたやすくアラサーの涙腺をぶっ壊した。

トレーナーとして成長しつつも良い意味で変わらないサトシの前向きさと、 “モンスターボールに入りたがらない” ピカチュウと、繰り返し再現されるふたりの構図。あんなん、泣くしかないやん……ズルいやん……。もうピカチュウが愛しすぎてつらたん……。

それこそ、あのワンシーンのためだけに、もう一度この映画を観に行きたいくらい。映画館を出てから数時間が経っているけれど、映画の内容を思い返すと、今も自然と泣けてくるレベル。……なんか精神的に不安定な人っぽいけど、しょうがないじゃん! 涙腺は素直なんだもの!

おそらくは自分と同世代、無印版のアニメをリアルタイムで楽しく観ていた人ほど、終盤のあのシーンで揺さぶられるはず。積み重ねられた「20年」の重みを感じたし、それを「リメイクっぽいオリジナル」の物語に組み込んできたのも最高にズルいと思う。良い意味で。

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意外と家に残っていた、劇場版のパンフレット。

もちろん、『キミにきめた!』を「過去改変」として捉えるのであれば、コアなファンが望む作品にはなっていないのかもしれない。けれど、自分としては心底から「よかった!」と声を大にして言いたいし、20周年という節目の映画ならではの展開と表現だったように思う。

20年……そう、20年前はガキンチョだった自分は、まさかゲームボーイの枠を飛び出して『ポケモンGO』のようなゲームが出てくるとは思いもしなかったし、20年経ってなお、大人になっても “ポケモン” に触れているなんて想像もしていなかったはず。だってポケモンは、子供向けの作品。だから、中学生になってからアニメを観なくなったのだろうし。

ところが、迎えた20年目の “ポケモン” は、今なお自分にとって身近な存在だった。接し方、楽しみ方は変わったかもしれないけれど、ピカチュウは相変わらずピカピカまっさいチュウだし、サトシは少年のままだし、新作ゲームは買っちゃうし、やっぱり遊ぶとおもしろい。

そんな「20年」に思いを馳せるきっかけとして、映画『キミにきめた!』を観に行って本当に良かったと思うし、同世代にこそ全力でおすすめしたい。赤いほっぺと黄色のシャツ、ギザギザ模様の相棒に、次の20年もよろしくね──と言うのは、さすがに言いすぎかしら。

 

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