『ユリイカ』『MdN』『CGWORLD』などの雑誌で特集が組まれたり表紙になったりするなど、リアル書店でも存在感を発揮しつつあるバーチャルYouTuber。
今月、そんなVTuberを1冊まるまる取り上げた雑誌『コンプティーク』増刊号、『Vティーク』が発売されました。
当初はアニメイトあたりで買おうかなーと思っていたのだけれど、発売日にもかかわらず、すでに売り切れ。近くのほかの書店をめぐっても置いていないという人気ぶりだったので、しかたなくKindle版で購入することにしたのでした。世知辛いのじゃー。
いや、別に電子版が嫌だというわけではなく。
でも、ほら……せっかく「袋とじ」があるんだから……やっぱり、紙で開きたいじゃん? あのドキドキワクワクを味わいたいじゃん? 本誌において “とじ” られている当人であるミライアカリちゃんも、誌面インタビューでこう話しておりますし。
──また、まさかのちょっと“えっち”な袋とじ企画ですが、こちらを見た時の感想はいかがでしょうか?
ヨ! 待ってました! って感じでした!(笑) 袋とじって夢と欲望の玉手箱じゃないですか!! 袋とじと自分との闘いっていうのかな、アイツと対峙した時のアイツと自分との静かな時間に興奮します。アカリはみんなに思い出してほしいんだ! エ○本が落ちてこっそり持って帰って見たあの青春を! アオハルだよ!! ってアカリよくわかんないけど(笑)。
(コンプティーク9月号増刊『Vティーク』P.14より)
わかる(わかるマン)。
とはいえ、電子版でもしっかり「袋とじ」部分も掲載されていたので、その点は編集さんマジGJっす。ただ、電子版をiPadで開いたら、
表紙
↓
コンプティーク本誌の宣伝
↓
_人人人人人人人人_
> 突然のえっち <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
という順番だったので、軽く面食らいはしたけれど。目次かと思ったら、谷間だった。すごく……どえっちです……。
そんな『Vティーク』。びっくりするほどにボリュームたっぷりで、むちゃくちゃ読みごたえがありました。文字数としては多分、薄めの新書くらいはあったんじゃなかろうか……?
VTuberファンは当然ながら必読として、「ぶっちゃけあまりよく知らない……」という人が読んでも楽しめる内容だと思います。多種多彩なバーチャルの世界を垣間見ることができるので、きっと気になるVTuberを見つけられるはず。以下、ざっくりと感想をまとめました。
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実際の放送を「読む」かのようなわちゃわちゃ感
『Vティーク』で取り上げられているバーチャルYouTuberは、なんと50人以上。
なかには事務所やグループの括りで、簡単な自己紹介とQ&Aの掲載のみとなっている人もいるものの、かなり大勢のVTuberに取材した内容となっています*1。
目次に名前が出ているだけでも、以下のような顔ぶれ&ボリューム感。特に前半、「ENTUM」と「にじさんじ」の面々についてはそれぞれ約20ページにわたって取り上げており、まっこと読みごたえがありました。
目次に名前があるVTuber
- ミライアカリ
- 猫宮ひなた
- 届木ウカ
- もちひよこ
- にじさんじ(月ノ美兎、剣持刀也、森中花咲、ギルザレンⅢ世)
- 電脳少女シロ
- .LIVEアイドル部(もこ田めめめ、花京院ちえり、夜桜たま、カルロ・ピノ、北上双葉、八重沢なとり、猫乃木もち、金剛いろは、木曽あずき、牛巻りこ、神楽すず、ヤマトイオリ)&ばあちゃる
- 田中ヒメ&鈴木ヒナ
- ときのそら
- 東雲めぐ
- 名取さな
- ヨメミ
- YUA/藤崎由愛
- バーチャルおばあちゃん
- おめがシスターズ
- KMNZ
- 甲賀流忍者ぽんぽこ&ピーナッツくん
- ミソシタ
- 日雇礼子
- 小山内めい
- 高い城のアムフォ
- 根羽清ココロ
- 鳩羽つぐ
各々への個別のインタビューも楽しく読めた一方で、印象的だったのが「座談会」系のコンテンツ。
何と言うか、すっごい「動画」っぽいんですよね。実際に動画を見たことのあるVTuberについては声が脳内再生されるのはもちろん、読んでいて、実際にわちゃわちゃと話しているように感じられた。脳内チャット欄でリスナーがツッコミを入れている光景までもが脳裏に……。
──他のメンバーに新しいあだ名をつけてみてください。
もちひよこ:じゃあまずアカリちゃんのをみんなで考えよ~。
(コンプティーク9月号増刊『Vティーク』P.22より)
猫宮ひなた:アカリちゃんはAK47。
ミライアカリ:なんで!?
ひなた:強くて、王道!
ひよこ:おっぱい、パンツ、ってイメージ。
届木ウカ:そのイメージを払拭していこう! 実は乙女とか。恋愛ゲームの。ダメだ! 結局エッチなお姉さんになっちゃう。
いつも読むような雑誌のインタビュー記事だと、こういった「文字」から「声」が聞こえてくる感覚って、あまり感じられないんですよね(※自分の場合)。
編集さんの手が入ることで、良くも悪くも「読み物」になってしまうというか。活字に変換してしまうことで、その人ならではの「話し方」や「間」が、どうしても薄まってしまうイメージ。
その点、『Vティーク』のインタビュー記事は、なるべく「話したままの言葉」を掲載しているような印象を受けました。もちろん読みやすく編集はされているでしょうが、そのVTuberならではの口調や表現はそのまま掲載していそうな。そんな読み心地がありました(※個人の想像です)。
……だって、ばあちゃるとか、これ↓だよ?
(※.LIVEのアイドル部をばあちゃるが紹介するページより)
はーいはいはいはいはいもこ田めめめちゃんですねはいはい。通称めめめめめめめですね「め」がなんこあるんだって感じなんですけど本当は3つですよはいはい。めめめめ……め…めめ…。めめめめはですね、羊のバーチャルYouTuberなんですね。それだけじゃ終わりませんよはいはい。めめめめですはねなんとですね、Live2Dを動かせたり動画の編集もできちゃったりだとかもうね、本当に優秀な子なんですよ。さらにですね、可愛いし面白いし動画もめめめちゃんならではの演出を見せてくれますのでね、ぜひ動画を見てくださいね。はいはい。
コンプティーク9月号増刊『Vティーク』P.56より)
にじさんじのコンテンツ力がつよつよすぎてヤバい
最も読みごたえがあったのは、にじさんじを特集した20ページ。月ノ美兎・剣持刀也・森中花咲・ギルザレンⅢ世による座談会ということで、20ページ分の誌面を、ほぼずーっと4人で喋りっぱなしというパねえ企画。文字数が……しゅごい……。
それも複数のテーマであれこれと話すだけでなく、1期生・2期生のメンバー18人を紹介しながら、4人で1人1人について語るようなコーナーも。これがなぁ……ほんとになぁ……てぇてぇんすよ……。
僕自身、さすがに18人全員を追いかけることはできておらず、なかには配信を見たことのないライバーも。そういった「気になっていたけれど追えていない」人を改めて知ることができるという点で、純粋に参考になるんですよね。QRコードも掲載されており、すぐに個人チャンネルにアクセスできる点もありがたい。
そのうえで、18人について話す4人のやりとりが、すっっっごい好き。話がおもしろいのはもちろん、仲が良いという意味でもそうだし、お互いにリスペクトしていることが伝わってきてたまらんのですよ……。4人の話から感じられる、18人のにじさんじライバーへの愛がすごい。以下、ギル様について話すくだり。
剣持刀也:VTuberを沢山見られてる方ですし、もうちょっと万人受けに近づく方法なんていくらでも知っているはず。何なら告知するだけでもいいんですし。あれだけネタを仕込んで努力をしているのに、自分のスタンスを変えないってのがほんとかっこよくて。しっかり自分のスタイルを確立しつつ、新しいVTuberについて語りたい、宣伝したいってのも保っている。人気とかそういうのを欲するよりも、自分のやりたいことをやっているってところが突き抜けてて、素晴らしいと思いますね。
(コンプティーク9月号増刊『Vティーク』P.42より)
「妄想クロストーク」と題したコーナーでも、お互いがお互いをよく知っているからか、おもしろそうな企画がぽんぽん出てきて超楽しい。夢がひろがりんぐ。……いや、沼がひろがりんぐ……?
とにもかくにも「楽しい」が広がるトークが繰り広げられており、何度も笑わされながら読むことができました。にじさんじにとどまらず、4人が好きなVTuberやコラボしてみたい配信者などの話も。見たい動画のリストが一気に増えたぜよ……見なきゃ……。
あと、委員長は地面タイプ。ちぃおぼえた。
VTuberごとに“カラー”の異なるページが素敵
目次からもわかるように、まだまだたくさんのVTuberを取り上げている本誌。あまりの情報量にあばばー! となりつつ読んでいて思ったのですが──これ多分、取材して書いているライターさんたちもノリノリというか、VTuberのことが超すこすこなのでは……?
先ほど触れた「話したままの言葉」のように読めるインタビュー記事の件もそうですが、VTuberごとにページのデザインが違うし、欄外のコラムや小ネタの切り口も異なるという。各々が「キャラクター」として個性的なので、自然とそういう編集になるのかもしれませんが、それにしてもこだわっていそうな印象を受けたので。
コメントごとに異なるシロちゃんの顔文字とか、見開きで2人のイメージカラーに合わせた配色にしているおめシスのページとか、唯一の横文字でカルチャー誌っぽくなっているミソシタのインタビューとか。目で見て楽しめるので、これは紙でパラパラめくりたくなるやつだ……!
あと、個人的には「名取語録」がすこです。これを担当したライターのせんせえこそ、間違いなくノリノリで書いているでしょう! ありがてえ! すこだぞ!
くぅ~!【感嘆詞】
さまざまなシーンで、名取が弱ったり感極まった際に漏らす鳴き声。かわいい。
うんうん【感動詞】
せんせえたちのコメントを読みながらよく口にする言葉。こまめに返事をしてくれる名取の優しさが詰まっている。
鼓膜【名詞】
空気中の音を捉えるための器官。名取のホラゲ配信に備え、ホムセンなどで何十枚もの鼓膜を購入してきた猛者もいた。鼓膜って買えるのか。
(コンプティーク9月号増刊『Vティーク』P.76より)
そんなこんなで、「『Vティーク』はいいぞ」という話でした。
この本の何がヤバいって、ただでさえボリューム満点で読みごたえがあるのに、むしろ「読み終えたあとが本番」ということ。
──そう、読んでいて気になったVTuberの動画を見るという、至福の時間が待ち構えているのだ……! 親切なことに、個々のVTuberや動画へのQRコードも掲載されているので、スマホを使えば一瞬でアクセスできるという便利仕様。ありがてえ! でも時間が足りねえ! わぁい!
あと、冒頭でも書いたとおり電子版を購入したわけですが、フォントが潰れていたり読みづらかったりということもなく、快適に読むことができました。付録のクリアファイルがないので、 “わたくしで隠す” ことができないのは少し残念ですが。布教用に買おうか……。
© KADOKAWA Corporation 2018
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*1:Twitterで応募のあったVTuberの情報を掲載する「VTギルド」と題したコーナーには、119人の個性豊かな配信者のまとめも。