「罪なき者のみ石を投げよ」は詭弁? ロジカルシンキングを疑う『論より詭弁』がおもしろい

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 『論より詭弁』という本を読んだ。

 ロジカルシンキングを扱う本が数多く書店に並んでいる現代において、このタイトルは否が応でも目に入った。序章のタイトルからして「論理的思考批判」であり、「論理なんぞ知ったこっちゃない」と言わんばかりの言葉が並ぶ本書の第一印象は、あまりにも鮮烈だった。

議論に世の中を変える力などありはしない。もし本当に何かを変えたいのなら、議論などせずに、裏の根回しで数工作でもした方がよほど確実であろう。実際に、本物のリアリストは、皆そうしている。世の中は、結局は数の多い方が勝つのである。

(香西秀信著『論より詭弁』Kindle版 位置No.53より)

 「あまりにもぶっちゃけすぎでは!?」と驚いてしまうものの、だからといって「論理」を完全に蔑ろにしているわけではない。それどころか、筆者自身は論理的思考の研究と教育に携わってきた立場にある。

 『論より詭弁』では、そんな筆者が論理学と修辞学の視点から「議論」を批判し、一般的には「詭弁」と呼ばれ否定されがちな論法について分析と考察を加えていく。おなじみの「ロジカルシンキング」を別の視点から捉え直す内容となっており、とても興味深く読めました。

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25分刻みで暮らす日々〜ポモドーロ・テクニックはいいぞ

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 25分刻みで暮らすようになってから、気づけば1年が経っていた。

 ここで言う「25分」とは、アレです。
 アニメ1話分の試聴時間――ではなく。

 そう、「ポモドーロ・テクニック」のことです。

 2019年の半ばにポモドーロ・テクニックを試してみたところ、これが思いのほかいい感じ。作業がはかどり、キーボードを叩く指は軽快に踊り出し、積み上がっていた原稿は溶けるように消えていく。世界を「25分」に分割してみたら、こんなにもうまく作業が進むようになるなんて……!

 体が軽い……!
 こんな気持ちで書くなんて初めて……!
 もう何も恐くない――!

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SNS時代にも通じる文章読本『書けるひとになる!』をライター人生のバイブルにしたい

レビュー『書けるひとになる!』サムネイル

物書きは人生を二度経験する。

 いつだったか、こんな一言と出会った。そのへんに転がっている泡沫ライターに過ぎない自分が「物書き」を自称するのはおこがましい気もするけれど、それでも、この一言には強い共感を覚えずにはいられなかった。

 もしかしたら、今このブログを読んでいるあなたも、この一言に感じるものがあるかもしれない。

 自分でもブログを運営していたり、日常的に書き物をしていたり、重度のツイ廃だったり。実際に調べたわけではないのでわからないけれど、このブログの読者さんにはそんな人が多い気がしている。ネット上で「書く」ことや「言葉にする」ことに刺激や楽しさを感じている──そんな人たち。だって、僕自身がそうだから。

 “物書きは人生を二度経験する”。たとえ「物書き」を仕事にしているわけではなくても、日常的にブログやTwitterと接している人であれば少なからず共感できそうな一言。この言葉が収録されている本『書けるひとになる!』を、先日ようやく読むことができた。今回はその感想をば。

 

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