在宅勤務のモチベーション管理!あなたの「スイッチ」はどこにある?


ON/OFF

 「自宅だと作業に集中できない!!」

 ──春の小川を流れる桜の花びらのように、4~5月にかけてのタイムラインではこんな悲鳴が数多く流れていました。昨今の情勢を鑑みて世界的に広まった在宅ワーク。しかし家ではモチベーションの管理が難しく、このように嘆いている人が散見されました。

 周りに上司も同僚もいない空間では自然と気が緩み、集中力も散漫になりがち。変な姿勢でパソコンに向かったり、Twitterに気を取られたり、別の作業を始めてしまったり、無駄に長時間休憩してしまったり、Twitterに気を取られたり。「おかしい……さっきまで仕事のメールをチェックしていたのに、なぜ私はYouTubeで動画を見ているのだ!? 敵のスタンド攻撃か!?」なんていう経験、あなたにはありませんか? 僕はあります。

 そう、一言でまとめるなら、自宅はあまりにも「私的」な空間すぎる

 日常を過ごす生活空間であり、基本的には自分(と家族)以外は立ち入ることのない聖域。そこは「暮らす」場所であり、仕事を忘れて「休む」場所であり、あるいは映画やゲームを「楽しむ(遊ぶ)」場所。

 つまりそこは、「常に気が緩んでいる場所」と言っても過言ではないわけです。そんなところで働くなんて、何か対策でも講じないと無理なのでは……?

 私的な「生活空間」としての性質を変え、公的な「仕事場」として自宅を機能させるにはどうすればいいのか。考え方はいろいろですが、ここでは「気分を切り替える “スイッチ” を準備する」という切り口で考えてみます。

 

① 決まったドリンクを飲む

緑茶

 気分のON/OFFを切り替える “スイッチ” の中でも特にわかりやすく、おなじみだと思われる方法。それが、「仕事を始める前に決まったドリンクを飲む」ことです。

 普段から職場で実践している人もいるでしょうし、もしかしたら学生時代からやっていた人もいるかもしれません。「缶コーヒーを飲んでから仕事に取りかかる」とか、「給湯室で淹れたお茶を持って席につくのが始業の合図」とか、自分の中でそう決めている人。

 それと同じような習慣を、在宅勤務にも取り入れてみる。

 大切なのは、「これを飲んだら作業スタートだ!」と自分の中で決めてしまって、毎日欠かさずに飲むこと。一種のジンクスですね。そうすると体も「あ、これから仕事か」と記憶してくれて、ドリンクを飲めば気分がシャキッと切り替わるようになります。

おすすめは「淹れる」タイプの飲み物

茶葉

 準備する飲み物は、なんでもOK。缶コーヒーや麦茶パックも悪くありませんが、個人的にはコーヒー・紅茶・緑茶など「自分で淹れる」タイプの飲み物がおすすめです。

 というのも、これらはただ単に「飲む」だけではなく、「お湯を沸かす」「カップを準備する」「注ぐ」「待つ」といった行程を踏む必要があるから。一連の作業を1つのルーチンとして記憶させれば、「スイッチ」としての強度を高められます。そうすると、ドリンクを準備して席につく頃には意識せずとも気持ちが切り替えられるように。ある種の「儀式」と言ってもいいですね。

 慣れてきたら「今日のタスクはあれとこれで……」などと、頭の中で整理しながら飲み物を淹れられるのもポイント。もし寝起きだとしても、「仕事の前に適度に体を動かしながら頭を働かせる」ことができるため、始業前の「準備運動」としても機能してくれます。

② 「仕事着」を決めて着替える

スーツ

 もうひとつは、「『仕事着』を決めて、着替える」という方法。

 「何事も形から」と言いますが、「着替える」という行為には、想像以上に気分を切り替える効果があります。

 学生時代は制服で通学し、アルバイトでは制服や作業着で働き、そして社会に出てからはスーツに身を包んで出社しているように、在宅勤務にも「仕事着」の概念を取り入れてみる。そうすることで気分が切り替わり、仕事に集中できるようになります。

家で仕事着になると、逆に気が散るのでは?

 ただし、服選びは重要です。

 私的な自宅の空間で、公的なスーツに着替えて机に向かうのは……なんとなく、気持ち的に違和感がある。普段は『DEATH NOTE』のLのような姿勢でYouTubeを見たりゲームをしたりしている人が、ワイシャツ姿で同じ椅子に座って仕事をするのは、なかなか難しいのではないでしょうか。

 僕自身、スーツに着替えると逆に落ち着かなくなるタイプの人間だったようで、まったく集中できませんでした。かと言って、寝間着や私服姿ではダラダラしてしまうのでダメ。なんとか①の飲み物で気分を切りかえ、だましだまし仕事に取り組む日々が続いていました。

新たに「在宅勤務用の仕事着」を設定してみる

 ところがある日、「『仕事着』をまったく別の、新しいものにしてみるのはどうだろう?」という思いつきを実践してみたところ……これが、効果てきめんだったのです。

 普段着ではなく、仕事用のスーツでもなく、自分に必要だったのは、「在宅勤務用の仕事着」。TPOに対応した「服装」の一種として、「家で仕事をするときの服」を新たに設定してみた結果、自宅での作業に驚くほど集中できるようになったのです。

 具体的に何を着るかは、きっと人それぞれに向き不向きがあるはず。「ほどほどに気合いが入るビジネスカジュアル」だったり、あるいは逆に「ほどほどにリラックスできるジャージ」だったり。自分に適した “仕事着” を見つけるべく、いろいろな服を試してみることをおすすめします。

 ちなみに自分の場合は、「使っていなかったデニム着物」がハマりました。

デニム着物

 もともと和服を着て外を歩くタイプの人間だったのですが、デニム着物はそれまであまり着ていなかったんですよね……。

 それが物は試しと着てみたら、家で過ごすのにぴったり。しかも程よく気合いが入る感じがあって、「在宅勤務用の服装」として最適だったわけです。帯ではなく、ベルトで締めるようにしてみたのも良かったのかもしれません。

まとめ

 ここでは2つの切り口を取り上げましたが、「仕事のON/OFFを切り替える “スイッチ” 」は人の数だけあるんじゃないかとも思っています。

 この手の生活習慣について考えると思い浮かぶのが、このブログでもたびたび引用している『天才たちの日課』。この本では、古今東西の “天才” たちが実践していたという数々の “スイッチ(=日課)” が登場します。

  • 行き詰まると三点倒立をする(ストラヴィンスキー)
  • 創造性を高めるためにシャワーを浴びる(ウディ・アレン)
  • 本の執筆前と後に体重を量る(シムノン)
  • 50種類のコーヒーカップから毎日ひとつを秘書に選ばせ、カップから溢れるほどの砂糖を入れてコーヒーを飲む(キルケゴール)

 本書によれば、コーヒー・紅茶・酒といった「飲み物」を “スイッチ” あるいはエネルギー源として活用している人は、昔から多かった様子。他にも十人十色の “日課” が登場するこの本を読んでいると、「 “天才” と呼ばれる人たちですら、『習慣』なしには集中するのが難しかったんだなー」と実感させられます。

 モチベーションを高め、仕事に集中するための “スイッチ” 。

 今後ますます在宅勤務やテレワークが普及していくにしたがって、モチベーション管理の必要性はどんどん高まっていくのかもしれません。「自分の生活習慣や生産性を再考する」という意味でも良いきっかけになりますので、この機会に自分の “スイッチ” の在処を確認してみてはいかがでしょうか。

 

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