ぐるりみち。

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『珈琲の世界史』知的好奇心が満たされる「コーヒー」の文化史

 ここ2、3年ほど、毎日のようにコーヒーを飲んでいる。それ以前──営業職として走りまわっていた頃──はたまに缶コーヒーを飲む程度だったけれど、近頃はほぼ毎日。出先で小休止するとき、あるいはパソコンに向かって作業をするときには、喫茶店のコーヒーが欠かせない。

 最初はマクドナルドの100円コーヒーに始まり、ドトールを経て、最近はスターバックスに落ち着いた格好。味はドトールも悪くないのだけれど、日中は大声で話すお客さんが多くてどうにも落ち着かないのよね……。席を取るためにタックルしてくるおじいちゃんもいるし。

 結果、居心地が良く、しかも108円でおかわりできるスタバを安住の地に定めたわけです。このテキストを打っている今現在も、ちょうどそのスタバでキーボードを叩いている感じ。……え? ドヤ顔Mac? ……残念だったな! これはMacじゃなくてポメラたんだ!(ドヤァ

 

 そんな自分にとって、コーヒーとは「味わって飲むもの」にあらず。勉強や仕事の際に頼る「眠気覚まし」であり、あるいは喫茶店という「居心地の良い空間」を形づくる一要素でしかありませんでした。

 たまに昔ながらの純喫茶に入ってコーヒーを飲み、その豊かな香りや味わいに驚くことはあったものの、その程度。「なんかむちゃくちゃおいしいものを飲んだぞ!」とその瞬間だけは感動しても、銘柄や抽出方法を覚えるほどではなかったのです。

 

 

 以上のような、「コーヒー? おいしいけどよくわからん!」という人にこそおすすめしたいのが、本書『珈琲の世界史』です。

 正直に言って、読む前は「コーヒーだけで “世界史” と呼べるほどの話題があるのん?」と思っていたのですが……マジで “世界史” でございました。コーヒーの歴史や伝播の過程を紐解くのみならず、「コーヒー目線で高校世界史を復習する」ような感覚すらあったほど。

 そこには、時には世界を翻弄してきたコーヒーが、僕らの身近な存在になるまでの物語が書かれていました。

 

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知的好奇心が満たされる「コーヒー」の文化史

 「歴史を知ればおいしさが変わる」という一文から始まる本書。

 生産者の苦労を聞くと作物が魅力的に、料理人のこだわりを聞くと料理がおいしく感じられる(こともある)ように、「物語」は飲食におけるエッセンスのひとつ。本書はコーヒーの「おいしさ」をより強く感じてもらうために、その「物語」を掘り下げていく1冊となっています。

 ゆえに、この本を読むときには「味わう」ように読みたいところ。「勉強してやるぞオラァ!」などと気合いを入れて本を開く必要はなく、週末やスキマ時間、ちょっとした休憩タイムに気軽な感じで。それこそ、1杯のコーヒーと一緒に味わいながら読み進めるといいかもしれません。

 

 また、先ほど「コーヒー目線で高校世界史を復習する」ような実感があったと書きましたが、より正確には「高校世界史」のなかでも「文化史」的な側面が強そうです。文学、芸術、科学、社会思想、宗教──とか、そちらの分野ですね。

 でも「文化史」と聞くと、受験生的には「つまらない」「覚えるのがダルい」などと、割と忌避されやすい分野だったような記憶もあるんですよね……。特にセンター試験では問題数も少なかった気がするし、僕自身、あまり真剣に勉強した記憶がございませぬ。

 しかし世界史上において、「文化」は歴史を左右する大きな要素。宗教戦争は言うに及ばず、民衆を一致団結させた文化運動や社会思想の存在も無視できません。「コーヒー」に近い視点としては、「茶」の存在が歴史を動かしたケースもあったのではないかしら。織田信長と茶器の関係とか、ボストン茶会事件とか。

 

 本書で概説されている “珈琲の世界史” にも、そういった要素が多分に含まれています。侵略し、騙し、盗むことで世界中に伝播したコーヒーは、時には市民の交流の場を育み、時には金儲けの道具として重宝され、時には革命のきっかけにもなったという話。

 こうして今、当たり前に飲めているのが不思議に覚えてくるほどに、すさまじい道のりを歩んできたコーヒーの存在。侵略だ窃盗だと聞くと血なまぐささが漂ってきそうですが、全体として見ればそれだけというわけでもなく。知的好奇心が満たされる、まっこと「おいしい」1冊です。

 

世界史上でしばしば登場する「コーヒー」の存在

 エチオピアの部族の慣習から “発見” され、イスラーム世界を経てヨーロッパへ。

 世界史でもおなじみのオスマン帝国がその普及に一役買い、ヨーロッパにコーヒーが伝わったのは17世紀のこと。「紅茶の国」のイメージが強いイギリスで、実は紅茶よりもコーヒーのほうが先に伝わっていたという話は驚きでした。それどころか、コーヒー普及の先進国だったのだとか。

 そして、イギリスでは市民の交流の場として定着した「コーヒーハウス」が、フランスでは言論空間としての「カフェ」が普及。前者が清教徒革命後に大流行したのに対して、後者はフランス革命の火蓋が切られる場所となったという点も興味深い。特にイギリスでは、コーヒーハウスが初めての「素面で語り合える」飲食店だった、という指摘もおもしろいですね。

 

 そのほかにも「コーヒーブームはナポレオンが生んだ」「戦場で愛飲されたことでインスタントコーヒーが普及した」といった話題もあり、本書では、世界史上において「コーヒー」がどのような立ち位置にあったのかを知ることができます。

 そのうえで、後半では日本におけるコーヒーの普及過程と、現在に至るスペシャルティコーヒーの変遷を解説。

 いまだにピンときていなかった「サードウェーブコーヒー」の定義が、実はそもそも曖昧であるという指摘も。唯一「スターバックスに対するアンチテーゼ」という共通点があるのが、「サードウェーブ」と呼ばれる波の正体なのだとか。ほほー。

 

 主に “世界史” の視点からコーヒーについて概説した本書ですが、その原料であるコーヒーノキの伝播の過程にも触れられており、取り扱っているトピックは思いのほか多岐にわたります。高校レベルの歴史・文化・地理の知識が頭の中に残っていれば、きっとより楽しく読めるはず。

 また、本書はもともと、筆者の前著『コーヒーの科学』で好評だった「歴史」の章を掘り下げたものなのだそう。歴史好きの文系の人に向けて書いたのがこの本だということなので、前著とあわせて読むとさらに知見を得られるはず。──次は、そちらもチェックしてみようかな。

 

 

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