「春一番」の発表があった先週末。ブログつながりで飲み会に誘われて、向かった先は飯田橋。おいちい梅酒の海にほどほどに浸かり、ほろ酔い気分で解散。いやー、少人数のまったり飲みで楽しかったぜよー。
ふと時計を見れば、まだ21:00を過ぎたあたり。酔っぱらいレベル3(MAX10)程度の今の感覚なら、酔い覚ましついでに歩くのも悪くない。──むしろ、歩きたい。ヒャア我慢できねえ! “飲み会の後はまっすぐ帰りたくない症候群” の発令だー!(関連記事:飲み会の後はまっすぐ帰りたくない症候群)。
というわけで、土曜夜の街中を、ぶらっと飯田橋駅から池袋駅まで歩いてきました。有楽町線を使えば10分程度で移動できるおよそ5kmを、1時間ほどかけてぶらぶらと。
住宅街、大通り、神社、住宅街、たまに猫
起点は、JR飯田橋駅。
平日であれば、まだまだ会社帰りのサラリーマンで賑わっている時間帯なのだろうけれど、土曜の夜ということもあってか人影は少なめ。察するに「友人と楽しく飲めたし、日曜に備えて早めに帰るべ」という面持ちの人が多いように見えた。ほどほど、大切。
ところで「飯田橋」と言えば、天下無双の竹書房さんがオフィスを構える場所である。みんな大好き『ポプテピピック』の1コマで描かれた案内板がある──のですが、こんなん、ネットで知ってても撮りたくなる。関係ないけど、竹書房つながりで『メイドインアビス』アニメ化、おめでとうございます!
ポプ子の看板が示す矢印に抗い、真逆の神楽坂方面へ歩きだす。
人波に逆らうように歩くことになるかと思いきや、飯田橋駅を降りて家路を急いでいるらしい人の姿もちらほら。他方で車の往来はさほどでもなく、大通りのわりに静かな夜道。寒さもあまり感じられず、ひんやりした夜の空気を裂くようにとっとこ歩く格好に。楽しい。
どこかで脇道に入りたいなーと思っていたら、交差点で早速、石段と社が目に入った。新宿区の最東端に位置する、筑土八幡神社でござる。
夜の無人の静けさのなかにあって、 “厳か” というよりは “落ち着く” 雰囲気の境内が印象的。春は桜がきれいだそうで、神楽坂を訪れるついでに足を伸ばしてみるのもいいかもしれない。600メートルほど西に歩けば、おなじみの赤城神社もありますね。
境内を抜けたら、マンションやアパートが連なる区画に出た。人っ子一人どころか、猫っ子一匹もいない道。特に目に入るものもなく、そそくさと通り抜けることに。
──と思ったら、とある建物の出入り口から、見覚えのある幼稚園児がこっちを見ていた。『クレヨンしんちゃん』でおなじみ、双葉社さん。
これから家に帰るらしい社員さんの姿が目に入り、思わず心中でお疲れさまです、と。窓に貼られたポスターを見やれば、しんちゃんのほかに、すずさんの姿も見えますね。映画、すんごくよかったです(関連記事:映画『この世界の片隅に』を極上音響上映で観てきた感想)。
進路を補正しつつ、なぜかやたらと駐車場が多い通りを一人歩く。右に左に、ぼんやりと光る「P」のアルファベットが、なんだかおもしろい。
目白通りに出ると、途端に賑やかになった。大通りはもちろん、頭上を走る首都高をかっ飛ばす車の音がビュンビュンと。少し離れたところから聞こえてくる車のエンジン音は、間近で聞くのはまだしも、ある意味では都心部の “趣き” だと思え……なくもない?
ところが、しばらく歩いてみると、思っていたよりも車の数も多くないことに気づかされた。十数台の車が横を通り抜けることはあっても、それも散発的なもの。
タイミングによっては周囲が静寂に包まれることもあり、とても “新宿区” を歩いているとは思えない。……まあ、平日の駅前の印象が強すぎるせいだとは思うけれど。車の波が途絶えると、歩道に止まっているタクシーから響くハザードランプの音が妙に大きく聞こえる。カッチッカッチッ……。
江戸川橋駅前の交差点まで来ると、急に車と人の数が増えた。
ちらほらと飲み会あとの酔っぱらいグループも見受けられるようになり、見るからに “駅前” といった趣きに。行き交う車の走行音と、周囲を照らすヘッドライトが眩しい。
交差点を渡るとそこには、実はずっと目白通りと並走していたらしいものの、まったく目に入っていなかった「川」の存在。何の川じゃろ……とGoogleマップをよくよく拡大してみたら、 “貴男のやさしさが恐” いことに定評のある、神田川。赤い手拭いをマフラーにしなきゃ……。
川を渡り、そのまま大通りを行く──と見せかけて、江戸川公園を突っ切りつつ閑静な住宅街の香りがする方向へ。実際、園内を歩く人は家に帰る途中らしい人ばかり。今も昔も、 “高架下” という字面にちょっと甘美な響きを感じるのは僕だけかしら……。
高架下でもそうでなくても、こういった明暗がはっきりと分かれた夜の細道は大好き。経験上、だいたいこの手の道にはお猫さまの存在があるはずなのだけれど、特に出会うことはなかった。残念。今夜はハズレの日か……。
なんだか見覚えのあるカラーリングのロゴがあると思って近づいてみたら、天下のキングレコードさん──の、スタジオでござった。すぐ近くに本社もある模様。ほえー。そしてこのあたりから、ちらほらと聞いたことのある施設が目に入るように。
続いて登場したのは、ホテル椿山荘東京。入ったことはなければ縁もないため、「なんかお高そうなホッテール」なイメージしかないのですが、たしかにお高そうだった(小並感)。
そのすぐ近く、これまたなんか見たことのある建物が。──それもそのはず。ちょうど1年ほど前に訪れた、カトリック東京カテドラル関口教会でございました(関連記事:カトリック関口教会のオルガンメディテーションに参加してきた)。
クリスマス生まれの癖に(?)、「教会」とはとんと無縁の生活を送ってきたため、あまりこういった空間について語る言葉は持たないのだけれど……。ただ、祈りを捧げる場所、瞑想によって心を落ち着かせる場所としてのこういった「場」は、折に触れて訪れたいところでもあります。寺はいいぞ(関連記事:初めての“瞑想”体験!高野山東京別院の阿字観実習に参加してきた)。
さて、大通りを逸れて来たつもりが、標識を見れば、歩いているのはなおも目白通り。その名のとおり、このまま真っ直ぐ行けば目白駅に行き着くので、途中で北寄りに進路を変える必要がある。
車も少ないし、このまま目白まで歩くのも一興かも……と思いつつも、すでに時計の貼りは22:30近く。さすがに終電ギリギリまでぶらつくのもアレだし、歩きまわったことで小腹も空いてきた。なるべく最短で池袋を目指すべく、脇道を雑司が谷方面へ向かいます。
静まり返った住宅街をひた歩きながら、なんとなく街歩きのときの習慣になっている、「カーブミラーで自撮り」を実行。ミラーが良い感じにくすんでいるのと、その角度によって、「短足なオッサンがカメラを構えている図」になってしまった。ただの不審者だこれー!
地下に雑司が谷駅、地上に鬼子母神前駅。終電が近いためか、人影はまばら。工事中ということもあり、夜は独特の雰囲気を醸し出しているこの一帯……好きな人もいるんじゃないかしら。
玉垣を横目に石畳の道を歩きながら、「夜の神社仏閣って不気味だけど、明かりに照らされた “石” の色合いは好みだなー」と急に思い至った。
夜の神域と言えば不可侵とされることもあり、忌避感や恐怖心を覚えがち。でも実際に足を運んでみると、なぜだか落ち着くこともあるのよね……。その理由のひとつに、明かりに照らされた石畳や玉垣の色合いがあるんじゃないかと、ふと思った。暖色でなくとも温かく感じる、 “明かり” の色。
そろそろゴールが見えてきたタイミングで、お猫さまと遭遇。
毛並み良し、首輪あり、とくれば、さぞ名のあるご近所猫さまなのでしょう。どうやら縄張りの巡回中に見受けられたので、軽くご挨拶をして退散。お疲れさまでございます。
そんなこんなで、見慣れた池袋駅東口付近に到着。時刻は22:50。それなりに時間はかかったものの、楽しい道行きでした。しばらくぶりに夜の街をぶらり散歩してみたけれど、やっぱり季節によって空気感が明らかに違うよなあ……と再確認。
例えば、夏から秋にかけての夜は程よく涼しいため、足がよく動く。それなりに遠くまでぐんぐん歩くことができるし、途中で冷えたドリンクを買って飲むと生き返るよう。暗くなってからも賑やかで、人やら虫やら動物やらがその辺を跋扈している印象。
他方で、冬から春にかけての夜はまだ寒く、長時間にわたって歩きまわるには不向き。歩くスピードも自然と遅くなるけれど、道端の何でもない看板や物体が視界に入りやすい。人も猫もいない道行きは静かで冷え切っているものの、その空気感が身に沁みて落ち着くと感じることも。
「その季節にしか感じることのできない街の雰囲気もある」と考えれば、ますます今後の街歩きも楽しくなってこようというもの。常日頃からあっちゃこっちゃに行くのは(金銭的に)厳しいけれど、今年もゆるっと街々を渡り歩きたいな。
──そして、最後はラーメンで〆るのだ。