『日本が世界一「貧しい」国である件について』を読んで


 

 『ノマドと社畜』に続いて、谷本真由美さんの著書『日本が世界一「貧しい」国である件について』を読みました。前作が面白かったので、下北沢へ行ったついでにビレッジヴァンガードで特典付きを購入。

 前著『ノマドと社畜』が、言わば「ここがヘンだよ日本人!~働き方編~」だったのに対して、今作は「働き方」に限らず、「日本人の変なところ」をさらに広く捉えた内容。いい具合に毒も入って、興味深く読むことができました。

 

「哲学」よりも「空気」が重視される日本社会

 「働き方」に関しては『ノマド~』の方とも重複するので、そちらはスルー。個人的に印象に残ったのは、4章。「ムラ社会」「空気」「多様性」などに関する話。

 

 日本のヒトのほとんどは、同じが当たり前、少々の違いも大きな違い、目立つのはいけない、という考えで育つから、日本では当たり前と思われていることは、広い世界の考え方の一つだけにすぎない、ということがわからないのです。
 「こうしたい」「これはこうあるべきではないか」と考える必要がないということは、つまりそこには「哲学」が存在しないということです。「哲学」とはまた、「人間がどう生きるべきか。どうあるべきか」を考える作業でもあります。日本では、何か考えを突き詰めて議論するよりも、「空気」に合わせることの方が重要なので、「哲学」を学ぶ必要も、考える必要もないのです。

 

 周りと同じであること、目立たずに迷惑をかけないこと、伝統を守ること。僕自身もそれが当たり前だと思って育ってきた。おかしくね? と思い始めたのは……恐ろしいことに、成人してから。

 特に「伝統」っていう言葉は本当に便利ですよねー。「この飲み会は伝統行事だから参加必須」「体罰は我が部の伝統だから耐えろ」……って、いやいや、“伝統”とか知らんがな。

 

 「哲学」がない、ということは、「自分」がない、ということ。
 思考停止したら、そこで終わりだと思う。いろいろと。

 

 書店のビジネス本コーナーに行けば、この手の本は結構ある。だけど何と言うか、どこか他人事であるように感じてしまっていたんですよね。

 「こういうデータがあるからこうすべき」という説明で、論理的ではあるのだろうけれど、あまり身近に感じられないせいか、「ふーん、そうなんだー」みたいな。単純に、自分に危機感がないというだけの話ですね、はい。

 

 この本は、そんな無学で平和ボケした僕にも、「あれ?ヤバいんじゃね?」と思わせてくれるものでした。就職して実務を経験したためか、メイロマさんの筆力ゆえか。

 

極論に対する批判的視点と、そのバランス

 海外に出る。経験を積む。スキルを磨く。知識を身に付ける。「自分」を持って行動する――。6章で述べられているこれら筆者の意見は、どれも納得できるものです。そうしないと「ヤバい」という危機感も、同時に感じれられる。

 自己を確立するために考え続けること、思考停止しないこと。ここ数年、いろいろな人の話を聴いて、いろいろな本を読んで、いつも考えさせられるのはこのことです。流されるままでも生きてはいけるかもしれないけれど、そのままでいるのもちと怖い。

 

 もちろん、本書の全てに同意するわけではないけれど、海外に出たこともない自分のような若造にとっては非常に刺激的で、前向きにさせてくれる内容でした。某所のレビューが低いけれど、どうにも低評価している方の思い込みが激しいようにも思えます。

 多角的視点で論理的に批判しているように見えて、根拠がないような。……とは言っても、本書の主張もかなり極端であること間違いないので、批判的なレビューの言い分に納得できる面があるのも事実。そう考えると、やっぱりバランスは大切ですね。

 

 それと、本の終盤。最後の10ページのうちの見開きで何度も、「水槽に沈めて鞭で叩かれながらイチジク浣腸を注入してみる方法もある」なんて表現を多用するから、まるでこれが結論なんじゃないかと錯覚するじゃないですかー! 太字だから余計に印象に残るじゃないですかー!

 

 

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