死後の世界はVR!? ドラマ『アップロード』で描かれる“デジタルなあの世”がおもしろい

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 たとえ肉体がなくなっても、電脳世界でずっと生き続けたい──。

 そのような未来をチラリとでも考えたことがある人は、少なからずいるのではないかしら。たとえ意識だけの存在になったとしても、電脳の仮想世界で自由気ままに過ごしたい。──とはいえ、映画『マトリックス』のように機械に管理されるディストピアは勘弁願いたいところだけれど。

 ドラマ『アップロード』では、そんな「デジタルなあの世」で過ごす人々の悲喜こもごもが描かれる。

 「VRをテーマにしたAmazonプライムの新作ドラマ」と聞いて、配信前から気になっていた本作。というのも僕自身、この1年ほどはVRにどっぷりと浸かった日々を過ごしていたので。「仮想現実」が消費者レベルで普及しつつある今、それをテーマにした最新の作品でどのような世界が描かれるのか、VRのいち住人としては気にせずにはいられなかったのです。

 ──で、これがむちゃくちゃおもしろかった!!

 『マトリックス』のようなディストピアではなく、かと言ってすべてが自由なユートピアというわけでもなく。近い未来の「バーチャル天国」を、興味深く、茶目っ気たっぷりに、そして皮肉っぽく描いた作品です。少しでも「VR」に惹かれるものがある人は、とりあえず見ておいて損はないはず!

ドラマ『アップロード』のあらすじ

 舞台は、2033年のアメリカ。

 街中を自動運転車が走り、人々は3Dプリンターで作られた料理を食べ、死者たちはVRで第二の人生を謳歌する。その一方で、人々は今と変わらず手元の小型端末で他者とつながり、満員電車で通勤し、人間関係に悩まされている──。そんな、近い未来のお話。

 ロサンゼルスで暮らすアプリ開発者・ネイサンは、自動運転車の事故によって病院に運び込まれる。そこに駆けつけたのは、彼の恋人のイングリッド。担架で院内を移動する折、2人は選択を迫られる。生き残るために手術を受けるか、死を受け入れて “アップロード” するか──。

ドラマ『アップロード』第1話・病院

 意識が朦朧としていたネイサンは、半ばイングリッドに押し切られる形でアップロード室へ。

 医師の説明に従うまま拘束されるネイサン。外で見守るイングリッド。不安を感じたネイサンは一度待ってもらおうとお願いするが、次の瞬間、彼の頭上のスキャナーが起動。ネイサンの頭部はスキャンによって消し飛び、その意識は “あの世” へと “アップロード” されてしまう。

 次に暗闇の中でネイサンが聞いたのは、穏やかな女性の声。彼女に言われるまま思考し、イメージし、徐々に意識を呼び起こしていくと、彼は自分が古めかしい部屋にいることに気づく。窓の外に美しい湖畔を望むその世界は、ホライズン社が運営する仮想現実・レイクビューだった。

ドラマ『アップロード』第1話・レイクビュー

「死後の世界」が産業となっている未来

 本作の魅力は、まず何と言っても「アップロード」の設定にある。

 アップロードとは、死を目前にした人間の意識を仮想現実世界に転送すること。また、仮想現実で暮らす死者たちのことも同じく“アップロード”と呼んでいる。人々は普通に死ぬこともできるが、「天国」で第二の人生を歩んでいる “アップロード” も数多くいる。この2033年は、そんな世界だ。

 しかも、「天国」はひとつだけではない。主人公・ネイサンが足を踏み入れることになった「レイクビュー」を筆頭に、世界には死者向けの仮想現実とその運営企業がいくつもの存在している。レイクビューを運営するホライズン社は、その中でも高所得層向けの「天国」として人気を博しているようだ。

 そして、それらの「天国」には、「天使」がいる。

ドラマ『アップロード』エンジェル1
ドラマ『アップロード』エンジェル2
ネイサンの担当“エンジェル”・ノラは、本作のもう1人の主人公でもある

 「天使」と言われるとなかなかにインパクトがあるものの、つまるところはカスタマーサポートのことだ。

 アップロードされた人間には担当の “エンジェル” が付いて、「天国」での生活をサポートしている。 “エンジェル” たちはオフィスでPCに向かい、 “アップロード” から呼び出しがあると、VRゴーグルを装着して駆けつける。2033年の「天国」とは、言うなれば死者向けのVR MMORPGなのだ。

 加えて、企業が運営するサービスであるということは、「天国」でも当然ながらお金がかかる。おいしいものを食べたり、ゲームで遊んだり、レイクビューで各種サービスを利用するには、その都度お金を支払わなければならない。要するに、課金コンテンツである──と書くと、ますますゲーム感が強まりますねこれ?

ドラマ『アップロード』スポンサー商品
ドラマ『アップロード』広告

 さらには、AIがスポンサーの商品をやたらと勧めてくることもあれば、 “アップロード” の行動や思考パターンから、各々にマッチングされた広告が急に目の前に表示されることもある。──まんまインターネットである。しかも空間に表示されるポップアップ広告とか、さすがにたちが悪すぎません……?

 それだけではない。

 「死後の世界に経済がある」ということは、そこでは必然的に格差も生まれる。 “アップロード” たちは基本的に労働をしない(できない?)らしく、サービスの利用料金は生前の資産から支払うか、家族に支払ってもらうことになる。つまり、誰もがずっと豊かな生活をできるとは限らないのだ。

ドラマ『アップロード』2ギガ1
ドラマ『アップロード』2ギガ2

 そんな人たちが行き着くのが、レイクビューの最下層。

 ここで暮らす “アップロード” は毎月の容量が「2ギガ」に制限されており、使い果たすとサービスを停止させられ、新しい月になるまで動けなくなる。……って、めちゃくちゃ覚えのある光景ですねこれ! 中には基本プランの服すら着ることができず、全裸で過ごす “アップロード” もいるそう。世知辛いのじゃ……。

カジュアルな「死」と、「天国」を楽しむアップロードたち

 近未来の話でありながら、このように現代社会を風刺するような描写もちらほらと垣間見える本作。全体の雰囲気としてはコメディ寄りで、死後の世界をおもしろおかしく描いている。

 でも同時に、見ていてあれこれと考えさせられる部分も多かった。作中では「死」や「仮想現実」について多彩な切り口から取り上げており、多くの要素が散りばめられている。

 たとえば、3話で描かれるネイサンの葬儀。

ドラマ『アップロード』葬儀1
ドラマ『アップロード』葬儀2
死者に「元気」も何もないはずなのに、この挨拶が通用してしまう世界

 ネイサンもイングリッドも「葬儀」をある種の晴れ舞台のように捉えているらしく、葬儀場はまるでパーティー会場のよう。そしてそこでは、あの世とこの世をつなぐ画面越しに、死者である “アップロード” が生きている家族や友人と楽しそうに言葉を交わしているのだ。

 まっことおもしろい光景だ……としみじみとその様子を見ながら、しかし同時に疑問も浮かんでくる。「生きている人たちが仮想現実を訪れる形にすれば、もっと近い距離で会えるのでは?」とか、「そもそも宗教的にはどういった解釈をされているのだろう?」とか。

 そのようにあれこれと考えさせられる要素もあり、フィクションとして楽しみつつも、「実際にこういう未来が来たら、自分はどうするだろう?」とも考えずにはいられなかった。ちなみに “アップロード” と生きている人との交流はさまざまな切り口から描かれており、4話ではえっちもします。うーむ、けしからん。

 また、レイクビューで暮らす “アップロード” たちもみんな個性的で、その独特な生活ぶりにもワクワクさせられた。

ドラマ『アップロード』モノクロアバター
ドラマ『アップロード』100歳のおばあちゃん

 大多数の “アップロード” は「死んだときの姿」のまま暮らしているが、中には「自分が好きな年齢の姿」をアバターにしている人もいる。100歳になったイングリッドの祖母も若い頃の姿で過ごしており、ネイサンの友人である “アップロード” の若者・ルークとキャッキャウフフを楽しんでいた。

 かと思えば、逆に「自分のなりたい姿になれない」場合もある。

 その一例として登場するのが、幼くして事故で死んでしまった少年・ディラン。実年齢ではもう成人しているのに、彼はいまだに事故死した当時の姿のまま。アバターを成長させる方法もあるらしいが、「母親が許してくれない」と “エンジェル” に愚痴をこぼしている。これはどちらの気持ちもわかる……気がする。

ドラマ『アップロード』ディラン
ドラマ『アップロード』風邪に課金する

 そのような悩みを持っている “アップロード” もいて、さらには「2ギガ」のような格差もあるものの、レイクビューでの生活は基本的には快適なものとして描かれている。

 「きれいな部屋とふかふかのベッド」や「いつでも食べ放題の豪華な食事」はデフォルトとして、「自身の思い出を映像として鑑賞できる “記憶パーラー” 」といった仮想現実ならではのサービスも魅力的。ただし快適すぎるのも考えものなのか、あえて不自由さを提供するサービスもあるらしい。「お金を払って風邪をひく」シーンは、見ていて納得感が強かった。

 「天国」の住人たちは快適に過ごしているように見えて、実のところは現実世界と地続きの価値観に縛られていたり、仮想世界ならではの不自由さを感じていたりする。『アップロード』ではこのような理想と現実、バーチャルとリアルのギャップをコメディタッチで描いており、興味深く感じる人も多いのではないかしら。

ネイサンの死の謎と、高まるシーズン2への期待

 ここまでほとんど世界観の話しか書いてこなかったけれど、『アップロード』はストーリーもこれまたおもしろい!

 1話で肉体的な「死」を迎え、流されるままにアップロードされてしまったネイサン。レイクビューで暮らす人たちと親交を深める一方、彼の担当 “エンジェル” となったノラと言葉を交わすうちに、やがて2人は惹かれ合うようになる。境界を超えたラブロマンスはたしかにおもしろそう──だけれど、本筋はそこにはない。

 本作の鍵となるのは、ネイサンの死にまつわる謎。

 絶対に事故を起こさないはずの自動運転車は、なぜ事故を起こしてしまったのか。ネイサンの記憶データに欠落が見られるのはどうしてか。彼の “エンジェル” としてノラはそれらの不審点にいち早く気づき、ネイサンもまた、やがてその事実を知ることになる。

 「仮想」と「現実」の双方を舞台に、2人は謎を解き明かすべく動き出す──。

 徐々に謎が明らかになっていくサスペンスドラマとしても、毎回がワクワクドキドキの展開だった。あまりこの手のドラマは見ないこともあってか、思っていた以上にドキドキさせられて、最後は一気に見てしまったほど。予想外の真実と衝撃のラストに、今からシーズン2が楽しみでなりません。

 

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