2019年に“バーチャル”関係で心にぶっ刺さった動画・ライブ・VTuber


019年に印象に残ったVTuber/VR関連コンテンツの話

 2019年は、とにもかくにも「バーチャル」にどっぷりと浸かった1年だった。

 VRのHMDを購入し*1、短くない時間をVRChatで過ごすようになったほか*2、前年以上にVTuber文化に親しむようになり、VRライブやリアルイベントにも足を運ぶようになった。

 界隈の外からも注目される大きなイベントがあり、Twitterトレンドになるほど盛り上がった企画がいくつもあった。一方では、小規模ながらも満足度の高いファンイベントや、大衆受けはしなくてもコアなファンに深く突き刺さる動画があり、はたまたVTuberの魂を決めるオーディションでは、いつもドラマが生まれていたように思う。

 そのひとつひとつを振り返る――のはさすがに無理ゲーだし、正直なところ、自分はそこまで全体を追いきれていない現状がありますので……本記事では、至極個人的な話をしようと思います。

 僕個人が2019年に触れてきた、「バーチャル(VR/VTuber)」に関係のあるコンテンツ。その中でも特に強く印象に残った、心にぶっ刺さるレベルで大好きな動画・ライブ・イベント・VTuber個人について、備忘録代わりにつらつらと書き連ねてみました。

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ココツキ VRMV 『アンドロイドガール』

ココツキ VRMV 『アンドロイドガール』1

CocoTsuki VRMV -Android Girl- | STYLYより

 2人組のバーチャルシンガーユニット『ココツキ』のVRミュージックビデオ。興味本位でHMDをかぶって見に行ったら、想定外の「体験」を堪能させられて語彙が死んだ。

 まず何がヤバいって、演出がすごい。VRを舞台にした「音楽ライブ」はこの時点ですでに接したことがあったけれど、それとはまた違った新鮮さと感動があった。

 歌詞を空中に表示させたり、平面では表現できない派手なエフェクトで周囲を満たしたり――というのは、他のVRライブでも見られる手法。しかし、こちらのVRMVの演出は、それだけにとどまらない。「平面を空間に置き換えて展開されるリッチなMV」以上の、独特の「体験」があったのです。

ココツキ VRMV 『アンドロイドガール』2

CocoTsuki VRMV -Android Girl- | STYLYより

 ただ単に「映像を見せられる」のではなく、「観客にもアクションを要求する」タイプのコンテンツ。MVの途中で舞台がしばしば移り変わり、演者も動き回るため、こちらも視点と立ち位置を変える必要がある。棒立ち状態で鑑賞するわけにはいかず、「次は何がくるんだ……!」とワクワクさせられた。

 さらには、MVの前後にちょっとしたストーリーがあり、それも含めてひとつの世界観を作り出している点も素敵。地下鉄のホームに降りたところでライブが始まり、パフォーマンス中は電車の中にも移動し、終わった後は光の道に導かれながら周囲を探索することに。普通のライブやMVとはまた違う、斬新で刺激的な「体験」となりました。

 ちなみに今月中旬、clusterでVRライブがあるそうですよ!

キヌ『バーチャルYouTuberのいのち』

 2019年、怖いほどに、恐ろしいほどに、深く深くぶっ刺さった作品。なぜ、いまだに2,000回ぽっちしか再生されていないのか、理解できない。

 VTuberには、言うまでもなく人格がある。メタ的な意味での「魂」が云々という話をするまでもなく、彼ら彼女らは個人であり、そこには人の営みがある。たとえリアルとは完全に切り離した状態で活動しているとしても、動画での発言や行動のすべてが台本に沿ったものだとしても、そこには生きた人間がいる。キャラクターではなく。僕が今こうして文章を書いていて、それを読むあなたが生きているように。

 そんなVTuberの「生」を表現する言葉として、「いのち」という3文字は、あまりにも生々しい。どこか間接的な表現にも聞こえる「人格」や「魂」ではなく、ひとつの「いのち」。そんな彼ら彼女らの生の営みを、自身もVTuberであるバーチャル蚕・キヌ@kinu_kaikoさんは、この作中で淡々と紡いでいます。

 バーチャルでありながら「いのち」ある存在としてのVTuberは、しかしながら、常に移ろう存在でもある。活動スタンスが異なれば、肩書きも十人十色。周囲からの見え方や評価もさまざまで、他のVTuberやファンとの関係性も多様。そもそもの定義も不確かで、千差万別の存在。しかし、それは何もVTuber限った話ではありません。「そういういのちであることにおいて、あなたとまったくおんなじだ」と、この映像中で語られるように。

 そして映像のラスト、「やがて17時のサイレンが鳴る」からの語りと演出が、ほんっっっとうに、大好きで大好きでたまらない。こればっかりは、ぜひ実際の映像で堪能してみてください。YouTube版も好きだけれど、STYLYで公開されているアルテマ音楽祭版、その最後の絶叫をVR空間で聞いたときは、本気で鳥肌が立った。しゅきぴ……。

 もう何回も、何十回も再生しているけれど、そのたびに一語一句たりとも逃さず、噛みしめるようにして聴いている。これから初めて触れるという人にも、ぜひそうやって堪能していただきたい。自身もVTuberとして活動している人はもちろん、VTuberが好きで追っている人にも、きっと響く言葉があるはずです。

夜野ねおん『2019.8.13.monologue』

 バーチャル陰陽師見習い・夜野ねおん@neon_bigabigaくんによる、独白。

 サムネイルを見たときの「お? インディーズバンドのおしゃれMVかな?」という第一印象とは裏腹に、BGMはなく、激しい動きもなく、ただただ淡々と紡がれるモノローグ。実写の映像にテキストも交えて進行していく動画は、およそVTuberらしからぬ……と感じる人もいるかもしれない。

 3つの挨拶と、「今あなたはどこにいますか?」という一言から始まる、この動画。いくつもの「?」を画面の向こうへ尋ねつつも、次の瞬間には「わかんないんですよ〜」と自己完結。だって、これはモノローグだから。これは、彼/彼女の動画だから。そして自己紹介動画のようでありながら*3、「バーチャルって何?」と問いかける動画でもある。映像と共にテンポよく移り変わる話題は、取り留めのないことを吐き出しているだけのようでいて、そこには一貫性がある。「夜野ねおん」という一貫性が。

僕の苦しみは、皆さんの目にほぼ触れない。
――ていうか、触れさせない。

エンターテイメントにならない苦悩とか絶望とかが、たしかに僕の中にある。もし僕が、緻密に練り上げられた物語に出てくるキャラクターだったら、この苦しみとかは、その後のドラマチックな展開のための布石なんだと思う。

でも僕はそうじゃない。
物語の中のキャラクターじゃない。
違う世界線を生きる存在じゃない。

2019.8.13.monologue - YouTubeより)

 「この動画のどこが具体的に好きなのか」と、改めて考えると……ちょっとうまく言葉にしづらいのだけれど、強いて言うなら「雰囲気」かしら。

 淡々と紡がれる言葉が、その声色が、ポツポツと切り替わる映像のテンポが、ふわふわと浮かんでいるようでいて実は芯のある主張が、たまらなく好き。聴いていて心地良い。MVでもラジオでもASMRでもないのに、不思議と聴き返したくなる魅力がある。あと、上で引用した箇所を話しきった直後の余白のような一呼吸、めっちゃ好き。

 千差万別の「バーチャル」という概念に改めて思いを馳せたくなる、馳せずにはいられない、そんな動画。投稿されたのは夏だけれど、年明け間もない今こそ、見るのをおすすめしたい動画かも。それと、2019年の「百個怖い話言うまで帰れない放送2019」でトリに選ばれたねおんくんの動画「さうんどおんりー」もいいぞ。

海崎マノン『#マノンの朗読会』

 VR関係のイベントとしては、海崎マノン@okina_manonさんの朗読会も印象に残りました。こちらは、バーチャル朗読家であるマノンさんが毎月1回、VRChat上で定期開催している催しです。

 言わずもがな音声コンテンツである「朗読」を、わざわざVRで聞くことに意味があるのか……と疑問に感じる人もいるかもしれません。朗読音声をYouTubeに投稿したっていいわけだし、VRのHMDをかぶるのも手間。実際、この朗読会もYouTubeライブで視聴可能となっています。

 ところがどっこい。
 ここでもやっぱり、「空間」としてのVRの性質が生きてくる。

 演者であるマノンさん自身は、基本的には棒立ちの状態で朗読しているだけに過ぎません(身振り手振りはありますが)。見た目はかわいらしく、でも同時にマノンさんの普段の所作から紳士的にも感じられるアバターの姿で、テキストを読んでいる。VRライブのように派手な演出やエフェクトがあるわけでもなく、視覚的な情報はほとんどないと言ってもいいでしょう。

 しかし、それをひとつの「空間」として捉えると、また印象が変わってくる。その場所でしか味わえない独特な雰囲気と、ちょっとした特別感があるように感じられるんですよね。

 朗読会に訪れているのは、さまざまな姿をしたアバターたち。パッと見では棒立ちか座っているかの二択であり、朗読中はみんなミュートにしているため音を立てることもない。けれど、時折身じろぎしたり、姿勢を正したりする様子が視界に入ることもある。そのアバターたちのちょっとした動作が、聞こえないはずの呼吸が、「朗読会」という同じ空間を共有していることを強く実感させてくれるのです。

 その実感は、パッケージ化された音声コンテンツでは決して感じ得ないもの。言い換えれば、いわゆる「ライブ感」のようなもの……かしら。指定された時間と場所でのみ開催されるイベントだからこそ、特別に感じられ、同じ空間を共有する人たちに親近感を覚え、しっかりと記憶に残る。そんな気がしています。

 ――なーんて、それっぽいことを書いてみたけれど。
 そんなことより、そもそもマノンさんの朗読がすごいんすよ!

 聞き取りやすい声であるのは言うまでもなく、登場人物の演じ分けも見事。男女の違いみならず、年齢や性格までも自然と想起させられる七色の声色の持ち主。作品によっても読み方を絶妙に変えていて、地の文ですら、時には淡々と重厚に、時には抑揚強く歌うように――などとさまざまに聴こえてきて、とにかく耳が楽しいし、幸せ。

 最近はちょっとタイミングが合わなくていけていないものの、いつも楽しみにしている定期開催イベント。VRChatを始めて間もない人が、最初に参加するイベントとしてもおすすめです。今年もおじゃまさせていただければ……!

バーチャルマーケット

バーチャルマーケット2

バーチャルマーケット2開幕!VR初心者目線の感想と魅力 - ぐるりみち。より

 VRChatと言えば、バーチャルマーケットも外せない。というか、これのおかげでVRの沼にどっぷりと浸かるようになったまである。

 そもそも、タイミングが良すぎたんですよね。自分がVRのHMDを入手したのが2月で、バーチャルマーケット2の開催が3月。まず最初にBeatSaberにハマり、やがてVRChatで過ごすようになり、ワールド巡りをしたり、自撮りをしたり、他人と話したりすることの楽しさを1ヶ月かけて覚えて、すっかり「VRでの過ごし方」を身につけたタイミングでのVケット開催。そりゃあ沼るってもんですよ。

 開催期間中に訪れることのできるいくつものマーケットは、「会場」というよりも、ひとつひとつが独立した「世界」のよう。その街並みを、博覧会を、バザールを、ミュージアムを、ターミナルを巡り歩くだけでも楽しいのに、しかもそこには、数百ものクリエイターさんによる作品が展示されているという。

 そんなの、全力で堪能しにいくに決まってるじゃないですかー! 睡眠時間を削ってでも!!

 正直に言って、僕は不思議で不思議で仕方がないんですよ。あんなにも刺激的で楽しいイベントを、新しいものが大好きなはずのブロガーさんやインフルエンサー諸氏の多くが、完全にスルーしているということが……!

 取材のために遠出する必要もなければ、人混みにうんざりすることもなく、お金もかからないし、いつでも好きなタイミングで体験できる。──手元の! その! パソコン1台で! だのに! なぜ! 今日も今日とて「なんかおもしろいことないかなー」なんてぶーたれているのか! あるよ! 目の前に! カモン!

バーチャルマーケット3が楽しみすぎてそろそろハゲそう - ぐるりみち。

バーチャルマーケット23

 そりゃまあ、ログインするにはある程度のスペックのパソコンが必要だし、どちらかと言えばマイナーな、オタク向けの文化だと捉える向きもあるのでしょうが……。

 それにしても、他の分野では「これは新しい! すごいぞ!」と声を大にして情報発信しているネット民が、思いのほか飛びついていない。この現状が、割と不思議に感じるんですよね……。やっぱりこればっかりは、実際にHMDをかぶってもらわないと伝わらないのかしら。

 何はともあれ、今年もますます拡大を続けるバーチャルマーケット。あんなにも素敵な空間を作り出してくれるクリエイターさんや運営さんたちには、本当に感謝しかありません。次回開催も楽しみにしております! そういえばGW開催だ! やべえ! コミケとかぶってる!!

VRライブ@cluster

輝夜月ライブ2

2ndライブはVRで!輝夜月LIVE感想と「仮想空間で推しと会う」体験 - ぐるりみち。より

 2019年は、VRの音楽ライブに興奮させられっぱなしの1年でもあった。大好きなKMNZのライブに始まり、主にcluster上で開催されたいくつかのVRライブに参戦。

 どれもこれも最高の体験だったけれど……特に印象的だったのが、輝夜月@_KaguyaLunaちゃんの2ndライブ。というのも、「VRを買おう!」と決意したきっかけのひとつが、彼女の1stライブだったので。

 2018年夏、同じくClusterで開催されたVRライブを、自分はライブビューイングで鑑賞。

 想像と期待を遥かに超えるパフォーマンスが映画館のスクリーン上で展開されているのを見て、「興奮しすぎて涙腺が緩む」という謎体験をしてしまったのです。あまりにも興奮しすぎて、逆に「どうして僕はVRでこれを体験できていないんだ!」と悔しく感じてしまったほど。

 結果、ゲーミングPCとHMDをポチったのが、2018年末〜2019年始にかけてのこと。そうして数ヶ月が経った令和初日、ついに念願が叶った格好です。

 映画館の大スクリーンよりも、もっともっと近くで。同じ空間で、間近で、目の前で歌って踊る月ちゃんの姿を見たときの感動は、目がくらみ、圧倒され、ため息の出るような、筆舌に尽くしがたいものでした。――なるほど、これがVRライブか! と。夢のような世界が、気づけば目の前にあったとは!

 さらに、「同じ空間で推しのパフォーマンスを堪能できる」というだけでなく、「どんな演出があるのか」とワクワクさせられるのも、VRならでは。

 同じくclusterで翌月に開催された、くらすたーちゃん@clusterVRのライブ。そこで初めて視界ハックを体験したときは、本気で鳥肌が立った。これこそ現実のライブではあり得ない演出だし、ドキドキと感動で心の臓が爆発するんじゃないかと。VTuberに限らず、アイドルのライブでもこういった演出があったら……いや、ヤバいっすね。うん。ヤバい。マジで(語彙死)。現実に戻ってこられなくなるのでは……?

 「VRライブ」と名のつくイベントすべてに参加したいくらいには心惹かれている分野なのですが、当然そんなお金があるはずもなく。それでも引き続き、今年もVRライブに参戦していきたい所存でございます。

Virtual to LIVE in 両国国技館 2019

『Virtual to LIVE in 両国国技館 2019』林檎もぎれビーム!

にじさんじ初心者が「Virtual to LIVE in 両国」を見て、沼にハマるまで | MoguLiveより

 頻度としてはVRライブのほうが多かったものの、リアルイベントだって忘れちゃいけない。レンタルスペースが会場の小規模なイベントから、大きな箱としては幕張メッセまで。特に年末は、毎週のようにVTuberのイベントが開催されていたような気がする。

 そのどれもが記憶に残るものだったけれど……「2019年」という1年を振り返ってみれば、それは「にじさんじ」の1年だったように思う。

 あまり積極的には追えていなかった自分ですら、にじさんじライバーの話題を目にしない日はなかったんじゃないかというレベルだったから。Twitterを開けば、にじさんじ関係のワードが頻繁にトレンド入りし、委員長の謎企画の告知ツイートにホイホイされ、ぶっ飛んだものからエモいものまで数々のファンアートがタイムラインを埋め尽くし、ニコニコ動画のランキングでは、いつだってギバラが叫んでいた。

『Virtual to LIVE in 両国国技館 2019』

にじさんじ初心者が「Virtual to LIVE in 両国」を見て、沼にハマるまで | MoguLiveより

 そんな2019年の暮れに開催された、『Virtual to LIVE in 両国国技館 2019』。ありがたいことに、自分は取材枠として現地に行かせていただいたのですが……ほんっっっとうに最高だった。何百枚も写真を撮りまくりながら、カメラの影ではマジ泣きしていたくらい。あんなん泣くわい!

 詳しくは記事で書かせていただいているので割愛しますが……とにかく、会場の「熱気」という一点で見れば、にじさんじファンのそれは段違いであり、「凄まじい」の一言に尽きる。当日朝から盛り上がるTwitterに始まり、開場前の会場を取り巻く雰囲気、場内を彩るフラワースタンド、そして開演後の熱狂は、この1年間で味わった中でも最上級のものでした。

紡音れい

 2019年は、前年以上に大勢のVTuberを追うようになった年だった。

 以前までは「Twitterのフォロー数は300程度で抑えておこーっと」なんて決めていた記憶がうっすらとあるけれど、それが今や550オーバー。増えすぎである。VTuberに限らず、各分野のクリエイターさんも積極的にフォローした結果ではあるけれど。

 そんななか、特に好きで応援しているVTuber――と書くと他にもまだまだいるのだけれど――の1人が、紡音れい@tmgnreiちゃんです。Zero Project所属。2019年6月デビュー。

 「天才美少女MIX師」を自称しており、歌をはじめとする動画は自らミックスしている技術勢。他にデザインやプログラムもかじっているらしく、クリエイターとしての目線とスキルも身につけているつよつよVTuber。

 そして何と言っても、ツイ廃である。数百単位のRTを稼ぐこともあり、バズを生み出す能力にも長けている真正ツイッタラー。配信ではたびたびインターネット老人会の寄り合いを開いているので、ビビッときた人は覗いてみてください。

 そんなバズメーカーとしてのTwitterでの立ちふるまいのほか、ゴキブリ襲撃事件を経ての謝罪会見や、運営さんの悪ノリで開催された『へそフェス』なる奇祭*4が注目を集めたりすこともあり、なんとなく「おもしろ枠」としてのイメージも強い彼女。しかし根は真面目で、だからこそ、自分としては安心して推せている実感があります。

 周囲に流されない自分の軸と価値観を持っており、ダメなことにはダメと言える芯の強さがある。同時に、身近なVTuberやリスナーを心底から大切に思っているらしく、それを口だけでなく行動で示す、仲間思いで誠実な一面も。それに、そもそも息をするようにバズったり実績を上げたりしているわけでもなく、試行錯誤と努力の積み重ねによって活動の幅を広げてきた、「VTuber」にかける人一倍の熱意が、彼女にはあります。……配信については、割と息をするようにしてるけど。7時間配信ってなんぞ。生活じゃん。

 ――ってな感じで、ここまでは割と客観的な話(のはず)

 フォロワー数も10,000人を突破し、今や人気VTuberとして注目を集めている彼女。ですがここで、至極個人的で、主観的で、面倒なオタク目線の話をすると、自分にとってれいちゃんは、特に思い入れの強いVTuberなのです。

 きっかけは、SHOWROOMで数週間にわたって開催された、VTuberの魂を決めるオーディション*5。その初日にたまたま覗いた配信で、緊張気味ながらも楽しそうに嬉しそうに話す、声がむちゃくちゃ好みな、 “魂” の候補者さんがいました。

 それが、 “mix師れいちゃん” です。

 周りと比べても用意周到で、リスナーを企画に巻き込もうとするエンターテイナーであり、やれることはやってやるという気概に満ちていた彼女。その一生懸命な姿に感化され、その場で応援することを決意した自分。オーディション期間を経て、彼女は見事にVTuberとしてデビューします。

 その後も、Twitterであれこれと試したり、SHOWROOMのイベントに挑戦したりすることで実績を積み重ね、活動1年目でVTuberのオムニバスCDに参加。オリジナル曲もカッコよく歌いこなし、clusterのイベントでは早くも3Dの姿を披露したほか、リアルイベント出演も多く、今や注目を集める人気VTuberとなりました。

 それが、現在の紡音れいちゃんです。

 要するに、「活動の最初期から追っていたら、そりゃあ思い入れも強くなるよね!」という話。あまりこういうことを書くと「古参面はやめとけ」って言われそうだけれど……でもだって、こんな体験、初めてなんだもの!

 たまたま配信を初回から見ることができて、その翌日には「推します!」と宣言した相手がやがて注目を浴びるようになり、どんどん人気になって多方面で活躍していく。その様子を半年以上にもわたって追いかけられるなんて……こんなにも、刺激的で楽しくて幸せなことはないでしょう! 生まれて初めて紙のファンレターを書いたよ! お手紙っていいね!!

 そうやってれいちゃんを追うようになったことで、なんとなく、アイドルオタクの気持ちがわかった気がする。れいちゃんはアイドルじゃないけど。たぶん。アイドルじゃない……よね?

紡音れい3D

 自分が惹かれた人を応援するのは楽しいし、その頑張りが周囲から評価されれば、自分のことのように嬉しい。そこにあるのは、よく言われる恋心のようなものではなく、好きなアーティストやクリエイターに対する尊敬の念でもなく……なんだろう。強いて言えば、「友達の力になりたい」というのが、一番ニュアンスとしては近いかもしれない。

 ……なーんて見方も、結局のところは自己本位極まりないオタクの主観に過ぎないわけで。それは一応わかっているつもりなので、こうして個人のブログにこっそり書くのにとどめている格好です。これが行き過ぎると厄介者になりかねないんだろうな……。やっぱり距離感は大切。うむ。

 今年も応援すっぞー!
 リアイベも行くぞー!

花譜

 れいちゃんも含め、2019年だけでも新たに知ったVTuberさんは数多く、その一人ひとりの動画や歌、言葉に救われてきた一面があるため、「この人!」と1人だけ選ぶのは難しい。ってか無理っすね!うん!

 ただ、タイトルにも書いた「ぶっ刺さった」という基準で考えたとき。真っ先に思い浮かんだのが、そして深く深く突き刺さっていたのが、花譜@virtual_kafちゃんの歌声でした。

花譜「私論理」

花譜 #49「私論理」 - YouTubeより

 いや、「心にぶっ刺さった」どころか、「全身が串刺し」である。針山地獄を何周もしてきたのかというくらい、めった刺しである。針山天国ですね。

 「花譜」というバーチャルシンガーについては、詳しく書き始めると長くなってしまいそうですし、もっと相応しい記事があると思うので、ここでは軽く触れるにとどめますが……。にほんのどこかにいる16さい。うたをうたうよ。かわいい。

 彼女自身の歌声が魅力的なのは言うまでもないのですが、それだけではありません。楽曲を提供しているカンザキイオリさんを始めとしたクリエイターさんたちや、彼女をプロデュースしているスタッフさん。そのチーム全体を含めて、大好き……というか、ある種の尊敬の念を感じているんですよね*6音楽や映像だけでない、彼女たちが描き出す世界観すべてがたまらなく大好きで、ぶっ刺さりまくっていた1年間でした。

 まず1曲挙げるなら、YouTubeの再生回数も特に多い『過去を喰らう』。YouTubeで広告も打っていたと思うので、聞いたことのある人も多いかもしれない。彼女の歌を初めて聞く人にもおすすめしやすそうな、アップテンポなロックナンバー。新宿を巡るMVもいいぞ。

 僕自身、彼女の歌声にどっぷりと浸かることになったのは、ちょうどこの曲が投稿される前くらいの時期でした。また、オリジナル曲を鬼のようにリピートしていた一方で、カバー曲も外せない。世間の流行りや人気とは無関係に「わたしがすきなうたをうたうよ」と数々の曲を歌う、その自由なスタンスに惹かれていたような気もする。

 最初のオリジナル曲『糸』を初めて聴いたときの衝撃、『心臓と絡繰』で紡がれる言葉の奔流に相対したときの興奮、幾度となく自分に問いかけるほどに焼き付いた『魔女』のワンフレーズ「今己を証明する言葉に魂はあるか?」――などなど、本当は全部の曲についてあれこれと書きたいのだけれど。

 そうすると長くなるので、もう1曲だけ。すでに何十回と聴いているにもかかわらず、いまだに心を打たれ、どうにかなってしまいそうになる曲がある。それが、『不可解』です。

 「ポエトリーリーディングっていいよね」とか「カンザキイオリさんの言葉選びがパない」とか「これを情感たっぷりに歌いこなす花譜ちゃんはマジで10代なのか」とか「ライブの演出がよかった」とか。いろいろな切り口から「しゅき……」な気持ちを並べて、絶賛の言葉にのせて、書き連ねることはできる。

 でも、そういうことじゃないんです。

 好きとか嫌いとか、大人とか子供とか、家族とか他人とか、男とか女とか、友情とか恋心とか、リアルとかネットとか。いつだってあれこれと分類され、区別され、白黒つけられ、切り捨てられ、それでも曖昧模糊で灰色であることを志向し、嗜好し、思考してきたつもりの自分にとって、文字どおり「不可解」であることを紡いだこの歌は、初めて聴いたその瞬間に、まるで自分の存在を全肯定されたような気持ちになれるものだったのです。

踏み潰された涙が固まってできた、
この不可解な感情に名前はない。

 「曖昧でもいいじゃん」という、どこかゆるい肯定――諦めにも似た現状維持――ではなく、「不可解な感情に名前はない」という、強い断言。

 この曲を聴いているあいだはいつもぐわんぐわんと感情を揺り動かされているのだけれど、その中でも、このフレーズは極上。淡々と紡がれてきたここまでの歌詞が、震えるように、精一杯に、絞り出すように叫ばれた「名前はない」の一言で、一気に昇華されるような。瞬間、あふれる感情の制御が効かなくなり、もう何度泣かされてしまったかわからない。我ながら「さすがに思い入れが強すぎでは?」と も思うけれど。

花譜『命に嫌われている(Prayer Ver.)』

花譜 #33「命に嫌われている(Prayer Ver.)」 - YouTubeより

 考えてみれば、そもそも自分が「VTuber」という存在に惹かれたのだって、この曲で語られる「不可解さ」がそこにあったからだと思う。

 “バーチャル” な存在でありながら、リアルにも現れることがあり、一様にキャラクターの姿をしているようでいて、その「魂」の在り方や活動スタンスは十人十色。いまだに「これ!」と決められた定義がなく、彼ら彼女ら自身も、そしてVTuberに携わるクリエイターさんたちも、あれこれと試行錯誤を続けている。現実と仮想の狭間で生き生きと動き回っているその姿が、カッコよく、愛おしく、輝いて見えるから。だから僕は、僕らは、そんな人たちを心から応援したいと感じているのです。

花譜『そして花になる』

花譜 #27「そして花になる」 - YouTubeより

 おそらくはそんな「不確かさ」をひとつのテーマとして紡いできた花譜ちゃんと、カンザキイオリさんと、そのチームのみなさん、そしてKAMITSUBAKI STUDIOの面々が、今年はどのような世界を見せてくれるのか。まっこと楽しみでなりません。「好き」を等身大の歌声で紡ぐ彼女にならって、僕も初心にかえって、自分の「好き」を素直に表現していきたい所存。

 ライブチケット、取れますように……!

“不可解”は分かり得ない。だからこそ“不可解”は美しい

花譜ファーストライブ「不可解」への想い|不確かなものをつくります。|noteより)

 

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