すごい筋肉と、すごい筋肉が、出会った。
すごい筋肉とすごい筋肉は、親友となった。
しかしすごい筋肉には、それぞれに使命があった。
1人のすごい筋肉は、さらわれた家族を救うために。
1人のすごい筋肉は、故郷に誓った大義を果たすために。
猛々しい胸毛の茂るその胸に、秘密を宿した2人。
しかし2人は、やがて互いの立場を知ることになる。
友が敵だと知り、葛藤を大胸筋に宿しつつ。
ついに激突する、すごい筋肉とすごい筋肉。
2人の友情の行方やいかに――。
『RRR』はいいぞ
約束された勝利の傑作映画『RRR(アールアールアール)』を観てきた。
ネットではすでに話題になっているとおり、あの『バーフバリ』のラージャマウリ監督の最新作――とくれば、そりゃあもうおもしろくないはずがない。なので、先に書いておきます。――少しでもあの“伝説”に胸を震わせられた経験のある人は、今すぐ映画館へ走ろう。こんな文章を読んでいる場合じゃない。集え、マヒシュマティの民よ。
物語の舞台は、1920年のインド。
ある種の「神話」であり文字どおりの「伝説」だった『バーフバリ』と比べると、限りなく現代に近い近代だ。歴史上は「イギリス領インド帝国」として支配されていた時代であり、「帝国主義の支配体制下にある植民地」の目線で描かれる物語とも言える。すなわち、大英帝国は悪である。ゆるせねえ……!
そんな時代背景やインド神話の要素も多分に含まれており、知っていれば作品を理解する手助けとなるのは間違いない……のだけれど、まったく「なんもわからん」状態でも大丈夫。冒頭でも書いたとおり、本作は「すごい筋肉とすごい筋肉」の物語である。ちなみに、「すごい筋肉」と書いて「英雄(ヒーロー)」と読む。
そう、これは、2人の筋肉の英雄譚。“バーフバリ”という我らが王を称えたように、2人の英雄の誕生を純真な目で追っていればいい。その途上で生まれる友情と、汗と誇りと砂埃が舞い踊る白熱キレキレダンス、突きつけられた真実によって生まれる葛藤と裏切り、猛り狂う炎と荒れ狂う水の能力者バトル、そして始まる“ゆかいなどうぶつさんパーティー”を見逃さずにいればOKだ。どうぶつさんたちだいしゅうごうだわいわい。
3時間は長い……が、筋肉がすべてを包み込んでくれる
「この映画の見どころはどこにあるのか」と問われれば、「ぜんぶ」と答えるのが、我ら大地女神の子である。しかし「さすがに3時間の映画の『全部』を見どころと答えるのは無理があるのでは?」と、怪訝に思う英国人もきっといることだろう。――慌てるんじゃあない。“ナートゥ”をご存知か?
というかむしろ、「3時間ってどないやねん」という問題のほうが気になって、二の足を踏んでいる人のほうが多いかもしれない。Togetterでもそんなまとめがバズっていたし、たしかに3時間は長い。僕自身も実際、「ウオオオオオオオオオ!!! この展開!! いよいよクライマックスか!?」と手に汗握る展開を眺めていたら、次の瞬間、スクリーンに表示された「INTERRRBAL(インターーーバル)」のBIGFONTを見て、「嘘だろ!?!?」と声に出して笑いそうになったくらいである。いや、アレで半分て。直前までの展開、完全に1クールアニメの最終回だったよ?
そうなのだ。あまりにもいろいろなものが濃密すぎて、「INTERRRBAL」の文字が表示されるまでの前半だけでも、マジでアニメ1クール分の熱量と満足感を得られてしまっていたのです。ぶっちゃけあの瞬間は、「え、これ以上に盛り上がるん……?」と一瞬よぎるくらいには盛り上がってたし満足しちゃってた。第1部、完ッ!
ところがどっこい。「INTERRRBAL(インターバルとは言ってない)(そのままスタート)」の直後からの展開は、まさしく「2クール目、始まったな……」というワクワク感と、終盤に向けての期待がさらに高まるストーリーになっているのだ。……というかこれ、『バーフバリ』の2部作を3時間に濃縮したかのような構造になってません!? 主人公の過去が語られ、「うわあああ……(泣)」となったあとの王道展開。オイオイたまらねぇなァ!?
ともかく、「3時間の全部が見どころ」なのは間違いない。と同時に、「3時間はたしかに長い」し、本作が「要素てんこ盛りでパワフルすぎるあれやこれやを摂取させられる」タイプの作品であることも、また紛れもない事実。上映前に厠へGOするのは言わずもがな、人によっては疲れる映画かもしれない……とも、ちょっとは思ってます。はい。
でも一方で、「自分の場合はまったく疲れなかった」こともお伝えしておきたいところ。個人の感想なんて当てにはならないと思いますが、でも実のところ、「ひさしぶりの映画館で3時間は大丈夫かしら……?」という不安もあったんですよね。というのも映画館に行くのは『シン・ウルトラマン』以来で、実に半年ぶりの体験だったので。――極上爆音上映。私の好きな言葉です。
しかし終わってみれば、我が身に疲労など一片たりとも存在せず。むしろ猛々しくも優しい2人の筋肉にやわらかく抱かれたような感覚すらあり、この棒切れのようなヒョロい胸にも小さな火が宿されたように思える。要するに、やる気に満ち満ちている。ちょっと試しに、土埃を巻き起こしながら、母神に捧げる渾身の踊りに挑戦したい。そう、オタクはすぐに影響されるのだ。腰をやらないように気をつけつつ、ナートゥナートゥナトゥしてみたい。
アクロバティックマッスルレスキューに震える
そうそう、「見どころ」の話で、ひとつ印象に残っている部分がありました。
映画序盤、すごい筋肉とすごい筋肉のキャラクター背景を1人ずつ個別に描写したうえで、2人が初めて出会う場面。少年のピンチに際して、ジェスチャーとアイコンタクトだけで意思疎通し、一言たりとも言葉を交わさずに、アクロバティックマッスルレスキューを成し遂げるシーン。そしてそのまますごい筋肉とすごい筋肉が激突し、あれがこうなってドーン!! するまでの流れ。
あまりにも美しすぎて、「ワァ……!」って声が出そうになっちゃったもん。それ以外でも「そうはならんやろ」「いや、でも筋肉だからな……」と納得するシーンがめちゃくちゃ多くて、2時間を過ぎる頃には、ニヤニヤしすぎて上がりすぎた口角がマスクを突き破ってた気がする。うん。
そんなこんなで、「『RRR』はいいぞ」という話でした。応援上映……行きてえ……! おぼん……叩きてえ……! みんなで「Shoot」してえ……!
あ、そういえばこの記事のタイトルの件についてすっかり忘れてたんだけど、例によって立川シネマシティの極上音響上映で観ました。つよつよスピーカーから鳴り響く重低音を、ナートゥのビートを、全身で味わえる極上体験。飛ぶぞ。
――というわけで、本作が少しでも気になっているそこのあなた!
この極上の映画のために休日を“装填”し、
最高の鑑賞体験のために良い座席を“狙った”ら、
あとは自分という弾丸を映画館へ向かって“撃つ”だけだ。