ぐるりみち。

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過去最高にやる気にさせられたノート術『バレットジャーナル』公式ガイドを読んだ

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 優れたハウツー本の条件って、なんだろう?

 ハウツー本を一言で説明するなら、「初心者向けの解説書」。わかりやすく親切な、「学校の先生」のような存在だと言える。新たに学びを志した人が歩く道筋を整え、彼らが迷ったり立ち止まったりしないよう、「歩き方」を教えてくれる指南役。教科書であり、地図であり、コンパスでもあるハウツー本は、長い長い学びの道の第一歩を支えてくれる、優秀な道連れだ。

 ただし、それはあくまでも最低条件。
 優れたハウツー本は、その先の風景も見せてくれる。

 読んでいる読者の目線でも、「実践することで何かが変わりそう!」だと強く実感できる。最初の一歩を後押しするのみならず、その道行きにある風景を自然と想像させ、読む人の胸を高鳴らせてくれる。優秀なハウツー本には得てしてそのような一面があり、人をワクワクさせる力があると思うのです。

 その点、今回の本は大当たり。と言うのも、これまで読んだハウツー本の中でも、過去最高に “ワクワクさせられる” 1冊となったからです。それが、『バレットジャーナル』。数年前から日本でも話題になり、気になっていたものの、なんとなく遠目に眺めるだけだったノート術。その考案者が著した公式ガイドブックです。

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意識が高い人向けのノート術──ではなかった

 まずは試しに、「#bulletjournal」「#バレットジャーナル」などのハッシュタグを検索してみていただきたい。きっとそこには──InstagramにせよTwitterにせよ──おしゃれで、スタイリッシュで、色とりどりの、キラキラした、デザイン性の高い、個性豊かなノートが見て取れるはずだ。

 それは、デザインスキルもなければ絵も描けない自分のような人間とは、明らかに無縁の世界。そんな光景を見てしまえば、次のように考えるのも自然な流れでございましょう。すなわち「バレットジャーナル」とは、独創性と創作意欲に満ちあふれた、クリエイティブな人たち向けのノート術なのではないか──と。

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#bulletjournal - Instagram / #バレットジャーナル - Instagram

 ところがどっこい。そのような見た目の美しさや格好良さといったデザイン性は、どうやらこのノート術の本質ではないらしい。

 そう指摘されて、改めて前述のハッシュタグで投稿されている写真を追ってみる。すると中には、明らかに無骨で、ビジネスマンのスケジュール帳じみた、単なるメモ帳にしか見えないノートも存在していることがわかる。これはいったい、どういうことだろうか。

 そもそも「バレットジャーナル」の本質は、名称にも含まれている「バレット」にある。「弾丸」の意味を持つ「Bullet」がここで表しているのは、ありとあらゆるメモでよく見かける「」の記号。そう、バレットジャーナルは、なんてことのない「箇条書き」を中心に据えたノート術なのです。

ただの“箇条書き”によって明かされる、本当の自分の姿

 でも「箇条書き」なんて基本中の基本だし、小学生でも知っている。独自にアレンジするにしても限界があるし、つまるところはただの「リスト」に過ぎない。それが、はたして世界的なブームになるものだろうか。そして、その手法をまとめた本が、29もの国で刊行される事態にまで発展するものだろうか。

 なぜ、バレットジャーナルは、これほど注目されているのだろう?

 ここで、本記事の冒頭に書いた「優れたハウツー本」の話を思い出してほしい。優秀なハウツー本は、方法論を読者に示し、最初の一歩を後押しするだけでなく、その道行きにある風景をも自然と想像させてくれる。実践することで「何かが変わりそうだ」と読む人の胸を高鳴らせ、行動へと突き動かす魅力がある。

 言い換えれば、優れたハウツー本は「手段」を「手段」として示しつつ、その先にある「目的」あるいは「結果」をも同時に示している

 ハウツーはあくまでも「手段」に過ぎない。重要なのは、その手段を用いることで得られる「結果」と、そこに至るまでの道筋だ。本の中で示された方法論を実践することによって、具体的に何が得られるのか──。そのような点も明らかにしているハウツー本は読んでいて楽しいし、とても魅力的に感じられる。

 その点において、本書は非の打ち所がないように読めたんですよね。

 手段としての「バレットジャーナル」は、「ノートの書き方」や「メモの取り方」をまとめたもの。でも同時に、そのガイドブックである本書『バレットジャーナル』は、それ以上の価値を示している。このノート術が目指す「目的」に始まり、実践することによって得られる「結果」を示しつつ、さらには書くことの楽しさと、最終的に獲得できるより良い未来をも提示しているのだ。

本書は、このデジタル時代に自分の居場所を見つけようと苦戦しているすべての人に向けた本だ。

(ライダー・キャロル著『バレットジャーナル』P.26より)

 膨大な情報の波にさらされ、途切れることのないSNSの投稿を追いかける日々。そんななかであえて「ノートを書く」時間を設け、一呼吸置いてみてはどうだろう──という提案。バレットジャーナルは、本当に重要なことに集中し、自分にとって大切なものを再考するための「アナログな避難所」を提供してくれる

 本書で示される方法論──スケジュールやタスクの管理方法、メモの取り方や効率的なノートのまとめ方など──は、あくまでも目的を達成するための「手段」に過ぎない。それ以上に大切な考え方として、バレットジャーナルは「Why」を繰り返し己に問い掛けることを推奨している。

 日々の「What」や「How」をメモとして残しつつ、「自分は『なぜ』それをしているのか」を自身に問い掛け続ける。そうすることによって不要なものを排除し、自分が心底から求めているものを明らかにし、「いま、ここ」に専念させる。それを続ければ、やがては人生をも変えることができる──。バレットジャーナルの目的は、日々の積み重ねによって “人生を変える” ことにあるのだ。

バレットジャーナルを活用すれば、仕事でもプライベートでも「自分への理解を深める」ことができる。日々の生活でしばし足を止め、大切なことを細かく書きだすというシンプルな行為は、ただの整理術ではおさまらない。「自分自身」や「心から大切に思っているもの」と再びつながれるようになるからだ。

(ライダー・キャロル著『バレットジャーナル』P.29より)

 ノート術のひとつである以上、当然ながら向き不向きはある。それに、ご覧のとおり自己啓発的な要素も強いため、忌避感を覚える人も中にはいるかもしれない。長々と書かれている筆者の思想を読んで、「御託はいいから手段だけ教えてくれよ」と、辟易とする人がいても不思議ではない。

 ただ、自分としてはそのような部分も含めて強く共感できたし、だからこそ、過去に類を見ないほどやる気になっている、という現状もある。やるっきゃない。書くっきゃない。とっておきのノートを準備し、文房具を買い、モチベーションMAXで取り組み始めている。

 ──とまあこれだけ絶賛してしまえば、どんなにサボり癖のある人間でも、実践せずにはいられないわけで。ハッシュタグ付きで投稿されているような素敵なノートは作れないけれど……それでも本当に、ただの箇条書きを積み重ねることによって、 “人生が変わる” のかどうか。我ながら見ものでござる。

 まずは何ヶ月か、実践あるのみ。
 慣れ親しんだ紙とペンを引っ提げ、新しい最初の一歩を、いざ。

 

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