ご近所異世界転生のススメ


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2018年に撮った写真を雑然と並べただけ - ぐるりみち。

 自慢じゃないけれど、僕は海外に行ったことがない。

 ちょっとイイトコの高校に進学した友人が「修学旅行はLAを満喫しましたわよオホホ」と話し、大学時代にウェイ系のサークルに所属していた学友が「卒業旅行はワイハをエンジョイしてきたぜウェーイww」と海外体験に話を咲かせる傍らで、取って付けたようなニコニコ顔で「え~! すっご~い!」と相槌を打つ。それが僕だ。

 誤解のないように言っておきたいのですが、別に彼らが羨ましいわけではございません。

 アメリカ西海岸に憧れなぞありませんし、キラキラと輝くビーチで「アローハー!」と叫びながら泳ぐなんてガラじゃない。ユニバーサル・スタジオ・ハリウッドでスポンジボブと記念撮影したいなんて考えたことは数えるほどしかないし、南国の青空の下で透き通るような海でプカプカと浮かぶ自分の姿を夢に見たこともあまりない。

 

 ──そう、別に、羨ましくなんて、ないんだから、ね!

 

 まあそんな「お約束」としての現地観光はさておき、自らの足で異国の地に立ってみたいという気持ちはあります。

 「自分探しの旅」と称してアジアを巡ったりなんだりするのではなく、単純に「異文化に触れてみたい」という思い。自分が暮らしてきた「日常」とは遠く離れた街の、「非日常」的な空気に身を置いてみたいという欲求。そんな「非日常」のわかりやすい形のひとつが、「外国」という異世界なのだ。

 とは言え、同時にこうも思う。「異世界」と表現すると大層なものにも感じるけれど、実はそんなに珍しいものでもないのでは──?

 北は北海道、南は高知、西は北九州まで足を伸ばしたことはあるものの、それより外の世界を知らない自分。ただ、父親の仕事の都合で幼い頃から各地を転々としていたこともあり、見方によっては、訪れる場所訪れる場所が「異世界」だったと捉えることもできるんじゃないかと。

 札幌から埼玉に引っ越したときは「あったけえ!」と感じただろうし、茨城に引っ越したときは「すげえ! これが方言か!」と謎の感動を抱いた覚えがあんだっぺ。取って付けたような「だっぺ」を使おうとしたところ、サッカークラブの監督から「さいなぁ!」と全力キックしたボールをぶつけられたのも、今となっては良い思い出だ。──方言とはすなわち、物理攻撃である。

 そして何より、思春期を陸無し県・埼玉で過ごした自分にとって、「海」とはすなわち「異世界」を指すものでもあるのだ*1。我らサイタマゲットー民は海を見ると途端に我を失い、諸々の症状を発症することがある。たとえば「ウェミダー!」と叫びながら興奮状態に陥ったり、それによって全身の血が逆流したり……そして最悪の場合、死に至る*2ちくしょう……瀬川……川井……川島……みんな、幸せそうな顔をして逝きやがって……。

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 ともあれ、埼玉県民にとっての「異世界」が海であるように、未知なる世界への入り口はそこら中に存在している

 一軒家で育った人からすれば、ニュータウンの構造が珍しく感じられるかもしれない。いつもチェーン店で食事をしている人が、ふらっと入ったスナックで新境地を切り開くかもしれない。インドア派がアニメやマンガをきっかけに、キャンプや山登りやロードバイクに目覚めるかもしれない*3

 ただし昨今は、「異世界だと思ったら沼だった」なんてことも珍しくない。みんな、友人からの誘いの手招きには気を付けような! お兄さんとの約束だぞ!(親指を立てながらVTuber沼へ沈みつつ*4

 ──そう、トラックにひかれたり、駅のホームに飛びこんだり、暴漢に襲われたりして命を落とすまでもなく、異世界への入り口はそこら中にあり、転生したり召喚されたりする必要もなく、ふらっと迷いこむことができるのだ。Welcome to ようこそジャパリパーク。ザナルカンドにて。ハルケギニアぁああああ!!

 極端な話、「帰り道にいつもと違う場所で曲がってみた」だけでもひょっこりと顔を覗かせてくれることがある。それこそが、異世界くんなのです。

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 ちなみに、彼らは「猫」の顔をしていることが多い。「異世界体験&異文化交流としての猫カツ」は個人的にもおすすめしたい趣味なので、気が向いたら書いてみようと思います。

 

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