GWにおすすめの本10冊/読みたい本5冊


 本記事では、「GW期間中にさっくりと読めそうなおすすめ本10冊」「個人的に読みたい(読むつもりの)本5冊」をまとめています。よかったら参考にどぞー。

2019年版はこちら↓

 

割とさっくり読めるおすすめ本

都内の8つの公園を舞台にした、あたたかな“人間関係”の物語『東京公園』

 ポカポカと暖かい連休にこそおすすめの1冊。水元公園、 日比谷公園、砧公園、洗足池公園、世田谷公園、和田堀公園、行船公園、井の頭公園――都内の8つの公園を舞台に描かれるのは、人生の「途中」の物語。

 主人公は、北海道から上京した大学生。普段は大学で勉学に励み、友人と同じ屋根の下で過ごす一方で、幼いころに亡くなった母親の影響から写真家を志し、都内の公園で「家族写真」を撮影する日々を送っていた。

 そんなある日、たまたま出会ったイケメンサラリーマンから「妻を尾行して写真を撮って欲しい」という依頼を受けた彼。晴れた日には幼い娘とともに都内の公園を巡る若い人妻を撮影しているうち、好意とも関心とも言える複雑な感情を抱き始める主人公。血のつながらない姉や元カノといった彼の周囲の人間も巻き込みつつ、学生時代の内面とその変化を描いた小説だ。

 「恋愛モノ」や「家族モノ」といった枠に限定するのではなく、あくまで純粋な「人間関係」に焦点を当てているような描写は思いのほか新鮮で、読後感はとても心地の良いものだった。当たり前に日常を過ごしていると忘れてしまいがちな、一瞬一瞬を大切にする「途中」という時間軸の描き方が素敵。登場人物の誰もが魅力的な、暖かく優しい作品です。

感想記事 『東京公園』人生の「途中」を誰かと寄り添い合えるのは素敵だなって

友との約束を守“らない”ために走る、現代版メロス『新釈 走れメロス 他四篇』

 森見登美彦さんの “新釈 ”によって蘇った、近代日本文学作品の短編集。

 収録作品は、京都市内を駆け巡る『走れメロス』のほか、アパートに引きこもり小説を書き続ける大学生の『山月記』、文化祭の映画制作にまつわる『藪の中』、人気小説家の愛と情熱の喪失を描いた『桜の森の満開の下』、以上の4篇のキャラクターが登場する『百物語』の5篇となっている。

 パロディが色濃く、作者もノリノリで書いたと思しき『走れメロス』が爆笑必至である一方、『桜の森の満開の下』のように淡々と進み余韻が味わい深い物語も魅力的。

 元ネタの文学作品との「比較」を楽しむも良し、過去の筆者の作品とのリンクを探して読むも良し(「詭弁論部」や「パンツ番長戦」など)、それら要素は鑑みず純粋に物語を楽しむも良し。手に取った各々がさまざまに楽しめる、万人におすすめできる1冊です。――畢竟、面白きことは良きことなり!

感想記事 『新釈 走れメロス』友との約束を守“らない”ために走る、現代版メロス

スピルバーグによる映画版が進行中のスーパー特撮大戦『ゲームウォーズ』

 スティーブン・スピルバーグ監督が映画版を制作中の、ベストセラー小説。『ソードアート・オンライン』や『.hack』のような仮想世界が舞台の作品と聞いて読みはじめてみたところ、想像以上におもしろかった。

 上巻こそ淡々と話が進んでいく印象を受けたものの、下巻に入ってからの怒涛の展開と、終盤のアクションシーンがぶっ飛びすぎていて最高。一口に言えば、「スーパーロボット大戦」ならぬ「スーパー特撮大戦」である。ガンダム、エヴァンゲリオン、ライディーン、ミネルバX、さらにはウルトラマンにメカゴジラも登場し、激闘を繰り広げるのだ。しかも主人公機は、ニコニコ動画が好きな人なら一度は見たことのあるだろう、 “アレ” である。

 もちろん、特撮云々を知っていなくても楽しめる作品ではありますが、特に80年代アメリカのカルチャーを知っている人にとっては、それらへの愛やオマージュがふんだんに散りばめられているらしく、最高に楽しめるのではないかしら。映画版も楽しみな作品です。

感想記事 『ゲームウォーズ』ヴァーチャル空間で日本のロボットが大暴れするアメリカ小説

“人類のバッドエンド”後が描かれる、切なさあふれる終末モノ『終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?』

 現在、アニメ版が放送中の『すかすか』。

 ライトノベルの1巻としては、何とも言えない不思議な読後感だったことを覚えている。実は本作は別作品の「番外編」であり「アフターストーリー」であり、本当は別の「本編」があるんじゃないかと(バッドエンドだけれど)、そう思えてしまうような物語。人類滅亡後の世界を描いた、いわゆる「終末モノ」の系譜に連なる作品だ。

 てっきり変化球を狙った作品なのかと思って読みはじめてみたら、むしろ「終末モノ」としては王道っぽい展開が胸にしみる。ただ一人残され、 “終わってしまった世界” を絶望のなかで生きる主人公と、生存本能がなくただただ消費されるだけの妖精たちの関係性は、どこか切なくもあたたかい。

 とは言え、巻が進むごとに徐々に世界の謎が明らかになり、物語展開もかなり鬱々した咆哮へと移り変わっていくのだけれど……。ひとまずは1巻で雰囲気を掴み、ちょっとでも気になったら3巻までは読んでいただきたいところ。

猫の、猫による、猫のためのハウツー本『猫語の教科書』

 冬の寒さもどこへやら。すっかり暖かくなったこの時期には、あちこちで日なたぼっこに勤しむお猫さまの姿が見られます。そんな季節には、彼ら彼女らの生態を研究してみるのも悪くない――ということで思い浮かんだのが本書、『猫語の教科書』です。

 いざページを開いてみると、本書は次のような、驚くべき前書きから始まっております。「友人の編集者の玄関に届けられた暗号めいた原稿を解読してみたら、著者が猫だった」という。

 そう、本書は簡単に言えば、「猫の、猫による、猫のためのハウツー本」なのです。気高きイエ猫さま(と書くと、筆者のお猫氏はお怒りになるかもしれません)によって紐解かれるのは、人間の家を乗っ取るための19の方法。 “乗っ取る” と聞くと穏やかじゃありませんが、それは同時に「ヒトとの付き合い方」としての側面も強く、ヒトたる自分も興味深く読むことができました。

 ……そういえば、某 “文学少女” な先輩は、ギャリコの作品を「火照った心をさまし、癒してくれる最上級のソルベの味」と表現していたけれど……本書は、ちょっと毛玉っぽそう。

感想記事 『猫語の教科書』愚かなる人間の家を乗っ取るための19の方法

読書の不確実性を再考する世界的ベストセラー『読んでいない本について堂々と語る方法』

 「読書論」を説いた本としては、『読書について』や『本を読む本』を読んでおけばまず間違いないし、勧める人が多い印象……だけれど、連休でさっくり読むには硬派すぎるかもしれない。

 そこでパッと思い浮かんだのが、この『読んでいない本について堂々と語る方法』だ。これまでにいくつかの読書論を読んできたけれど、そのどれとも異なりながら、いずれの要素もはらんでいるように見える、エッジの効いた「書物」に対する考え方が書かれている。

 そもそも「本」あるいは「読書」とはなんぞや、という視点から始まり、古今東西の出典を参照しつつ紐解かれていくなかで語られるのは、その不確実性。あまりに曖昧な「本」の存在と「読書」という行為を再定義することによって、それらに対する高尚なイメージをぶっ壊し、ハードルを下げてくれる内容となっている。

 多種多彩な本が事例として引用・紹介されていることから、ある種のブックリストとしても使えそう。一部の小説に関してはネタバレまで書かれているものの、思わず手に取って読みたくなるような要約と紹介がされており、気になる本を見つける指針ともなりうる1冊です。

感想記事 読了して騙されたことに気づく『読んでいない本について堂々と語る方法』

初心者の最初の1冊におすすめのデザイン入門書『なるほどデザイン』

 さっくり読めるデザインの入門書と言えば、やっぱりこれ。「デザイン」の “デ” の字もわからない自分でも楽しく読むことができたので、最初の1冊におすすめできるかと。

 サブタイトルに “目で見て楽しむ” と挿入されているとおり、図解・イラスト・写真が多用されており、視覚的にわかりやすく理解しやすいのが大きな魅力。それぞれの説明項目で具体例を示しつつ、「良いデザイン」と「悪いデザイン」をしっかりと比較してくれている。

 それこそ「なるほど!」と頷きながら読み進めることができる1冊として、安定感は抜群。とにかく間口が広く、「デザイン」に対する関心を間違いなく強めてくれるだろう1冊です。

感想記事 『なるほどデザイン』難しそうなデザインに「なるほど!」と頷ける入門書

「普通」や「常識」とは違った考え方の指針をゆるーく示す『持たない幸福論』

 少々、意識の高い本が続いてしまったので、バランスを取るために……と書くと語弊があるかもしれないけれど。休日にさっくりと読めて、休み明けにはいい意味で力を抜いて前向きになれそうな本として、phaさんの著書を1冊。

 『持たない幸福論』で説明されているのは、おなじみ “プロニート” である筆者による、「生きづらさ」を緩和するための考え方。ただし、「会社員は辞めとけ!」「こういうのは良くない!」といった強い主張はなく、ゆるーく選択肢を提示するような書き口になっている。

 「僕はこういう風に考えていますよー」くらいの感覚で受け止められる口調で、とてもゆるゆると読み進められる文章と構成は、変に力を入れずに読むことができてちょうどいい。

 「それはおかしいからこうするべき!」と断言するようなことはせず、一般的に「普通」と言われる価値観の優位性や歴史に関しては客観的に分析しつつ、「それでも辛いなら、逃げ出せばいい」と別の選択肢を示すような言説。日々をあくせく過ごしている人に大小さまざまな感慨をもたらすであろう1冊として、幅広い世代に勧めたい。

感想記事 『持たない幸福論』“普通”や“常識”を生きづらく感じる人へ

休み明けから実践可能!効率的なメモの活かし方『すごいメモ。』

 休み明けに実践できて、すぐに役立ちそうで、しかも休日の数時間でちゃちゃっと読めて、さらに読みやすい実用書――と考えていて出てきたのが、少し前に読んだ本書『すごいメモ。』だ。

 端的に言えば、コピーライターである筆者が実践している「メモ術」をまとめたハウツー本。ただし「メモ術」というよりは、「アイデア本」としての要素が色濃くなっている印象も受けた。「メモ」を媒介に、仕事を効率的に進めるための「アイデア」へと結びつけるようなイメージ。

 メモの持つメリットとして「考えるきっかけをつくる」ことを提示し、そのための方法論として、3つの分類で計14個のメソッドを紹介。メモによって仕事の生産性を高める考え方、走り書きを腐らせず使うためのメモの活かし方が丁寧かつわかりやすくまとめられており、読み終えたらすぐにでも実践できそうな点も嬉しい。勉強に仕事に生活に、あらゆる場面で役立つ「メモ」を身につけたい人におすすめです。

感想記事 効率的な“メモの活かし方”とは?14の手法から紐解く『すごいメモ。』の書き方

目指すは「完読される文章」ただ一点!『新しい文章力の教室』

 ブログ関係の本、特に「文章術」に関する本も1冊くらいは――とくりゃあ、真っ先に挙がるのはやっぱりこれ。「文章力」の基礎を学ぶことができ、しかもネットの文脈に理解の深い人によるハウツー本と言えば、ナタリーの元編集長である筆者が書いた本書を置いてほかにない。

 創作、論文、ビジネス文書、ネットなど、一口に「文章」と言っても多岐にわたる今、「文章力」を1冊の本で取り扱うのは無理があると思っていた。そんな諦観を見事にぶち壊してくれた1冊。

 冒頭で「良い文章とは完読される文章である」と断言することで、それを共通の目標とし、さまざまな文章に応用できる「書き方」を提案している。「上手な文章を書くようにはこのような方法をとる」という形ではなく、「完読される文章を書くためにはこういった書き方をしない」という書き口で、「しないこと」を前提にした解説となっているのも特徴だ。

 言うなれば、「かくあるべし」と型にはめこむのではなく、「してはいけない」ことを示すことによって、読み手に考える余地と表現の幅を持たせようとしている――そのようにも読めた。もちろん、型に倣ってこそ得られる技術も見過ごせないため、他の文章読本と合わせてどうぞ。

感想記事 “文章力”を学ぶ最初の1冊!ビジネスマンにもおすすめの『新しい文章力の教室』

読みたい本リスト

『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』岡田麿里

 書店で見かけて気になっていたのだけれど、Kindle版が50%ポイント還元になっているのを見て、「買うなら今しかねえ!」とポチった格好。タイトルにもあるとおり、『あの花』『ここさけ』を手掛けた脚本家・岡田麿里さんの自伝。

 まだ読みはじめたばかりですが、いろいろと共感できる部分が多くてドキドキする。 “岡田は人間失格じゃなくて、人間失敗だよね” の一文でなんかもう苦しいし、岡田さんの表現力も相まって、人によっては心当たりがありすぎて動悸が収まらなくなるんじゃないかと不安にすらなる。最優先で読み終えたい。

私は、言葉が圧倒的に足りない。一つのことを言おうとすると、喉の奥で言葉がつっかえる。三つ四つの案は出るのだが、どれが正解でどれが不正解か迷ってしまう。その場ですぐに答えを出さなければいけないと焦ると、不適切なものを選んでしまったりもする。

『魔女の旅々』白石定規

 2014年末に個人出版の電子書籍版を読んで、書籍化が決まって発売されるやいなや続刊も含めてしっかりと購入しているのに、いまだ読めていない作品。「先に電子版で読んでるから」「短編集だから小分けにして読めるし」という言い訳でもって、読むのがどんどん先延ばしに……。

 そんなわけで最近は「寝る前に作中の1編を読む!」と決めて、ゆったりまったりと読み進めている格好。クスッと笑えたり、ほんのり心温まったり、切なかったり重かったりと、複数の物語が収録されているがゆえの読後感がいい感じ。本作を読んだ夜は、心安らかに眠れます。

感想記事 旅する魔女の短篇集『魔女の旅々』が面白い

『僕らが毎日やっている最強の読み方』池上彰、佐藤優

 中盤まで読めているので、こちらは近いうちにブログで感想を書けるんじゃないかしら……。新聞や雑誌の “読み方” は休み明けから実行するとちょうど良さそうなので、早め早めに読了しておきたいところ。

『時をかけるゆとり』朝井リョウ

 電車移動中のお供。『桐島、部活やめるってよ』 『何者』などでおなじみ、朝井リョウさんのエッセイ集。こういった若手作家さんのエッセイを読むたびに思うのが、「作家さんがブログを毎日更新してたら、とてもじゃないけれど敵わないよね……」という絶望感。

 要するに、おもしろすぎる。人を選ぶ文体ではあると思うけれど、自虐的に言葉遊びが楽しい書き口は、同世代にはハマるんじゃなかろうか。少なくとも、たしか朝井さんと同い年だったはずの自分にとっては……最高っす。いいぞ、もっとやれ。

『死刑執行人サンソン』安達正勝

 Kindleセールと、表紙の荒木飛呂彦絵と、ついでにFGOの影響やら何やらで釣られてポチった。

 まだ途中までしか読めていないけれど、そもそもの「死刑執行人」という職業の立ち位置や歴史的背景に関しては、初めて知ることばかりでおもしろい。と同時に、シャルル-アンリ・サンソンやサンソン家の物語を中心に、高校世界史とは異なる視点で激動の時代を振り返ることができるのも魅力的。今年は、この手の本ももっと読んでいきたい。

 

 

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