まったく自慢にならないけれど、自分は「デザイン」の「デ」の字もわからぬ。
強いて言えば、フォントにまつわる入門本を何冊か読んだことがある程度。それ以外の知識はまったく皆無のあんぽんたんであり、見た目を調整し何らかのメッセージを伝えんとする「デザイン」が、とんとわからぬ。
その残念っぷりは、こちらの電子書籍の表紙を見れば伝わるでしょう。
文書ソフトの描画機能オンリーで制作した表紙は、あまりにお粗末でござった。ぐだぐだなバランスに、可読性の低い文字配置&サイズ──そして何より、一目見て本の内容が伝わらない。
そんなデザイン音痴の自分が少しでも「デザイン」の世界を知るべく手に取ったのが、こちらの本『なるほどデザイン』です。
定価が2,000円以上するということもあり、全271ページの結構なボリューム感。ページ数も多く、いくら初心者向けとはいえ、門外漢である自分はゆっくりと読み進めようと思っていたのですが……。
気づけば、最後まで一気に読み終えてしまっておりました。サブタイトルに “目で見て楽しむ” と挿入されているとおり、図解・イラスト・写真が多用されていて、読みやすかったのは間違いありません。でもそれ以上に、読み物としてもむちゃくちゃおもしろかったんだ……!
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雑誌に広告、よく見る事例と比較があるから、わかりやすい!
「なるほどデザイン」はデザインに関するものごとを、なるべく「目で見て楽しめる」形にまとめた本です。主にはデザインを良くするヒントが欲しい新人デザイナーの役に立つようにと考えて作りましたが、ある程度キャリアのある人にも、他方ではデザインを仕事にしていない人でも、「デザイン」に対して興味があるすべての人に、面白く読んで・見てもらえるような内容を目指しました。
(「はじめに」より)
あまた存在する “デザインの良書” との差別化を図るべく、本書で掲げられているコンセプト。それは「グラフィックを多用することによって、デザインの楽しさを実感できる」内容とすること。
視覚的に訴えかける方法にも、いろいろあります。「イラストと文章のみで説明することによって、一貫性を重視したハウツー本」とか。『なるほどデザイン』の場合はそれを一点に絞ることなく、図解・イラスト・写真などのあらゆる要素をふんだんに取り入れていました。
筒井美希著『なるほどデザイン』P.10〜11より
例えば本の序盤、「編集」と「デザイン」の関係性とその方法を説明するにあたっては、シンプルな「イラスト」を項目別に配置しています。
すべてを文章で説明しようとすると、「5W1Hが〜」という書き口になるのではないかと想像されますが、こちらでは本の冒頭に近いこともあってか、わかりやすさを重視。文字数は最小限に抑え、一目でわかる絵とページ構成によって、とっかかりやすい導入となっている印象です。
P.14〜15,18〜19より
先のページで示された事例を比較・解説するにあたっては、本物の雑誌と見紛うサンプルを持ってくるという丁寧さ。
しかも上記解説ページの前には、それぞれ「イイネ!」のデザイン例をそのまま大きく掲載しており、各項目の細かな部分まで確認することができます。
「写真は大きくこのように配置して〜」とか、「こういう理由でリズムを重視した構成を〜」とか、「内容を考慮して書体はこう選ぶ〜」とか、具体的なテクニックを文章で説明することもできたはず。しかし、ある程度はデザインをかじっている人ならともかく自分のような門外漢の場合、言葉で説明されてもピンと来ない部分があったかもしれません。
その点、本書はひとつひとつの項目に関して視覚的な解説が挿入されており、さらには「ふさわしくないデザイン」までも例示・比較されているという親切っぷり(上画像で言えば「惜しい!」の部分)。
グラフィックで見て、説明を読んで、二重に納得することができる点は、自分のようなデザイン音痴にとって、何よりも「わかりやすい」解説だと感じられるものでした。
「これ知ってる!」の復習と、欠けている知識の埋め合わせに
本書は大別すると3章構成になっており、各章は「デザインの工程」「デザイナーに必要な視点と考え方」「具体的なテクニック」といった内容になっております。1章はさらっと読み流すこともできる短さ&わかりやすさ、2章は何度も読み返すことになるだろう保存版。
そして3章は、自分の「興味関心」や「学ぶべき知識」を再確認させてくれる内容である、という読後感を持ちました。これまでの復習と、これからの予習。
──と言うのも、「デザインの素」と題した3章では、文字・文章・色・写真・グラフといったデザインにおける要素別に、その考え方と手法を説明したパートとなっています。本章に関してだけは、門外漢でも「聞いたことがある!」という部分が少なからずあるのではないかと。
P.180〜181より
例えば、「色」の話題。
色相環やカラーチャートについては、中学校の美術の授業あるいはウェブデザインの勉強などで知っている、ピンと来る人も多いのではないかしら。デザインの知識はなくともなんとなく知っている、聞いたことのある、「色」にまつわる知識もちらほら。
P.158〜159より
自分の場合は冒頭で書いたように、「フォント」まわりの断片的な知識を某同人誌などでかじっていたため、「あ、あの本でやったところだ!」なんて復習することができました。当然、初めて知る視点や知識も少なくなく、既知の情報とすり合わせていくおもしろさもあります。
他方では、「写真」が趣味の人なら、自分がよく知る知識や、無意識ながら実践していたデザイン面での指摘が本書で登場するかもしれませんし、日頃からプレゼン資料などで「グラフ」を使っている人なら、文中で説明されているデータの示し方などもなじみ深いはず。
そのように、たとえ「デザイン」を体系的に学んだことがない人でも、本書を読み進めていれば、少なからず何かしらの「知っている」内容が登場するのではないかと。既知の発展形としての未知の解説がわかりやすいことは言うまでもなく、それゆえに「なるほど!」と納得しやすい部分も多いと思います。
そういった意味でも、この『なるほどデザイン』はとても間口が広く、「デザイン」に対する関心を強めてくれる1冊となっているように感じました。自分の学ぶ方向性を見定めるのにもぴったりなのではないかしら。
実は前々から「デザイン」を勉強するべく、同様の本を何冊か購入していたのですが……もしかすると、最初にこの『なるほどデザイン』を読んだのは正解だったのかもしれない。楽しく一気読みできたのはもちろん、今すぐにでも試してみたくなる視点が盛りだくさんでございました。
今は読み終えたばかりで鼻息荒く、「うっほー! デザインおもしれー!」と興奮状態にあるだけなんじゃないかとも思うので、何度か読み返しつつ勉強していこうと思いまする。また、他にも何冊か積ん読しているので、そちらも徐々に読み進めていくつもりです。がんばるぞい。