年末のコミックマーケットが終わり、はや1ヶ月。
今回は2日間参戦し、企業はまわらず、ゆるーっと東館をめぐっていた格好です。相変わらず艦これ島を渡り歩きつつ、気になる創作ジャンルを端から端まで舐めまわし、恒例の音楽サークルを行き来する感じ。いやー、楽しかった。
コミケ当日はもちろんのこと、その後の委託販売も忘れずチェックし、手元に積み上げられた同人誌と同人音楽CDは数十作品あまり。さすがに100は超えてないはず……多分。きっと。おそらく。毎度のことながら、楽しませていただいておりまする。
──で、毎度毎度、それら同人誌を読んでは感想をまとめようとは思うのですが、時間やらタイミングやらの関係で叶っていなかったんですよね……。時間が経てば経つほど入手が困難になる作品もあるという、同人ならではの性質もありますし。
そんなこんなで、1冊1冊の感想記事をそれぞれ書くことは難しいものの、何冊かいっぺんになら……! ということでまとめて勝手に紹介したのが、本記事となります。二次創作まで含むとアホみたいな長さになりそうだったので、ひとまずは目に留まった創作ジャンルを中心に。
※コミックマーケット91の新刊が多めですが、全体としては「2016年発行の同人誌」という括りになっています。
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『セブン-イレブンで呑む』シリーズ/かるこーるぞく
2015年の冬コミで頒布された『セブン-イレブンで呑む』に始まり、2016年夏には『ファミリーマートで呑む』を、そして2016年冬には『ローソンで呑む』を頒布。言うなれば、「コンビニおつまみカタログ」の決定版。昨年は本当にお世話になりました。
紹介されている商品は、それぞれの本で40種類以上。値段・カロリー・原材料などのデータも記載しているため、お酒を飲まない人でも「商品カタログ」として参考にできそう。他方で、本文中では “酒飲み” 視点でのおすすめ解説もあるため、自分の好みを探しながら選べるのも嬉しい。
また、各コンビニのおつまみ紹介だけでなく、巻末では「特集」としてチェーン別の商品比較をしているのも魅力。ポテサラ、サラダチキン、コロッケなどを食べ比べて、それぞれを簡単に評価。夜のお供として、お酒好きさんはぜひとも全巻そろえたいシリーズです。
ジャガイモ学/大谷号
ポテトサラダ、ポテトチップスに続く、ジャガイモ文化専門誌第3弾。既刊の解説の細やかさもすごかったけれど、今回は「ジャガイモ」全般ということで、ある種の集大成っぽさがあります。
ジャガイモのおいしさを調理法、利用法、品種の特性から分析しつつ、具体的なレシピも紹介。ほかにも、でん粉の取り方&活用法に保存食の作り方、極めつけはジャガイモ87品種を断面図の写真付きで掲載するという、専門誌でも真っ青になりそうなコンテンツの充実度。芋愛がすごい。
グラ探本。/御前会
飯テロ本である。まっことけしからん飯テロ本である。前著『御玉本。』に続いて、最高に食欲をそそる写真とレシピが魅力のグラタン本。なにより、まるまる1ページにデカデカと掲載されたドアップのメシ写真のインパクトがヤバい。深夜に開いてはいけない。
基本となるホワイトソースの作り方を導入として、海老グラタン、蟹グラタン、牡蠣グラタン、カレードリア、グラタン ドゥ フィノア、和風甘味グラタン、クロックムッシュを紹介。おいしそうな割に味が想像できない、和風甘味グラタンがひたすら気になる。
も~っと!Salt!/明日葉
前著『Salt!』を読み*1、「 “塩” って言ってもいろいろあるんだなー」と感化され、実際に専門店に足を運んだりなんだりしてから、ちょうど1年。まさかの第2弾が発行されたことを冬コミ当日に会場で気づき、慌てて購入させていただきました。ぶ、分厚くなってる……!
28種類の国産の「塩」レビューにはじまり、塩系のお菓子に4コママンガ、さらには「伯方の塩」工場見学レポートまで! イラスト&写真もたくさん、所々に挿入される見開きの写真も相まって、まるで1冊の “塩雑誌” を読んでいるような感覚になりました。塩愛がすごい。
意外と知らない信玄餅のセカイ。/油ハム。
コンパクトな小冊子のなかで紐解かれるのは、かわいらしいデザインながら万人を魅了する山梨銘菓「信玄餅」の魅力。おなじみ桔梗屋の信玄餅だけでなく、実は商標的にはこちらが先らしい金精軒の商品も合わせて紹介。全6種類を徹底レビューしています。
また、意外に十人十色な「信玄餅の食べ方」や「信玄餅詰め放題の潜入調査」などの読み物もおもしろい。包み紙にぶちまける食べ方がネットでも話題になっていましたが*2、こちらも含めた各々の食べ方、そしておいしく食べる方法まで分析しています。読んでいると信玄餅がむちゃくちゃ食べたくなってくるので、その点は要注意。
時雨と選ぶはじめてのカメラ Vol.1/甘味党&BG引キ75mm/K
カメラ初心者向けの入門書。そもそも違いがよくわからない人に向けて、一眼レフ・ミラーレス一眼・コンパクトデジカメの特徴を解説。写真とイラストもふんだんに使われており、読みやすくわかりやすい入門書です。時雨かわいい。『時雨ノ旅路』シリーズも好きです。
それだけでなく、各種カメラの入門機種のおすすめを複数挙げたり、実際に使っている人をゲストに迎えて魅力を語ってもらったりと、購入を検討している人がそのまま参考にできる読み物もたくさん。撮影技術が皆無な自分としては、コラムが勉強になりました。
ゲストさんも含め、自分がもともと好きで追いかけていたクリエイターさんが多く本書に参加されていることもあり、非常に魅力的な1冊でした。ただでさえ時雨沼にズブズブ沈んでいるところに、カメラ沼にまで落とそうとするなんて……時雨クラスタは最高kガボガボガボ……(親指を立てながら溶鉱炉に沈む)
フクロウ読本。/イエローホップ
もふもふ! ふわふわ! かわいい! ここ数年で人気の高まりつつある「フクロウ」の魅力に迫った1冊。複数人のイラストレーターさんによる美麗イラストあり、おすすめのフクロウカフェ紹介あり、業界事情の示唆もありと、読みごたえ満点のフクロウ本です。
つい先日にもフクロウカフェの内部告発が物議を醸していましたが*3、実のところフクロウの飼育方法に関しては明確な正解がなく、各々に試行錯誤している現状があるのだとか。ゆえに本書も、これから飼おうとしている人にフクロウの魅力を伝えつつも、その大変さや問題となっている部分も余さず伝えるような書き口となっております。
単に「フクロウかわいい!」では終わらず、業界の厳しい実情や飼い主さんの悩みも一緒に取り上げつつ、それでもなおフクロウの魅力を伝えようとするバランス感が、とても誠実であるように感じられました。飼い主さんも鳥好きさんも、気になった方はぜひ一度ご覧あれ!
ボードゲームをはじめよう!-持って嬉しいボードゲームを集めました編-/sukuranburu
初心者向けのおすすめボードゲーム紹介本。子供も一緒に楽しめるギミックがある簡単ゲームから、最新のVRボードゲームまで盛りだくさん。普段はボードゲームをプレイしない自分としては、見たことも聞いたこともないゲームばかりで、ちょっとした異世界感。むっちゃ楽しそうやん……。
各ゲームの特徴と遊び方のほか、プレイ人数・難易度・必要時間・価格帯などの情報もしっかりと記載されているため、購入する際の参考にも。前述のVRボードゲームが気になる一方で、真っ暗闇で遊ぶ『魔法使いの夜』や心理系のゲームも気になるなるなる。
木緒なちのロゴの作り方/コロリメイジ
『ひだまりスケッチ』『ご注文はうさぎですか?』『グリザイアの果実』などの装丁・ロゴデザインを手がけたデザイナーにして、シナリオライターでもある、木緒なちさんの同人誌。
日頃からデザインの仕事をしている人はもちろん、自分のような門外漢でもその作り方の過程を知ることができるため、純粋に読み物としておもしろい(『ひだまりスケッチ』の「ひ」の話とか)。と同時に「フォント」まわりの考え方については参考になる部分も多く、勉強になりました。
konel.mag Issue 4/konel
「ものづくりする人のためのサークル」がコンセプトのサークル・konelさんの夏コミ新刊。過去にはデザイン系の情報誌もちらほらと発行していましたが、今回のテーマは「役立つ」。そもそも「 “役立つ” ってなんじゃい?」というところから深掘りする1冊となっています。
こうした思考実験はやっていて楽しいし、ゲストさんも含めた各々の「役立ち」語りは、どこか個人ブログ的な文章にも読めておもしろい。ブログといえば、「ポートフォリオ」をテーマにした冬コミ新刊のコラムがすごくよかったので、こちらも今度、感想記事をまとめたいところ……!
僕自身、本書を読んで己の過去を省みる良い機会になりましたし、筆者さんの「役立つ」を実際に参考にさせていただいております。特に、ウルトラフロス。気になって試し買いしてみたところ、すっかり普段使いするようになってしまいました。これはいいものだ!
逐次解説 ゴジラ災害対処マニュアル/ドラゴニア
冬コミで話題となった、dragonerさん発行の同人誌。映画『シン・ゴジラ』の展開に沿いつつ、劇中に登場する機関、制度、人物の役職をメインに解説。特に危機管理に関わる役職と、巨災対メンバーにスポットを当てているそうです。しかも表紙は、いらすとやさんの描き下ろし!
そのまま読んでも楽しめることは間違いありませんが、本書前書きにも書かれているようにBlu-rayが発売されたあと、本編を見ながら読む副読本としての役割に期待大。夏コミで頒布した前著と合わせて、このために飛行機内で繰り返し映画を見たそうで……お疲れさまです。
地球外生命体についてクソ真面目に考える本/ハヤシングエルス
「今更ドハマりした男の『MINECRAFT』実況プレイ」シリーズ*4などでおなじみの実況者・ハヤシさんの同人誌。「天文学? なにそれおいしいの?」「宇宙ヤバイ」レベルの自分でも容易に理解できる解説力と構成力は、実況動画でもよく知る、安定のハヤシクオリティ。
文字どおり “クソ真面目” な内容であり、人類史と科学の発展を振り返りつつ、地球外生命体の存在を紐解いていく論文のような構成。ただ、文章は非常に読みやすく、丁寧な口調の口語体は肩の力を抜いて読むことができるため、サクサク頭に入ってくる印象でした。
そのわかりやすさと来たら、「ゴルディロックス惑星」の説明で、 “童話「ゴルディロックスと3匹のくま」に登場する金髪幼女が元ネタで、「ごっつええ感じ」みたいな意味” と書かれていたせいで、「第二の地球=ごっつええ金髪幼女」として記憶されたほど。ごっつええ……。
ブーンで学ぶ世界史 中世西洋史Ⅲ 十字軍編/(有)VIP出版
2007年より2ちゃんねるのVIP板に投下されている、『ブーンで学ぶ世界史』シリーズの同人誌版。息の長いシリーズということもあって、自分は全巻集められていないのですが……。たまたま手元に世界史Bの用語集があったので並べてみたけど、特に意味はないです。
1年ぶりとなる新刊は、中世西洋史のなかでも「十字軍」にスポットを当てた内容。中世ヨーロッパの基礎知識として、封建制度と荘園制の解説から始める親切設計であり、高校時代の知識が吹っ飛んだアンポンタンな自分でも引っかかることなく読めるありがたさ。
AAキャラを織り交ぜた解説のわかりやすさは、安定と信頼のVIPクオリティ。かと言って解説文がおざなりかといえばそんなこともなく、しれっと文化史まわりまでカバーしている優しさ。……ってかこれ、このまま世界史の参考書として使えるんじゃね? 受験生の荷物に、用語集と一緒に紛れさせようぜ!
喜多院七不思議 川越民話/無極庵・くじら神殿
埼玉県川越市の寺院・喜多院を中心に、川越地域の民謡をまとめた冊子。学生時代に川越に通っていた身として、思わずホイホイされて買ってしまった。三変稲荷、今度行ってみよう。
民話といえば全国各地、津々浦々に存在している昔話ではあるけれど、やはり自分と縁のある地域の伝承は読んでいておもしろい。なじみのある地名はイメージしやすく、どこかほかで聞いたことのあるような伝説も、その土地ならでは違いがあって興味深いんですよね。
栞ブックガイド/八十堂・Futaba Heritage Book
『バーナード嬢曰く。』をイメージしたブックガイド。複数人の評者によって50冊以上の本を紹介した合同誌となっています。文章による書評がメインですが、イラスト・マンガによる作品紹介もちらほら。つまみ読みしつつ、気になった本を探すのが楽しい。
選書は非常にフリーダム。『ツァラトゥストラ』『十五少年漂流記』『変身』『スプートニクの恋人』『ハーモニー』などがあれば、『GJ部』『魔法少女育成計画』『この素晴らしい世界に祝福を!』などもあり、さらには絶版本や同人誌まで普通に紹介されている楽しいブックガイド。『読んでいない本について堂々と語る方法』、いいよね……*5。
みんなのかなづかひ 創刊號/はなごよみ
テーマはずばり、「歴史的仮名遣い」。本文もほぼ全編が歴史的仮名遣いで書かれているため、ちょいと読むには敷居が高い……かと思いきや、意外にも普通にスイスイ読めて驚いた(この感想も歴史的仮名遣いで書こうとしたけれど、それはさすがに断念してござる)。
創刊号となる本書では、「新字新かな70年」と題して特集。そもそも歴史的仮名遣いとは何ぞや、旧字旧仮名の性質とはどのようなものか、現代においてそれらをあえて利用することのメリットは何か──といった解説をはじめとした読み物が盛りだくさん。マンガ・小説もあるよ!
単なる「歴史的仮名遣いのファンブック」では終わらず、国語・言語全般に至るまでその意義や考え方を問うた内容。これまでとは違う見方で「日本語」を考えることができ、興味深く読めました。自分も名前に旧字が含まれているので、その辺りの指摘もおもしろかった。
ついったーさん ①/ツキギのとこ
「モーメント、邪魔!」と先日も大盛り上がりだった、Twitterの突然のアップデート。でも「ふぁぼ」がそうだったように、気づけば馴染んじゃっているのよね──という、変わりゆけども憎めない、そんなTwitterを擬人化したウェブマンガ。その同人誌版です。
ついったーさんをはじめ、ふぇいすぶっくさん、らいんさん、すかいぷさん、コミック版ではいんすたぐらむさんまで登場して、各サービスの特徴を捉えつつ展開される4コママンガが、かわいらしく(時に憎らしく)もおもしろい。ウェブ版とは異なるコミック版は、2月に単行本として発売されるそうです。めでてえ!
がい子4コマ総集編スーパーガイココレクション/がいこくらぶ
ゆるふわ萌え4コマでおなじみ、がい子くじんさんのマンガ総集編。……どう見ても『スーパーマ◯オコレクション』です。本当にありがとうございましたわらばーっ!
96ページという大ボリュームは、まさに『マ◯コレ』さながらに長く楽しめる1冊と言えましょう。あと、 “萌え4コマ”(自称)だから、人によっては癒されるはず。実際、インフルエンザで寝込んでいるときに本書を読んでいたら、みるみるうちに回復しましたしおすし。まことに〜!?
HITEYE 9月号/RAW-Fi ZINES
若者向けファッション雑誌かな? ──いいえ、 “イカ” したカルチャー誌です。「ハイカラシティには、イカしたイカが必ず読むカルチャー誌があって、もしその”日本版”があったとしたら…」というコンセプト*6のもと作られたという、『スプラトゥーン』の同人誌(ZINE)です。
渋谷の風景にハイカラシティの世界観が溶け込んだスナップ写真あり、流行の “ギア(=ファッションアイテム)” の紹介あり、ライフスタイルマガジン『DINER』協力による穴場グルメスポットレビューあり、文化系コラム「イカルチャー」ありと、現実とフィクションが混じり合ったかのようなコンテンツが楽しい。
スプラトゥーンファンだというクリエイターさん2人へのインタビューもあり、ゲームの特徴と魅力を再確認できる1冊となっています。
黒に染めろ/遠征C班映画製作所
二次創作系は別にまとめようと思ってたんだけど、イカの話出たしいいよね? せっかくだもんね? 『スプラトゥーン2』も発売するしね? Switch予約できなかったけどね?
というわけで、こちらの『黒に染めろ』はCボさんの二次創作マンガ。2013年にpixivで目にした『艦これ』マンガを読んで以来、絵柄とストーリーに惚れて追いかけていたのですが、2016年後半はとにかくこの『黒に染めろ』に魅了された。更新されるたびにTwitterで叫んでいたほど。
『スプラトゥーン』世界における「インクの色」を設定に組み込んだうえで描かれるのは、白熱のナワバリバトルと手に汗握る物語。pixivでも全話読めるのでぜひに! ──と言いつつ、同人誌版の “その後” とおまけも必読。300ページを超える “薄い本” は、最近読んだ同人誌としては間違いなくナンバーワンの “アツい本” でございました。
──というわけで簡単にではありますが、最近読んだ同人誌のなかから20冊を勝手にご紹介させていただきました。
時間とタイミングが合えば、個々に紹介記事を書きたいなー……と思いつつも、全部はさすがに難しそう。上記作品以外にもあと何倍か積み重なっているし……というか、そもそも2月にはコミティアもあるじゃないですかー! やったー! 散財するぞーー!!(白目)
何はともあれ、今年も気になった同人誌・同人CDは積極的に入手していきたいところ。2017年も、各方面のイベントとショップにはお世話になります。