最近読んだサウナ本2冊の話|マンガ『サ道』同人誌『SAUNAS vol.0』


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 3月7日は「サウナの日」ということで、初心者目線の「サウナ」の話をば。

 

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サウナブームとフィンランドと『サ道』

 最近、サウナがアツい。……いや、そりゃあもちろんサウナは「暑い」わけですが、物理的・肉体的な意味だけでなく、世間的なブームとして「熱い」と言われている昨今。

 その流行っぷりは、Twitterを見るかぎりでも明らか。1年前はそうでもなかったはずなのに、いつの間にか「サウナはいいぞ」と語る人がタイムライン上に増殖していたのです。なにこれこわい。主にネットメディア界隈のサウナーが目立つのはやはり、某銭湯神の布教の賜物だろうか……。

 ──かと思いきや、どうやら何もメディア界隈に限った話でもなく、イラストやマンガに携わるクリエイターさんの周囲でも「サウナはいいぞ」の声がよく聞かれている様子。しかも男性のみならず、サウナが好きな女性も明らかに増えているように見える。

 こうなると、 “サウナはオッサンの嗜み” ではなく、 “乙女の嗜み” になる日も近いのでは……? そう、サウナには人生の大切なすべてのことが詰まっているんだ──。僕の頭の中のスナフキン系女子*1がそう言ってた。というか、サウナも継続高校もフィンランドゆかりだし、そういえば劇場版で入ってたっけ……。

 そうなのです。もみじ真魚さんの上のツイートにもあるとおり、サウナの本場はフィンランド。日本でもスーパー銭湯などでよく見かける身近な存在ではありますが、本場のそれとは若干の違いもあるのだとか。ゆえにガチのサウナーは、やがて “巡礼” のためにフィンランドへと向かうそうな。

 そして、サウナが好きすぎて最終的にたどり着くのがフィンランドだとしたら、その入り口にあるのが、この『サ道』だと言えるのではないかしら。

 2011年に刊行されて以降、現在まで続くサウナブームのきっかけのひとつとなった1冊。筆者のタナカカツキさんは日本で2人目の「サウナ大使」に任命され、2016年には上のマンガ版が発売。本書を読んで、「サウナの魅力と楽しみ方を知った」という人も多いんじゃないかと思う。

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タナカカツキ著『マンガ サ道~マンガで読むサウナ道~』(1) P.12より

 Twitterでもよく見かける「ととのったー!」の叫び。あまりサウナに入ったことがない人にはピンとこないかもしれませんが、実際に体験すると、これほどしっくりくる言語化もない気がする。単なる快感や解放感だけでなく、同時に何かがシャキッとキマったような感覚。

 僕自身、実は最近まで『サ道』には入門しておらず、つい先日に読んで「これが噂の!」と軽く感動したばかりの初心者サウナー。本書によってその楽しみ方を学び、サウナと水風呂を行き来するペースを自分なりに調整し、そうしてやがて降ってきたのが、この「ととのう」感じだったのです。

 それは、たしかにちょっとした神秘体験であり、人に「サウナはいいぞ」と勧めたくなる魅力をはらんだものだった。だからこうして、たまにはサウナの話でも書こうかとパソコンに向かっているわけです。なかなか書くタイミングがなかったけれど、今日はせっかくの「サウナの日」ですしね!

 とにもかくにも、サウナを知るにはまず『サ道』。これは間違いないと思います。特にマンガ版は目で見てわかりやすいし、純粋におもしろく読めるので。最近はサウナ専門の雑誌や特集本も多くありますが、最初の入門にはやっぱり『サ道』が王道かなーと。

 しかしその一方で、先ほども書いたように自分は “つい先日” に『サ道』を読んだばかりであり、初めて手にしたのは別のサウナ本だったんですよね。それは、書店で見かけた特集本──ではなく、スーパー銭湯で手に取った雑誌──でもなく、1冊の同人誌でした。

 

サウナ同人誌の創刊号『SAUNAS vol.0』

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 というわけで前置きが長くなりましたが、それがこちら、サークル・SAUNAS編集部さんの『SAUNAS vol.0』です。昨年末のコミックマーケット最終日、オリジナルの創作・評論系同人誌を求めてふらふらと会場内を歩いていたところ、ふと目に入ったのがこれだった。

 事前のサークルチェックでは主にグルメ本ばかりに目が向いていたため、完全にノーマークだった本書。「サウナ」の文字が視界に入るやいなや、思わずスペースの前で一時停止し、立ち読みさせていただくことに。しばしパラパラとめくって、次の瞬間には財布を取り出している自分がいた。

 サークル主さんの話によれば、「サウナにハマりすぎたので、勢いでフィンランドに行ってきた」体験を、旅行記としてまとめたものがこの本なのだそう。あれこれと気さくに答えてくれて、それでいてサウナ愛を感じるアツい話しぶりだったので、迷わず購入しました。

 とはいえ、当時の自分はまだ「ようやくサウナの魅力がわかるようになってきた」くらいで、ろくにサウナの知識も持っておらず。そんな初心者である自分が、サウナーの行き着く果てであるフィンランドサウナの話を読んで理解できるのだろうか──という、若干の懸念はあった。

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 けれど、そんな心配はまったくの杞憂だった。なぜなら、本書は「サウナ本」である以前に「フィンランド旅行記」であり、サウナの知識がない人でも楽しめる旅本だったからです。

 「サウナと旅」と題して語られるのは、1週間のフィンランド滞在記。実際に訪れた10ヶ所のサウナの紹介はもちろん、日本のサウナとの文化の違いや、現地で出会った人とのやりとりも。サウナを知らずとも尋常ならざる熱気が感じられる、魅力的な旅行記となっています。

 

 フリーランスとしての働き方が定着し、ノマドワーキングも珍しくなくなった。旅をするように日々働く場所を変えることができるのならば、その延長線上にある日々のリラクゼーション体験であるサウナの場所もまた、自由であっていいはずだ。

 どうせ行くのならば、より遠くへ、より面白い場所へ。かくして、フィンランド行きは決行され、あらゆる国内出張はサウナ旅行へと脳内変換されることになった。

(『SAUNAS vol.0』P.5より)

 

 そして当然、あなたがサウナーであるならば、本書は最高に “アツく” 読めるはず。

 そのまま海や湖にどぼーん! できるサウナに始まり、ゴンドラがサウナになっている観覧車や、アパートの一角で日常生活に溶けこんだサウナも登場。フルカラーの冊子には写真も数多く掲載されており、文章とあわせてフィンランドの空気が自然と伝わってくる内容です。

 また、複数のサウナをまわった考察として、日本のサウナとの違いについてもまとめられており、興味深く読めました。特にロウリュやサウナハットの扱いは、ある程度は知識を得た今改めて読むと、「そうなの!?」と驚かされる。「水風呂がない」のは有名な話なのかな?

 また、フィンランド以外にも、国内のサウナ情報あり、サウナ本の書評ありと、想像以上に濃密な本書。自主制作の同人誌ということもあって入手場所は限られますが、サウナが好きな人はチェックしておいて損はないと思います。通販でも買えますよ!

 購入時のコミケ会場にて、サークル主さんに「Vol.0、ということは続刊も……?」と尋ねてみたところ、次回作も予定しているそうです。次号では、「サウナと人」と題した特集をまとめるべく考えているとのこと。気になる方は、ぜひそちらもチェックしてみてくださいな。

 

「現状確認」のきっかけとしてのサウナ

 そんなこんなで、サウナ本2冊の感想を中心とした、初心者目線の「サウナ」の話でした。通うとなると今は金銭的に厳しいのですが、ゆくゆくはあちらこちらのサウナを巡ってみたいところ。しばらくは、たまに行く銭湯と一緒に堪能することにしませう。

 また、個人的に実感したサウナの効用としては、「自身の身体や生活を振り返るきっかけになる」ことが挙げられるんじゃないかと思っています。全裸になり、しばらくのあいだ浴槽に浸かったりサウナに入ったりしていると、なんとなく自分の身体をまじまじと見るようになるんですよね。

 そうしていると、「相変わらずクソ毛深いなー」「筋肉が足りないなー」などという、割とどうでもいいことがまず意識に上ってくる。で、しばらくすると、「いつもより汗をかきにくいなー」「温度は同じなのに感じ方が違う気がするなー」といった、健康面での気づきが感じられるようになる。

 そのように「ちょっとした身体の変化を見て、自身の体調を確認できる」という意味でも、銭湯やサウナへ行くのは悪いことじゃないと思うのです。最初はサウナは「おまけ」でもいいので、週末のリラックス手段のひとつとして、たまには銭湯へ足を運んでみてはいかがでしょう。

 上に挙げた本や雑誌のほかにも、ネット上では「サウナイキタイ」「サウナタイム」といった情報サイトが充実していますし、まずは近所の銭湯・サウナを調べるところからぜひ。そこで興味を持って『サ道』を手にしたら、あっという間。ようこそ、癒やしとトランスの世界へ。

 

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