「よーし、おじさん、仕事前にちゃちゃっと人理修復しちゃうぞー」と思ってFGOのメインシナリオを始めたら、あまりの怒涛の展開にテンションMAX。なんとかエンディングまで見て、放心状態。この展開……やっぱりFateじゃねーか……最高だよ菌糸類ィ! pic.twitter.com/96ndvbwrFp
— けいろー (@Y_Yoshimune) 2016年12月25日
終わりよければなんとやら。魅力的な作品に数多く触れることのできた2016年の “終わり” は、本当に最高の締めくくりでございました。
マンガでは『僕だけがいない街』や『戦国妖狐』が大団円の完結を迎え、映画では何度も映画館に足を運ぶほど『シン・ゴジラ』や『君の名は。』に夢中になっていた今年。その一方で、こういった素敵な物語に触れつつも、常に傍らにあり続け、日々追いかけ続けた作品がある。それが、毎週日曜夜の大河ドラマ『真田丸』──も捨てがたいけれどそうではなく、スマートフォンアプリ『Fate/Grand Order』だ。
※第1部最終章のネタバレがあります。
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散々だったリリース当初の評判と、それでも楽しい『Fate』世界
スマホでフェイト!|Fate/Grand Order 公式サイト
『Fate/Grand Order』がリリースされたのは、2015年7月末のこと。iOSに先立ってAndroid版が配信されたこともあり、Androidユーザーかつ10年来の『Fate』ファンだった自分は、配信初日からポチポチと画面をタップして遊んでいた。──まさか、1年以上にもわたってプレイし続けるほど、ハマることになるとは思っていなかったけれど。
FGOは当初、Fateシリーズのお祭りゲーかと思ってたら、とんでもないテキスト量で読み物としてむちゃくちゃおもしろいし、泣けるというか泣いたし、ついでにRPGとしてもずっと楽しめているからすごい。最近はFateを知らない人や、世界史が好きな層まで取り込んでいるらしいから……。
— けいろー (@Y_Yoshimune) 2016年12月14日
先日、始まるやいなや3日間で1800万体がユーザーによって借りつくされたイベント魔神柱歳末大売り出し「終局特異点 冠位時間神殿 ソロモン」の配信前にも書きましたが(関連記事)、特にこの数ヶ月の『FGO』の盛り上がりっぷりは、本当にすごかったと思う。
それも、リリース初期の評判が散々だったことを思い出すと尚更だ。そもそもサービス開始の大幅延期に始まり、iOS版はさらに配信が遅れた。やっとプレイできると起動してみればサーバーは激重で、度重なるメンテナンスに、シナリオを進めようにも戦闘パートはワイバーン祭り。
ガチャは礼装ばかりでレアサーヴァントがまったく引けず、あらゆる面でフラストレーションがたまるゲームになっていた……という評価もあながち間違ってないように思う。そしてワイバーンがはびこった結果、オルレアンは極東のNOUMINに救われた。後のアイランド仮面である。
キャスターな兄貴、良い……。 #FateGO pic.twitter.com/l2POGFys01
— けいろー (@Y_Yoshimune) 2015年7月30日
それでも、もともとTYPE-MOON作品が好きな自分にとって『FGO』は魅力的なゲームだった。初期こそまだ「お祭りゲー」の印象は拭えなかったものの、それも最初の半年くらいの話。
ストーリーが進むほど奥行きが感じられる世界観があり、おなじみのサーヴァントの “知ってるけど知らない” 一面(別クラス召喚、オルタ化等)を見ることができ、徐々に新登場キャラも好きになってきて、はっちゃけ気味の季節イベントもまた楽しかった。
そして同時に、メインストーリー後半の熱い展開と合わせて、インターネット上でもじわじわと『FGO』の話題と評判が広がっていったことも大きかったように思う。自分一人で淡々とプレイするのではなく、他のプレイヤーと感想を共感できる楽しさ。それに一役買ったのが……おそらく、『カルデア放送局』の存在なのではないかと。
『Fate/Grand Order』をサービス開始から遊んできて思うこと
「好き」を全力で語ることでまわる流行の輪
【Fate/Grand Order】公式生放送でおっぱいタイツ師匠にセクハラする島崎信長 - ニコニコ動画
2016年1月4日、ニコニコ生放送で「お正月特番」として放送された『Fate/Grand Order カルデア放送局』*1は、放送自体がリアルタイムで大盛況となったほか、放送終了後もいろいろな意味で話題になった。……だいたい島崎信長さんとマフィア梶田さんのせい。もちろん良い意味で。
主に “ネタ” 的に話題になったことも否めないものの、放送それ自体も最高に楽しいものだった。ゲームの宣伝や情報紹介もそこそこに、全力でTYPE-MOON作品への愛を語るノッブの輝きっぷり。MCとして番組をまとめつつもそれに乗っかる梶田さんと、種田梨沙さんの的確なツッコミ。全体的にTYPE-MOON愛に満ち満ちた放送であり、しばらく型月作品から離れていたファンを『FGO』へ駆り立てるほどの熱量があった。──というか実際、放送の影響でアプリをインストールした知人が何人かいた。
先日のFGOの生放送で色々と好きなことをお話もさせて頂きましたが、もし興味を持ってくださったなら、例えば、佐々木少年先生の漫画『真月譚 月姫』は入手しやすく、触れやすいと思うのでオススメですよ!Amazonでも手に入ります!https://t.co/tSGa9ZSlXl
— 島﨑信長(島崎信長) (@nobunaga_s) 2016年1月6日
僕自身、2015年末にかけて一時期『FGO』から離れていた時期があったのだけれど、やはりこの放送の影響で帰ってきたので。あんなの見たら──というか聞かされたら、そりゃあ感化されずにはいられない。自分とほぼ同世代の声優さんが、もはやキャストではなく “1人のファン” として、あれだけ熱を込めて語っているのだから。
そもそも自分の場合、それまでの無課金プレイで☆5サーヴァントが1人も来ていないこともあって、モチベーションが下がりぎみだったんですよね……。ひたすら脳筋プレイ、タマモキャットで酒池肉林するのにも限界を感じはじめていて、第四特異点は攻略がキツかった覚えがある。
ところが、第五特異点を攻略していたころに初めての☆5・ナイチンゲール女史を呼符で迎えてひゃっほぅ! ──と喜んでいたところ、翌週にはジャンヌ・オルタも10連で召喚。「やっぱりFGOは最高や!」と速攻で手のひらを返し、今に至るまで毎日のようにプレイすることになるのでした。畢竟、回転率が全てである。課金しなきゃ……。
こうして戦力も整い、加速的に戦闘が楽しくなりはじめたタイミングで、問題の第六特異点が配信される。奈須きのこさん執筆によるシナリオ、かつ円卓の騎士が強く関わってくると聞いて、期待しないわけがないでしょう! 当然、その読後感は期待以上だった。
Fate/Grand Order TV-CM 第6弾 - YouTube
終盤の総力戦のアツさは言うまでもなく、ラストのベディヴィエールには軽く泣かされた。と同時に、それまでゴリ押しでどうにかなっていた戦闘パートで、RPGとしてのやりごたえ、攻略要素が強く現れてきた章としての印象も強い。おのれ借金取り……じゃなかった、ガウェイン。
リリース初期から長らく、悲しき自爆お兄さんとしてネタ扱いされてきた大英雄も報われ、三蔵ちゃんの消滅時の台詞にも軽く涙腺をやられ……あと、物語も戦闘も全体的に重苦しかったせいか、ハサン先生のヒロイン&癒やし枠っぷりが最高でした。ジャスティス! 抱いて! その呪腕で!
なにより、竹箒日記*2との相乗効果がパない。人理修復が成された12月現在もオープニング曲「色彩」と、同じく竹箒日記で言及された「スクラップ」が、iTunes Storeランキング上位にランクインしていますが、7月はこの「レプリカ」がむっちゃダウンロードされていた模様。
曲の視聴部分からしてベディがイメージできる歌詞だし、坂本真綾さんのボーカルということで、『FGO』と並べてもまったく違和感がない。そもそも第17節のタイトルである。ゲーム中では流れないにしても、音楽とシンクロさせられる演出は……鉄板ながら、ズルい。
そしてそれが、最終決戦にもつながる、と。
「エミヤシロウの物語」ではないが、紛れもない『Fate』
【MAD】Unlimited Fate World(Fate/Series) - ニコニコ動画
最終章まで終えて振り返ってみると、『Fate/Grand Order』という作品は、紛れもなく『Fate』の流れを汲む物語だった。──まあ、そもそも奈須きのこさん監修かつ自身も終盤のシナリオを執筆しているわけだし、当たり前といえば当たり前なのですが。
特に、先のイベントからラストのメインシナリオにかけては、なんだかもうわけがわからなくなるくらいにアツく、型月っぽい……もとい “Fateっぽい” 展開で、(1800万体の魔神柱くんを根こそぎフルボッコにしながら)語彙力を “破戒すべき全ての符” されたマスターがTwitter上で散見された。英霊たちが集うシーンは『hollow ataraxia』の最終決戦を彷彿とさせるもの──というかBGMがまんまアレンジだったし、ゲーティアとの殴り合いで『Heaven's Feel』のラストを思い出した人も少なくなさそう。つまり、フォウ君はイリヤ枠だった……?
最終決戦でオープニング曲のアレンジ版を持ってくるのも最高に “RPG” って感じだし、そりゃあ躊躇せずに令呪使いますよ。初めての☆5組としてずっとお世話になってきた、ナイチンゲール&ジャンヌ・オルタコンビが活躍してくれたのも個人的にはアツかった。絆レベルは6だけど。
私が視てる未来はひとつだけ
(坂本真綾「色彩」)
永遠など少しも欲しくはない
一秒 一瞬が愛おしい
あなたがいる世界に私も生きてる
必然的に、BGMを聞いていて思い浮かぶのは「色彩」の歌詞。プレイヤーとしての主人公はぐだ男・ぐだ子ではあるものの、『FGO』はマシュ・キリエライトの成長物語であり、ロマニ・アーキマンの人生そのものであったと、そんなことを思わせてくれる。泣く。
ゲーティアに対してバフ積み宝具をぶっ放しつつ思い返してみると、本作の根底には常に、「存在証明」という単語がちらついていたように感じる。6章あたりから繰り返されていたマシュを取り巻く背景や、最終章で明かされたロマンの行動原理。2人はカルデアの一員として「人理焼却を防ぐ」というゴールを目指しつつも、その過程で自身の “在り方” を常に考えており、あの結末によってそれを確固たるものにしたのではないか、と。
その出自から、自我が未熟なまま世界を救う戦いに臨むことになったマシュと、 “人間になりたい” と聖杯に願い、己の存在の終わりを予感しつつも最後まで駆け抜けたソロモン=ロマン。過ぎた力を知ってもなお “ただ人” であろうとする2人の在り方は、どこか似ている。
マシュは特異点を巡る旅のなかで数多の英霊・人と交流し、自身ひいては “人間” の存在理由に思いを馳せる。願った瞬間に終末を知ったソロモンはそれでもなお、 “ただの人間” としてすべてを救うべく行動し、文字どおり己の存在のすべてを投げ打つことで証明とする。
──道中だけを見れば王道RPGであり、お祭りゲーでもあった本作は、最終章をもって、「人間讃歌」として(ひとまずの)結末を迎えたように感じたのでした。群体としての “人類” の讃歌であり、マシュやロマンをはじめとした個々のキャラクターの “讃歌” でもある、と。最後の最後、一瞬の闘いに存在理由を求めたゲーティアも含めて。
認めて ただ存在を
(坂本真綾「レプリカ」)
僕こそがオリジナル あるいはそのレプリカ
僕らの証明はどこにある
そういえば、先ほどの「レプリカ」にもこんな歌詞があったし、そもそも作中のレイシフトにおいて「存在証明」の重要性は幾度となく書かれていた。もちろん、それが『FGO』という作品特有のテーマかといえば、そんなこともないのでしょうが。
『Fate/stay night』だって見方によっては、3つのルートによって「衛宮士郎」という “存在” を “証明” するための物語だと言えなくもない。『Fate』が「衛宮士郎の物語である」ことは作中でも語られていたし*3、彼自身やアルトリア(青セイバー)は『FGO』本編では登場しないものの*4、 “正義” の行方についてはしばしば言及されていたようにも思う。
誰かの為に生きて この一瞬が全てでいいでしょう
(M.H.「THIS ILLUSION」)
見せかけの自分はそっと捨てて ただ在りのままで
すべての生命は。
(『Fate/hollow ataraxia』──Hollow, 天の逆月)
後に続くものたちに価値を認めてもらうために、報酬もなく走り続けるのだ。
この場に留まって永劫に止まるのではなく。
たとえ消え去るとしても、次にあるものを目指す。その為に虚無(みずから)を埋めて、一つの絵を作り上げた。
その為に虚無(みずから)に還って、世界の絵を作り上げよう。■(私)には、もうその絵を見る事は出来ないけれど。
(『Fate/hollow ataraxia』──Hollow, 天の逆月)
どうかこの絵が、誰にあっても美しいものでありますように。
舞台や登場するキャラクターは違えど、多くの『Fate』作品では一貫して同様のテーマが描かれており、此度の『Grand Order』もその延長線上にあったのかもしれない。そこに “エミヤシロウ” はいないけれど、やっぱり『FGO』は、疑いようもなく『Fate』だった*5。
こうして過去の型月作品を思い返そうとすると、自然とまた読み返したくなってくるから困る。そういえば、ファウ君の正体やら何やらと、他の型月作品との関連性に「ドフォーウ!」と興奮していた人も多く見受けられた。それこそ次のニコ生では、ノッブに全力で語ってほしい。
1年半あまりの旅路を終えて、第一部が完結した『Fate/Grand Order』。
今年、マンガにアニメに映画にと多くの作品に夢中になりながら、その傍らでほぼ飽きることなくプレイし続け、最後には大きな感動が待っていたスマホアプリ。それもこれも、7つの特異点(とイベント)の積み重ねと、濃密なシナリオあってこそでしょう*6。
しばらくはまったりと『FGO』を楽しみつつ、今後の展開も期待して待ちたいところ。今夜はアニメ放送もあるし、2017年は劇場版『Heaven's Feel』の第1章あり、アニメ『EXTRA Last Encore』ありと関連作品もまだまだ展開されるので、今後も『Fate』作品はガンガン追いかけていく所存です。……べっ、べつにノッブに感化されたわけじゃないんだからね! あと『DDD』3巻はよ!
FGOフェスは良い文明!ぼっち参戦して写真を撮りまくってきたよ
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