『Fate/Grand Order』の第1部完結記念ファンブック『Fate/Grand Order カルデアエース』が発売となりました。
きのこ×社長×回す方のノッブの座談会に始まり、ワダアルコさん&近衛乙嗣さんへのミニインタビュー、荊軻とエレナをフィーチャーした書き下ろし小説に、各種コラムと豪華面々によるイラスト・漫画など──本当に盛りだくさんの1冊でした。これで1,500円しないとか、安すぎじゃね……?
そんな充実したコンテンツのなかでも、表紙にも描かれるほどに推されていたのが、ドラマCD『英雄伝承異聞〜エドモン・ダンテス〜』。これが……なんかもう、いろいろすごかった。
てっきり “元ネタ” である『巌窟王』こと『モンテ・クリスト伯』を軸にしたストーリーになっているのかと思いきや──蓋を開けてびっくり。普段のTYPE-MOON作品の流れを汲んでいるどころか、まるっきりそのものだった。過去作品丸出しだった。というかもう(自主規制)だった。
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裏話がたっぷりの座談会
というわけで、買ってきました『カルデアエース』。個人的には、奈須きのこさん、武内崇さん、島崎信長さんの3人による座談会が楽しみだったこともあり、まずはそこから読みはじめたわけですが……まあおもしろい話が出るわ出るわ!
ネタバレを考慮し、生放送やラジオといった媒体では直接的に言及することが避けられてきた「第1部の結末」も含めて、多方面に話題が盛りだくさんの座談会。シナリオからゲームシステムに個々のキャラクターの話まで話題は付きず、全12ページにも及ぶ内容となっています。
「ロンドンでのソロモン戦のバトルボイスは、杉田さんと鈴村さんの声を合成して作っている」(P.005)とか、「クライマックスの “ロマンの本当の笑顔” が使われているシーンがもう一箇所だけある」(P.011)とか、ノッブじゃないけれど「マイルームに確認しに行かなきゃ!」となるようなエピソードも。
そのような、製作者であり創造主である奈須さんと武内さんの話は、『FGO』ファンであればまず間違いなく楽しく読めるものかと。と同時に、声優であり、ゲームプレイヤーであり、型月ファンでもある島崎さんの言葉にも、本当に心から共感させられてしまったのでした。
島崎 自分にとって「stay night」「月姫」「空の境界」といった、TM作品の中で“原典”的な位置付けにある作品は、とても特別な存在なのですが,FGO第1部をプレイし終えたときの気持ちは、そうした“原典”作品を読み終えたときのように、心からの満足感を得られるものでした。きっとユーザーの方々も同じような満足感を得たからこそ、「FGOはおもしろいよ!」って周りの人たちに広めてくれているんだと思います。
(『Fate/Grand Order カルデアエース』P.013)
数多の「イフ」の積み重ねと、まさかの展開に驚愕したドラマCD
そして、問題のドラマCD『英雄伝承異聞〜エドモン・ダンテス〜』。冒頭でも書いたとおり、普通に『モンテ・クリスト伯』の物語を抜粋、あるいは再解釈してアレンジした内容かと思っていたので、不意を突かれておったまげた。
ファリア神父(CV.堀勝之祐さん)によるナレーションを皮切りに語られるのは、あったかもしれない、もうひとつの「復讐」の物語。デュマの『モンテ・クリスト伯』本編でエドモン・ダンテスが復讐の対象とした3人ではなく、その前に取り掛かるべき別の「復讐」にスポットを当てたもの。
「イフ」の話ではあるものの、もしかしたらそうしていたかもしれない──という、ある種の二次創作としても魅力的な展開であるように感じました。1.5部の「新宿幻霊事件」でも似た要素が見受けられましたが、「知っているけれど知らない」展開は、いつだってワクワクするものです(「原著は長すぎる!」という人には、森山絵凪さんのコミカライズがおすすめ。エデかわいいよエデ)。
ところがどっこい。 そのような「デュマの書いた『モンテ・クリスト伯』の二次創作」としてエドモンの生き様が描かれるのかと思いきや、そこはやっぱり型月だった(もしかしたら、設定上で『Fake』のデュマとの関係性もあったりなかったり……?)。
「もし、エドモンが別の “復讐” に手をかけていたら」「もし、この世界にあの組織があったとしたら」「もし、モンテ・クリスト島の財宝が……」などなどの「イフ」を積み重ねて描かれるのは、『FGO』で現界した “アヴェンジャー” としての巌窟王 エドモン・ダンテスが生まれるきっかけとなったエピソード。マテリアルに書かれていた諸々の設定にも説得力と広がりを持たせるような、魅力的な外伝でございました。
特に衝撃的だったのが、物語終盤の展開。
なんとなーく過去の型月作品っぽい雰囲気が流れているようではあったものの、まさかまさかそう来るとは思わず、声に出して「ハァ!!??」と叫んでしまったくらい。桜井さんのコメントによれば、犯人は菌糸類らしい。わぁい!
詳しくはぜひとも本編を聴いていただきたいのだけれど……間違っても、聴く前にキャストコメントを読んでしまわないようにご注意を。ページ上部で警告されてはいるものの、うっかり目に入ってしまわないとも限らないので。キャラクター設定も見ないほうが良さそうです。
一足先にカルデアエースを読ませて頂いているのだけれど、…これすごい一冊…エドモンの話も爆弾が放り込まれてるし、イラストも歴史探訪も英雄列伝も読み応えある…巌窟王ドラマCDははじめに一回聴いたあとで詳細を読んでもう一回聴いた方が良いhttps://t.co/pMjcANBR9N
— サテー@聖牌戦争1巻発売中 (@syatey_12) 2017年4月11日
こちら、サテーさんの助言がまっこと正しいものかと。たしかに、聴いたあとに改めて聴きたくなる展開でござった……。まずは何も考えずCDを取り出して、聴いて、中身を読むのはそれから。この展開の真っ只中でエドモンを演じていたノッブ……思うところはあったかもしれないけれど、むちゃくちゃ楽しかっただろうなあ……。
そんなこんなで、まだまだいろいろと書きたいことはあるのですが、「『カルデアエース』が想像以上に濃密で、いろいろすごかった」という話でした。座談会もドラマCDも良いけれど、もちろんイラストも漫画も最高なんすよ……。中谷さんの『さよならスクラップ』で浄化された。ロマン……。