『ソーシャルもうええねん』ネットの数字のカラクリと、プログラマーの仕事論


 

 文中で“ドリランド”という単語を目にして、戦慄した。すっかり存在を忘れていた。

 

 『怪盗ロワイヤル』も『サンシャイン牧場』も『ドラゴンコレクション』も覚えているのに……ソーシャルゲームについて論じた記事にはたいてい引用されているのに……なぜか、『ドリランド』だけ記憶の彼方にすっ飛んでた。

 というか、思い出そうとしても「ドwwwドwwwドリランドwww」とTOKIOの顔しか脳裏に浮かばないのはどうしてくれようか。まあね。未プレイだからね。偉そうなことは言えないんだけどね。アニメが「おもしろい」と評判だったような……?

 

 そんな、“ドリランド”はともかくとして。村上福之さんの『ソーシャルもうええねん』を読みました。発売当初に書店で買って、はや3年。今の今まで本棚の隅っこで、何食わぬ顔をして他の“ネット本”の横に並んでおりました。やっと読めた。

 

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ブログっぽいけど、ブログっぽくない、ブログ本

 本書『ソーシャルもうええねん』は、アルファブロガー・アワードも受賞している筆者の過去のブログ記事を、大幅に加筆変更+書き下ろしも含めてまとめ上げた本。出版が2012年なので、それまで数年間のストックから厳選した格好……になるのかな。

 主に“元ネタ”となっているのは、おそらくこちらのブログ。表題どおりの記事にとどまらず、かなり多彩なテーマを取り扱っているため、読んでいておもしろいです。“お試し”として、こちらを読んでから購入するのも良いかも。

 

 ブログならではのそういった「ごちゃまぜ感」は本書の中でも現れており、思考があっちゃこっちゃに振り回されて楽しい。

 第1章の段階では、「おっ、これはネット初心者向けの参考書になりそう!」と思ったら、続く第2、3章ではプログラマーの仕事論っぽい話に。最後の第4章では総括的な「生き方」の話が展開され、「あ、なんかうまい具合にまとまってる」と、気持ちのいい読後感でした。

 

 章ごとにテーマは一貫してはいるし、前後の文脈も自然なため、読んでいて変な不快感を覚えることは一切ない。ただ、一気に読もうとすると話が多岐にわたっているので、軽く面食らう可能性は無きにしもあらずかと。

 そんな、良い意味での「ごちゃまぜ感」を楽しめる人、ブログ的な文脈に慣れている人ならば、むしろ楽しみながら一冊を読みきれるのではないかしら。元がブログだからと言って文体も“ネットっぽい”かと言えばそうでもなく、特に違和感なく読み進めることができました。

 

ネットリテラシー四方山話と、非コミュグラマーとしての仕事論

 前述のように、前半部分は“ネット初心者向け”とも読める、「ソーシャル」に関わるお話。 

 

 フォロワー数や“いいね!”をはじめとする「金で買える数字」の話や、ソーシャルゲームのユーザー層と儲けの仕組み。“自称年収○億円”などの情報商材関連の知識や、“楽天で1位獲得!”の背景などなど。

 ざっくりまとめれば、インターネットの「数字のカラクリ」にまつわる話を概括的に語っている内容でござる。そこそこ深くネットに浸かっている人なら「何を今更」な話題かもしれないけれど、意外に共有されていない情報らしいので。

 

 また、2012年の出版本ということもあり、その時点での「ソーシャルゲームの変遷」の要点がまとめられている点は、個人的には興味深く読めました。

 もともとは“パクり”から始まり、アイテムコンプリートを誘う『怪盗ロワイヤル』から、カードバトルシステムの『ドラゴンコレクション』への移行、タレントCMで話題になった『探検ドリランド』に、海外展開も推し進めた『神撃のバハムート』。そして、象徴的な「ガチャ」の話。

 

 それから3年、2015年現在の情勢を考慮しながら読んでみると、当初から変わったもの・変わらないものの比較ができておもしろい。ゲームシステムの進化や、派生コンテンツの展開など。本書ではちょろっと『デレマス』の名前が出ている程度だったけれど……今は、そのCygamesがヤバい。

 

 

 あと、プログラミング云々のトピックに関しても、ド素人の自分でも共感できる書き口で、首肯しながら読むことができました。

 “プログラマー”や“独立した人”の話と銘打ってはいるものの、広い意味での「仕事論」として書かれておりましたゆえ。「独立してから関わると面倒な人リスト」の箇条書きに笑った。“しょっちゅうブログを書いていて、しかもブログが長い人”って……だだだ、だれのことやら。

 

 なかでも納得できたのが、「非コミュグラマーが独立するのに必要なあった2つの勇気」として挙げられていたもの。

  1. nullなり適当な値をつっこんでコンパイルする勇気
  2. プライドを捨てて、人に聞いたり、頼ったりする勇気

 最初はナンノコッチャと思ったし、誰もが当てはまるとは言えない精神論だけれど、割と真理を突いているんじゃないかなー、と。あわせて語られているエピソードもおもしろかったです。

 

 自分としては、徹頭徹尾「おもろい!」本ではあったのだけれど、どういった人向けの本かと問われると……よくわからない。前半部分はネット初心者向けだし、仕事論などは大学生にも勧められそう。ただ、ピンポイントでおすすめする「あなた」が思い浮かばない。

 強いて言うなら、広い意味での「ネット好き」の人は興味深く読めるんじゃないかしら。作る側だろうが、消費する側だろうが、傍観者だろうが、「ネットで何かをやっている(やろうとしている)人」におすすめできそうな一冊。良かったら、手に取ってみてくださいな。

 

 

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