「オタク」の基準とは?雑食は「なにオタク」に定義されるんだろう


 

 一部で話題となっていた、こちらの記事。

 「調査対象のジャンルが狭すぎない?」「消費金額が少なすぎね?」「そもそもオタクの定義がなんじゃらほい」などなどのツッコミが入っており、僕もいまいち納得できていなかったのですが、ニュースリリースのページを見て得心がいきました。

 

<「オタク」市場とは>
本調査における「オタク」市場とは、一定数のコアユーザーを有するとみられ、「オタクの聖地」である秋葉原等で扱われることが比較的多いコンテンツや物販、サービス等を指す。

 

 まず、基準が「秋葉原」になっていること。そのうえで、「オタク」という言葉の定義は置いといて、それを「自認」している人がどれだけいるかという調査になっていた。それを鑑みてpdfファイルを参照してみると、結構おもしろい。

 このデータを見てちょっと気になったのが、「自分は◯◯オタクである」という意識について。それを自分に当てはめようとしたところ「あれ?」と疑問を抱いてしまった。

 その辺のカルチャーには親しんでいるし、そこそこの数のコンテンツに触れてきてはいるものの、果たして自分は何かに特化した「◯◯オタク」なんだろうか?と。

 

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「オタク」の定義は千差万別

 

 ちょうど1年前くらいに読んだ雑誌のコラムがおもしろく、こちらの感想の記事を書いたところ、いろいろなツッコミをいただいておもしろかった記憶があります。主に現代の10代を対象とした調査から見えてきた「オタク」の意味と、使われ方。

 

「アニメやニコ動を観る方がマジョリティ」
「『オタク』はよほどのマニアかキモいやつのこと
 だからアニメを普通に観るくらいの自分はオタクだと思っていない」
「家族の理解もある」
――これが「新世代オタク」である。

 

 コラムではこのようなまとめ方をされており、それも一面的には妥当なのだと思います。けれど、今や世代によって「オタク」という言葉に対するイメージが異なるだけに留まらず、その人それぞれの経験によってもまた印象が変わりそうなので、もはや定義がわけわかめ。

 あるコミュニティでは「気持ち悪い」ものとして、その少数派の存在が迫害されていたのを見ていればネガティブなイメージしかないだろうし、逆にマジョリティであれば「そういうのもあり、むしろフツー」くらいの感覚を持っている人もいるでしょう。

 

 自分の周囲では「 “そっち系(アニメ、ゲーム、BL他)” のカルチャーに親しみ、理解のある人」くらいの使われ方をしていた印象。10年前はまだ“キモい”ものだったけど。

 他方、ニコ生やツイキャスでどこぞの放送を覗いてみると、単純に「気持ち悪い」の言い換えとして使われているような場面をたびたび目にします。ちょっと自分の気に食わない変な人が来ただけで、「うわ、オタク、キモ」と罵るような。なんでや!

 そんなごちゃごちゃ具合も相まった「オタク」の定義を改めて客観的に考えられるほど僕は知見を持っているわけでもないので、ここでは完全に自分の主観で思うことを書き連ねております、はい。

 

自分は “なにオタク” になるんだろう

 で、冒頭の問いに戻ってきます。

 これまで、小説もマンガもラノベもアニメもTVゲームもサウンドノベルもエ口ゲーもアニソンもゲーム音楽もボカロも同人もMADも、自分の好き勝手にコンテンツを楽しみ消費してきた「雑食」の自分は、果たして「◯◯オタク」に当てはまるのかしら。

 せっかくなので、いくつか簡単に振り返ってみます(※人名は敬称略)

 

小説

 「好きな作家は?」と聞かれると、とりあえず本棚に一番多い「重松清さん!」と答えるものの、全作品を読んでいるわけでもなく。特定のジャンルが多いということもなく、本棚を眺めてもバラバラすぎて「これが好き!」とまとめられませぬ。

 ハインライン、カミュ、ハイネ、中原中也、乙一、さだまさし、武者小路実篤、伊坂幸太郎、森見登美彦、遠藤周作、森絵都、伊藤計劃などなど(お察しのとおり適当に並べただけなので、一冊しか著作を持っていない作家名も含む)

 有名どころをピンポイントで買って読んでいるつもりはなく、「気になったから」を続けていたらこうなった感じ。ミーハーと言われれば否定はできないし、蔵書量が多いわけでもないので、間違いなく「オタク」ではありませんね。

 

マンガ

 マンガも同様。強いて言えば、中学〜高校にかけて『月刊少年ガンガン』を購読していたので、出版社としてはスクウェア・エニックスが多めかなーというくらい。

 好きな作品をいくつか挙げるように言われれば、『鋼の錬金術師』『惑星のさみだれ』『タビと道づれ』『ARIA』『ポケットモンスターSPECIAL』あたりが出てきます。 “少年マンガ” という共通点はあるけれど、それくらい?

 月に何冊も買っているようなものでもないので、「オタク」ではございませんね。

 

ライトノベル

 ラノベも同じく。電撃文庫が多いとか、時雨沢恵一さんの作品はだいたいあるとか、そのくらい。

 あ、でも特に好きな作品には共通の要素があるっぽい。『ココロコネクト』『とらドラ!』『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』など……割とドロドロ展開というか、他と比べれば狭い(けど濃密な)関係性にスポットが当てられている作品群。好きです。

 僕を「オタク」にしてくれ! と言い出しそうなくらい、オタクじゃないですね。

 

アニメ

 アニメはからっきしっすねー。やっぱり、興味のある作品しか見ないので。ネットで自然と話題の情報に触れることにはなるので、その時々の流行はなんとなく知っているものの語れるほどではない。今期だと、『Fate/stay night』『天体のメソッド』『SHIROBAKO』がお気に入り。

 そもそも深夜アニメを見始めるようになったのが00年代前半のことで、それ以前の作品は興味があって手を出したもの以外、名前とざっくりとしたあらすじ程度しか存じ上げませぬ。もともと、 “オタクっぽい” コンテンツは嫌悪すらしていたので。

 「オタク」じゃない。本当のことさ。

 

ゲーム音楽

 ゲーム音楽に関しては、小学生の頃から意識して聴いてはおりました。中学に入ると特に好きな作品に関してはサントラを集めるようになって、よく聴いていた形。桜庭統、菊田裕樹、古代祐三、下村陽子、増田順一、石川淳、麻枝准、dai、ZUN、それとFalcom作品。

 でもでも、80年代から現在に至るまでの流れを説明できるでもなく、純粋に聴きこんでいるレベルにはも到底達することはできておりませぬ。シューティングゲームには弱いし、最近の高スペックゲームはからっきし。PS3もXBoxも触ったことすらないし。

 「オタク」じゃないですね。

 

同人音楽(ボカロ含)

 中学時代から、個人サイトで公開されているゲーム音楽のアレンジ曲には親しんでいたけれど、初めてコミックマーケットに行って同人CDを買ったのは2006年のこと。

 2007年にニコニコ動画が登場し、東方アレンジやらボーカロイドやらオリジナルやら同人音楽の虜になりました。以来、300〜400枚ほどのCDを買って聴いてはいたものの、割と特定のサークル(+ジャケ買い)に絞られていたので、界隈全体を網羅していたなんて口が裂けても言えませぬ。

 ボカロに関しては、流行り始め(初音ミク発売当初)からずっと追いかけてきました。「メルト」のシングルとか持ってるよ!でもやっぱり好みが偏りがちなので、有名曲でも「ワンフレーズしか知らねえ!」みたいな楽曲も数多ございます。

 うん、「オタク」とは言えませんね。

 

「オタク」はいつまでも「好き」を語り続けることができる人

 結論として、自分はどの「◯◯オタク」にも当てはまらないことが明らかになったわけですが。いやー、やっぱり自分なんぞがオタクを名乗ろうなんておこがましいにも程がありますよー。だって、僕は言わば自分の「好き」を単につまみ食いしているだけなんだもの。

 僕はなんとなく昔から「オタク」という言葉にポジティブ……に限らない、 “突き抜けた” 存在としての印象を強く持っていたように思います。

 特定の分野・作品に関して、「とにかくめちゃくちゃ詳しい人」とか「いつまでも楽しそうに語ることのできる人」「関連商品は全部集めてイベントにも全参加する人」などなどの一点集中、とんがった存在。だからこそ、「雑食」がオタクを名乗るのはなんか違う。

 

 さらに、特定のジャンルを、ある種の専門家たる「オタク」として語ろうとするならば、やはりその歴史や背景などの基礎知識は網羅している必要があるんじゃないか、とも漠然と考えていたので。

 “アニオタ” や “ラノベオタ” を名乗ろうとするのなら、それぞれの「古典」まで把握していなければならないといったような。探せばいくらでも詳しい人はいるし、一定量の知識がなければ「とてもじゃないけど敵わん!」といった意識は上がってきてしまうもの。

 

 結局のところ、自分はどれだけ「好き」を叫ぼうともただの 「消費者」に過ぎないのです。思い入れの強い作品はあっても、表面的になぞって楽しんで、それで満足しているような。

 それも悪いことではないと思うけれど、その遥かに上を行く熱量を持った人が近くにいると、「すごいなあ……」と思ってしまうのです。単なる「消費者」あるいは「ファン」でもいいけれど、たまに突き抜けた人たちが羨ましくなるような。

 いちファンとして、これからもカルチャーとしての「オタク文化」は追いかけさせていただきます。よろしくお願い致します。……とか書いてたら、ヒラコー先生のツイートがふと目に入った。

 

 

 ――あれ? やっぱり僕もオタクじゃね?

 

 

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