男子高校生にもおすすめ!一から服装を考える入門書『もうミスらない 脱オタクファッションバイブル』


 

 なもり先生の表紙絵にホイホイされた拙者、俗に言う “ぬるオタ” でござる(たぶん)

 

 当然のごとく、「ファッション」に関する知識は限定的。その門外漢っぷり、なんと本書を読むまで「ダッフルコート」の形状を把握していなかったレベルである。あっ、この人、ただの常識知らずだ!

 大学に入るまで、服と言えばカーチャン任せ。たまに気張ってシャツなんぞを買って帰ってくると、母親の顔が瞬く間に引きつり、黙って首を横に振るくらい。……い、いいじゃん! 英字びっしりのTシャツとか、和柄のパンツとか、あと十字架アクセ……は、我ながら流石にないわ……。

 そんな自分が、少しでも見た目の “オタクっぽさ” を薄めるべく……というわけでもなく、単に表紙絵に釣られたのと、「たまには服に関する本でも読んでみっかー(鼻ホジ」という気まぐれで買ったのが、本書『もうミスらない 脱オタクファッションバイブル』です。

 

本書が目指す「脱オタク」って?

 ところで、いきなり「脱オタクファッション」などと言われても、いまいちピンとこない人もいるのではないかと思う。もちろん、テンプレート的な「オタク像」はあれど、ぶっちゃけ、「オタクっぽい服装」なんてものは個人の主観でしかない。チェック柄のシャツに罪はないんです!

 とは言え、多くの人が見て「オタクっぽい」と感じるファッションは確かにあるし、コアなオタクの人たちになぜだか共通してしまいがちな組み合わせも、なんとなくイメージできる。それこそ “チェック柄” もそうだし、 “シャツイン” とか、 “上下ダボダボ服” とか、そのあたり。

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久世『もうミスらない 脱オタクファッションバイブル』(KADOKAWA) P.14

 細かいことを言えば、いくらでもツッコミどころはありそうだけれど、本書では、そんな「オタクっぽい服装」を暫定的に定義するところから話を始めています。

 その上で、具体的には「どこがダメなのか」(課題提起)を確認し、「何に気を付け、どうすればいいのか」(改善方法)を提案していく内容。それゆえ序盤には「 “オタクっぽい” とはなんぞ!」という視点もあり、オタクの生態系についてもざっくりと触れられていました。

 加えて、現状を「改善」するための本ということで、冒頭「はじめに」の部分では、読者に明確な目標設定をすることも推奨。1年後に「どうなっているか」を目指すものとして、意識は高く、けれど無理なく変わっていけるよう、段階を踏んで説明しています。長く付き合うことを前提とするがため、 “バイブル” の名を冠しているとも言えるのではないかしら。

 

 ひとつ目は、「ありたい姿を明確にする」こと。たとえば、「モテたい」「集団に溶け込みたい」といった願望を書き留め、その初心を決して忘れないことだ。これが見えてない人は結局自分を変えられない。せっかくオシャレになっても引きこもっていては何の意味もない。

 ふたつ目は、「優先順位」だ。ユニクロが普及したことで典型的なオタクファッションは少なくなってきている。しかし、最も基本となる「清潔感」「髪型」「眉毛」「靴」は未だ手つかずの人が多い。この4項目ができて初めて、あなたの買う服が生きるのだということを、まず肝に銘じてほしい。

久世『もうミスらない 脱オタクファッションバイブル』(KADOKAWA) P.4

 

“脱オタクファッション”とは、“オタクっぽさ”を薄めて“普通”になること

 「脱オタク」という前提でのファッション入門書ということで、本書では繰り返し、「オシャレではなく “普通” を目指す」といった旨の記述が登場する。オタクゆえのちぐはぐさ、 “違和感” を解消し、 “清潔” な見た目になること。それらを引っくるめて、「普通たれ」と。

 そこで最初に挙げられているのが、以下の「基本のルール8」。ざっと見るかぎりでも、「 “脱オタ” というか、ファッションの基本じゃね? オタク関係なくね?」なんて感じる人もいるかもしれませんが……それでいいのです。何はともあれ、まずは基本から! なのです!

 

  1. 「シンプル」「ベーシック」なデザインを心がける
  2. サイズの合った服を選ぶ
  3. 柄には無地を、明るい色には落ち着いた色を合わせる
  4. 「アクセント」は全体の20%にとどめる
  5. キレイな靴を履くだけで印象がかなり変わる!
  6. 体臭にも気を使おう
  7. 清潔感のある髪型を意識しよう
  8. オタ言葉を封印し、相手を気遣う言葉を選ぶ
久世『もうミスらない 脱オタクファッションバイブル』(KADOKAWA) P.34〜35

 

 ポイントは、後半部分かしら。「体臭」「髪型」「オタ言葉」など、 “ファッション” と聞いてまずイメージするだろう「服装」とは、ちょいと離れた視点のルールでござる。

 ここでまた、 “普通” の人からは「え? ファッションと言ったら、身だしなみも基本じゃ(ry」なんてツッコまれそうだけど……違うんです。一部の “オタク” からすれば、「ファッション=服装」のことであり、清潔感云々は別問題だと考えている層がいるのです(たぶん)。……え? そんなの作り話だって? ……いやいや、少なくとも、男子校時代の僕はそうだったぞー! 不潔でごめんね!!!

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久世『もうミスらない 脱オタクファッションバイブル』(KADOKAWA) P.48〜49

 そういった点も含めて本書では、基礎中の基礎からイラスト&マンガ付きで説明してくれるので、何も知らない人の「最初の一冊」として、全力でおすすめできる。ちょいちょい小ネタも挟んでくるので、ゆるい評論系同人誌のようなノリで読めるはず。

 今となっては「インナー」も「アウター」も当たり前だけど、10年前の僕なんて、もう意味がわからず震えてたからね! さすがに “イン” と “アウト” の英語はわかってたけど、「じゃあその中間は何になるの……? “ミドラー” なの……?」とか言ってたもん! スタンド使いかよ!!*1

 

「ファッション初心者」にも広く勧められそうな入門書

 また、ファッションに関する基礎知識を解説する一方で、具体的に「どうすればいいか」という「提案」も随所で挟んでいるので、読み終えてすぐに行動・参考にできるという点も魅力的。

 例えば、敷居の低いアパレルショップの名前を複数挙げて、「特色」「対象年齢」「価格帯」「狙い目アイテム」といった項目別に紹介していたり、トップス&パンツを合わせた推奨コーディネートを、いくつもイラスト付きで例示していたり。

 

 正直な話、ノリと見よう見まねで服を選んでいた僕としては、「そうすればよかったのかー!」と、マジで目からうろこ状態でござった。他方では、季節別の「重ね着テクニック」の項目などは、「これ、大学入学前にネットで勉強したところだ!」なんて、復習にもなりましたしおすし。

 さらには、意外と外からはわからなかったり、誰にも教えてもらえなかったりする、「美容室での流れ」「眉毛&ひげの整え方」「ムダ毛処理」「スキンケア」「体臭」「口臭」などなど、 “デキる男の身だしなみ入門本” 的な本に書かれているだろう項目も、ある程度はカバーしている模様。

 本書で取り上げられているのは、あくまで「とりあえずこうしとけ!」という、おすすめ指南のひとつに過ぎないのでしょうが……。それでも変にハードルの高さを感じさせない、ゆるい説明&提案になっているので、 “オタク” に限らず、 “ファッション初心者” に広く勧められそうな一冊です。

 

 「今更、ファッションなんて……」とか、「押し付けがましいのは嫌だな……」とか、若干の反発心を覚える人もなかにはいるかもしれない。けれど、せっかくのいい機会ですし、表紙イラストにホイホイされたと思って、踏み出してみるのもありなんじゃないかしら。

 少なくとも僕は、叶うなら高校時代に出会っていたかった一冊でござる。そうすれば、初めての美容室デビューで「サイヤ人っぽくしてください(ドヤ顔)」なんて言って、店員さんに吹き出されることもなかったのに……。サイヤ人ってなんだよ……「もうクリリンでいいや」なんて気持ちになったよ……。

 

 

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