醤油。塩。豚骨。つけ麺。
男にとって、「ラーメン」とはごちそうである。まだガキンチョだった頃は、たまに外で食べるラーメンはもちろん、家で食べるインスタント麺だって、カレーやハンバーグに並ぶレベルのごちそうだった。さらには近所の駄菓子屋さんで食べるブタメンですら、子供の時分には最高に魅力的に感じていた覚えがある。
さすがに今となっては、ブタメンやインスタント麺は「ラーメン」とは別カテゴリーに振り分けられてしまった印象もあるけれど。でもそもそも、一口に「ラーメン」と言ってもその世界は広大で奥が深い。ラーメンフリークでもない自分には、おいそれと語れないような印象すらある。
──などと考えつつ、ラーメン店ひしめく秋葉原を歩いていた、ある日の夜のこと。久々に『はるか』さんに入ろうと考えるも行列ができているのを見て断念し、多種多彩なラーメン屋さんに目移りしつつ、悩むくらいなら『博多風龍』でいっかー……と決めかけていたところ、ふと目に入ったお店があった。
それが、『北海道らぁ麺 ひむろ』の秋葉原店さん。都内の何ヶ所かで見た覚えのある、北海道ラーメンのチェーン店。そういえば入ったことなかったなーと思いつつ、軒先でメニューを眺めていたところ、ふと気づいたことがあった。
そういえば、僕。
味噌ラーメン、食べてなくない?
──そうなのだ。自分が好きなラーメンと言えば、醤油と豚骨。同時に、魚介系のつけ麺もこよなく愛し、夏場は塩ですっきり、たまに鶏白湯の旨味に舌鼓を打つこともある。広大なラーメンの世界を人並みにつまみ食いしていた自分が唯一、足を運んでこなかった未開の土地──それが、味噌王国なのです。
改めて考えてみると、自分は濃厚な“みそ味”の料理になんとなく忌避感があり、避けていたようなきらいがある。お味噌汁は好きだけれど、味噌田楽はちょっと苦手。子供の頃に食べた味噌ラーメンが濃厚すぎて、当時の苦手意識を引っ張り続けていたのかもしれない。
口では「ラーメンが好き」と言いつつも、おそらく10年以上は避けてきた、味噌ラーメン。子供の舌には合わなかったそれも、酸いも甘いも噛み分けてきた今の自分なら、きっとおいしく食べられるのではないかしら──。そう考え、いざ入店することにしたわけです。大人の階段、のぼっちゃおう。
「札幌味噌らぁめん」をいただきます
『ひむろ』さんは、北海道ラーメンのチェーン店。「札幌味噌らぁめん」「旭川醤油らぁめん」「函館塩らぁめん」の北海道ラーメン3種類を中心に、メニューを取り揃えている様子。通常の2倍サイズの「でっかいどう」もあるものの、通常サイズは一般的なラーメンのボリューム。小食な人でも大丈夫。
ここでまた醤油に逃げる手もあったものの……券売機を見れば、札幌味噌らぁめんの部分に「当店一押し!!」とまで書かれているじゃありませんか。一押しかつダブルの「!」マークで強調しているときたら、そりゃもう乗っからない手はないでしょう。素直に選んでいただくことにします。
2階席に通されて、待つことしばし。
こちらが、札幌味噌らぁめんでございます。
札幌──それは僕が幼少期を過ごした街であり、自分の記憶が始まった土地である──なんて回想を入れるとまた長くなりそうなので、レンゲを片手にまずはスープをいただきます。
途端、濃厚な味わいが口の中に広がる──かと思いきや、想像していたものとは違ってびっくり。思いのほかまろやかで食べやすく、むしろ馴染みのある味わい。スープの色が白く見えるのは、豚骨の成分が強めに出ているのかしら。たしかに濃厚でコクがあるけれど、しつこすぎず程よい感じ。
麺はよく見かけるタイプの縮れ麺で、言うなれば “実家のような安心感” を感じるスタンダードなやつ。特筆する部分はないものの、普通にちゅるちゅるもぐもぐ食べられる安定感。それよりも具が多く、そちらをスープに絡めて食べるとよりおいしい。食べごたえもありますね。
麺と具を食べ終えたあとにも、スープをもう一口、いや、さらにもう一口……と思わずすくって飲んでしまうくらいには、すっかりスープの味に病みつきに。それまでの苦手意識はなんだったのか……と思えるくらいにおいしく、満足のいくラーメンでした。味噌ラーメン、イケるやん……!
そんなこんなで、ごちそうさまでした。今後は味噌王国も開拓していくべく、気が向いたときに味噌ラーメン屋さんを探してみようと思う所存です。