10月に入り、世間的には秋アニメが盛り上がりつつある今日このごろ。「忘れないうちに夏アニメの話をば!」ということで、これだけは外せなかった。
黒星紅白(@kuroboshi)先生がキャラクター原案を手がけているということで気になっていた、アニメ『プリンセス・プリンシパル』。1話で惹きこまれ、2話で騙されていたことを知り、5話の殺陣に興奮し、6話EDに泣き、8話で歯止めが効かなくなった。
スチームパンクな世界観に「スパイ」という作品テーマ。『コードギアス』でおなじみの大河内一楼(@ichirou_o)さんがシリーズ構成と聞けばほぼ視聴は決定したようなものなのに、さらにダメ押しの「音楽:梶浦由記」(@Fion0806)。これは見るしかあるめえ!
ということで、すでに最終回を迎えてからしばらく経ちますが、ざっくりと『プリンセス・プリンシパル』の紹介をば。ネタバレはありません。
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骨太な世界観にスチームパンク×スパイアクション
『プリンセス・プリンシパル』の舞台は、19世紀末の霧の都・ロンドン。ただし、現実世界の歴史とは異なる背景を持っており、独自の技術・設定によって、奥行きのある世界観となっている。
舞台は19世紀末、巨大な壁で東西に分断されたアルビオン王国の首都ロンドン。
伝統と格式ある名門、クイーンズ・メイフェア校には、5人の少女たちが在籍していた。
彼女たちは女子高校生を隠れ蓑に、スパイ活動を展開。
変装、諜報、潜入、カーチェイス……。
少女たちはそれぞれの能力を活かし、影の世界を飛び回る。「私たちは何?」
(STORY|TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』公式サイトより)
「スパイ。嘘をつく生き物だ」
その中心にいるのが、「スパイ」の存在。ロンドンを東西に分断した革命の後、大きな武力衝突はないものの、王国内で暗躍するスパイたちの存在によって「影の戦争」が続いている。
その【共和国】側のスパイとして活動しているのが、本作のメインキャラクターの5人──なのだけれど、そのなかに敵対する【王国】側のプリンセスが紛れこんでいるってのがなんかもうアレだよね! 展開が目まぐるしいこともあり、序盤は軽く混乱しておりました。どっちが王国? 共和国? んんん??
1話からカーチェイスあり、5話では列車パニックありと、アクション面でも目で見て楽しめる本作。その後ろでは梶浦由記さんの楽曲が流れており、響きわたる銃声に蒸気音、金属と金属がぶつかり合う重低音など、耳で聴いても楽しい。効果音が良い仕事してる。
なかでも5話、サムライ同士の殺陣・剣戟シーンは、近年稀に見る爽快なアクションとなっておりました。無料期間だけで、もう何度リピートしたことか……。え? なんでロンドンにサムライがいるのかって? そりゃあほら、スパイものではお約束の、石川五ェ門ポジションでござるよ。
また、カーチェイスに列車──空間の縦横でいえば「横」軸で大きな動きが見られる一方で、「縦」軸で優れたアクションが見られるのも、本作の魅力のひとつです。
それを可能にしているのが、この世界の独自物質、重力を遮断することのできる「ケイバーライト」の存在。主人公・アンジェは、このケイバーライトを利用した個人型重力制御装置「Cボール」を持っており、街中でも屋内でも、縦横無尽に飛びまわってくれるのだ。もちろん使用制限はありますが。
蒸気と霧に覆われた世界で繰り広げられるのは、拳銃と刀、そしてCボールをメインに据えたスパイアクション。と同時に、スパイものならではの主題として、欠かせない要素がもうひとつある。
それが、時に不敵に、時に悲しげに、時に苦さと共に、繰り返し口に出されるスパイの言語「嘘」。本作の登場人物は皆、嘘を介してつながり、嘘によって引き離されることになるのです。
「嘘」を介したスパイ5人の関係性が尊い
「かわいらしい女子高校生5人がメインキャラクター」とくれば、たとえテーマが「スパイ」だろうが、それなりの尺でもってキャッキャウフフの学園生活が描かれる──などと、放送前の段階で思った人も多いのではないかしら。
ところがどっこい。まったくそんなことはなかったぜ!
PVにも書かれているように、彼女たちは「職業:スパイ」かつ「任務:女子高校生」という立ち位置にある。1話では気心の知れた間柄であるように映るものの、いざ2話を見ると、決して互いを信用しきっているわけではないことがわかります。
むしろ、学園生活こそ「嘘」だらけ。主人公・アンジェは田舎娘を演じきっているし(かわいい)、スパイチームのリーダー格・ドロシーはそもそも20歳(にじゅうすぱいかわいい)。集まって優雅にお茶をしているかと思いきや、話の内容は任務のことばかり。まったくもって、JKっぽくないのです。
逆に、スパイとしての任務中のやり取りのほうが、まだ「本当」の顔を見せているようにすら思えるような。どこまで腹を割っているのかは知れず、二言目には「スパイは嘘をつく生き物だから」と話す彼女たちの関係性は、日常アニメとは明確に異なる。
しかし同時に、回を追うごとに、その「嘘」を介してお互いの距離が縮まっているようにも見えてくる。それがおもしろくもあり、もどかしくもあるんですよね。
「嘘だから」と口には出しつつも、そこには絆あるいは友情の萌芽が見られるという不思議。変わりつつあるようにも、まったく変わっていないようにも見える関係性が、なんとも愛おしいのです。話が進めば進むほど各キャラに愛着がわいてくるのに、世界観的にはいとも簡単に死にそうで、ハラハラする……。
特に、アンジェとプリンセスの関係性がもうね……たまらんよね……。顔色ひとつ変えず忠実に任務をこなし、「クロトカゲ星から来た宇宙人」を自称するアンジェと、いつもニコニコ穏やかながら、明らかに何かを秘めているプリンセス。その対称性に惹かれてしまう。
作中のキャラクターのなかでも抜きん出た能力を持ち、スパイ活動中は無表情で事に当たるアンジェ。かと思いきや、予想外の出来事に対しては焦り顔にもなり、信頼できる相手には笑顔を見せることもあり。ふとした瞬間に覗く年相応の表情が、なんともかわいい(かわいい)。
そういった「嘘」を介した関係性・キャラクターの魅力も手伝って、無駄に感情移入してしまい、終盤は胃が痛かった。結果、最終回を迎えたあとも「もっとこの作品に浸っていたい!(バンバン」と続きや外伝を所望するほどには、本作に惚れこんでしまったのでした。
何がすごいって、最終回を迎えたあとに過去のエピソードを見返すと、めちゃくちゃ発見が多いんですよね……。物語上の伏線もそうだし、当初はわからなかったカットやキャラクターの表情・台詞にも意味があったとわかる。2話では思わず「あ、あ、あ〜〜〜!!」って頭を抱えた。尊い……。
本作の魅力とエッセンスが詰まっている1話を見て!
──とまあ、あーだこーだと書いただけではピンとこないと思うので、ぜひとも1話を! 1話だけでも見てください!
ほかのアニメ作品だったら「3話まで!」とか言いそうなところですが、本作については1話だけでも充分かと(良い意味で)。1話完結型の作品ということもあり、なんだったら「殺陣がかっこいい5話を!」とかでも良いかもしれない。けれど、やっぱりまずは1話をぜひに。
主な舞台となる霧の都の描写に、スパイアクションとカーチェイス、各メインキャラクターの性格と能力を垣間見ながら、スパイものならではの二転三転する展開を経て、想像以上にビターな結末。──1話は、本作の魅力とエッセンスが詰まった24分間となっています。
また、見ようか悩んでいる人には、公式Twitter(@pripri_anime)で提示されていた「本作を見る前におすすめの作品」が参考になるかも。「製作日誌」として複数のスタッフさんのおすすめをツイートしていましたが、本作と似た雰囲気の作品が挙げられているようにも見受けられました(※以下敬称略)。
- 橘正紀(監督):『NOIR』*1
- 湯川淳(チーフプロデューサー):『ガンスリンガー・ガール』*2
- 白土晴一(リサーチャー):『ジョーカー・ゲーム』*3
- 速水螺旋人(設定協力):『レッド・ファミリー』*4
あとは、言うに及ばず、梶浦由記さんの音楽っすね。今年は本作のほか、『劇場版 ソードアート・オンライン』『劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel]』と、梶浦サウンドに浸れて幸せ。Cボールのテーマこと「shadows and fog」のサックスが素敵すぎて、宙に受けそうな気がしてきた。
というわけで、簡単にではございますが、『プリンセス・プリンシパル』の紹介&ネタバレなし感想でした。気になった方は、ぜひチェックしてみてください!
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