今期は紗霧ちゃん*1がかわいい。
……そうなのです、わかっているのです。見るからにかわいい妹キャラにして、ぱんつ大回転中の洗濯機の前でノリノリダンスを踊る彼女を見たら、そりゃあ惹かれずにはいられないでしょう。しかし、それは重々承知のうえで僕は、声を大にして言いたいのです。
今期アニメは、『月がきれい』もいいぞ──と。
淡々とした印象ながら、不思議と惹きこまれた第1話
4月から放送されているアニメ『月がきれい』は、川越の中学校を舞台とした、思春期真っ盛りの中学生達による恋愛物語(Wikipediaより)。ラブコメ──というには “コメディ” の要素は控えめに感じられるものの、直球ストレートの青春モノだ。
主人公は、小説家志望の中学3年生・安曇小太郎(あずみこたろう)。
一見すると冴えない、おとなしい性格であるように見えて、男友達相手だと年相応のやんちゃさも垣間見える男の子。文芸部の部長でもあり、根っからの文系男子である。中学男子って、どうしてみんな、電気の紐に向かってシャドーボクシングするんだろうね……。
対するヒロインは、小太郎のクラスメイトの水野茜(みずのあかね)。
クラスでは “イケてる女子グループ” に属しており*2、陸上部員としても活躍。ただ、常に人の顔色を窺いつつ行動しているような素振りも。何かの折に緊張すると、紫イモのマスコットキャラをふにふにしている。かわいい。 一瞬、 “夕立っぽい生物”*3 に見えた。
部活は文系と体育会系、はたから見れば接点は少なく、性格も異なっているように見える2人を中心に物語は進む。偶然に放課後のファミレスで出会い、体育祭で同じ係になり、徐々にお互いを意識しはじめるという流れ。2人とものんびり屋というか、どことなく雰囲気が似ている部分はありそう。
で、最初の接点となるファミレスのシーンで見受けられたのが、いくつもの「中学生あるある」な描写。それが個人的にも心当たりのあるやり取りに感じられ、思わずニヤニヤしながら見てしまったのですよ。この時点でまだ1話のAパートだけど、掴みはばっちり。
……ぼく知ってるよ! これ!
そうなのよ……放課後、あまり話したことのないクラスメイトと学外で会うと、妙に気まずく感じられるのよね……。しかも、お互いに家族連れである。親は親で、息子娘の気まずさもどこ吹く風。ウフフフオホホホと世間話を始めるし、なんか気恥ずかしいったらありゃしない。やめたげてよぉ!
さらには主人公・小太郎の、ある種の “お約束” 的な行動に悶絶する僕。で、でたー! 「そんなところを気にしているはずもないのに、女の子の視線を意識して普段は飲まないコーヒーを飲もうとしちゃう」やつだー! 「女の子の前では見栄を張っちゃう系思春期男子」だー! わぁい!
そのように細かな(?)描写も含め淡々と、でも丁寧に話が進んでいく印象も受ける1話。2人の仲がどこまで進展するかといえば、なんと「LINEの連絡先を教える」だけである。通学路の曲がり角で激突することはなく、テンション高い系美少女転校生が登場するでもなく。
……だって今日び、ラブコメ漫画だったらラッキースケベでおなじみの体育倉庫で何が起きるでもなく、「連絡先を教えるだけ」なんですよ!? 同じ中学生でも、リトさん*4だったらもう組んず解れつのトンデモToLOVEるが発生していただろうに……。けしからん、だが、それがいい。
でもこの時点で、「むっちゃ好きなタイプのアニメだ……」という予感はあったのです。実際、この予感は2話を見てますます強まり、3話で確信へ変わると同時にキュン死した。
身悶えするほどに「思春期の中学生らしい」恋愛模様
『月がきれい』の何が魅力かって、高校生でも大学生でもない、思春期の中学生ならではの「恋に対するむず痒さ」がひとつ挙げられると思うんだ。
もちろん、知識として「恋」がどういうものかはは知っているし、実際に身近な友達のなかには彼氏彼女持ちもいる。けれど、自分がいざそういった場面に置かれるとどうすればいいかわからず、気恥ずかしさが先立って言葉数も少なくなってしまう感じ……わかるかなぁ!?(突然の大声)
連絡が来たらそれだけで嬉しくなっちゃう感じとか、音沙汰がないと不安で押し潰されそうになる感じとか、浮足立ってほかのことに集中しづらくなる感じとか、でも実際に顔を合わせて話そうとするとうまく言葉が出てこない感じとか……ああもう! 甘い! 甘酸っぱい! もっとやれ!
「連絡手段がLINE」というのは、現代っぽくもある。でも同時に、過去の恋愛モノと比べても、そこで描かれている関係性は本質的に何も変わっていないのがおもしろい。
「用もないのに連絡してもいいのかな……」という不安に始まり、文字だけのコミュニケーションでどこまで話すべきかという葛藤を経て、徐々にお互いの心の内を出すようになりつつも、大切な局面では面を向かって話すことを重視する──そんな流れ。
自分の世代はメールがその手段だったけれど、遡れば手紙のころから変わらないであろう、想い人との「連絡」の方法。その絶妙な距離感での交流が微笑ましく、ドキドキさせられるのです。4話の修学旅行の場面ではスマホ時代ならではの「すれ違い」も描かれ、わかっていても緊張した。
どちらかと言えば口下手で、慣れてくるとLINEで楽しく話せるようになった2人も、顔を合わせて話そうとすればこの距離感。3話くらいまではお互いに口数も少なく、会っても静寂多めで緊張感MAX。──見ている側としては、やきもきしつつもニヤニヤが収まらないのだけれど。
そして、問題の3話ラストで「グワーッ!」と想像以上に早かった展開に絶叫し、からの不安半分期待半分の4話ラストで「アバーッ!」と悶絶したまま爆発四散。致命傷である。やべえよ……。やべえよ……。ヒロイン・茜ちゃんの一言が、近年稀に見る勢いで鳩尾にクリティカルヒットした。あ……ア……アアァ……(語彙を失う)。
見つめ合うと素直におしゃべりできないんですよねわかります! 4話までのおよそ2時間で、何度心の中で「あーもう!!!!」と叫んだかわからない。
──というか、振り返ってみるとこの2人、重要な場面ではいつも横並びで頬染めてだんまりしてるな……。なんだこいつら! 純情か! ……うん! 純情中学生だった!
作品の舞台である川越と、太宰治と、おなじみの挿入歌
そういった「恋愛モノ」かつ「中学生あるある」的なアニメとして『月がきれい』を楽しんでいる一方で、個人的には「ご当地アニメ」としても注目中。
2話放送後くらいのタイミングですでに本作にビンビンきていたこともあり、実際に行ってきたのです。川越に。
それなりに慣れ親しんだ土地ということもあり、各場面の場所がすぐにわかって楽しかった。
地元ということで、アニメイト川越店さんが巡礼記事を投稿されているようなので、より詳しくはそちらをばどうぞ(参考:店舗ブログ|アニメイト川越)。高校時代にはお世話になりました。
あとは、主人公が文学少年ということもあり、太宰治の著作や言葉がたびたび引用されているのも本作の特徴。
モノローグで言及されているのでそちらが印象に残りがちだけど、しれっと1話で登場したはっぴぃえんどのレコードや、やたらとぬるぬる動いていたお囃子の練習シーンなど、ちょいちょい文化的な香りがする作品なのよね……。小江戸・川越という舞台それ自体も含めて。物語後半に川越まつりが描かれるんじゃないかと期待している。オープニングがアレだし。
そして忘れちゃいけないのが、物語を彩る音楽と、東山奈央さんの挿入歌! オープニングもエンディングも劇伴も大好きだけれど、「恋」を歌った往年の名曲が劇中が流れる点もたまらない。
現状、6話までに3つの挿入歌が登場しましたが、それぞれに年代が異なる選曲になっているのが(いい意味で)ニクい。80年代の「初恋(村下孝蔵)」、90年代の「やさしい気持ち(CHARA)」ときて、00年代の「3月9日(レミオロメン)」。幅広い年齢層へ乱れ撃ちしておる。
ほかにもほかにも、2人を取り巻くキャラクターとか、毎週変わるエンディングのLINEのやり取りとか、岸監督お得意のギャグを詰め込んだCパートの小話とか、いろいろと魅力はあるのだけれど……とりあえずはこの辺で。 “風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律” は反則だと思う。
そんなこんなで、 「ウボァー!」と叫びながら体中を掻きむしって悶えながらキュン死にたい人は、ぜひとも『月がきれい』を見てみてくださいな。
8話登場の縁むすび風鈴もいいぞ。
© 2017「月がきれい」製作委員会