昨年、ちょうど今くらいの時期から「下駄」を履くようになった。冬場はさすがに足が冷えて、トイレが眼前に迫ってくるだろう展開が目に見えていたので、あまり履くことはなかったけれど。
そんな、足下から冷える季節も過ぎ去り、この週末。――ご覧の陽気である。お天道さまはカンカンギラギラと青空で存在感を発揮し、5月にして早くも頭から焦げようかという紫外線が照りつける。肌が松崎しげる化するにはまだ早いよ? 美しい人生よ? かぎりない喜びよ?
……と、しげるの話は今はいいのです。今度、CD借りに行くから。つまり、こんなにも良い天気、暖かいポカポカ日和に、外に出ないなんて嘘でしょう。ひさしぶりに鼻緒に指を通して、とっとこお出かけに繰り出そうではありませんか。目的地は立川。足下涼しく、いざぶらり散歩へ。
週末日曜日だね!お疲れさま!
— けいろー (@Y_Yoshimune) 2016年5月22日
せっかくの良い天気だし、映画館でガルパンする?極上爆音上映にする?
それとも、公開から半年間上映継続中の、ガ・ル・パ・ン? pic.twitter.com/lwjShkQ78p
「夏」を感じさせる音に、素足ゆえの爽快感と開放感
さて、下駄の魅力はなんぞと問われれば、何よりもまず「音」が挙げられるでしょう。 “カランコロン” と鳴り響く下駄の音は独特で、 “チリンチリン” という風鈴の音と並び立つ、「夏の音」の代表選手だと個人的には思っておりまする。――足下の木と、頭上の鈴。風流でござる。
けれど一方では、「あまり音を立てて歩きまわるのもちょっと……」と感じる人も少なからずいるでしょうし、音がよく聞こえる下駄は地面に対して「木」 がむき出しなため、履き方によってはガンガンすり減っていってしまうという懸念もある。街中は特に、コンクリートだらけですしね。
その点、自分が買った下駄は「ゴム底」になっているため、すり減ることを気にせずズンドコ歩きまわることが可能。履き始めてから1年が経った現在、台の欠けている部分がちょいちょい目立ってきてはいるものの、まだ存分に履きまわせそうな実感があります。
裏がゴムになっているため、当然、木と比べれば「音」は控えめ。でも全く音が鳴らないというわけでもなく、コンクリートの上などを歩いていると微妙に “それっぽい” 音を立ててくれます。……まあ、微妙であることは否めませんが、街中の普段歩きに味わいが出て、良い感じ。
加えて、サンダルと同じく「素足」ゆえの開放感も大きな魅力。夏場の喫茶店なんかに行くと、足下が暑いのか、はたまた履きっぱなしで疲れてしまうのか、靴を脱いで座っている人がちらほらと見受けられますが、下駄ならその辺も楽ちんでござる。
圧迫感らしい圧迫感は皆無なので、基本的にはそのままブラブラさせているだけでも気持ちいい。冷房がキツいと感じたら、屋内にいるときだけ靴下を履いて調節することもできますし、むしろ生地の薄い靴下を選んで、合わせて履くのもいいかも。鼻緒を考慮して、5本指ソックスとか。
履き物を変えることで感じられる、普段の「歩き方」
また、下駄をたまに履くことのメリットって結構あると思っていて、そのひとつに「自分の『歩き方』を再確認できる」というものがあるんじゃないかと。仕事での革靴や、週末のスニーカーといった「普段履き」とは異なる、プラスアルファの選択肢。
正直に言ってしまえば……そりゃあ、下駄なんて不便な履き物っすよ。長距離を歩くには向いていないし、慣れない鼻緒で指の間が痛くなるし、急いでいるときに全速力で走るわけにもいかない。真夏は蚊に刺されるし、急なにわか雨で濡れるし、人混みで踏まれれば痛い。
けれど、あえてそういった「不便」に身を置くことによって、いろいろと見えてくるものもあるんじゃなかろうか、と。例えば、普段は早歩きしがちな人は自然と歩幅が狭くなり、街中の景色が違って見えてくるかもしれない。覚えのない脇道が目に留まるとか、街路樹の変化に気づくとか。
あるいは、慣れない履き物で歩くことによって、自然と自分の「歩き方」を見直すようになるかもしれない。左右の下駄が発する音の違いから、歩き方の癖がわかったり、足の親指が主に痛くなっていることから、必要以上に前に寄った重心で歩いているんじゃないかと気づいたり。
もちろん、これは下駄に限った話ではなく、他の「履き物」にも当てはまるものだと思う。女性なら、ハイヒールなども選択肢に入ってくるでしょうし。
ただ、これからの季節、せっかくなので僕は「下駄」を勧めたい。サンダルも気楽で悪くないけれど、履いていて楽しいのは下駄だと思うのです。血行が良くなるだとか、体幹が鍛えられるだとかいった健康効果も一応は語られていますが……それは置いといて。どうでしょ?
僕もいま履いている下駄の底が徐々にすり減ってきたので、そろそろ新しく買い換えようかと考え中。サンダルでなく。一本歯のいわゆる “天狗下駄” も試してみたいけれど……あれって、人混みで “踏んづける” 側になりそうで怖いのよね。どうしよっかな。
ところで、下駄と言えば、「鼻緒が食い込んで痛いから嫌だ」と悪い印象を持っている方も多いかもしれません。自分もずっとそれが懸念事項だったのですが、それも選び方次第らしいとの話。いま使っている下駄なんかは、1日中ずっと履いていても指の間が痛くなることはありませぬ。
聞くところによれば、専門店である “履物屋さん” で買えば、その人に合わせて鼻緒を調節してくれるところも多いとか。なので、店員さんに相談しつつ買えば確実だと思われまする。ちなみに僕が1年前に買ったのは、谷中の「平井履物店」さんの下駄。種類やら用途に合わせた選び方やら、店主さんが懇切丁寧に教えてくださいました。感謝。すんごいお気に入りです。