rain 【PS3】 美しいテーマソングの一部を公開 【Story PV】 - YouTube
“雨があがるようにしずかに死んでゆこう”
言ってしまえば、単なる自然現象でしかない「 雨 」。けれど、その情景あるいは自身の心情をそこに切り取り、言葉を乗せて詠ってきた人は少なくない。
窓や屋根や地面を叩く、規則的のようでそうでない雨音。水と土と葉っぱの匂い。雨水に濡れて印象を変える街の風景。雪や雷ほどに特別ではないけれど、ほどほどに生活の中で訪れて五感を刺激する「 雨 」の存在は、なんだか示唆的だ。
早朝に降り出す、卯の時雨。春の訪れを思わせる、菜種梅雨。茅ぶきが音をかき消す、茅屋の雨。富士山麓が閉ざされる時期に降る、御山洗。逢えない七夕、洒涙雨。3月22日限定の、高野の大糞流。――いったい、「 雨 」だけでどれだけの言葉があるのだろう。
煉瓦の色の憔心の
見え匿れする雨の空。
賢い少女の黒髪と、
慈父の首と懐かしい……(雨の日/中原中也)
雨のおとがきこえる
雨がふっていたのだ
あのおとのようにそっと世のためにはたらいていよう
雨があがるようにしずかに死んでゆこう(雨/八木重吉)
雨は降り落ち、雨に打たれ、雨と喩え、雨を吟じる。
家に在っても音で知る、自然のリズム奏でる雨の詩。
雨のスリーコード
雨の日は嫌いじゃない。自分の中の何かをリセットしてくれるから。
この感覚はきっと、上空で誕生した「 雨 」の“行き先”からもたらされるもの。空高くから溢れ落ち、大地に等しく降り注ぎ、すべてのものを洗い流して川へ向かう。きっとこの“洗い流す”性質こそが、「 雨 」に対してどこか特別な意味付けを与えているのではないかしら。
嫌なことがあって、自棄になって、土砂降りの中を走り回って、びしょ濡れになって、でもなんかすっきりして。そうして入るお風呂は最高に温かいし、泣きたくなる。若気の至りだっていいじゃないか。どうせ全部、雨が洗い流してくれる。
雨模様・恋模様・やむもよう
さよならナミダよ
つくりかけで 止められた
廃墟の故意も 洗われてゆく
“最後に迷子になったのはいつですか?”
“国境の長いトンネルを抜けると雪国であった”。異世界の、そして物語への誘いとして有名な一文。ここで境界とされているのは“トンネル”であり、その先の異世界は“雪国”だが、「 雨 」も同様に、物語の題材としてたびたび取り上げられる「非日常」だ。
特に「夜の雨」などは、例えば怪談における舞台装置としてなじみ深い。ただでさえ暗く本能的に恐怖を覚える“夜”に、しとしとと降り続くそれが併存するだけで、恐怖心が倍増するのはなぜだろう。視界を阻み、音を強調し、肌感覚にも訴える重厚感を、「 雨 」はもたらしてくれる。
晴天の昼間の対極として、並々ならぬ非日常感を与えてくれる「夜の雨」。しかしそこにあるのは恐怖だけでなく、どこか柔らかな“温かさ”も見て取ることができる。
静かに、淡々と、変わらず降り続く雨からもたらされる安心感。ひとりぼっちの夜は怖いけれど、なんとなく優しく包まれるような感覚を覚えることもある。日中とは異なる街並みに不安を感じながらも、幻想的で好奇心を刺激される「夜の雨」。そんな中に、迷い込んでみるのも悪くはない。
雨と本、ビールとチョコレート。
きれいなおねいさんは、好きです。大好きな監督の映画を観て感化され、次の平日の代休が雨だったからと、はるばる千葉の片田舎から新宿御苑まで足を運んでもいいと思うんだ。だって、雨だから。そんな気分だから。そこに行けば、思いを共にする誰かがいるから。
こんな恋があってたまるかと。非現実的だと。甘酸っぱくて切なくてたまんねえなこんちくしょうと。だが、それでいい。
“梅雨”という、四季にもなりきれない、一瞬の逢瀬の物語だから。その世界観と登場人物の心の機微、映像美とピアノの音色、そして雨音に酔いしれればいいのだから。すべては日常であり非日常。自然と高層ビルの景観が調和した新宿御苑。身近な異世界をいっときでも感じられれば、それで満足。なお、入場は有料。