自分が会社を辞めたのは2013年秋、当時23歳。
このブログではこれまで、大学を卒業し、入社後3年以内の退職に至るまでの過程と、その中で考えた諸々についてまとめてきました。ネットで検索すれば、退職までの記録を綴った経験談の類は目に入りますが、それでも20代の話はあまり目にしないように思ったので。
僕の場合、仕事を辞めるかどうかで悩んだときに「たすけて! Google先生!」と経験談を探したところ、参考になりそうな情報が少なかったことを残念に感じた記憶がありまして。
「何でもかんでもネット検索!」というのも考えものですが、在職中の限られた人間関係の中では、同世代の退職経験者を探して話す時間を取るのも難しい。そのように困ったこともあり、「どっかの誰かの参考になればいいなー」と軽い気持ちで自分の経験談をまとめてきた形です。
結果、いくつかの「退職記事」にはこの1年間でそれなりのアクセスがあり、約20人の方からはメールでご相談をいただきました。何度か文面でやり取りをしたに過ぎませんが、各々に事情が異なる中でも共通して見えるひとつの悩みがあるように見て取れたので、今回はその点について考えたことを。
スポンサーリンク
ほとんどの問題は「環境」で説明できる
「金・人・やりがいという3つの働く要素があり、働くに当たっては、どれかが満たされている必要がある」
何度かブログでも引用している、この言説。文化系トークラジオLifeの「理想の職場」(2012年放送)の回で指摘されていたものですが、個人的に納得のいく説明なので、たびたび使わせていただいております。
言い換えれば、「金・人・やりがい」の3要素のうち、何を重視し、何を我慢(妥協)できるか。
- 「残業代もしっかり出るから、単純作業の長時間労働も我慢できる」
- 「自分の好きな仕事ができているので、収入面は気にしない」
- 「業務内容は退屈だけど、アットホームな職場で人間関係が良好」
たとえ嫌なことがあっても辞めることなく、何年も同じ会社で働き続けてる人というのは、このように「アレは嫌だけど、コレは良い」という均衡を保っているように見えます。だから、「月曜日くたばれ!」「休日出勤ばかやろう!」とTwitterで叫びつつも、しっかりとやることはこなしている格好。個人差はありますが。
このバランス感覚が常に保たれていない人、あるいは、何かの拍子に“嫌なこと”の閾値が上回ってしまった人が、「ちくしょう!退職だ!」と本気で考えるようになるのではないかしら。そしてこの均衡は案外、簡単に壊れかねないもの。人事異動や家庭の事情など、周囲の「環境」は常にめまぐるしく変わり続けているものなので。
他方では、「先のことを考えると、この職場で働き続けるのはちょっと……」というケースもよく耳にするものです。仕事内容が変わらない。昇給の目処がない。体力・健康面で難しい。こちらは逆に、現在の「環境」が将来的に改善されないことに対する不安によるものですね。
要するに、人が「退職」を考える要因のほとんどは「環境」の問題によるものだと説明できます。“変わってしまった環境”と、“今後変わらない環境”という違いはあるものの、その根幹にあるものは同一なのではないかと。非常にざっくりとした括りではありますが、前提の再確認として。
期待と現実とのギャップと、問題になりづらい「金」
さて、そのうえで過去にいただいたメールを読み返してみると、最も大きな問題となっているのは「人」でした。
上司が横暴。不満を理解してもらえない。上下関係が苦痛。常に職場がギスギスしている。――などなど、とにもかくにも人間関係に耐えられない状態。ストレスから病気を患っている人も散見され、文面からもその痛々しさが伝わってくるほどでした。
同時に「やりがい」も看過のできない問題となっている様子。夢見た業界に入れたのに、仕事が辛くてたまらない。単調作業をこなす職場と、帰って眠るだけの家との往復に閉塞感を覚える。友人と会う時間もとれず、徐々に摩耗していく精神に恐怖を感じるほど。
これまでに話を聴いた人の9割方で共通していたのは、このような現状に対する疑問と違和感、わけのわからなさでした。
周囲の人は普通に生活できているのに、自分だけが適応できていないことに対する焦燥感。疑問に答えてくれる人はおらず、時間を設けて親しい相手に相談することも難しい。「自分だけがおかしいのではないか」と否が応でも比較してしまうことで、自ら精神を追い込んでいるような方もいらっしゃいました。
一方、「金・人・やりがい」の3要素とは言うものの、実際のところは「金」を問題にしている人は圧倒的に少数派。それも転職経験者や、今後の生活を考えると意識せざるを得ないような年齢の人でした。
ゆえに対価は問題にはならず、純粋に「気持ちよく働けるかどうか」を基準としている人が多いような印象を受けました。……いえ、それもちょっと語弊がありますね。どちらかと言えば、「気持ち悪くなりながらも働いている現状をどうにかしたい」という希望が大きいように感じます。
「仕事を辞める前向きな理由」がない
正直に言って、問題が「金」ならば解決策は明らかなんですよね。今の職場よりもお給料が良い転職先を探せばいいだけなので(すぐに良い企業が見つかるかどうかという点は別問題)。
しかし、「人」や「やりがい」といった環境要因は、その企業に入社してしばらく働いてみないとわからない。外部からでは、その企業文化や仕事内容の特色は見えないし、中には「やりがい」を理解できるまでに年単位の経験を要する場合もある。それが「3年以内退職は避けるべき」という言説にもつながっており、一概に否定も肯定もできないのがややこしいところではあります。
また、聞く限りでは、そういった環境要因によって退職を悩み検討する人は、自身の「やりたいこと」がないケースが多いように感じました。単純な話、「やりたいこと」がある人はそんな数ヶ月にもわたって悩まないと思うんですよ。検討し、準備ができたら即行動、でいいので。
問題は、それ以外の人たち。就職活動を経て、とりあえず自分が良いと感じた企業へ入社したはいいけれど、入ってみたら苦痛でしかない。辞めようにも、その先の将来像がまったく想像できない。
早期退職は避けるべきだと聞くし、多すぎる転職は不利になるとも言う。やりたいことがあるわけでもなく、何か特殊なスキルを持っているでもなく、たとえ転職先が決まっても、それが今の職場よりも良い場所だとは限らない。
そういった思考のループによって、現状の閉塞感・停滞感に拍車をかけるようなことも否めません。「仕事を辞めたい」という意志は明瞭なのに、“その後”のイメージが全くできない。前向きに、「○○をしたいから辞めます!」と宣言できない状況。そりゃ、後ろ向きにもなりますよ。
「嫌なら辞めてから考えればいい」と言うのは簡単です。条件を満たしていれば、自己都合退職でも失業保険は出ますし。けれど、勢いで退職した結果、不透明すぎる“その後”を身をもって経験した自分としては、そんな簡単に「辞めようず!」と勧めるのも躊躇われるもの。
実際問題、大多数の人は「何とかなっている」のだと思います。なんだかんだでうまく転職先が見つかっただとか、フリーターとして問題なく生計を立てられているとか。無職期間にやりたかったことを続けていたら、稼げるようになって独立した、なんてことも。
個人的には、「無理を続けて精神や身体を病むくらいだったら、とりあえず辞めてしまったほうがいい」と考えて伝えるくらいしかできず、それがもどかしく思えたので、今回改めて整理した格好です。一部では「若者は我慢が足りん!」的な空気を醸し出して退職を全否定するような動きを感じることもあり、どうにも生きづらいな……と。
自分の「強み」を知るために
そういった漠然とした悩みに対しては、これまた漠然とした「診断」に頼ってみるのもひとつの手なのかな……と。転職サイトで提供されている「性格診断」ですね。
こちら、リクナビNEXTの「グッドポイント診断」はよく目にする簡単なものではなく、100個以上もの質問に答えて詳細な結果を知ることができるので、それなりに精度は高いようにも思います。無料で登録できて、自分の性格を客観的に分析してもらうことが可能。
診断結果は、そのまま企業への応募時に添付して送信することもできるそう。転職を考えている方は、時間のあるときにでもどうぞ。
自分の退職経験をまとめた電子書籍を出しました