「シナモンの中の人」に見る、ネットのデマを見分ける3つのポイント


f:id:ornith:20150526182704p:plain
シナモン【公式】 (@cinnamon_sanrio) | Twitter

 

 

 5月に入ってからTogetterで取り上げられるなどして広がり、新聞やテレビでも取り上げられるに至った、サンリオのキャラクター「シナモン」に対する暴言ツイートの問題。

 ようやく沈静化したと思ったら、今度はシナモンの公式アカウント@cinnamon_sanrioの「中の人」が判明したとして、写真と共に注意を促すツイートが広く拡散されておりました。

 

 

  “リプライを送る際は、画面の向こうに人がいることを頭に入れておきましょう” と、聞こえの良い、真っ当なことをツイートしているように読めるだけでなく、しかもその「中の人」がかわいい。とくれば、自然と拡散したくなる気持ちもよくわかります。……が、しかし。

 

 

 その日のうちに「デマ」であることが明らかになりました。はっやーい!

 ところが一方では、既に各種まとめサイトで「シナモンの中の人が判明した途端、ナンパのリプライが急増した!」という切り口で記事が書かれ、拡散する事態になっておりました。アドレスは載せませんが、決して少なくないサイトで取り上げられている模様。

 発端となったツイートまで遡ってみると、明らかに「デマ」あるいは「ネタ」であると気付くことのできるポイントがあるようにも見えます。そんな「気づきどころ」について、自分なりに「ここ、怪しくね?」というポイントを振り返ってみました。

 

※ほぼ筆者の主観です。

 

1. そもそも「まとめサイト」の情報を信じるか否か

 正直、一口に「まとめサイト」*1と言ってもピンからキリまでありますし、そういった括りで例示するのにも若干の抵抗はありますが、わかりやすいので。

 速報性が高く、そのニュースに対する他の人の反応も瞬時に確認することのできる「まとめサイト」は、インターネットにおける情報源のひとつとして現在も重宝されている印象にあります。

 中には特定の話題をおもしろおかしく取り上げたものも少なくなく、センセーショナルな見出しも相まって、読んだ人が “ツッコみやすい” ことも特徴。「コピペブログ」の類は全盛期と比べると目にする機会は減りましたが、「バイラルメディア」などは今でもTwitterで共有されているのを目にします。

 

 一部からは「人様の発言を盗んで金稼ぎしやがって!」などと、「まとめサイト」全てを悪だと見なすような動きもあります。が、中には独自の解釈やオリジナルコンテンツを掲載しているサイトもあるため、一概に全部を否定できるものでもないのではないようにも思います。

 問題なのは、一部の悪質なまとめサイト。やたらと煽り表現を多用し、過大解釈による「デマ」を日常的に垂れ流している、あるいは過去にそういった前例のあるサイト。

 それらについては、批判的な意見も少なくありません。サイトそのものを「悪質」と捉えて忌避するだけでなく、妄信的に同サイトの記事を共有するユーザーに対しても懐疑的な目が向けられがち。

 もちろん、「何をもって悪質か」という基準は、人によって異なるものでしょう。ただ、悪名高いまとめサイトの情報に対して疑念を持って読みにかかるのは悪いことではありませんし、実際にその情報が嘘八百だった場合、デマの拡散への協力を避けることにもつながるはずです。

 情報源・拡散元となる、「まとめサイト」が信用できるか否か。
 それがまず、ひとつ。

 

2. スクリーンショットは疑ってかかる

 今回の件の場合、冒頭の呟きの他にも、拡散に一役買ったツイートがありました。

 

 

 フォロワー数100,000を超えるアカウントであり、こちらのツイートのリツイート数も発端となった呟きの2倍以上、13,000RTを超えています。

 自分のタイムラインに流れてきたのもこちらのツイートだったので、デマの拡散に “一役買う” どころか、話題の中心にあると言っても過言ではないように思います。事実、まとめサイトの煽り文句は、このツイートで取り上げられている「中の人に対する反応」=「気持ち悪い」となっているようですし。

 情報の流れが激しく、タイムラインの変化が目まぐるしいTwitter。そこでは、ある話題に関するリンクや文章を引用するよりも、パッと見で内容を把握できる画像の方が反響を集めやすい傾向にあります。そりゃまあ、わざわざリンクを選択してブラウザを開くより、その場で見られる写真・イラストの方がわかりやすく、お手軽ですもんね。

 

 しかし、そういった画像で示された情報は、全体の「一部」でしかないことが少なくありません。このツイートを見ても、取り上げられているのは元ツイートのスクショと、「シナモン」のアカウントに対する一部ユーザーの細切れのリプライのみ。

 実際の「シナモン」に対するリプライはこれだけではありませんし、一部(この場合は3人)の、どちらかと言えば「ネタ」として受け取れそうな発言のみを切り取って引用し、 “気持ち悪い” とツッコんでいるようにも見えます。

 

 「たとえ少数派で、それが冗談だとしても、実際に “気持ち悪い” んだから別に切り取ったっていいじゃないか」という意見も間違ってはいないと思いますが、こうしたスクリーンショットはいくらでも捏造できるため、疑ってかかるのが基本だと思います。

 そのツイート主が自分のよく知っている、信用に足る人物であるならともかく、全く無関係の他人であり、しかも過去のツイートを遡ってみると、とても情報の真偽を確かめて呟いているようには見えない。むしろ、ネタや遊びとして自由に使っているように見える。……とくれば、その発端となっているアカウントまでさらに遡って確認した方がいいのではないかしら。

 

3. ソースを確認する

 3つめにして、基本中の基本。話題の発端、大元となっている情報源こと、「ソース」を確認すること。それが信用に足る一次情報であるかどうか。引用であるなら、リンク先は正しいかどうか。画像であるなら、それがネット上の「拾い物」でないかどうか。

 

 

 冒頭でも引用しましたが、今回の場合はこちらのツイートですね。うん、かわいい。先ほどの “気持ち悪い” のスクリーンショットの方が注目されているような趣きはありますが、発端であるこちらも約5,000RT。かなり広く拡散されているようです。

 パッと見では「良いこと」を言っており、件のシナモンへの暴言に憤っていた人にとっては降って湧いた “援護射撃” にも見えて、信じてそのままリツイートしてしまうのも自然な流れかもしれません。

 ……けれど、そもそも彼女が「サンリオの社員さん」であるという話はどこから出てきたのか。事実だとしたら、どうしてこのような写真があるのか。そして、なぜ今、この写真をわざわざTwitterに載せたのか。そんな疑問が同時にわいてきても、おかしくはないのではないかしら。

 ここで、彼女が「サンリオの社員さん」であるというソースが見当たらなければ、本当か嘘かもわからずにモヤモヤするところですが、今回は一目瞭然です。発端となったツイートのページに飛ぶと、リプライ欄で自ら「ネタ」であることの種明かしをしていました。

 

 

 ……ね、簡単でしょ? ツイート主のページに飛んで、前後の呟きを確認するだけ。30秒もかかりません。元の呟きがツイートされた直後の場合は、画像検索などに頼らざるを得ませんが。

 

情報ソースに加えて、発信者が信頼できるかどうか

 便宜上、「3つのポイント」なんて書きましたが、ぶっちゃけ、昔からずっとネット上のデマの見分け方は、たったひとつの問いかけでほぼ説明できます。

 

 「で、ソースは?」

 

 それで「ソースは俺」*2と答えてくれる人は、まだ可愛げがあるような。だいたいは質問しても答えが返ってくるのか怪しいので、基本的には自分で情報源を確認することになるとは思います。

 ただし、ニュースサイトを検索するなどして情報源が見つかればいいですが、今回のように情報の真偽どうこうではなく、単なる「ネタ」として話題が広まってしまうことも往々にしてあります。そういった場合の見分け方として、次の視点は参考になるのではないでしょうか。

 

 もしもニュースソースがないような情報の場合は、とにかく情報源をたどっていくことでしょう。情報を追いつづけて、いちばんさいしょに情報を発信した人を見つけたら、その人のふだんのツイートをチェックしてみてください。日頃どんな発信をしているのかを見ていると、「ネトウヨっぽいな」「陰謀論好きなんだな」といったことがわかってくる。結果として、その情報がデマかどうかも判断しやすくなります。

津田大介著『ゴミ情報の海から宝石を見つけ出す これからのソーシャルメディア航海術』より

 

 あるユーザーのツイート全てに目を通さなくても、50〜100ツイートくらい遡れば、その人が普段からどのような発言をしているのかは何となくわかるかと思います。ツイートの傾向から、そのユーザーが「情報の発信者」としてが信用できるか否かを判断する、と。

 例えば、笑いや楽しさを求めるネタクラスタなのか、情報を厳選して発信しているメディア系のユーザーなのか。また、どういったサイトの情報を引用し、それに対してどのようなツッコミを入れているのか。ほとんど自分の主観が頼りになってしまうのは、致し方ないものかと。

 

 上の本ではさらに続けて、池上彰さんの言葉を引用しています。

「デマに踊らされてしまったというときに、それをしっかりと記憶しておくことが大事ですね。結局、人間って失敗を通じて試行錯誤することでしか学ばないので、『ああ、こういうところでこんなデマに踊らされてしまった』としっかり記憶する、あるいは、『この経済評論家がこんなことを言っているのを信じて、こんな目にあってしまった。この人の名前はしっかり覚えておこう』『このブロガーの言っていることがとんでもなかった』と、一つひとつきちんと記憶していくことでリテラシーが徐々に身についていきます」

 

 これを実践すると、一度でもデマを流してしまった人は信用の回復が難しくなりかねないため、ちょっと厳しいようにも思いますが。

 ただ、それだけ情報の流れが早い現代のネットにおいては、このような取捨選択を “リテラシー” として身に付ける必要性も高まっているとも言えるのかもしれません。もしも自分が、うっかりデマを流してしまったら……即座に訂正して、真摯に謝罪するしかないですね……。 

 

 以上、今回の「シナモンの中の人」のケースを事例としてざっくりとまとめてみましたが、そんな難しく長々と考える必要はなく「ソースは?」で済む話だとも思うんですよね。

 Twitterにおけるデマの拡散は、あまりにお手軽かつ反射的にできてしまうRT機能のメリットであり、デメリットとも言えるかもしれません。でもやっぱり、特にセンセーショナルな話題に関しては、情報の真偽に対してしっかりと意識を配っておきたいところです。

 最後に、参考として、キャラクターアカウントの担当者たちの座談会の記事を引用させていただきます。「公式アカウントを自ら運用している」とまでは明言されていませんが、関係者の一人として、シナモンの生みの親のデザイナーさんもお話されていますね。

 

サンリオ奥村:私が担当するシナモン(@cinnamon_sanrio)というキャラクターは、7~8年前にブームが起きたキャラクター。その頃、小さかった子供が高校生になっているので、その子たちにもう一度シナモンに戻ってもらいたいという狙いでやっています。世界観は守りつつ、今の若い子が面白いと思うようなことを積極的に取り入れる。それが昔のファンの呼び戻しにつながっています。これは、知っているキャラが意外な面を見せるということが、ユーザーに驚きを与えるんだと感じています。

キャラクターアカウントの担当者たちが語る!Twitter運用・活用のコツ【前編】:MarkeZine

 

 

関連記事