ネットをぶらぶらとしていると、「瞬く間に文章力が向上する◯つの方法!」とか、「文章力を鍛えるために実践した◯個の考え方」なんて記事をよく目にするような気がします。
そこには大抵、具体的な方法論が羅列されていて、読んでいるときは、「これは為になる! よし、僕もやってみよう!」となるのだけれど。多くの場合は、それもいつの間にか忘れてしまって、また新しい「文章力向上法」を見つけて奮起することになるのです。無限ループって怖くね?
実際、それらの記事や本に書かれている方法論は、実践的で効果のあるものだと思います。だけど、どうしてもそれが身につかない。なんでや。やる気はあるのに。
その理由としてひとつ、考えられるのが、自分の身につけたい「文章力」がどのようなものだか理解していない、というものではないでしょうか。漠然とした「文章力」というスキルを欲してはいるけれど、 “何を学びたいか” という具体性が伴っていない状態。
作文の基本?
読みやすい文章構成?
読者を惹きこむ言い回し?
飽きさせない豊富な語彙力?
いや、そもそも、「文章力」とはなんだろう?
多種多様な「文章力」
一口に「文章力」と言っても、書き手が望むそれは人によって異なっているんじゃないかと思う。たとえば、「まとまった文章は書ける、でもボキャブラリーが貧弱で……」という悩みのある人が身につけたいのは、豊富な語彙力や表現に幅を利かせるレトリックのはず。
あるいは、読者を飽きさせない多彩な表現力。その具体的な内容にかかわらず、文章によってその魅力を担保すること──そのように言い換えてもいいかもしれない。この手の悩みを持っている人は、ブロガーさんに割と多いんじゃないかと思います。というか、僕のことです。はい。
もしくは、「文章はいくらでも書けるんだけど、まとめるのが苦手」という人もいるかもしれない。言葉は湯水の如く溢れ出てくるけれど、それを筋の通ったひとつのコンテンツとして落としこむ作業ができない。難しい。
そんな人が求めるのは、文章の構成力、あるいは編集力といったものでしょうか。論理展開を整理した上で、読者が読みやすいよう再構成・編集する能力。
- 「魅力的な文章」を書く力。
- 「まとまった文章」を書く力。
- 「分かりやすい文章」を書く力。
どれも、「文章力」のひとつであると言って差し支えないと思います。
さらに、これらの “魅力” や “わかりやすさ” にもさまざまあります。物語の場面を容易に思い浮かべられることなのか、余計な部分を削ぎ落した簡潔な言い回しなのか、独特のセンセーショナルな表現技法なのか。
しかも、その「文章」の “魅力” や “分かりやすさ” の判断は、各々の読者に依拠されるため、万人が読んで「魅力的な文章」が存在するのかも怪しい。同様に「わかりやすい文章」にしても、読者個人の語彙力によって、より伝わりやすい単語や表現といったものも変わってくると思われる。
そう考えると、書き手にとって必要な「文章力」は人によって変わってくるし、各々が何を重要視するか考え、理解した上で学ぶ必要が出てくるのではないかしら。
書き手はさまざま。読者もさまざま。
──であれば、「文章力」もさまざま。
具体的には、どのような「文章力」があるのだろう?
作文力
“文章を書く ”行為の基礎中の基礎として考えられるのが、「作文力」。
「作文」と聞くと、小中学校時代の記憶が蘇って、うへぇ……となる人もいるかも。遠足や宿泊学習などのイベントごとはもちろん、ビデオ鑑賞やお偉いさんの話を見たり聞いたりした後などにも決まって書かされた、アレですね。
これは読んで字の如く、 “文” を “作る” 力。
自分の頭で考えたことを「言葉」にして、文章に落としこむ方法。義務教育で培われる基礎技能にして、論理的な思考をするための根っこの部分になる、とも。
子供のころは「めんどくせー」と思うこともなくはなかったけれど、今となって考えてみれば、やっぱり必要な行為だったんだろうなーと思います。たいせつたいせつ。
語彙・表現力
ボキャブラリー。どれだけたくさんの「言葉」を知っているか。そして、それを正しく使うことができるかどうか。
「ボキャブラリー」と言うと、今度は中高生時代の英単語をひたすら暗記する作業が思い出されて、だりぃ……となる人もいるかも。私です。ただ、知らない言葉、ちょっとかっこいい感じの単語を覚えるにあたっては、楽しんでいた人もいるのではないかしら。
同じ言葉が繰り返し使われている文章や、抑揚のない平坦な文章。いずれにせよ、「変化」の少ない文章に対して「つまらなさ」や「飽き」を感じる人は少なくないはず。
使える言葉の総数と、その使い方、表現方法をどれだけ知っているかというのは、文章の “魅力” と “わかりやすさ” にそのまま直結するものだと思います。
構成・編集力
先にも書きましたが、論理と文章の流れを整理した上で、読者が読みやすいよう再構成・編集する能力。ここまでに挙げた力を用いて、それっぽい形になっていた文章を、まとまった読み物として完成させる。最終工程とも言えそうな作業。
アウトプットされた自身の言葉を文章化し、よりわかりやすく、魅力的な表現に言い換え、それらを整理することによって、ひとつの流れのあるコンテンツとしてまとめ上げる能力。
「作文」が基礎づくり、「表現」が創意工夫だとすれば、「編集」は全体を見通してコンテンツの「完成形」を作り出す力と言えるのではないでしょうか。
場合によっては、最初から文章の完成形を思い描き、いかにそれに近づけていくかといった全工程を担う、プロデューサー的な能力。
明確な論理展開を作るべく、文章の流れを再構築するだけではなく、それをより魅力的なコンテンツとするために、読者目線で編集する力。なんだか、これだけ妙にレベルの高い内容に思えるけれど……。
好きこそものの上手なれ
これらを「文章力」に関するひとつの考え方と捉えたうえで、僕自身に足りないものを考えてみると……やっぱり、語彙・表現力なんですよねー。
「作文」に関しては、人並みにはできているはず。子供の頃から “書く” のが好きで、読書感想文の宿題にも嬉々として取り組んでいた記憶があります。結果、高校時代には3年連続でコンクール入賞、なんてこともありました。
ゆえに、自分の考えや感情を文章化することに関しては、我ながら自然にできているのではないかと。けれど、個性のある魅力的な文章、独特の表現によって読者を引きこませる文章のようなものはなかなか書けません。
文章の癖はあれど、どこかテンプレートっぽいというか、「没個性的」というのが、自己評価であります。たまーに変化球を投げようとしても、あらぬ方向に飛んでってしまうような。ストレートしか投げられない。しかも、そんなに速い球でもない。わぁい。
では、足りない部分をどうやって補えばいいか──というと。ありがちな考え方でしょうが、「好きな人の真似をしてみる」のが効果的なのではないかしら。
というか、何かを学ぼうとするのであれば「好き」を動機にした方が長続きするだろうし、身につくのも早いんじゃないかと思います。好きな作家さんの表現を真似してみるとか、尊敬している学者さんの著作から、その構成を分析してみるとか。
そこそこの文量を書くブロガーさんの記事を読んでいると、その人が日頃から好きだと公言している作家さんから、どこかしら影響を受けているように感じることも結構ありますし。
要するに「文章力」にもいろいろあって、もしそれを高めたいと思うのなら、自分が求める力がどのようなものなのかを把握し、どうやって身につけ、最終的には何を書きたいか、といったことを予め理解しておく必要があるのではないかしら、という話。
漠然と「文章力向上!」と言っても、具体性が伴っていなければ意味がない。何を求めているのか分からないのであれば、自分の “好きな文章” を考えてみることで、ひとつのヒントになるかもしれません。
あなたの考える「文章力」とは、どのようなものですか?
余談
ちょっと違うかもしれないけど、「爆発音がした」なんてコピペもありましたね……。
◆小説
「後ろで大きな爆発音がした。俺は驚きながら振り返った。」
◆ケータイ小説
「ドカーン!びっくりして俺は振り返った。」
◆ラノベ
「背後から強烈な爆発音がしたので、俺はまためんどうなことになったなぁ、とか そういや昼飯も食っていないなぁとか色々な思いを巡らせつつも振り返ることにしたのである」
◆山田悠介
「後ろで大きな爆発音の音がした。俺はびっくりして驚いた。振り返った。」
◆司馬遼太郎
「(爆発--)であった。余談だが、日本に初めて兵器としての火薬がもたらされたのは元寇の頃である…」
◆荒木飛呂彦
「背後から『爆発』だアァァァッ!これを待っていたっ!振り返ると同時にッ!すかさず叩きこむ!」
◆竜騎士07
「ドカァァン!!!後ろで大きな爆発音がした…!俺は自分の置かれた状況を整理した…。 脳内に満ちた液体が取り除かれ、時間が動き出す…………ッッ!即座に俺は後ろを振り向く…ッ!」
◆ジェイ・マキナニー
「きみが街を歩いていると背後で爆発音がする。でもきみはすぐには振り返らない。 コカインの過剰摂取でイカレてしまったきみの頭には、それが現実の音なのか幻聴なのか判断できないからだ。」
◆村上龍
「後ろで爆発音がした、汚い猫が逃げる、乞食の老婆が嘔吐して吐瀉物が足にかかる、俺はその中のトマトを思い切り踏み潰し、振り返った。」
◆奈須きのこ
「――突如、背後から爆発音が鳴り響いた。その刹那、俺はダレよりも疾く振り返る―――ッ!」
◆矢口真里
「子供の頃からボンバーマンが大好きで、爆発音がしたらつい後ろを向いちゃうんです。 多分、芸能界では一番マニアックなボンバーマン好きだと思いますよ。
◆京極夏彦
「凄まじい音とともに地面が揺れる。――爆発、ですか?私が問うと、彼は白湯とさして変わらぬ出涸らしをすすり、 ――だから何だと言うのか。と答えた。りん、と、何処かで風鈴の音がした。」
◆池上彰
「じゃあ、そもそも爆発って何なんでしょう皆さん気になりますよね? そこで図を用意しました ちょっと後ろを見てください」