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地域おこし協力隊は何をする?ある隊員の活動実績を知れる本『21歳男子、過疎の山村に住むことにしました』

 会社勤めの頃から、なんとなーく興味を持っていた「地域おこし協力隊」。先日、「よかったら参加してみませんか?」とメールで勧めていただいたということもあり、さらにその関心が高まりつつあった最中。書店で新刊を物色していたところ、ある本が目に留まりました。

 

 

 地域おこし協力隊と言えば、自ら情報発信をしている方がいたり、各地の隊員の活動をホームページで読むことができますが、1冊の「本」としてまとまった記録を読んだことはありませんでした。

 1人の隊員さんの活動記録を、まとまった形で知ることができるのはありがたい。こいつは読んでみるしかねえべ! と思い、その場で購入。先ほど読み終えました。本記事では、その感想をば。

 

大学を休学し、地域おこし協力隊に

 本書の著者は、水柿大地さん。東京生まれ東京育ちの25歳。読み終えた後にプロフィールを確認して気付いたのですが、自分と同世代でした。1989年組。 

 高校時代、農山村や過疎地の福祉をテーマにしたドキュメント番組を見たことをきっかけに、法政大学現代福祉学部に入学。入学当初こそ、サークル活動やバイトなどの一般的なキャンパスライフを満喫されていたそうですが、大学2年次に急展開。

 彼女にフラれ、「なんでや!」と自己分析を始めたところ、「自分がやりたいこと」「できていないこと」に気づかされたのだそう。実際の現場で経験を積むべく、まず大学を休学することを決意。ゼミの教授の勧めで知った、地域おこし協力隊に応募することにしたそうです。

 この時点で、結局は4年間をぐだぐだと過ごしてしまった僕と比べれば、もう天と地の差ほどもある水柿さんの行動力と意志力に頭が下がる思いでした。きっかけと勢い、自身を見直すことって大事。

 

あいさつの魔法

 水柿さんが応募して採用されたのは、岡山県美作市の地域おこし協力隊。そのなかでも美作市上山を活動地として、いざ仕事に取り組むことになります。

 最初の頃は言われるがまま、ひたすら草刈りに従事していた彼。しかし、他の協力隊員や他所から来て活動している人たちとの出会い、そして何よりも地元住人の方々との交流から、自らさまざまな活動へと飛び込んでいくことに。

 

 水柿さんの体験を読んでいて思い出したのが、地方での諸活動に興味を持って参加した、とあるNPOの説明会。そこで口を酸っぱくして話されていたのが、「目的意識」を持つことでした。

 ネット上で見かける地域活動の話を読んでも、「実際に行っても何をすればいいかわからない」という例がちらほらと見受けられました。「地元の人すら課題がわからない」といったパターンだけでなく、「やることが多すぎてどこから手を付けていいかわからない」という場合もあるのだとか。

 その点で水柿さんは、目の前にある「やれること」に取り組み続けているようにも見えます。同時に、それ以上に強く感じたのが、人と人との交流から「やるべきこと」と「やりたいこと」を生み出し、実践していく行動力です。

 それを体現しているのが、きっかけづくりのため自分に課したというルール。

 

「上山内で人を見かけたら、ぜったいに軽トラを止めて声をかける」

 

 何よりもまず、地元の人と仲良くなること。その土地の文化を知り、良好な関係を築くこと。当たり前と言えば当たり前なんでしょうが、すごく大切なことですよね。

 長年住んでいる人の話を聞けば、培われてきた伝統や、生活の知恵を得ることができる。それだけでなく、仲良く慣れば日々の不満や課題といった話も聞けるので、それらをすくい上げる形で自然と課題も現れてくる──と気づいたのだそうです。

 言われてみれば、「ご近所みんな顔見知り」な田舎では、見知らぬ人がうろうろしていたら不安になることもあるはず。僕も地方をぶらぶらしていたときに、子供に「こんにちはー!」と大声で挨拶をされて面食らったことがありましたが……なるほど、そりゃあ気になりますよね。

 

成長の場としての田舎

 本書では、主に水柿さんが関わってきた人々と、そこで取り組んできた諸活動についてがまとめられています。棚田再生、米づくり、古民家再生、盆踊り復活──などなど。

 そのほかには、上山に移住してきた人たちのさまざまな試みも。シカ皮の活用や、タップダンス教室。「え!? そんなこともやってんの!?」と思えるものもあり、とっても魅力的。読んでいておもしろかったです。

 

 自らの体験談でありながら、思ったよりも中立で、実体験を淡々と記した文章であるような印象を受けていた本書。ですが、最後の章では水柿さんの「思い」というか「意志」を感じさせる内容になっており、読んでいて感じさせられるものがありました。

 単純な「田舎暮らし」という点に絞れば、その考え方は『ナリワイをつくる』の伊藤洋志さんに近しいように見えます。専業で農業や林業をするのではなく、草刈りをしたり、カフェをしたり、イベントを主催したり、複数の稼ぎ口を持つこと。

 まさしく “ナリワイ” ですね。伊藤さんは「床貼りできりゃなんとかなる!」と話されている印象が強いですが、水柿さんは「草刈り覚えりゃ稼ぎになる!」と書いている感じ。……すみません、勝手なイメージです。

 特になるほどなーと思ったのが、次の部分。

 

過疎地域、人が少なくなったと嘆くのではなく、それを逆手にとって、人が成長する場として考えたらどうだろうか。土地はある、家もある、なんでも取り組める環境もある。タイムリミットはじょじょに迫ってきているが、知識や経験を蓄えたおじいちゃんやおばあちゃんが今なら健在で、いろいろと教えてくれる。若者が、生きていく力を身につけながら稼いでいきたいと思うのだったら、まちがいなく田舎で生活することをオススメしたい。

 

 僕自身もそうですが、会社に就職したはいいけれど(あるいは就職せずに)、日々の生活や業務に疑問や違和感を覚えて、退職したり、転職を考えている人は少なくないと思うんですよね。かと言って「やりたいこと」があるわけでもなく、何か自分でもよくわからないままに腐っているような人。

 「そういう人はどこへ行ったって同じだろう」と揶揄する人もいるでしょうし……実際、そうなのかもしれません。ですが、目の前に「やれること」がある環境に身を置き、そこにいる人たちと交流を重ねることで、見えてくることもあるのではないかしら。

 それは、現在の職場とは別の会社だったり、週末の勉強会だったりするのかもしれない。いろいろと存在するそれら「場所」の中でも、ちょっとした課題や関心が見つけやすく、また挑戦しやすい土壌が整っているのが、もしかすると「田舎」なのではないか。

 

 本書を読んで僕が強く感じたのは、そんなことです。何よりまずは、飛び込んでみること。いきなり現地で活動しようとするのではなく、最初はふらっと立ち寄る「よそ者」から始めて、徐々にそこでの活動に参加していくのもいいかもしれない。

 訪れる土地の基準は、phaさんも書いておられましたが、「ワクワクする」「おもしろそう」なところかどうかがひとつの大きな目安になるのではないでしょうか。その点、本書で描かれている上山は、僕にとって間違いなく「おもしろそう」だと思わされるものでした。

 

 

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