3月に入り、就職活動に関する記事をよく見かけるようになった。読んでいると、なんだか就活当時に戻ったみたいで複雑な気分。あの、周りに流されつつも何かを掴もうと藻掻いていた感覚が懐かしい。
「就活では○○すべき!」という内容が多い中、僕は敢えて自分が「やらなかった」ことをまとめようと思う。就活に関しては、「こうすべきだ!」なんて胸張って言えるほど前向きに取り組んだとは言えないので。
……え? 違うよ? 別にやらなかったことに対する言い訳じゃないよ? うん。
OB訪問?知らんがな
僕はOB訪問を全くやらなかった。1年近くに及んだ就活期間の中で、社会人に直接会って助言を得るという機会は持たなかった。「他人の話はほとんど参考にならないんじゃね?」と考えていたのが大きな理由だ。
人の話を聴くのは好きだし、自分と別の価値観を持って違う世界で生きている人の話は確かに刺激的だ。そういうのもあるのかー、などと、話を聴いて別の視点が生まれることだってある。
でも、それはその話し手の印象であり、主観であり、そこには自分自身の経験がない。それならば、話を聴いてもあまり意味がないんじゃなかろうか。
その人がどのような動機で仕事に取り組み、会社にどのような思いを持っているのか。会社や仕事の説明にしても、社員全員が全く同じ考えで統一されているなんてことはありえない。
OB訪問には、話を聴いたOBの方の印象=その会社の印象となり、「この会社はこういうところなんだ」と思い込んでしまう危険性がある。
それならもっとたくさん、究極的には全員の話を聴けばいいじゃないか、と言われるかもしれないけど、それが「他人の話を聴く」という受動行為である以上、実際に入社してみたら全然違った、なんてことは間違いなく起こる。
会社のことを深く知りたいなら、長期間のインターンに参加するのがベストだと思う。「そんな暇はない!」と言ってOB訪問に走っても、変な思い込みにとらわれるか、中途半端な情報を得て混乱しちゃうんじゃないかと。実際、僕の周りにはそんな人が何人かいた。
……え? 違うよ? 別に年上の人が苦手だからやらなかったんじゃないよ? うん。
エントリーシート?知らんがな
就活を始めたばかりの頃は、いわゆる「エントリーシートの書き方はこうだ!」的な本を読んだりもしていた。そもそも最初は、「エントリーシートってなんじゃい?」ってレベルだったし。
ところが実際にエントリーシートを書き始めると、やり辛いったらありゃしない。文章構成だとか、自己アピールの内容とか、エピソードの選択とか、決められたルールに沿って書くのが難しくて嫌だった。
後で考えてみると、エントリーシートの書き方を説明している本や記事の矛盾っぷりがすごい。「人事の人はたくさんのエントリーシートを読む。その中でどれだけ注目され、印象に残る内容のものを書けるかが勝負。つまり、こう書くべき!」
……いやいや、それを載せちゃったら、みんなが真似して似たような内容のものを書くじゃん。目立たないじゃないっすか。
何度か試行錯誤はしてみたけれど、どうしても「書き方」のテンプレートの上に乗っただけの自己紹介になってしまうように感じたので、参考にするのは辞めた。本当に自分らしさを表現して人事の目に留まりたいなら、「書き方」なんて見本に頼るのは違うんじゃないかしら。
……え? 違うよ? 別に会社別に内容を考えるのが面倒だったからじゃないよ? うん。
面接?知らんがな
エントリーシートと似た理由で、最低限のマナーを除いて、面接に関してもほとんど準備はしなかった。
立ちふるまいだとか、受け答えの方法だとか、すべき質問だとか。そんなもんには見向きもせず、とにかく素のままの自分であるように。これが逆に難しかったような気がしなくもないけれど。
面接で合格するのはための方法はふたつあると思う。
ひとつは、その会社(人事)にとって理想の人柄を演じること。徹底的に企業研究を行い、何人もの社員に話を聞いて、求められる人間像を把握し、演じる。ただそれだけ。
一般的に「コミュ力がある」とされる人間が内定をたくさん持っているのは、これができるから。コミュ力と一口で言っても、「誰からも好かれる力」と、「どこにでも適応できる力」のふたつがあるんじゃないか、ってのが持論。
もうひとつは、素の自分を曝け出すこと。もちろん、マナー完全無視で当たるというのではなく、下手に取り繕わずに、ありのままの自分として受け答えをするという話。
面接のマニュアル本を読むと同じようなことが書いてあったりするけど、あれはあれでおかしい。「ありのままの自分であれ」と言いつつ、「好感の持てる立ちふるまい」とも言っていたり。どっちかにしてください。
……え? 違うよ? 別に本を読んで覚えるのが面倒だったからじゃないよ? うん。
テンプレ?マニュアル?知らんがな
うだうだと書いてきましたが、結局はそういうこと。僕がやらなかったのは、「型にはまった手段に頼る」こと。「就活」という型にはまりながら何言ってるんだ、って感じだけど。
就活に限った話じゃないけど、特にこの分野には「マニュアル」が多すぎる。会社の選び方、自己分析の方法、エントリーシートの書き方、グループディスカッションでの役割分担、面接の挑み方。これら全部がそれぞれ一冊ずつ本にできちゃう。ってかなってる。
決められたテンプレートを使うことは悪く無いとは思う。が、頼りすぎると個性が失われかねない。無い内定ループに陥っている多くの人は、そんな「マニュアル化」された人なんじゃないかな。
そんな硬く構えないで、「なるようになるさー」くらいの気持ちで、いつも通りの面持ちで挑んだ方が気楽だし、それで意外と内定が取れちゃったりもする。別に死ぬわけじゃあるまいし、てけとーでいいんだ。てけとーで。
などとまあ、本当に言い訳まがいの文章になっちゃった。今更、何に対して言い訳しているんだろうか。
多分、僕は就活っていう訳の分からない流れに乗ってるのが不安だったんだろう。だから、あまりマニュアルに頼らずに(というか見て見ぬふりをして)就活をしていたんだと思う。
これら「やらなかった」ことに対する後悔はない。けれど、「やれなかった」ことに対する後悔はある。素のままであれなかったこと。就活は、どれだけ「自分」らしい「自分」になれるかの勝負なんじゃないか。
僕は僕でしかなく、僕らは「何者」にもなれない。