自分にとって「中野ブロードウェイ」という建造物は、一言で表すなら「なんかよくわからん建物」だった。
大学生になって初めて訪れたときの第一印象は、「味のあるショッピングモール」だったと思う。子供の頃によく家族で行った池袋の東武百貨店や、新宿駅近辺の商業施設とは異なる、独特の雰囲気が漂う場所。「昭和」とか「サブカル」とか、自分の知らないにおいが色濃く感じられる空間だった。
天井は低いし、窓はないし、パッと見では何を売っているかわからないお店も多い。そして何より、エスカレーターである。2階に上がろうと思って何も考えずに乗ったら、いつの間にか3階にいる。混乱しつつも、学生時分の僕は「敵のスタンド攻撃か!?」なんて友人たちとキャッキャしていたような記憶がうっすらある。……いや、どうだろう。捏造された記憶かもしれない。
そんな、自分にとっては謎多き建物について書かれた本『中野ブロードウェイ物語』を読んだ。当時を知る関係者や住人、長年にわたって店舗を営んできた人、そして大槻ケンヂさんをはじめとする作家さんへのインタビューも交えながら、「中野ブロードウェイ」を紐解いていく1冊です。
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