2007年の流行・文化・思い出を振り返る〜ニコ動、ボカロ、秒速5cm


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 今から10年前。
 2007年は、自分にとって象徴的な出来事が多い年だったように思う。

 なんてったって、受験生である。高校生活最後の1年間。体育祭や文化祭にクラスメイトと打ちこみ、受験勉強にひたすら励んだ青臭い日々。男子校では甘酸っぱい恋に身を焦がすことは叶わなかったものの、それでも男臭く青臭く過ごした、瞳を閉じれば蘇る青春の日々──。

 

 ……なんてものは、(ちょっとしか)なかった。
 むしろ記憶の中の自分は、勉強もそこそこに遊び呆けていた気がする。

 

 春は生まれて初めてのコンサート(※アニソン歌手)に参加し、夏はこれまた初めての武道館ライブ(※アニソン)に参戦、部活の全国大会で若干は青春しつつも、引退後の秋はニコ動ざんまいのネット漬け、そして迎えた冬はボカロの流行に大興奮していた。みくみくにされた。勉強はまだね、頑張るから(白目)

 ──とか言いつつ大学には入れたので、結果オーライではあるのだけれど(ただし第一志望は落ちた)。ともあれ、そんな2007年がすでに10年前だということを改めて意識すると、なんとも不思議な気持ちになるわけです。受験が10年前で、ニコ動も10周年。いやー、あっという間っすねー。

 

 というわけで、前置きが長くなりましたが、そんな10年前こと「 “2007年” を自分なりに振り返ってみよう!」というのが、本記事の主旨でございます。

 もともとは3年前、某同人誌*1に感化されて「2002年を振り返ろう!」的な記事を書いたのがきっかけ。その後、順を追うように2003〜2006年を取り上げるようになり、今回はその “2007年” 版となるわけです。なんとなく毎年、この時期に10年前を振り返るのが習慣になりつつある。

 一応の注意書きとしましては、統計的に10年前を振り返っているわけではなく、一個人の懐古趣味であり回顧録でしかございませぬゆえ、あしからず。興味がある方のみどうぞー。

 

初代iPhone、第1回東京マラソン、偽装問題があった2007年

 今から10年前。2007年(平成19年)に何があったか──と考えてみて、咄嗟に思い浮かぶもの……何か、あります?

 僕の場合は、それこそ冒頭にも挙げた「ニコニコ動画」「ボーカロイド」のイメージが強いっすね。何かひとつを挙げれば、なんとなく芋づる式に記憶が蘇ってくる人もいるのではないかしら。時事問題とか、流行っていた音楽とか、放送されていたアニメ・ドラマとか。

  私生活では受験生(一応)として勉強に励んでいたこともあり、当時の時事ネタもそれとなーく覚えているような……覚えていないような……。ブーメランパンツの芸人さん*2とか、ブレイクしたのはこの時期じゃなかったっけ……ってのは、時事ネタとは違いますね、はい。

 うんうん唸りながら考えていても埒が明かないので、ここはさっくりググってしまいましょう。たすけて! えーりん Google先生!(以下参考:2007年 - Wikipediaほか)

 

国内

  • 7月16日 - 新潟県中越沖地震
  • 9月26日 - 安倍晋三首相辞任、福田康夫首相就任
  • 11月22日 - 石屋製菓「白い恋人」販売再開

世界情勢

  • 4月16日 - バージニア工科大学銃乱射事件が発生
  • 9月12日 - 2007年スマトラ島沖地震
  • 12月19日 - 韓国大統領選挙で李明博次期大統領選出

文化・エンタメ

  • 1月9日 - 「iPhone」初代モデル発表
  • 8月31日 - VOCALOID「初音ミク」発売
  • 5月27日 - 坂井泉水さん死去

スポーツ

  • 2月18日 - 第1回東京マラソン開催
  • 5月20日 - マンシングウェアオープン KSBカップで石川遼選手が史上最年少優勝
  • 12月16日 - FIFAクラブワールドカップ2007で浦和レッドダイヤモンズが3位に

インターネット関係

  • 3月27日 - Googleが携帯電話専用検索エンジンを提供開始
  • 9月10日 - pixiv開設
  • 12月3日 - 吉野家「テラ豚丼」動画騒動で謝罪

 

 2007年の「今年の漢字」は「偽」。白い恋人、赤福、船場吉兆といった食品系の偽装問題に、耐震強度偽装、ドーピングなどが問題となりました。ぶっちゃけ忘れてたけど、そういえばセンター試験で出るとか出ないとか言われて、意識していたような覚えが……。

 記憶に残っている出来事としては、ZARD・坂井泉水*3さんの訃報ですね。自分含め、高校生と言えば周りもJ-POPを聴きまくっていた時期なので、結構ショックを受けていた人がいたように思う。もう10年も経つのか……。

 ネット関連では、「テラ豚丼」事件*4がそんなに前だったかとびっくり。炎上したのは動画だったものの、食品系の “やらかし” という意味では、「バカッター」の走りだったのかなーとも。ちょうど日本国内でもTwitterが広がりはじめた時期だったと記憶していますし。

 

ジャニーズが千の風になったのは、セーラーふくだからです←結論

 他方で国内の音楽、オリコンランキングに目を向けてみると、ジャニーズがすっごいイケイケドンドン。女性アイドルグループの姿はまだあまり見られず、全体的に男性歌手&グループが人気を集めていた様子。なお、年間トップは「千の風になって」である(※発売は前年5月)

 世間的にはジャニーズフィーバーだったなか、自分はどんな音楽を聴いていたんだっけ……と考えてみると、頭をよぎるのはアニソンゲーム音楽、年末にはボーカロイド歌ってみた、でござる。

 2006年の振り返り記事を読むかぎり、前年はまでは人気のJ-POPを追いかけていたようだけれど、この年になるとすっかり深夜アニメ色に染まりきっていたらしい。iTunesでリリース年別に検索しても、あまりJ-POPらしいJ-POPは聴いていなかった模様。強いて言えば、

  • Mr.Children「フェイク」
  • L'Arc〜en〜Ciel「DAYBREAK'S BELL」
  • YUI「Rolling star」

 このあたりのシングル曲とか。とはいえ、うち2曲はアニメのタイアップソングなのよね……。ミスチルに関しては、同年の年間1位を獲得したアルバム『HOME』より、「ポケットカスタネット」を好んで聴いていました。ラストのサビですべてをぶちまける感じが大好き。

 

 

 で、じゃあアニソンではどんな曲を聴いていたのかと言いますと──。まず、オリコン年間CDシングルランキング*5の40位あたりに、ひときわ存在感を放つジャケット&歌手名があるじゃないっすか。アニメ界隈的には、やっぱりこれが欠かせないんじゃないかしら。おしりかじり虫、ではない。

 

もってけ!セーラーふく

もってけ!セーラーふく

  • 泉こなた(平野綾)、柊かがみ(加藤英美里)、柊つかさ(福原香織)、高良みゆき(遠藤綾)
  • アニメ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

 そう、アニメ『らき☆すた』主題歌「もってけ! せーらーふく」である。そうなんですよ……テレビ放映から、もう10年になるんですよ……。自分の周囲も含め「これがきっかけで深夜アニメにハマった」という人は少なくないようなので、いろいろと象徴的な曲なのではないかしら。

 同時期にじわじわとユーザーを増やしつつあったニコニコ動画では、「ばか☆すた」をはじめとするOP派生MADに、踊ってみた・演奏してみたといった、本作の二次創作も人気に。相乗効果的に人気が高まり、「オリコン1位にしよう運動」も展開されていました*6JAM Project((影山ヒロノブさん、遠藤正明さん、きただにひろしさん、奥井雅美さん、福山芳樹さんの5人をメインとするアニソン歌手グループ。2007年当時は松本梨香さんもメンバーとして活動中(参考:JAM Project - Wikipedia)))版もいいぞ。

 

JAMがもってった!セーラーふく

JAMがもってった!セーラーふく

  • JAM Project
  • アニメ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

 このように “曖昧3センチ” が圧倒的な存在感を放っていた2007年のアニソン界ではあるものの、ほかにも現在に至るまで人気を博している楽曲は少なくない。一例として、個人的に好きな2007年リリースのアニソンを10曲ほど選んでみたら、こんな感じになりました。

  • 空色デイズ/中川翔子 - 『天元突破グレンラガン』
  • モザイクカケラ/SunSet Swish - 『コードギアス 反逆のルルーシュ』
  • Virgin's high!/MELL - 『スカイガールズ』
  • 奈落の花/島みやえい子 - 『ひぐらしのなく頃に解』
  • 人として軸がぶれている/大槻ケンヂと絶望少女達 - 『さよなら絶望先生』
  • アンインストール/石川智晶 - 『ぼくらの』
  • ハヤテのごとく!/KOTOKO - 『ハヤテのごとく!』
  • スケッチスイッチ/阿澄佳奈, 水橋かおり, 新谷良子, 後藤邑子 - 『ひだまりスケッチ』
  • Shining stars bless☆/詩月カオリ - 『ななついろ★ドロップス』
  • euphoric field/ELISA - 『ef - a tale of memories.』

 こうして見ると、MADやらメドレーやら、何らかの形で「ニコニコ動画で見た(聴いた)覚えのある曲が多いっすね……。10年も前であるにも関わらず、2007年に触れたコンテンツについて思い出しやすいのは、その多くがニコ動と紐づいているからなのかもしれない。重度のニコ厨でしたゆえ。

 

初めてのライブ、初めての武道館

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 そんな2007年は、自分にとっては「生まれて初めて音楽ライブ(コンサート)に行った年」でもあります。初めて参加したのは、『うたわれるもの』*7のアニメ・ゲーム各種主題歌で有名な、Suara*8さんのライブツアー『Suara LIVE TOUR 2007 〜惜春奏歌〜』でした。

 

 

 今でもありありと思い出せる、サイリウムが光る大宮ソニックシティのホール。……というか、「サイリウム」の存在自体をそこで初めて目の当たりにして、「ライブって、すっげえきれいなんだ!」とあまり一般的ではなさそうな第一印象を抱いてしまった面もあったかもしれない。

 当時は『うたわれ』のほかにも、『ひぐらしのなく頃に』『Fate/stay night』といったPCゲーム原作の作品群にハマっており、それら作品のボーカル曲のなかでも特に大好きだったのが、Suaraさんの「夢想歌」でした。アニメ版では\キンッキンッキンッキンッ!/のSEでおなじみのアレ。これが好きすぎて、数百回はリピートしていた記憶がある。

 

夢想歌

夢想歌

  • Suara
  • アニメ
  • ¥200
  • provided courtesy of iTunes

 

 で、あるとき「ライブツアーをやるよ!」という案内を目にして、ノリと勢いでチケットを買ってしまったのがきっかけ。そうして会場に赴き、実際に聴いたSuaraさんの歌声は透き通っているかのようにとんでもなくきれいに聴こえて、プロの生歌の魅力を実感したのでした。

 ──で、このライブが5月の開催だったのだけれど、心底から「すげえ!」と感じられてしまえば、そりゃあまた行きたくなるのが自然な流れってもんですよ。居ても立ってもいられずに調べてみたところ……目に入ったのが、年に1回のアニソンの祭典『Animelo Summer Live』*9だったわけです。

 2005年から開催されているこのライブは、2007年が3回目。Suaraさんのほかにも、ALI PROJECT、JAM Project、水樹奈々さん、栗林みな実さん、桃井はるこさんといったそうそうたるアーティストが出演すると知って、「これは行ってみたい!」と。

 確保したのはたしか機材席だったと思うけれど……それでも、長時間にわたる数々のアーティストたちのパフォーマンスは最高だったし、本当に楽しかった。このあと2015年まで、毎年欠かさず参戦するようになるほどには。これが毎夏の楽しみだったのよ!

 特に自分の場合、ガキンチョのころから「アニメの歌と言えばこの人!」なイメージが強かった影山ヒロノブ*10さんの歌声を初めて生で聴けたのは、感涙モノでござった。あと、シークレットゲストで高橋洋子*11さんが登場したときは、衝撃のあまりアリーナ席に落下しそうになった。あぶねえ。

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 ついでに、スペシャルゲストとして登場した矢部野彦麿*12&琴姫*13は、当時のニコ動の勢いを裏づけるものっぽくもありますよね……。主催がドワンゴだから、という部分も大きいのでしょうが。パンフレットを見ると、浮きっぷりがしゅごい。

 

ニコニコ動画との出会い

 先ほどから繰り返し言及しているように、2007年と言えば、「ニコニコ動画」が話題になった年として記憶している人も多いのではないかしら。実験的にサービスが始まったのは2006年12月だけれど、本格的に運営が開始され、急速に広がったという点で。

 僕がニコ動の存在を知ったのは、2007年の三が日のこと。学校は当然のごとく冬休みで、さすがに年末年始は部活もなし。宿題は冬コミ前に華麗に終わらせていたため、やることもなく暇。そこでネットサーフィンに精を出していたところ、出会ったのがニコ動だった──と記憶しています。

 最初に見たのは、たしか『スーパーマリオ64』のTAS動画だったはず。そのうちに空耳ネタや嘘字幕などを見るようにもなり、当時すでに懐かしくなりつつあった「おもしろFLASH」的な魅力をニコ動にも感じていたんじゃないかと思う。KBCとか、すでにこのころには話題だった……よね……?

 (仮)から(β)にかけてのニコ動の魅力は、今も最大の特徴である「コメント機能」にあったと言えるのではないかと思います。

 まるでリアルタイムで誰かと一緒に動画を見ているように感じられるコメント群と、秀逸な空耳や弾幕による “ツッコミ” 。それらを読むのが楽しいから、思わず長居してしまうし、何度も見返したくなるんですよね。「あいつこそがテニスの王子様」*14とか、見るたびにコメントが違っていて笑った。

 

「面白くないものも、突っ込みを入れることで面白くなるんです。例えば、びっくりするぐらい面白くない芸人さんのネタ映像。テレビの観客は笑っているんだけど、その白々しさに腹が立ってくるから、みんなが怒りのコメントをぶつける。そのコメントがすごく面白い」

 

 こちらの2007年1月末のインタビューで話されているように、「面白くないものが面白くなる」というのは、たしかに初期のニコ動の本質だったように感じる。良く言えば「付加価値」、悪く言えば「便乗」。ユーザー各々の好き勝手なツッコミが、動画をおもしろくしていたのは間違いない。

 で、僕はと言うと、冬休みですっかりニコ動の虜になり、2月末のサービス一時停止に際しては酷く落ち込んだ覚えすらある。ただ、(γ)としてサービスを再開した3月は期末テストの時期だったこともあり、ID登録をするのがちょっと遅くなっちゃったのよね……。アカウントは、ID80,000台です。

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10周年おめでとうございます/組曲『ニコニコ動画』 by しも 音楽/動画 - ニコニコ動画

 春休みには、「おっしゃ! ワシも動画投稿したるわ!」と投稿した動画が、10万再生&トップ10入りする……なんてこともあったり。高校3年生になってもニコ動熱は冷めることなく、毎日欠かさずランキングをチェックし、ジャンルに関係なくあらゆる動画を楽しんでおりました。

 ──とまあ、個別に好きな動画を振り返ろうとすると、2007年だけでも結構なボリュームになりそうなので、それはまた別の機会に。ただ、そのなかでもひとつだけ外せないのが、ニコ動の一大ジャンルであり、ネットカルチャーとしての「ボーカロイド」の存在です。ミクさんかわいい。

 

ボーカロイド、東方Projectを経由して同人音楽全般にハマる

 “毎日欠かさずランキングをチェックし” ていたこともあり、ボーカロイドと出会うのは必然だった。最初に聴いたのは、ランキングに上がっていた「Ievan Polkka」だったと思う。

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VOCALOID2 初音ミクに「Ievan Polkka」を歌わせてみた by Otomania VOCALOID/動画 - ニコニコ動画

 当時は主に「既存曲を初音ミクに歌わせてみた」動画が大半で、「科学の力ってすげー!」的なコメントも多かったのではないかと。動画自体、公式の “初音ミク” のイラストを背景にしたものが多かった印象。僕自身、「最近の音声技術ってすごいんやなー」くらいの感覚だった。

 ところがどっこい。「Ievan Polkka」が投稿された翌週、9月2週目くらいから雰囲気が変わる。「恋スルVOC@LOID」「あなたの歌姫」「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」など、 “初音ミク” というキャラクターを押し出したオリジナルソングが次々と投稿されたのです。

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あなたの歌姫/初音ミク_fullver. by azuma VOCALOID/動画 - ニコニコ動画

 これらの楽曲に共通するのは、それぞれ別の作曲者さんが作った「オリジナル曲」でありながら、ボーカロイドが歌うことを前提とした「初音ミクの歌」でもあること。キャラソン的でありながら、それぞれが異なる物語や人格(?)を持った存在として歌われていて、おもしろく感じたのでした。

 その勢いは衰えず、「私の時間」「えれくとりっく・えんじぇぅ」といった初期の名曲が続々と登場。その一方では、手描きによるアニメーション動画や3Dを駆使したPV風の作品までもが投稿され、空前のボカロブームに。このころには、iTunesで専用プレイリストを作って聴いていた気がする。

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3DみくみくPV♪ by chop 音楽/動画 - ニコニコ動画

 既存の動画にコメントをつけて楽しむのではなく、ボカロ曲をきっかけに、さまざまな分野のクリエイターが自分なりの表現でもって動画制作に励みはじめた時期。こうして見ると、2008年を迎える前のこの時期に、すでに「N次創作」*15的な流れができあがっていたようにも見えますね。

 そして12月7日。ある意味ではその後のニコ動の方向性を決めるきっかけともなった、例の動画が投稿される。既存曲のカバーでなく、キャラソンでもなく、どこでも聴いたことがない、でも初音ミクが歌うオリジナルのポップソング。ryoさんの「メルト」でございます。

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初音ミク が オリジナル曲を歌ってくれたよ「メルト」 by ryo 音楽/動画 - ニコニコ動画

 「メルト」という楽曲それ自体の人気は言うまでもなく、すぐに次々と「歌ってみた」動画が投稿され、翌週13日にはランキングの1位から4位までを「メルト」の関連動画が占めるという(当時としては)異常事態に。俗に言う「メルトショック」*16である。

 当時のボカロの勢いを説明づける出来事であり、N次創作をますます加速する流れを作り上げた、黎明期の盛り上がり。ただし他方では、大百科の説明にもあるように、ニコ動のランキングシステムに対する不信感や、信者とアンチの対立を煽る出来事になった、という見方もあるようです。

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 水面下ではいろいろとあったようだけれど、いちユーザーに過ぎない当時の自分は、その流れを純粋に楽しんでいたように思う。それまでも好んで聴いていた「歌ってみた」ジャンルの魅力を再認識したことで、趣味で聴く音楽の幅が格段に広がった格好。

 付け加えると、2007年当時の流れとしてわかりやすいのでここではボカロについて取り上げましたが、このころには『東方Project』*17のアレンジCDにもどっぷり浸かっておりまして。ニコ動の影響でオリジナルも含む同人音楽全般にハマり、年2回のコミケとM3*18で買うCDの数が急増。受験前だった2007年は控えめだったものの、翌年以降は年に50〜100枚はCDを買いあさるのが当然の生活に。自分のことながら、なにそれこわい……。

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 ──というような流れでハマった、ボーカロイド。最近はさすがに聴く機会も減ったものの、好きなコンポーザーさんの曲は相変わらず追いかけて楽しませてもらっております。2014年に行ったライブも良かったし、つい先日の鼓童とのコラボは心底から感動しました。

 ……それにしても、まさか自分が、ミクさんのライブパンフレット(MIKU EXPO)の制作をお手伝いすることになるとは想像すらしていなかったので、話をいただいたときにはひっくり返るかと思いましたよ……。

 

2007年にハマった作品

 この時点でやたらと長い記事になっていますが、せっかくなので、そのほかにも2007年にハマっていた作品をいくつか挙げてみました。どれもこれも「10周年か……」と遠い目になるやつだ、これ。

 

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序

 何がびっくりって、「10年経っても新劇場版が完結していない」ことに尽きる。どうしてこうなった……。いや、でも『シン・ゴジラ』もむちゃくちゃおもしろかったし、私待つわ! いつまでも待つわ!

 自分はリアルタイムで『エヴァ』に触れておらず、友人のアツい布教活動によってビデオを見させられたのが、中学生のころ。当たり前のように感化され、各種グッズやメディアミックス作品も集め、ネット上に転がっている二次創作小説までも読みあさるほどにハマることに。

 それから数年後、「リアルタイムでエヴァの最新作が観られるの!?」と聞いたら、そりゃあ興奮しないはずがない。公開初日に観に行って、「もうLCLの海に還ってもいいや……」くらいの満足した面持ちで劇場を後にしたのでした。ちなみに、2年後の『破』は中学時代に布教してくれた友達と公開初日に観に行き、ラストの急展開に興奮しすぎて「もう1回観るぞ!」と連続で観賞した思い出。

 

秒速5センチメートル

 上映が始まる少し前にその存在を知り、初めて劇場で観た、新海誠*19監督の作品。映画としては間違いなく人生で最も多く繰り返し観た作品であり、一番好きな映画。聖地巡礼に行くレベル。

 もともとは映像美や音楽との調和に惚れこんで観るようになった新海さんの映画だったけれど、なかでも本作は格別。というのも、自分自身が転勤族の家庭で育ったこともあり、否が応でも主人公に共感してしまうんすよ……。恋愛面もそうだけれど、それを差し引いても、自意識の在り方があまりに「おま俺」すぎて辛い。お前は俺か。

 それ以外の作品に関しても、どことなく雰囲気が自分好みだったので、今に至るまで追いかけ続けている格好。なので、昨年の『君の名は。』フィーバーは予想外すぎてびっくりした。

 

天元突破グレンラガン

 前述の『エヴァ』を除けば、初めてまともに完走したロボットアニメ。いやだって、あんなん燃え上がらないほうがおかしいっしょ! 毎週もうアホみたいに叫びながら観てたぜ!

 なんちゅーか、小説でも映画でもアニメでも、普段から割とドロドロの人間関係を描いたような作品を好んで観ていたせいか、王道ド真ん中で熱血漢魂なストーリー展開にいたく胸震わせられてしまったのでした。劇場版もむっちゃ良かった。

 「こまけぇこたぁいいんだよ!」の突き抜けっぷりを楽しみつつ、でも最後には同時に感動させられ泣かされるあの感じ。記憶をなくして、もう一度最初から観返したいアニメのひとつでござる。

 

.hack//G.U. Vol.3 歩くような速さで

 PlayStation2で一番好きだったRPGの、シリーズ完結作。通常戦闘が割ともっさりしてるとか、関連作品が多すぎるとか、アニメが微妙だったとか──いろいろツッコミどころはあるものの、なんやかんやで当時は大好きでした。リマスターやったー!*20

 今となっては、ゲームのみならずライトノベル分野でも珍しくない、「オンラインゲーム」が舞台の作品*21 。その独特の世界観と個性的なキャラクター、あとは音楽などの複数要素に惹かれて、毎作楽しみにプレイしていたゲームのひとつです。新しいPVが公開されるたびに、毎日観返していた思い出。

 振り返ってみると、「声優さんってすげえ」と感じられるようになったのも、この作品での演技を聞いてだったかもしれない。主人公・ハセヲを演じる櫻井孝宏*22さんの声は今でも好きだし、当時は絶叫の演技に心底から惚れていたように思う。最近はスマホの中でよく “王の話” をしてくれています。

 

Fate/stay night [Realta Nua]

 『Fate/stay night』*23の全年齢版がPS2で発売されたのも、なんと10年前。それが今や、スマホでも読むことができるわ、登場した新作アプリが世界的にも人気になるわ、各種メディアミックス作品が次々とアニメ化されるわ──と、終わる気配のないコンテンツ。わぁい!

 そして、そんな『Fate』を10年も追いかけ続けている自分にもびっくりである。ぶっちゃけ、原作と『hollow ataraxia』だけでもうお腹いっぱい大満足かと思いきや、アニメも含む『Zero』でいろいろな層を取りこみ、『EXTRA』でFate世界の可能性を広げ、異色かと思いきや『プリヤ』も原作並にFateしてるし、なんかもう「喜んで過食嘔吐します!」と沼にズブズブ沈んでいく感じ大丈夫、筋肉があればなんとかなる。アッセイ。

 そういや『Fate』と言えば、昔からMAD作品が多く投稿されている印象が──と思って振り返ってみたら、2007年の静止画M@D大賞に軍魔*24さんの『ALL LAST』の文字が。桜ルートを描いたMADとしては一番好きなこの作品、その10年後に映画化──と考えると、本当に “待望の映像化” っぽくありますね……。

 

「ネットで知った」が「リアルタイム」に移り変わった年

 こうして見ると、やっぱり2007年は “ニコニコ動画イヤー” としての印象が強いっすね……。過去の人気作も最新作も引っくるめて、まとめて「コメント」でツッコミを入れることで誰もが等しく楽しめる形にしてしまう感じ。必要なのは、ネットスラングの知識くらい──だったかしら。

 10年が経ち、ニコ動もいろいろと流行り廃りを繰り返すなかで、その性質が微妙に変わってしまった部分もあるのかもしれない。良い意味で発展した、幅が広がった部分もあれば、悪い方向へ向かってしまった部分もあるように思う。具体的にどこが……というのは、ここでは言及しませんが。

 あとは純粋に、自分が大人になった──もとい、考え方が変わったという面もあるのかな。さすがに当時ほどはコメントを楽しめなくなっているし、何でもかんでも観ていたころとは違って、今は苦手なジャンルもあるので。……その反面、今でも爆笑できる動画もあるのだけれど。

 

 変わったところがあれば、変わらないところもある。10年経っても相も変わらずアニメを観ているし、いまだに『Fate』シリーズを追っかけているし、好きな作品がリメイクされればとりあえずチェックするし、ついでに『エヴァ』はまだ終わっていないし。

 アニメに関しては、選り好みしていた昔よりも幅が広がっている感覚すらあり、それは良いことなんじゃないかなーとも思ったり。「これだから最近の〜」とか「昔のアレは良かったのに〜」などと思うことはほとんどなく、おもしろそうなコンテンツやサービスが出てきたら、とりあえず触ってみるのは今も昔も変わらず。そのうえで夢中になってハマれる作品があることは、きっと幸せなことなんじゃないかしら。最近は『けもフレ』おじさんです。たーのしー!

 

 そのように考えると、むしろそうした「幅を広げる」きっかけとなったのがニコニコ動画の存在であり、ちょうど10年前の2007年から、あれこれと手を出しはじめるようになった──とも言えるのかもしれない。

 言うなれば、今まで以上にネットカルチャーに親しむようになっただけでなく、時には能動的な「参加者」としても振る舞うようになった年。初めて「ライブに行こう!」となったのもそうだし、自分で動画を作ったり、気になったCDを片っ端から買ったりするようになったのもそう。

 外側で受け身のコンテンツ消費から、内側で一緒に楽しむ参加者へ。実際のところはコメントを書きこむ程度で、「生産者」になるほどにはスキルが伴っていないのが悲しくもあるのだけれど……。

 それでも、自分から動いて見に行くようになり、それまで以上に興味関心を広げるようになったことで、得られるものもあったんじゃないかと思う。言ってしまえば、2017年の自分がこうしてあれこれとブログに書き連ねていることだって、その延長線上にあると言えるでしょうし。

 

 そんなこんなで、ほとんどニコ動の話になってしまってアレですが、「2007年はこんなのが好きだったよ!」という至極個人的な振り返り記事でした。よかったらあなたも、自分なりに「2007年」を振り返ってみては?

 

参考ページ

関連記事

*1:同人サークル「放課後」編集部さんの『REPLAY 2002-2004』。

*2:2007年、『ぐるぐるナインティナイン』や『笑いの金メダル』に出演したことがブレイクのきっかけに(参考:小島よしお - Wikipedia

*3:2007年5月27日、後頭部強打による脳挫傷で急逝(参考:坂井泉水 - Wikipedia

*4:参考:吉野家、「テラ豚丼」動画騒動で謝罪 - ITmedia NEWS

*5:オリコン年間 CDシングルランキング 2007年度 | ORICON NEWS

*6:「らき☆すたをオリコン1位にしよう」まとめサイト - Seesaa Wiki

*7:うたわれるもの - Wikipedia

*8:Suara - Wikipedia

*9:Animelo Summer Live2007 Generation-A

*10:『ドラゴンボールZ』の「CHA-LA HEAD-CHA-LA」や、『爆走兄弟レッツ&ゴー!! MAX』の「BRAVE HEART」(“鋼鉄兄弟”名義)でよく聴いていた(参考:影山ヒロノブ - Wikipedia

*11:『新世紀エヴァンゲリオン』の「残酷な天使のテーゼ」でおなじみ(参考:高橋洋子 (歌手) - Wikipedia

*12:矢部野彦麿とは (ヤベノヒコマロとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

*13:琴姫とは (コトヒメとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

*14:あいつこそがテニスの王子様とは (アイツコソガテニスノオウジサマとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

*15:参考:VOCALOIDの可能性と創作の連鎖についての考察 3.N次創作

*16:メルトショックとは (メルトショックとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

*17:東方Projectとは (トウホウプロジェクトとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

*18:音楽をはじめとする「音系」ジャンルの同人即売会(参考:M3 - 音系・メディアミックス同人即売会

*19:新海誠 - Wikipedia

*20:PlayStation(R)4/Steam用ソフト「.hack//G.U. Last Recode」ティザーPV - YouTube

*21:無印の『.hack』以前から、すでに『ソードアート・オンライン』が口コミ経由で人気を博してはいたものの。

*22:櫻井孝宏 - Wikipedia

*23:Fate/stay night - Wikipedia

*24:軍魔とは (グンマとは) [単語記事] - ニコニコ大百科