17人の先輩プロガーから学ぶ『世界一やさしいブログの教科書1年生』【献本】


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 染谷昌利@masatoshisomeyaさんの新著『世界一やさしいブログの教科書』をいただきました!

 染谷さんの著書と言えば、『ブログ飯』。過去に何冊ものハウツー本を読んできたなかでも、最も納得のいく形で「ブログ運営の考え方」がまとめられた1冊です。ブログを継続するにあたって自分がまだ迷走していたころに読んだ本であり、少なからず影響を受けた本と言えるもの。

 そんな『ブログ飯』を一口に言えば、ブログ運営について「読んで、知る」ための、精神論を紐解いた本という印象でした。対して今回の『世界一やさしいブログの教科書』は、精神論と方法論が同居した「読み、知り、考え、学ぶ」本だと言えそう。それこそ、文字通りの “教科書” ですね。

「PV」の意味、「ブログ」の目的、「価値」の在り処

 いきなり自分の話で恐縮ですが、僕は「ブログ」なんて好き勝手に書いていいものだと思っています。

 最近はオウンドメディアにプロブロガーなど、企業の広告宣伝や収益化を目的としたブログも増えつつあります。けれど、今なお「ブログ」の大多数を占めるのは、何の変哲もない「個人の日記」だと思うので。

 とは言え、そんな個人の日記ですら普通におこづかいを稼げるようになった今、自由に記事を投稿しつつも、意識して「PV」や「収益」を最大化しようとする人は少なくない。

 僕自身もそうですし、仲の良い(と思っている)ブロガーさんにもそういう方がちらほら。ブログやジャンルの方向性、金額の多寡の違いはあれど、「ブログDEおこづかい稼ぎ」は珍しくありません。

 しかし、お金……もとい「数字」の魔力と申しましょうか。「PV」や「収益」を重視するあまりか、「その方法はあかんやろ……」とはたから見てもモヤモヤする手法・記事に手を出してしまう人が、少なからず見受けられる今日このごろ。

 平気で他人を傷つけるような主張に、感情を煽り立てるような炎上狙い。広告主が望まないだろう正当性を欠いた商品紹介に、パクリ記事、スパム行為。

 もともとは好きで始めたはずのブログなのに、それはちょっと違うでしょう……と。いろいろな意味でもったいないし、何より、それまで好きで読んでくださっていた読者さんに対して失礼なんじゃないかしら……。

 なぜ数字を増やす必要があるのか。自分がブログを始めた目的は何だったか。そこには何らかの価値があるのか──。そういった諸々の前提や事情をポイッと投げて、安易に「PV」や「収益」に注視してしまうのは、あまりにももったいない。

 画面の先にはブログを読んでくれている誰かがいて、端的な情報だけでなく、感動や体験までも共有できる土壌があるはずなのに。「数字」は目先のわかりやすい結果ではあるけれど、その先に人がいることを忘れてはいけないと思うのです。ついでに、僕らは互いをよく知らないということも。

 ──とまあ長くなりましたが、PVやブログ運営の考え方など、ずーっとモヤモヤしていたあれこれが自分にはあったわけです。それこそ、「意識低くブログやろうぜ!」などと書くほどに。

 そんな感情が渦巻くなかで読んだ、『世界一やさしいブログの教科書』。

 抱えていたモヤモヤをものの見事に言語化してくれただけでなく、自分にとって理想的なブログ運営、目標達成方法までもが順を追って解説されており、全力で「それな!」と頷きながら読ませていただきました。

 それでいて、ただ書かれているとおりに「真似る」のではなく、人によってジャンルも目的も方法も異なるブログ運営に対応するべく、考えながら「学ぶ」ことのできる内容になっている素晴らしさ。痒いところに手が届くだけでなく、痒いところの掻き方まで教えてくれる1冊でござった。

具体例と複数人の視点があるから、わかりやすい

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サイン本わぁい!

 さて、本書はソーテック社の『世界一やさしい』シリーズの本ということもあり、「主に初心者をターゲットとした入門書」という立ち位置の書籍となっている模様。基礎知識にはじまり、記事の書き方、収益化の方法、果てはブログの可能性まで、流れを追って説明した内容です。

 複数サイトで実績を上げているプロの解説というだけあって、わかりやすいことこの上なし。

 真偽の怪しいSEOや、データの伴わない結果論も少なくないネット上の「ブログ論」と比べれば、その信頼性の高さは言うまでもありません。正直、「信頼のおける情報がまとまっている」というだけで買う価値はあるかと。特にブログ初心者にとって、ネット上の情報の価値を見極めるのは難しいでしょうし。

 他方では「先輩ブロガーの成功パターン」として、17名にも及ぶブロガーさんへのインタビューが掲載されているのも大きな魅力。

 というか、個人的にはこのパートがとんでもなく参考になりました。初心者はもちろん、中級者や上級者にも嬉しいコンテンツとなっているのでは……?

 しかもその文量、なんと100ページ! 端的な一問一答ではなく、「自分のブログについて」「運営で気をつけていること」「実社会での変化」「収入を得る方法」「ブログを始めたい人へのメッセージ」がそれぞれ相応の文章量で書かれており、とても読み応えのある内容となっています。

 その言説も納得のいくものばかりで、いくつかは引用したいほどに共感してしまったのですが……それ以上に印象的だったのが、多種多様なブログジャンルで、十人十色の運営をしている17人であるにも関わらず、大多数の人に共通している意見があったこと。

 ざっくりと言えば、「炎上は避ける」「読者目線」「誠実さ」──などなど。各々に微妙に切り口は異なるのですが、多くの人が同様にこういった点を意識して運営していることが目に見えてわかり、いたく共感した格好です。……言い換えると、「ホッとした」とも。

 結局のところ、普段から攻撃的な物言いをしている人はネット上で完結してしまいがちだし、悪い意味で炎上しがちな人はこうした場にも呼ばれにくいんですよね。実際に会ってみると悪い人じゃないんですが、一緒に何かをするにあたってはリスクが気になってしまう。

 ただ、個人的には、筋が通っていればある程度の「口調の強さ」はキャラとしてありだとも思っているので、そちらの志向を持ったブロガーさん、炎上経験者の詳しい体験談などもあると、「炎上」に対する理解がより深まったのではないかな、とも感じました。あの人とかこの人とか……。

 とは言え、そこまで踏み込むとネットカルチャー・リテラシー云々のほうまで話が及びそうなので、あまり “教科書” 向きではないとも思いますが……。一方で、「いいバズ」「悪いバズ」について双方のメリット・デメリットを説明している箇所については、むっちゃ勉強になりました。「炎上を引き起こす方法」まで言及しているのは……ロックだ……。

 

 そんなこんなで、本書『世界一やさしいブログの教科書1年生』は、ブログ初心者にはもちろんのこと、ブログの方向性に悩んでいる中級者さんや、昨今の「PVこそ正義!」と言わんばかりの現状にモヤモヤを感じている人にも勧められる1冊です。

 そして、筆者の染谷さんをはじめ、17名の先輩ブロガーさんたちも口をそろえて言っている、「継続は力なり」の一点。まだブログ運営3年程度の自分でも「それや!」と首を縦にブンブン振るくらい納得できたので、5年、10年と続けていったらどうなるのか……今から、楽しみです。

 

補足:本書で登場する17人のブロガーさん

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