──「ブログ」って、なんだろう。
そのような疑問が、ふと浮かぶことがある。
そのたびに「ブログはブログ、ウェブサイトの一種に過ぎない」なんてことを確認しつつ、「自分にとっての『ブログ』の意義」を問い直してきたように思う。日記であり、個人メディアであり、他者とつながることのできる貴重なツールである……と。
僕はまだブログを始めてから3年程度の駆け出しだけれど、これまで自分の考えを数多く書き出してきて、それによって交流を持つようになった人も少なくない。子供の頃から触れてきた大好きな「インターネット」がより外へと拡張され、あちこちへつながったという実感がある。
時には拙い文章が誰かに影響を与え、感謝までしてもらえるようなこともあった。自分が大好きなコンテンツ作りの手伝いをさせていただいたり、好きなクリエイターと話をするような機会を持ったりしたこともあった。──ブログってすごい、心からそう思った。
しかし一方では、「それってどうなん?」と感じるブログが目に入ることもしばしばある。……いや、そりゃあもちろん、一口に「ブログ」と言っても十人十色ですし、いろいろな目的や運営方法があって当たり前ではあるのですが。
偉そうに何かを言える立場にないと知りつつも、どうしても物申したくなってしまう「ブログ」の形。例えば、他者を傷つけるような内容だったり、デタラメを書いていたり。そういったブログが目に入ってモヤモヤしつつも、これまではその感情がうまく言語化できていなかったのです。
そんな諸々の違和感を、すっきり見事に取っ払ってくれた本がこちら。倉下忠憲(@rashita2)さんの『ブログを10年続けて、僕が考えたこと』を読みました。ブログはいいぞ。楽しいぞ。
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ブログ初心者にこそ読んでほしい、最初の一冊
普段であれば「この本はこういう内容だよ!」と要約をまとめ、「この部分がすごく印象的だったよ!」と本文を引用しつつ共感or違和感を抱いた部分を書きだしたうえで、「僕はこう思うだわさ」と自身の主張を展開するところ……なのですが。
正直に申しまして、本書に関しては自分があれこれ書くよりも「読んでください、マジで」と本文に丸投げしたほうが安定安心のような気がするのです。……いや、だって、最初から最後まで「仰るとおりです」と五体投地して同意する、同意できてしまう内容なんですもの。
強いて言うなら、「ブログを始めたばかりの初心者」にこそぜひおすすめしたい1冊だと感じました。完全な中庸ではないものの、世にあまた存在する「ブログ本」のなかでも非常にバランスの取れた立ち位置から「ブログ」を語った内容となっているので。
「そもそもブログとはなんぞや」という部分から始まり、記事の内容に注視した「ブログの分類」を例示するなど、初心者にもわかりやすい構成。そのうえで、この10年間におけるブログ界隈の変化と、筆者自身のブログ運営の歴史を紐解いていく展開になっています。
誰に言われなくても、何一つ強制がなくても、ブログを更新する人。ブログを更新してしまう人。ブログ更新の内燃機関を持っている人。言い換えれば、ブログを書く意義を自らで持っている人。
そうした人をブロガーと呼んでみるのはどうでしょうか。
この定義に従えば、「ブログを更新すると良いことありますよ」と誰かから言われてブログを更新している人は、まだブロガーではありません。いわば見習いブロガーです。そういう段階を通り抜けて、「なるほど、これは楽しいものだ」「こんなに面白いのか」と納得し、ついついブログを更新してしまう人。ブログに文章を書いてしまう人。
それをブロガーと呼ぶわけです。
(倉下忠憲著『ブログを10年続けて、僕が考えたこと』より)
そしてなにより、多くのブログ本で書かれている「技術」の話題についてはほとんど触れておらず、あくまで筆者が「考えたこと」に終始していること。それこそが、自分にとってのおすすめポイントです。具体的な運営方法はさておき、曖昧模糊とした「ブログ」の意義をまずは考える。
なぜそれが良いかと言うと、近頃は良くも悪くも「ノウハウ」が広く共有されすぎてしまっていると思うから。タイトルはこうする、記事構成はこうする、広告はどこに配置する、SEOの考え方はこうだ、セルフブランディングがどうのこうの……みたいな。
もちろん、それによってブログに参入するハードルが下がり、王道とされる方法論を実践することで、早くから多くのアクセスを集めることが可能にはなりました。一見すると良いことづくめのようですが……ただ、それも人と場合によりけりだと思うんですよね。むしろデメリットでしかないケースもある。
わかりやすい例としては、「PV」の考え方。本文でも言及されていましたが、PVそれ自体はブログの価値を表すものではなく、あくまでも評価軸のひとつでしかありません。にもかかわらず、最初からバズに快感を覚えてしまうと、それ以外の「価値」に気づけなくなってしまう恐れがある。
加えて、ネット上で見つかる方法論のなかには極端な主張も少なくありません。「PVのためなら炎上上等」といった考え方はもちろんのこと、聞きかじりのSEO手法を当然のように語るものも含む。それら極端な言説は、初期のブログ運営においては「毒」にしかならないのではないかと。
プロブロガーに憧れている人の多くは、ブログそのものではなく、その生き方に憧れを感じているような印象があります。そこではブログは単なる手段にすぎません。他に有名になる方法があるのならば、そのツールに悠々と乗り換えてしまうこともあるでしょう。また、ブログというツールで何を発信し、どんな情報を残したいと思っているのか、誰に何を伝えたいのか——そんなことについても、深い思い入れはないのかもしれません。もし、そうであるならば、そうしたブログが突き抜けた存在になることはおそらくないでしょう。
(同著より)
念のため付け加えておくと、何もネット上の情報すべてが間違っているというわけではありませんし、ブログの運営方針によっては、そういった極端な主張こそが妥当であるとされるケースもあるでしょう。……たぶん! きっと! おそらく! 僕は知らんけど!!
ただ、せっかくのまっさらな状態で始めた活動において、最初に極端な知識や方法論を身につけるのはあまり勧められないのではないかと。ブログに限った話ではありませんが、それらは得てして毒となり、せっかくの楽しい活動の寿命を縮めてしまうものになりかねない。
言うなれば「PV病」の予防手段として、先に本書を読んでおくことで「ワクチン」のような効果が期待できるのではないかと。何をするにも、まずは体づくりから。しっかりとブログの基盤を固めたあとで、外からもたらされる刺激と向き合っても遅くはありません。
真偽の不明な、自分に役立つか無意味かもわからない主張は、生かすも殺すも受け取り方次第。ドーピングによって早々に突き抜けるも、自分の身体能力のみで高みを目指すも、競争に参加せず自由気ままにお散歩するも、自分の選択次第。でもその前に、まずはプスッといっときましょ。
「ブログを始めたら、PVを獲得しなければいけないんだ」
という思考の呪縛から逃れ、「まあ、気楽にやっていきましょう」と思ってもらいたい。しかし、それはそれとして自分のブログにはこだわりを持ってもらいたい。
(同著より)
ブログについて書いた本は数多くありますが、本書『ブログを10年続けて、僕が考えたこと』の筆者・倉下さんは、文字どおり10年選手。しかもずっと「文章」を軸としてブログを書き続け、ついにはそれが生業になった大先輩の教えです。そりゃあ参考にならないわけがない。
「ブログ初心者におすすめ」と書きましたが、初心者だろうとプロブロガーだろうと長くブログを続けようと考えている人であれば、きっと楽しく本書を読めるのではないかと思います。「ブログ論は無意味」とも言われるけれど、他人の「ブログ」に対する考え方を知ることには意味があるはず。
本文では “超絶人気ブロガーを目指している人” には向かない──との記述もありましたが、個人的にはそういう人にもプラスになるんじゃないかと思います。PVや収益といった数字から一瞬でも距離を置き、原点に立ち返ることができるのではないかしら。それが、今後のブログ運営に生かせるかもしれない。
私は、届けたいと思います。
私は、変えたいと願います。
私は、歪めたいと欲します。
読む人に、変化を与えたいのです。それは笑いかもしれませんし、知恵かもしれませんし、皮肉かもしれませんし、哲学的な問いかけかもしれません。
なんであれ、呼吸するようにブログを書くだけでは、つまらないのです。
いつもより張りのある声で、いつもより深く響く声で、いつもより遠くに届く声で、歌を歌う。
(同著より)
呼吸するようにブログを書く人。
友達と話すようにブログを書く人。
歌うようにブログを書く人。
──じゃあ僕は、どのようにブログを書いているんだろう?
それを考えるきっかけとなったというそれだけで、本書を読んで本当に良かったと思いました。きっとまた、読み返します。