アニメキャラに自分の名前を呼ばれるとドキドキくねくねするあの感じ


 アニメのキャラクターに自分の名前を呼ばれたこと、ありますか?
 (≒自分と同じ名前のキャラクターがアニメに登場したこと、ありますか?)

 ……僕は、ありませんでした。今期アニメが放送されるまでは。

 

 振り返ってみれば、深夜アニメにハマって間もない学生時代、「このアニメの主人公、俺と名前が一緒なんだがww」と言ってくる友人が羨ましかった。

 ──だって、プロの声優さんに名前を読んでもらえるんだよ?

 イケボな男性声優さんから名前を呼ばれれば「ひょわーっ!///」ってなるのは必至だし、かわいらしい声の女性声優さんに呼ばれた日には、マジで恋する5秒前。キュンキュンときめいちゃって、アニメを観るどころじゃなくなるんじゃないかと。

 特にそれが学園ラブコメやハーレム展開のある作品だったら、きっと気恥ずかしさと嬉しさのあまりに爆ぜていたはず。ちくしょう……なんで僕の名前は、圭一とか、朋也とか、竜児とか、一夏とか、京介とか、キョンじゃないんだ……*1そう、僕は……いや僕らは、結城リトになりたかったのだ……!*2

 別にヒロインが多い作品じゃなくてもいい。それこそ、僕の名前が「けいた」であればジバニャンに名前を呼ばれて嬉しかっただろうし、「さとし」であればピカチュウに「ピカピ!」って呼ばれて嬉しかったと思う。そうなんや……ピカチュウの「ピカピ!」は特別なんや……みんな『キミにきめた!』を観ような……。

 

 ところがどっこい。悲しいことに、僕の名前は(少なくとも自分が観た作品では)一度もアニメで呼ばれたことがない。別に珍しい名前というわけでもないのに……なんでや……。

 実際、有名人やクリエイターにも同じ名前の人はいるし、なんならフルネームがほぼ一致している人も何人か心当たりがある。稀に小説でも目にすることがあるので、「なんでアニメやマンガにはいないんだ……もうひとりのボク……」と、いつも涙目になっていた。

 

 そうして迎えた、2018年春。
 ──4月放送開始の某アニメから、僕を呼ぶ声が聞こえた

 

 最初は耳を疑った。いやいやまさかと。あり得るはずがないと。まったくノーマークだった作品、ゆるふわな雰囲気の作中で、その名を聞くはずがあるまいと。

 いや、というかしかも、そっちの呼び名かよ。たしかにある意味、それも自分の名前ではあるのだけれど……いや……なんか違うような……でも思わず反応しちゃったし……ならば、これはもう実質、「アニメキャラに名前を呼ばれた」ことになるのでは……? うん、そうだ! そういうことにしておこう!

 というわけで、ついに相まみえることになった「自分と同じ名前を持つキャラクター」であり、初めて「アニメキャラに名前を呼んでもらえた!」と感動(?)するきっかけをつくってくれたのが、彼女です。

 

『こみっくがーるず』3話「プニプニポヨンですね」画像

アニメ『こみっくがーるず』第3話「プニプニポヨンですね」より

 アニメ『こみっくがーるず』の主人公、萌田薫子(もえたかおるこ)ちゃんです。

 

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へえ、あんたもかおすっていうんだ

 もちろん、僕の名は「もえた」でも「かおるこ」でもありませんし、ついでに「たかお」でもございません。前前前世もそうじゃなかったと思う。

 じゃあ、どうしてそれが「僕の名前」になるのかと言えば──本作を観ている方はもうピンときているんじゃないかと思いますが──そう、彼女のペンネームでございます。

『こみっくがーるず』公式サイト

TVアニメ『こみっくがーるず』公式サイトより

 「かおす」

 そう、「かおす」は僕の学生時代のあだ名であり、この発音を耳にしたらビクッと条件反射的に反応せずにはいられない重要ワードなのだ*3。アニメ第1話、それも開始から1分8秒で「かおす先生」と呼ぶ声が聞こえてきたら、そりゃあ背筋をピンと伸ばさずにはいられない。

 ──はいっ! かおす先生です!
 ……ん? 先生??

 あらすじも前情報も確認しないまま、「きらら作品だー、わーい、とりあえず観よーっと」というノリで視聴したこともあり、完全に不意打ちだった。そこで初めて主人公・かおすの名前を確認し、並々ならぬ親近感を覚えると同時に、軽い感動を覚えたわけです。──かおす! あなた、かおすっていうのね!

『こみっくがーるず』2話「今日から学校でした」画像

アニメ『こみっくがーるず』第2話「今日から学校でした」より

 初めて出会った、自分と同じ(あだ)名を持つキャラクター。かわいらしいピンクの三つ編みをもつ彼女は、女子高生っぽくない女子高生でした。

 とは言ってもたまたま名前が同じだけで、当然、アラサーの冴えないオタクである自分とは似ても似つかない。別にそこまで感情移入することもないだろう──と思いきや、しばらくして気づく。

 あれ……?
 この娘、むしろ完全に俺じゃね……?

 

あばばばテストマイクテスト

 『こみっくがーるず』は、女子高生マンガ家4人の生活を描くゆるふわ日常系コメディ。

 マンガ家専用の女子寮で暮らすのは、すでに活躍中の人気少年マンガ家、人気急上昇中のティーンズラブマンガ家、のちに連載が決まることになる少女マンガ家の3人。そんななか新たに入寮したのが、デビュー作でアンケート最下位を獲得した4コママンガ家、主人公・かおすこと薫子ちゃんである。

ピンク髪の三つ編みと「×=」のようなヘアピンがトレードマークの、本作の主人公。ペンネームは「かおす」。困ったときなどに出る口癖は「あばばばば」。

高校生の4コマまんが家だが、デビュー作の評判はボロボロでアンケート最下位を取るほどであった。しかし、「独特のセンスはあるが、メンタルが弱くて一人では厳しそう」という担当のすすめによりまんが家寮に入寮することに。

萌田薫子とは - ニコニコ大百科より)

 「気弱で人見知りがちなオタク趣味持ち」という、ジャンルがジャンルなら男主人公でも違和感がなさそうなキャラクターながら、独特な魅力を持つネガティブ系主人公。

 必然、メンタルは弱いかと思いきや、何度もボツを食らってもめげないがんばり屋さん。オタクらしく「好き」の感情には一直線で、劇中ではしばしば “俺ら” の代弁者として熱弁する姿が眩しい。でも、いろいろとダメダメ。しかし、それゆえに応援したくなる魅力がある。がんばれかおす。負けるなかおす。

『こみっくがーるず』2話「今日から学校でした」画像

アニメ『こみっくがーるず』第2話「今日から学校でした」より

 そんな、かおす先生のある意味で代名詞となっているのが、「あばばばば」という口癖です。困ったとき、怖がっているとき、パニクったとき。口癖と言うか奇声のごとく次々と繰り出される「あばばばばー!」のバリエーションには、声優さんの本気を感じる。

 ってか、マジでパねえ。この記事を書くにあたって改めて何話か見直してみたけど、ひとつとして同じ「あばば」がない。それに、聞いてるとなんだか癖になる感じがヤバい。いや、アバい。めっちゃあばばばしてきた。もっとあばあばしてほしい。アバレンジャー。赤尾ひかるさん、マジしゅごい。

 そして、この「あばばばば」がまた、僕のかおす先生への親近感を増大させる一因になっているのです。

 ……そう、振り返ってみたら、自分も結構「あばばばば」していたのだ。

 それもTwitterはもちろん、mixiやモバゲー時代から割と頻繁にあばばばば言っていたはず。ついでに、僕と面と向かって話したことがある方は知ってのとおり、リアルでもあばばってます。あはははは……じゃなかった、あばばばば。

 自分がいつからあばばばば言うようになったかは定かではないけれど、多分、何かの作品で使われているのを見て影響されたんじゃないかしら……*4。あるいは、アニメ版『ぼのぼの』のシマリスくんが乗り移っている説もある。あの子も結構、あばばばばしてません? いぢめる?

『こみっくがーるず』3話「プニプニポヨンですね」画像

アニメ『こみっくがーるず』第3話「プニプニポヨンですね」より

 そして、まさかの “完全に一致” した口癖のみならず、かおす先生のオタクな性格もまるで自分のよう。わかる……わかるぞ……!

 「好きな芸能人は?」の問いに対して「声優さんは芸能人に入りますか?」と悩む2話とか、「渋谷とか原宿とか無理です! 中野とか秋葉原しか行かないです! 総武線以外は乗りたくない!」な5話とか。え? 小夢ちゃん、なーに? 「かおすちゃん、ネットだとテンション高いねー」(7話)って? やだもー、わかっちゃったー? マジ照れるわー。

 大百科の記事コメントに「小動物系美少女とおっさん系美少女の奇跡の融合」って書いてあったけれど、まさしく。かおす先生はおっさんであり、おっさんは僕である。つまり、かおす先生は僕なのだ……! 俺が! 俺たちが! かおす先生だ! アバーッ!

 

俺がかおすちゃんだ!

『こみっくがーるず』9話「かおスパイラル」画像

アニメ『こみっくがーるず』第9話「かおスパイラル」 - ニコニコ動画より

 さて、名前のみならずキャラの部分でも並々ならぬ親近感を覚える、かおす先生。そんな彼女にすっかり感情移入してしまった僕は、今日も今日とてアニメ『こみっくがーるず』を楽しんでおります。

 「かおすちゃんも女子高生でしょ」(2話)というセリフがあれば「そっか……ワシは女子高生だったのか……」と認識を改め、「代わりにかおすでも抱いとけよ」(4話)と言われたら「はいっ! 抱いてください!!」とハァハァしながら観ている感じ。「かおすも女子にしては強いよ」(5話)って……いやぁ、照れる(*´ω`*)

 元気っ娘の小夢ちゃんに「かおすちゃーん!」って呼ばれるのもいいけれど、大人っぽい流姫ちゃんに「かおすちゃんは〜」って気遣われるのもたまらん。それと、怖浦先輩に手取り足取り教えてほしい。

 そしてなにより、ボーイッシュな翼さんに「かおす」って呼ばれると、なんかもうドキドキくねくねして昇天しちゃうよね……。高橋李依さんの中性的ながらかわいらしさもにじみ出るお声で、僕の名前(だが、あだ名だ)を呼んでいただける日がくるなんて……。ありがとう……こみっくがーるず……ありがとう……はんざわかおり先生……。

 

 ──とまあ、これ以上書くと各方面からドン引きされて僕の未来がまっすろになりかねないので、そろそろ止めよう、そうしよう。

 何はともあれ、ついに念願の「アニメキャラに自分の名前を呼ばれる」という夢が叶った自分。「そうか……アニメで自分の名前を呼ばれると、こんなにもドキドキくねくねイヤンアハンな気持ちになるのか……!」という実感を得て、またひとつ大人になったような気がする。よかったよかった。

 そして、そのような至極個人的な楽しみ方はさておき。かわいいだけじゃなく、緩急激しいギャグとマンガ的な演出が新鮮なアニメ『こみっくがーるず』。そろそろ1クールが終わるというタイミングではありますが、Amazonプライムなどでも配信されているので、気になる方はぜひ観てみてくださいな。

 今日から君も、かおす先生だ!(同じあだ名の人がどれだけいるかわからないけど)

 

©はんざわかおり・芳文社/こみっくがーるず製作委員会

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*1:でもこうして見ると、ラノベ主人公の名前って割と珍しくないものが多いような気もする。

*2:参考:結城リトとは【ピクシブ百科事典】

*3:どうしてこのあだ名が定着したのかは、なぜか誰も知らない。呼ばれていた当人も知らない。

*4:※芥川ではない。