少年時代を埼玉県で過ごした僕にとって、「うどん」の原体験といえば「山田」である。うどんといえば、山田。山田といえば、うどん。クラスメイトの食いしん坊・山田くんのあだ名が “うどん” になるくらいには、僕らの生活に息づいている存在なのだ。
……え? ご存じ、ないのですか!?
埼玉県内に点在する、赤いカカシに黄色い看板のうどん屋さんを!?
小中学校の給食で結構な頻度で出てくる、袋入りのソフト麺。埼玉県では、その麺が主に山田うどんのものなのです(多分)。埼玉の少年少女の体は、きっと “山田” でできている。
食べ方は人によってさまざまで、一玉をそのまま器に投入する人もいれば、袋を開ける前に外から指やスプーンで分割し、小分けにして入れて食べる人もいた。上級者になると、袋の状態でおにぎりのように丸め、球体っぽくなったものをぶちこむ──なんてこともしてたように思う。
しかし、生徒から人気があったかどうかと言われると……正直、怪しいんじゃないかしら……。悲しいことに、Googleの検索候補もご覧の現状ですしおすし。
お世辞にも “コシがある” とは言えない、あの柔らかソフト麺。意外と食べ出があるのは男子にとって嬉しいけれど、少食な女子のなかには残す人も多く、ソフト麺の日はいつも以上に残飯が多かったような記憶がある。決してまずくはない。まずくはないけれど、良くも悪くも “普通” なのです……。
そのように、良くも悪くも「うどんといえば山田ァ!」な印象が根づいてしまっている元埼玉県民として、此度のニュースは無視できないものだった。
あの山田うどんの、新業態ができた……だと……!? なんでも、お昼時はうどん・丼物を中心とした食事を提供し、夜はちょい飲み居酒屋として展開していくそうな。よく見たらチャリで行ける距離っぽいし、ちょっと気になる。
というわけで、まずはお昼時、ランチを食べに行ってきました。
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ロードサイドでなく、駅前に山田うどんがある不思議
やってきましたのは、本日オープンしたばかりの『県民酒場 ダウドン』清瀬北口店。
「……ん? 清瀬? 埼玉にそんなところあったっけ?」と思うかもしれませんが……一応は東京都内です、はい。東京北部、埼玉・所沢との県境に位置する、指っぽくもアホ毛っぽくも見える部分にあります。『となりのトトロ』とちょっとした関係があるとか。
それにしても、どうして本社のある所沢でなく、埼玉県内でもなく、清瀬なんだろう……。
埼玉県内では既存店舗が身近にありすぎるし、かと言っていきなり都心部に出店するのも悩みどころだから……とか? ゆえに、本社と近い立地で、都心部へ向かう沿線にあるり、 “ちょい飲み” 需要を見極めるのにちょうど良さそうな街として選んだ……とか、そんな感じなのかしら。
それはさておき、自転車で移動できる圏内に出店してくれて、個人的にはありがたいところ。例の赤カカシが描かれた提灯を見て、不思議と懐かしさを覚える元県民。
ぶっちゃけ、給食で飽きるほど食べていたこともあり、お店に入ったことは数えるくらいしかないので、もう何年ぶりになるかもわからない山田うどん。過去に食べていたソフト麺とはさすがに別物でしょうが、ひさしぶりの山田でちょっとわくわくしてきた。
真新しい店内は、うどん屋さんというよりは居酒屋チック。奥の壁にはうどんのメニューが並んでいる一方で、厨房上にはお酒やおつまみのメニューがズラリ。
鉄板、一品料理、串天といったメニューに、アルコールはビール・焼酎・果実酒・ワイン・サワー・ハイボールのほか、埼玉の地酒を取りそろえているそう。あと、4種類のレモンサワー「吉田さん」「山田さん」「辰田さん」「新井さん」が気になるのだ……。
そして店内BGMは、安定と信頼のNACK5。これはもう、実質的に埼玉県にいるのと同義なのでは……? ここから5分も歩けば新座市だし。
さて、何はともあれ、メシである。
8種類のうどん、6種類の丼物、さらにそれらを掛け合わせたセットが選べる昼メニュー*1から、ここは王道の、天ぷらうどん(480円)を選択。あまりお店に行ったことはないものの、「山田うどんのセットメニューはボリューミーだよ!」といううろ覚えの知識があったので。
まずは一口、麺をちゅるっと……うん、うどんだ!(語彙貧)
麺の評価基準として挙げられがちな「コシ」や「喉越し」は可もなく不可もなくといった印象で、「柔らかくて食べやすいうどん」といった印象。かと言って淡白すぎるというわけでもなく、出汁の味わいを感じられておいしい。駅ナカの立ち食いうどんよりはうまいぞ!(断言)
うどん以上に存在感を放っている天ぷらは、衣のサクサク具合が絶妙でうまうま。野菜のほかに、小サイズのエビやタコがふんだんに含まれており、最後まで飽きることなく食べられる。回転寿司といいこれといい、海なし県の埼玉県民はやはり海産物が大好きなのだ(※個人の感想です)。
あと個人的に「これぞ!」と感じたのが、レモンピールの存在。
どちらかと言えばあっさりめの出汁&麺に、人によってはしつこさを感じるかもしれない天ぷらの油分。その両者の中間に立ち、柑橘類ならではの爽やかさでもって味覚をリセットしてくれるレモンピール先輩が、見事なバランサーの役割を果たしていた。そんな印象を受けたのでした。
そんなこんなで、久方ぶりの山田うどん、もとい『ダウドン』さんで、思いのほか満足してお店を後にした格好。ごちそうさまでした!
チャリだからお酒は飲めないものの、お店の様子だけでも──と思って先ほど通りがかったところ、店内には会社帰りのサラリーマンらしき姿がいっぱい。すでに満席だったので、これはもしかしなくても、かなり需要があるのでは……?
人によっては「山田といえば、名物はうどんよりもこれ!」と言わしめる「パンチ」(もつ煮)もまだ食べられていないので、次は夜に行ってみようかなっと。よく見たら、昼は昼で「パンチ丼」がメニューにあったので、そちらをセットで頼んでもいいかも。
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