※この記事は、テレビアニメ第3話放送当時に書いたものです。
原作を最新5巻まで読みました。
すごかった……としか言えないくらいにはすごかった(小並感)
いやほんと、シナリオ面でも作画面でも、想像以上に凝っている作品でびっくらこいた。読み終えた途端、すぐにもう1回読みたくなるマンガって久しぶりっすよ。思わず2周目。……で、伏線っぽいのがちらほら見つかって、余計に先が気になって仕方ない模様。6巻はよ。
で、そんな話題作が出てくると先の展開が気になってくるもので。これまでもアニメで観て知った作品について、放送中に原作を買って読み進めるようなことはあったけれど、今回はちょっと悩みどころだった。
なぜなら、「オリジナル展開」になっているという話だったため。「原作どおり」なら迷うことはないのです。原作を先に読み進めて物語を知ってしまっても、アニメ版は「目」(キャラが動いてるだけで楽しい!)と「耳」(声優さんの演技がすげえ!)で楽しむことができるから。
ただ、本作に関しては、3話時点で「オリジナル要素」が随所で差し込まれており、ストーリー展開にも変更があるという話。そのせいもあってか、原作組のネタバレもネット上の目立つところでは見られないどころか、彼らは彼らでアニメを楽しみにしている様子ですし。
そんなこともあって、アニメの放送が終わるまで何の前知識もなく、純粋に映像作品として楽しむべきか、それとも原作を読んでしまって、映像と変更点を比較しながら楽しむべきか……と悩んでいたのですが。──結局読んでしまった。心がぴょんぴょんする(興奮と悲痛で)
※直接的な「ストーリーのネタバレ」は避けていますが、世界観・設定などは一部記述しています。
スポンサーリンク
オチたけど、オチてなかった
アニメ第1話開始から20分と30秒ほど。初見の人は、おそらくそこで本作最高の衝撃が鳩尾にクリティカルヒットし、その後ボディブローのようにジンジンと全身に響いていったことかと思われます。夢だけどー! 夢じゃなかったー!!
上:アニメ『がっこうぐらし!』第1話「はじまり」/下:原作『がっこうぐらし!』1巻1話「はじまり」
『がっこうぐらし!』という作品を初めて観た人に最高級のインパクトを与えつつ、さらにその世界観を瞬時に認識してもらうための演出と改変。
原作は原作で唐突すぎて一枚絵にたじろいだけれど、アニメは絶妙に違和感を仕込ませつつ、不安を煽る流れになっていてすごかった……というのは、すでに語られている話ではありますが。
これだけのファーストインパクトがあれば、あとはまあ「ゾンビアポカリプスもの」の定番に沿って進行していくものだと思うのも自然な流れ。オチがついたも同然であり、あとはお約束に則って物語は進行し、その過程で、ゆきの幼児退行も快復に向かうのだろう……と。
──そうは問屋が卸さなかった。
1巻を最後まで読み終えて目に入ったのは、巻末の「学校案内」と題した設定資料。いやー凝ってんなあ……とすっ飛ばしそうになるけれど、パッと目に飛び込む記述を読むかぎりでも……何やら、怪しい。
民間伝承、痛ましい事件、どう考えても設備が充実しすぎている高校施設──それに、おどろおどろしい「校歌」。歌詞に “大蛇” 、 “血の涙” 、 “炎の跡” って、意味深すぎるでしょ、これ……。
5巻終了時点で “充実した施設” には意味があることがわかり、 “伝承” を印象づけるような発言も見て取れる。 “詞” に関してはまだ明らかになっていないものの、本作の世界設定の根幹を成していることは間違いないんじゃないかと。ググると、考察しているサイトもちらほら。
「ゾンビもの」と言えば、『バイオハザード』のいわゆるT-ウィルス的な設定があるものもあれば、「なんか知らんがゾンビがいっぱいでやべえ」というパニック色を押し出したまま進行する作品もあるけれど、この『がっこうぐらし!』は前者。それも現段階では明確に「元凶」が明らかになっておらず、謎解き要素も楽しめそうです。
そういう意味では、「(1話で)オチたけど、オチてなかったー!」な作品として、アニメとコミック、いずれも楽しめることは間違いないと思います。「終わりなき日常」を楽しむ日常系ではなく、「終わってしまった日常」を思いつつ、前へ進む王道作品として。
……あと、アニメ1話を初めて観たときの衝撃との類似点で言えば、個人的には3巻18話が十二分に衝撃的でござった。セカンドインパクト。思わず頭を抱えるくらいには。「いきなりどーん!」ではないけれど、某平行世界系のPCゲームを思い出してトラウマががががg
アニメオリジナルと改変部分について
「みーくんの登場は2巻に入ってから」という話は聞いてはいたものの、アニメ3話までの知識だけで原作を読み進めていると、キャラクターに感じる印象もまったく違っていておもしろかった。読み終えた今となっては、「アニメオリジナル」の展開を気にしながら観ることができるという楽しみができた格好。
みーくん関連で言えば、何よりも気になるのが「太郎丸」の存在。こっちは聞かされていなかったので、吹いた。アニメ最大の“改変”とも呼べるこのワンコの存在が、どのように本編に関わってくるのかわくわくでござる。
アニメでは、みーくんとのやり取りでほんわかほっこりできるから良い。動物のデフォルメ全開っぷり。中の人がQBだからって、まさか……ねえ……。太郎丸黒幕説。僕と契約しt
そして、第3話。まさか半分以上がアニメオリジナルだとは思わなかった。
メインの4人の視点で、(途中までは)ほとんど彼女らの周囲、主に「学校」の空間の描写しかなかった原作と比べて、アニメでは早々に「外」を映し出しているというオリジナル部分。
「最近、学校が好きだ!」となる以前のゆきの姿もあり、マンガを読んだ後にアニメを見返していたら、余計に気になってきた。この辺りは原作を読むことで見えてくる、アニメとの「比較」の楽しみと言えるかと。
かわいい絵柄と、表情の緩急
原作コミックは、なんといっても「作画」がすてき。キャラクターの書き込みと表情の細かさは言うに及ばず、アクションシーンも一コマ一コマ丁寧に、最低限の動きで描写しているように読めてわかりやすい。デフォルメ絵もかわゆい。
アニメ版の第一印象のとおり「かわいい」に振りきれた絵柄かと思いきや、喜びに安堵、怒りに驚愕、狂気に絶望まで、多種多彩に表情を変えるキャラクターが魅力的なのです。
アニメはまだ序盤のせいもあって、「かわいい」重視の演出となっている印象はあるものの、コミックは一枚一枚のイラストに力がこもっていて、見ているだけでも楽しい。──自分にそっちの気はないですが、レビューでたびたび目にした「りーさんの絶望顔が……(ゾクゾク」な感想もわからなくはないくらい。
あと、個人的には、それぞれのキャラクターの「目」の描写が、すんごい好みです。
常にまんまる癒し系のゆきに、パッチリながらジト目と刺すような視線を持つみーくん、明るく強い意志を漲らせながらも影のあるくるみに、細目でほんわかかと思いきや一番変化の激しいりーさん。うむ、良い。表情の変化が激しくてグワングワンする。
5巻の「だからたまには ね?」のゆきはマジ天使。
アニメは原作の何巻までやるのか
原作を最新刊まで読み終えた段階で気になってくるのが、「アニメは何巻の内容まで物語を進めるのか」という点。
順当に考えれば、どっからどう見てもキリのいい5巻までなんだろうけれど、それにしてはスローペース。オリジナル部分はあれど、アニメ3話時点でまだ1巻ラストまで達していないという現状。映像化にあたって一部を省略するのは考えられるけれど、意外と先が読めない。
特に気にかかるのが、3話のアニメオリジナル部分の大半を占めている「めぐねえ」視点のエピソード。原作にはなかった、教師としての悩みや、くるみとの交流も描かれていたりと、妙にキャラクターが掘り下げられているような印象を受ける。
で、改めてマンガを読み返してみると、3〜4巻にかけて「めぐねえ」の存在が展開の中心を占めているようにも読める。そして、4巻ラストもなかなかに気になる終わり方。……とくれば、もしかすると4冊を1クールで終わらせる形も、なきにしもあらずなのではないかしら。
今週はアニメの第4話が放送、再来週にはコミックの6巻が発売されるということで、どちらも先の展開が気になるところ。よかったらこの機会にぜひぜひ。
©Nitroplus/海法紀光・千葉サドル・芳文社/がっこうぐらし!製作委員会