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澤野弘之さんの曲作りは「定義しない」ことで受け手の想像力に問いかける

小説・映画・音楽・絵画など、多くの創作物には「タイトル」が付いている。それは作品の内容をわかりやすくまとめて表現したものだったり、作品内の重要な要素を切り取ったものだったりと、さまざまだ。

一方では逆に、あえて無関係の言葉を持ってくることで興味を引いたり、やたらと長いタイトルにすることで目を引きやすく? するような手法もあるみたいだけれど。

それでもいずれにせよ、作品の「タイトル」にはその内容を一面的に定義する役割があるのではないかしら。

「これはこういう作品だよ!」とか「この話題について話すよ!」ということをあらかじめ明らかにすることで、その受け手に身構える余裕を与え、実際に触れてからのギャップを最小限に抑えるような(逆にギャップによる衝撃を狙うものもあれど)。

 

ところがどっこい。そんな「タイトル」による定義をあえて避けようと考え、曲名を付けているらしいアーティストさんがいる。

ドラマ『医龍-Team Medical Dragon-』やアニメ『進撃の巨人』の劇伴音楽を担当し、楽曲のファンも多い、澤野弘之*1さん。その発表作のブックレットにおもしろい話があったので、ご紹介します。

 

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わけのわからないタイトル

 

澤野さんのCDを買ったことのある人ならご存知かと思いますが、彼の作る楽曲のタイトルは、パッと見るかぎりでは何がなんだかわからない。たとえば、『進撃の巨人』のサウンドトラックの曲名リストを見てみると……。

 

『進撃の巨人』オリジナルサウンドトラックより
  • ətˈæk 0N tάɪtn
  • The Reluctant Heroes
  • eye-water
  • 立body機motion
  • cóunter・attàck-mˈænkάɪnd
  • army⇒G♂
  • Vogel im Käfig
  • DOA
  • 凸】♀】♂】←巨人
  • E・M・A
  • 巨♀~9地区
  • Bauklötze
  • 2chi城
  • XL-TT
  • Call your name
  • omake-pfadlib

 

なんかいろんな言語が混ざってるような……。よく見れば一種の語呂合わせのような「言葉遊び」だというのはなんとなく読み取れるものの、一見したかぎりではわからない。

『進撃の巨人』という作品を知っていれば、推測が可能なタイトルもちらほら。サントラの情報が出た当初は、ファンの間であれやこれやと語られていましたね。「立body機motion」→「立体機動」、「E・M・A」→「エレン・ミカサ・アルミン」などなど。

 

「何だかわからない」からこそ、おもしろい

 

僕が澤野さんの楽曲を知ったのは『ギルティクラウン』がきっかけでしたが、そちらにもやはり謎の曲名がちらほら。その手の「言葉遊び」が好きな人なのかなー、と思っておりました。

──そう考えていたら、『アルドノア・ゼロ』のサウンドトラックのブックレットにてその答えを発見。

 

 

この作品に限らずなんですけど、僕の作品って、曲のタイトルが訳わかんないですよね(笑)。あんまりタイトルで意味を限定したくないんです。たとえば曲名に「カーチェイス」って書いちゃったら、「これはカーチェイスの曲なんだ」っていうイメージでしか聴けないじゃないですか。

 

「ある曲に対して、限定的な意味付けをしたくない」とのこと。

たしかに、サウンドトラックに限らず自分の記憶に残る音楽のイメージって、何かしらの「映像」「場面」「経験」とリンクしてるんですよね。いつも家族とのドライブで流れていた曲とか、CMのタイアップ曲とか、スキー場で流れる曲とか*2

続けて、澤野さんはこのようにも書いています。

 

個人的な意見なんですけど、インストゥルメンタルっていうのは、歌詞がないぶん音楽だけ聴いても何だかわからない部分があって、そこがいいと思うんですよ。だからあんまりタイトルでわざわざ曲の世界観を狭めたくないんです。もちろんサウンドトラックなので、その曲が使われていたシーンを思い浮かべながら聴く人がほとんどだと思うんですけど、たとえばどんな映像だったか忘れてしまってからでも、映像と切り離して自分のイマジネーションの中で聴いてもらえたらありがたいなと思います。

 

この視点はこれまでの自分にはなかったものだったので、とてもおもしろく感じました。自分にとっての「音楽」と言えばむしろ、聴くことで何かしらの場面や情景が思い出されるようなものだったので。昔からゲームのサントラが好きだったことにもよるかも。

受け手の感性や価値観によって印象や評価が大きく変わりそうな「音楽」「芸術」などの創作物に関しては、それ単体で楽しまれてこその価値もあるのかもしれない。

作品のBGMとしてはアレが好きだけど、楽曲単体としてはコレが好き──みたいな。そういう意味では、先ほど書いた『ギルティクラウン』の楽曲群は既に作品と切り分けられているような気もします。もう半分くらい、内容を忘れちゃってるので……。

改めて考えてみれば、最近はコンテンツ全般の総量が増えすぎて、作品単体よりもその「文脈」が重視されがちになっているんじゃないかとも思う。それが何のテーマ曲であるかとか、誰が作ったものであるとか、誰に褒められているものなのかとか。

もちろん、文脈があることで価値が高まる、魅力的に感じられるコンテンツも少なくないし(アニソンとかアイドルとか)、それが悪いことだとは思わない。でもその一方で、作品それ自体だけを意識して、想像力に訴えかけるような楽しみ方があることを知っておいても良いんじゃないかしら。

 

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