「エモい」という感覚が、いまいちよくわからない。ロジカルではなく、エモーショナル。言葉にしたいけれど、言葉にできない。「感情が高まって強く訴えかける心の動き」*1と言われて何となく理解した気にはなったものの、あまり自分の感覚には馴染まず、普段口に出すことはなかった。
ところがどっこい。今しがた小説を読み終え、充実した読後感に浸っていた己の内から湧き出た感想が、この「エモい」だった。──おもしろかった。良い話だった。そういった紋切り型の一口感想に続いて、強く揺さぶられた己の感情のモヤモヤを言語化しようとしたところ、口を突いて出たのが「エモい」だった。……なるほど、これはたしかに、まっことエモい物語だ。
『平浦ファミリズム』は、第11回小学館ライトノベル大賞・ガガガ対象を受賞した、紛うことなき「ライトノベル」である。昨今の流行を無視したラノベに似合わぬあらすじに惹かれ、ブログ「スゴ本」のDainさんのレビュー*2まで目にしてしまったら、そりゃあ読まずにはいられない。
ますます「多様性」が叫ばれるようになりつつも、他方で出る杭は打ち、理解不能な臭いものに蓋をすることを良しとする、「世間」への皮肉とも受け取れる物語。一般的には「普通じゃない」家族と周囲を取り巻く関係性が描かれる本作は、読みごたえあり、テーマ性ありと、むちゃくちゃ自分好みの作品だった。
ガガガ文庫というレーベルは、どうしていつもこうなのか……!(褒め言葉)
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