火事屋『わたしと先生の幻獣診療録』(1) P.45
時代の「変革期」を描いた物語は、いつだって心躍らされるもの。
剣から銃へ、蒸気から電気へ。技術革新は言うに及ばず、激動の時代を経て移り変わる価値観や政治体制の変化は、創作物においては人気のテーマであるように思う。日本の歴史を紐解いても、武士の終焉を描いた「幕末」などは常に人気のジャンルですしね。
近代においては、そういった変革をもたらす存在として「科学」が果たした役割は言うまでもなく大きい。科学技術の発展は、庶民の生活の豊かさに直結する要素だとも言えるほど。反面、科学の隆盛に伴い失われゆく「伝統」との衝突も、避けては通れないように見える。
本作『わたしと先生の幻獣診療録』も、そのような「変革期」を描いた作品のひとつに数えられる。ただし、前述のような「歴史」を前提とした創作物とは少し異なるし、描かれる「変革」は激動の時代に巻き起こる革命ではなく、むしろ緩やかな変化として示唆されているように読めた。
──とまあ “それっぽい” 導入でもって書きはじめてみましたが、そんなことはどうでもいいのです。要するに、ロリっ娘とモフモフが登場する素敵マンガを読んだのです。
本作を一口に言えば、「『魔術』が『科学』に取って代わられつつある時代で奮闘する、小さな魔術師と無愛想な獣医師、2人と幻獣とのふれあいファンタジー」。絵本のようにかわいらしいキャラクターと幻獣にほっこりしつつも、設定の妙と世界観に自然と惹き込まれる、素敵な作品です。
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