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『君の名は。』を特集した『Febri』Vol.37を読んだ

 『君の名は。』関連書籍  

 

 なんだかんだでひさしぶりの購入となる、アキバカルチャーマガジンFebri』。過去にブログで取り上げたVol.19が、もう3年近くも前の発売ということにびっくりでござる。――あ、でもそういえば、年明けには『ガルパンFebri』も買っていましたね。

 

 

 そんな『Febri』でございますが、9月発売のVol.37では『君の名は。』を特集。

 夜空を翔ける彗星を背景に佇む三葉ちゃんの表紙を見た時点で買わざるを得なかったわけだけど、あくまで“巻頭特集”ながら、思いのほか内容が濃かった。主要スタッフのインタビューはもちろんのこと、ライター陣による過去作品の振り返りも楽しく読めました。 

 

 

インタビューから浮かび上がる『君の名は。』の魅力

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 さて、32ページに及ぶ『君の名は。』特集は、ほぼすべてのページがインタビュー。新海誠監督に始まり、田中将賀さん(キャラクターデザイン)安藤雅司さん(作画監督)川村元気さん(プロデューサー)神木隆之介さん、上白石萌音さん、RADWIMPS丹治匠さん(美術監督)が登場します。

 インタビューの内容は他誌と被る部分も一部あるので、なかには物足りなさを感じる人もいるかもしれません。逆に、『君の名は。』を映画館で観てからまだ関連書籍に手を出していない人であれば、最初に読む一冊としておすすめできる内容と言えそう。いずれのインタビューもそれぞれ3〜5ページ程度の文量なので、コンパクトにまとまっていて読みやすかったです。

 

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 翻って、本誌でしか読めないコンテンツとしては、プロデューサー・川村元気さんへのインタビューが挙げられます。いくつかのウェブメディアでは取り上げられていたものの、意外と雑誌の特集では姿が見られなかったので。文量はさほど多くはありませんが、非常に示唆的な内容でした。

 一口に言えば、「如何にしてクリエイターのものづくりを手伝うか」という切り口のインタビュー。どういった経緯で『君の名は。』の企画が出され、スタッフが決まり、脚本会議の場ではどの程度の“介入”をしたのか――などなど。一例として、次のようなお話がありました。

 

東宝の夏のアニメーションということで――これまでスタジオジブリの作品があり、そのあとは細田監督がいて……という流れがあって、そこに対して新海監督が挑戦することになるわけですから、当然、メジャー感は要求されていたと思います。ただ、僕としては「東宝の全国公開になったから、全然違うものを作りましょう」みたいなことはやりたくなかった。

(中略)

新海監督のよさをきっちり伝えることができれば、それは自然とメジャー感につながっていく。もともと新海監督は大きな世界観の話を描く人だったわけで、そういう意味では、いつも通りの新海節をいかに長編映画として仕立てることができるか。そこがプロデュースにあたってのコンセプトでした。

『Febri』Vol.37 巻頭特集『君の名は。』P.018より

 

 特に「初期の3作品の“ベスト盤”を観たい」というオーダーをしたそうですが、これは鑑賞後の印象としてもしっくりくるものですよね。『ユリイカ』でも多彩な専門家さんたちが過去作とのつながりを考察しておられましたが、その言説を担保するインタビューだと読めました。

 

+14ページの過去作品解説と、監督コメント

 さらには、32ページのインタビューだけでも結構なボリュームがあるのに、続く14ページ分の特集「新海 誠の世界」もなかなかの読みごたえ。過去作品の解説集です。

 『彼女と彼女の猫』から、『ほしのこえ』『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』『言の葉の庭』まで。加えて、NHK『猫の集会』と、Z会をはじめとする各種CMも簡潔に取り上げられておりました。ゲームのOPムービーはさすがに触れられていないので、そちらは『ユリイカ』のほうで。

 

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 『新海 誠Walker』や『ユリイカ』の特集でも同様の過去作紹介がありますが、本書では各作品に新海誠監督のコメントが添えられているのがポイント。当時の思いや作風の変化、最新作に至るまでの変化なども監督自身の言葉で語られており、短文ながら興味深い内容です。

 

個人的に今回の『君の名は。』は、この『雲のむこう、約束の場所』の語り直しという気持ちが強いんです。夢での淡いつながりであったり、出会うべき人と夢で出会う物語であったり……。『雲のむこう、約束の場所』を作ったときに感じた「もっとうまくできるハズなのに」という思いが『君の名は。』になっているのかな、と思います。

『Febri』Vol.37 特集「新海 誠の世界」P.041より

 

 同じく『言の葉の庭』は『彼女と彼女の猫』の語り直しであると言及されており、それぞれの類似性や変化を探ってみるのもおもしろい。本作は単品で語るにはあまりに過去作品の流れを汲みすぎているとも言われていますし、こうした細部のコメントが考察の助けになるのではないかしら。

 

舞台百景と、他のコンテンツも盛りだくさん

 『君の名は。』関連のコンテンツとしてはもうひとつ、巻末近くに5ページ分の「舞台百景」が掲載されています。“例の階段”をはじめ、新宿・四谷近辺で実際に登場したスポットを10箇所紹介。これから舞台探訪しようと考えている人の参考になるかと。

 

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 また、そもそも『君の名は。』に関しては“巻頭特集”ということで、他のコンテンツも忘れてはいけません。最近話題のコンテンツ&カルチャーの紹介に加えて、声優・井上喜久子さんや、『バーナード嬢曰く』著者・施川ユウキさんへのロングインタビューなども。

 あとは、アニメが最終回を迎えた『Re :ゼロから始める異世界生活』の原作者・長月達平へのインタビューも個人的にはおもしろかったです。「4ページで語りきれる作品なわけないだろ!」と最後にぶっちゃけていた、『シン・ゴジラ』のライター座談会には思わず笑った。

 

 そんなこんなで読み終えた『Febri』Vol.37、改めて見ると、『君の名は。』の特集号が次々と刊行されている関連本のなかでも、「入門編」の印象が強い一冊でございました。明解なインタビューと作品紹介に注力しており、映画を観て最初に読むとスッキリできそう。

 で、物足りない人はここから『新海 誠Walker』や『ユリイカ』に対象を広げていって、関連書籍を読みあさると楽しいはず。まだまだ興行収入も感想も増えていくだろう『君の名は。』をもっと噛みしめるように楽しむべく、気になっている方はチェックしてみてくださいな。

 

 

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