ぐるりみち。

平成生まれのフリーライターのブログ。本・映画・マンガ・アニメの各種レビューに、旅行・グルメ・街歩き日記など。

「おもしろい」にはいろいろな文脈があって面白い

 普段から何気なく使っている言葉、「おもしろい」。ざっくりと言えば、“ある物事や経験に対するポジティブな感想・評価を表す形容詞”とでもまとめられましょうか。

 当たり前に使っているこの言葉も、改めて整理してみると、いろいろな意味をはらんでいるらしい。それだけでは「具体的には何が“おもしろい”の?」と言葉足らずに感じるけれど、それゆえに便利な表現であるようにも思います。そんな、「おもしろい」について。

 

対象にプラスの評価を加える言葉「おもしろい」

 言葉について考えるには、まず、辞書から。引用します。

 

  1. 興味をそそられて、心が引かれるさま。興味深い。「何か―・いことはないか」「仕事が―・くなってきた」「この作品は―・くなかった」
  2. つい笑いたくなるさま。こっけいだ。「この漫画はなんとも―・い」「―・くもない冗談」
  3. 心が晴れ晴れするさま。快く楽しい。「夏休みを―・く過ごした」「無視されたようで―・くなかった」
  4. 一風変わっている。普通と違っていてめずらしい。「―・い癖」「―・い声」
  5. (多く、打消しの語を伴って用いる)思ったとおりである。好ましい。「結果が―・くない」
  6. 風流だ。趣が深い。「月の―・きに、夜更くるまで遊びをぞし給ふなる」〈源・桐壺〉

おもしろい【面白い】の意味 - 国語辞書 - goo辞書

 

 こちらで挙げられている意味に関しては、多くの人が日常的に使っているものなのではないかしら。5と6は、他と比べると利用頻度は少ないかもしれないけれど。特に5は、マンガで目にする捨て台詞っぽい。「ちっ、おもしろくねーな」「興ざめだ、帰るぞ」的な。不良チック。

 

 その性質としては、やはり全体的に「ポジティブな感想」という印象を受けます。「この映画、おもしろいからおすすめだよ!」とか、「夏休みの合宿、おもしろかったなー」とか、「あいつ、おもしろいやつだな」とか。

 場合によっては皮肉っぽく使われることもあるかもしれない。それでも基本は、ある物事・経験に対して、広い意味での「感想」として口に出されている表現だと思う。“楽しい”、“好きだ”、“良い”、“興味深い”などと並んで、ある対象に、端的なプラスの評価を付与する形。

 

 もちろん、これだけでは言葉足らずだと感じる人もいるでしょう。小説や映画などの創作物に対する評価が「おもしろかった!」だけでは、相手には何も伝わらない。上記の意味に当てはめるだけでも、“興味深い”、“笑える”、“変わっている”、どうとでも受け止めることができるので。

 「おもしろい」は、端的な感想を示す表現としては、非常に万能な言葉。ただし、それだけでは何の具体性も伴っていないため、相手にその「おもしろさ」を伝えるまでには至らない。だからこそ、その後ろに「おもしろさ」を表す詳細な説明を尽くす必要があるのだと思います。

 

「おもしろい◯◯」という、広い問いかけ

 この「おもしろい」という言葉、複数の意味を持っているからこそ、質問としても非常に万能な問いかけなんじゃないかと思うんだけど、どうでしょう。実際、とある飲み会の場で、このような話題振りがありました。

 

 「最近、何かおもしろいアプリって、ある?」

 

 答えとしては純粋に、自分にとって“おもしろい”アプリを口に出すことになるでしょう。まったく違和感もございません。しかし、その問いが発せられた場にいるメンバーや、それ以前の話の流れなどの文脈によって、答え方は如何ようにでもなるのではないかしら。

 

 例えば、その場で会話に参加していたのが、ネットメディアの事情に詳しい人たちだったとしたら。展開としてはおそらく、最近話題のキュレーションアプリや、新興のソーシャルメディアアプリなどに話が進むことが想像されます。このブログでは「ハッカドール」を応援しています。

 一方、その問いが出る直前に話していたのが「ゲーム」の話で、その場のメンバーが学校の友人などだった場合。そりゃあ自然と、話題は“おもしろい(ゲーム)アプリ”の方向に展開していくんじゃないかと思います。このブログでは、「Ingress」を全力でプレイしています。

 

 この例では、「おもしろい」の対象として「アプリ」という、これまたいろいろな受け取り方のできる言葉が使われているので、どうとでも答えられる内容であることも否めません。でも、これを別の「映画」や「小説」などに変えてみても、やはり同様の印象を受けるように思う。

 作品の「おもしろさ」なんて、それこそ人によって感じ方はいろいろ。「なるほど!笑える小説だな!」『イン・ザ・プール』を勧めてくるかもしれないし、「ふむ、一風変わった独特の小説ならばこれぞ」『夜は短し歩けよ乙女』を差し出してくるかもしれない。「知らない人にとっては興味深いはず……」『ハサミ男』を押し付けてくる人がいてもおかしくない。このブログでは、『皇国の守護者』を必死になって読んでいます。

 

 要するに「おもしろい◯◯」という問いかけは、問われた相手がどのようにでも答えられる、非常に自由度の高い、間口の広い質問・表現であると言うことができるのではないかしら。

 最低限、「プラスの感想を持った◯◯」といった情報を提示し問いかけることで、その人にとって本当におすすめできる、“おもしろい◯◯”を聞き出しやすいように見える。

 

 これが、“すごい”や“興味深い”だと、質問としてはなんだか違和感があるんですよね。「すごい映画」ってなんやねん。安っちい映画の残念コピーみたい。相手の興味関心やおすすめを聞き出すには、やっぱり「おもしろい」がしっくりくる。

 以上、「おもしろい」という表現から考えられることを書きだした、一種の言葉遊びでした。「おもしろい」からは、ある対象が内包する様々な要素を想像できて、面白い。

 

余談:狂気の沙汰ほど面白い・・・!

面白いは、「面白し」という語が原義で、現代の面白いとほぼ同じ意味で上代より使われているため、語源は未詳であるが、以下の説が有力とされている。
「面」は目の前を意味し、「白い」は明るくてはっきりしていることを意味した。
そこから、目の前が明るくなった状態をさすようになり、目の前にある景色の美しさを表すようになった。

面白い(おもしろい) - 語源由来辞典

 

 “やたら色白な顔面”のことじゃなかったのか……というのはともかく、「おもしろい」という表現の事例を考えて真っ先に思い浮かんだのが、『アカギ』「狂気の沙汰ほど面白い・・・!」だったんですよ。特に引用するタイミングもなかったけれど。

 ただ、“目の前が明るくなる”ことが「おもしろい」の原義だとすれば、この言葉を盲目の市川が発しているのもまた、面白いなあと思いまして。それだけ。

 

 

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