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『思考の「型」を身につけよう』経済学の視点から考える思考法

 「論理的思考」とは、なんだろう。

 「ロジカルシンキング」なんて言うこともある、筋道立てて物事を考え、答えを導き出す思考法。年号や人名を暗記するだけでは養うことのできない、実践的な方法論。

 書店に行けば、この手のハウツー本は多く見つけることができると思います。「論理学」なる学問もあるくらいだし、それをより噛み砕いて身近にしたビジネス本の類も多いのではないかしら。

 そんな “論理本” と言われるものを、僕はほとんど読んだことがございませぬ。

 強いて挙げれば、かの有名な(?)『知的複眼思考法』くらいでしょうか。 “◯◯法” といった種類の本はあまり読まない僕ですが、この本は気付きが多い、多すぎる良書でした。たまに再読しているくらいには。

 とは言え、それ1冊を盲目的に信じきってしまうのも怖いもの。そこで今回は、友人に勧められた本書、『思考の「型」を身につけよう』を読んでみました。Kindleのセールで昨年末に買って、ずっと積んでいた本。やっと読めた。

 表紙を見ただけでは、想像もしていなかった視点による「思考法」。読後感として、「読み終えた!」というよりは「勉強した!」と感じる良書でした。

 

はじめての“けいざいがく”

 本書、『思考の「型」を身につけよう』の著者は、経済学者の飯田泰之さん。単著・共著含めて多くの著作を発表されており、その内容もやはり “経済” に関する話題が大多数であるようです。

 そんな中、この『<思考の「型」を身につけよう』を見ると、パッと見では “経済” の “け” の字もないように見える。サブタイトルの「人生の最適解を導くヒント」だけを見てしまえば、「あれ?自己啓発かな?」と思ってしまう人がいてもおかしくない。

 

 ところがどっこい。開いてみれば、最初から最後までずーっと常に、「経済」に即した話題、考え方が書き連ねられている内容です。予備知識なく読み始めたので、面食らった。

 ちなみに、僕は「経済学? なにそれおいしいの?」とすっとぼけるくらいには、全く知識のない人間です。数字が苦手……というほどではないけれど、ほぼ無関心。下手すれば、一般常識としての経済に関する知識に欠けているような。必要十分条件を再確認するレベル。

 そのくらいには残念な僕ですが、どうやら本書は、「経済学入門書」的な要素を含んでいる面もあるようで、特に引っかかることなく、なるほどなるほどーと、すいすい読むことができました。やばい。超勉強になった。というか、自分の無知さに泣いた。

 さて、では、そんな本書の内容を、ざっくりと、自分なりに要約&ご紹介。

 

目次と要約

第1章 「考えること」の基本型

第2章 頭を整理整頓する技術

第3章 他者の行動はなぜ読めないのか

第4章 ベストな解は、試行錯誤の先にある

第5章 社会全体を幸福にする思考の「型」

 

 第1章は、 最も基本的な「考え方」の型を示す、導入部。難しいと感じた問題に関しては、まず分割すること。その上で、自分が理解できる段階まで単純化したそれぞれの要素の繋がりを吟味し、仮説を立て、データによる検証を行う、といった考え方。

 第2章では、主に「データ」に関する視点と考え方を提供。MECE、部分均衡・一般均衡、オープン・クローズドシステム、演繹法・帰納法、因果・相関関係、などなど。他の「ロジカルシンキング」の本で見られる内容は、この辺りが該当するのではないかしら。

 第3章は、他人や外部との連関も鑑みた思考法。人の考える「合理性」は様々。主観・客観価値説。他者を「説得」する方法。機会費用。「コスト」と「リスク」の視点。

 第4章は、3章の視点の発展形。経済学における希少性と、合理性の関係。レッドオーシャンとブルーオーシャン。リスクコントロール。限界効用。局所最適解。などなど。

 第5章、最終章はまとめとして、企業間の損得や社会全体の視点を参照しつつ、マクロとミクロ、双方の視点から、「合理性」を考えることを説いた内容。その上で、 “「努力が必ず報われる社会」は制約の外にある不可能な目標” としています。

 

経済学の範疇から、広い意味での「考え方」を示す

 本書を一言でまとめるとすれば、「経済学を学びながら、自分と社会との関わりから見た論理的思考法を解き明かす本」とでも言いましょうか。

 『知的複眼思考法』もそうでしたが、論理的思考を身につける前提として、「他者」の視点は間違いなく必要となってくるもの。自分ひとりの主観のみでは、その論理の妥当性を判断することはできず、嫌でも別の、客観的な視点を持たずには考えることができない。

 経済学の単語を羅列すると、ちょっと「うえぇ……」と感じますが、本書は僕のような門外漢にも分かりやすいよう、具体例を明示しながら説明しているようなので、誰でも気軽に読むことのできる内容かと。正直、大学生のうちに読んでおきたかった。

 

 序盤の内容になりますが、個人的に気になったのが、次の箇所。

このような型にはまった思考には思わぬ副産物もあるのだという点を指摘しておきましょう。それが、型にはまった思考の「コミュニケーション力」です。

 一口に言えば、「テンプレート化することによる思考時間の短縮」ですね。自分の主張や考えを毎度毎度、最初からひとつひとつ説明しようとすると、それをまとめる時間が必要になってくるし、聞き手側もダレてくる。そこで、

結論を導くためにデータによる発見・分割・総合・データ検証というステップを踏んでいれば、思考のプロセス自体がそのまま説明の順番になってくれる

 ということだそうな。定型化することによる時間短縮、さらに、その定型に “その人らしさ” を感じることができれば、周囲から注目されやすくなる、という効能もある、と。

 

 この点は、ブログなどにも結び付けられますね。僕なんかは割と、テンプレート的な言い回しや構成には懐疑的な人間ではありますが、確かに、いつも目にする「定型」は、自然と記憶に残るようになる。それが「個性」として認識され、覚えてもらえた、という例は、数多くあるでしょう。

 「テンプレ表現はあかん!思考停止だ!」という主張の記事を過去にちょくちょく書いてきましたが、それがその人によって形作られ、試行錯誤の果てに定型化されたものであるならば、むしろ推奨されるべき「型」なのではないか、と。

 なんでもかんでも、テンプレは良くない、思考停止だ、と批判する行為が、逆に思考停止状態となっていたようにも思えます。それが「テンプレート」となるまでの過程を考え、見直すことによって、その価値や効能も理解できるのかもしれない。

 そんな気付きもあり、僕にとっては、とても良い本だった!という印象です。論理的思考法もそうですが、経済学や、考え方に関するひとつの視点をもたらしてくれる内容。良かったら、手にとって読んでみてください。

 

 

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